抗精神病薬リスト
【【目次】
【01抗精神病薬】定型・非定型未編集
【02ベゲタミン】
【【本文】
【02ベゲタミン】
【01抗精神病薬】
抗精神病薬(Antipsychotics)は、広義の向精神薬の一種で、主に統合失調症や躁状態の治療に承認されている精神科の薬である[1][2]。過去には、神経遮断薬(Neuroleptics)[3]、あるいはメジャートランキライザー(Major tranquilizers)とも呼ばれ、1950年代には単にトランキライザーと呼ばれた。薬事法における劇薬に指定されるものが多い。抗精神病薬は、それ以外にも幅広い精神障害に使用される。
抗精神病薬は大きく2分類することができ、古い定型抗精神病薬と、新世代型の非定型抗精神病薬がある。非定型抗精神病薬は、双極性障害のうつ状態やうつ病にも適応がある薬がある。非定型抗精神病薬は、従来の定型抗精神病薬と比較してドーパミンD2受容体拮抗作用に加えてセロトニン5HT2A受容体拮抗作用を有したり、「緩い」ドーパミンD2受容体拮抗作用を有するなどの特徴をもった薬剤である。非定型抗精神病薬は、錐体外路症状、口が渇く、便秘といった副作用が少なく、統合失調症の陰性症状にも効果が認められる場合があるとされる。しかし#定型対非定型節に見られるように、大規模な試験による分析によれば、非定型抗精神病薬が定型抗精神病薬よりも優れているという根拠は乏しい。
副作用として、口渇、便秘、無意識的に身体が動く錐体外路症状や、肥満といった代謝の異常、母乳が出るといった高プロラクチン血症などがある。代謝の異常は、特に非定型抗精神病薬に特徴的である。抗精神病薬を服用している患者の代謝のチェックが日常的に適切に行われていないことが多く、約90%の患者が1つ以上の代謝性の危険因子を持ち、約30%がメタボリックシンドロームである[4]。さらに抗精神病薬の使用は高い無職率の原因となっている[5]。また服薬を中断する場合#離脱症状が生じる可能性がある。#有効性節以下で示されるが、効果がなかったり副作用のため服薬の中止が多い薬剤である。
抗精神病薬の過剰処方が問題となっている。投与量の増大に伴う治療効果は頭打ちになるが、副作用発現率は上昇していくため、世界保健機関および英米の診療ガイドラインでは単剤療法を推奨している[1]。日本でも2010年に、抗精神病薬の種類が2種類以下である場合に診療報酬が有利になる改定が行われた[6]。厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームが「統合失調症に対する抗精神病薬多剤処方の是正に関するガイドライン」の策定を計画しており[7]、2013年10月にSCAP法という減薬ガイドラインが公開された[8]。抗精神病薬の大量処方からの減量は、過感受性精神病という離脱症状による精神症状の悪化を引き起こす可能性があり注意が必要である[9]。
抗精神病薬の使用は脳の容積を減少させるかについてはさらなる研究を要する[10]。抗精神病薬の使用は若年認知症発症の危険因子である[11]。
統合失調症に用いるのが典型的な用途である[1]。抗精神病薬は、ドーパミン拮抗薬(ドーパミン・アンタゴニスト)で、主な作用は脳内の神経伝達物質であるドーパミンの遮断である。主に、中脳辺縁系のドーパミン作動性ニューロンのドーパミンD2受容体を遮断する。そのことによって、妄想や幻覚といった精神症状を軽減させる。PET(ポジトロン断層法)での研究から、高プロラクチン血症や錐体外路などの副作用が生じるよりも少ない量で有効な反応がみられることが明らかになっている[12]。
単に適応が認められていないばかりでなく、小児や高齢者では死亡リスクを高めることが実証されているために、適応外使用の違法なマーケティングに対し、非定型抗精神病薬のエビリファイ(アリピプラゾール)、ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン)、リスパダール(リスペリドン)と罰金の史上最高額を塗り替えている[13]。
いずれにせよ、各々の薬剤の特徴を考え、標的症状の性質と照らし合わせながらエビデンスに基づいた薬剤使用が望まれる。また、いたずらな多剤併用は避け、可能な限り単剤投与を心がけるべきであり、WHOガイドラインでも「一度に1種類の抗精神病薬を処方する」という立場である[1]。
WHOのガイドラインでは、急性精神病の管理に抗精神病薬の治療を開始するとしている[1]。NICEガイドラインでは、統合失調症の治療第一選択肢は抗精神病薬および心理療法の併用である[14]。しかしプライマリケア医は、専門医の確定診断が無い限り、初回発症の段階で抗精神病薬を処方してはならないともしている[15]。
またNICEは発症防止、予防を目的とした抗精神病薬の投与は行ってはならないとも述べている[16]。
WHOガイドラインでは、双極性障害の急性躁エピソードの治療選択肢のひとつとして抗精神病薬が挙げられている[2]。抗精神病薬の処方を中断する場合は、最低4週間かけ徐々に減薬する必要がある[17]。
認知症患者のBPSD管理に用いられる。処方は強い精神病症状、暴力、攻撃性、行動障害の症状に限り、正しい利用に努め、低用量にて副作用を監視しながら慎重に投与すべきである[18][19]。
NICEの2006年ガイドラインは、BPSDに対して薬物介入を第一選択肢とするのは、深刻な苦痛または緊急性のある自害・他害リスクのある場合に限らなければならないとしている[18]。
脳の興奮状態を抑制させる作用を利用して、抗不安薬では取り除けないような強度の不安や極度のうつ状態、不眠に対する対処薬としても利用される場合もある。また、ドーパミン遮断作用を応用し、嘔気・嘔吐などの消化器症状や吃逆の対症薬として利用される場合もある。
アメリカ精神医学会(APA)は成人の不眠症に対し、抗精神病薬を継続的にファーストライン治療としてはならないと勧告している[20]。NICEは不安障害に対し、抗精神病薬は特別の事情(specifically indicated)を除き処方してはならないとし、かつルーチン処方を禁じている[21]。
抗精神病薬は様々な副作用に結びついている。有害事象が原因で多くの人々(対照臨床試験で約3分の2)が服薬を中止することは、よく認識されている[22]。
ドーパミンD2受容体遮断作用による錐体外路反応は以下のようなものを含む、急性ジストニア、アカシジア、パーキンソン症候群(硬直と振戦)、遅発性ジスキネジア、頻脈、低血圧、勃起不全、傾眠、発作、強烈な夢あるいは悪夢、高プロラクチン血症[23][1]。高プロラクチン血症は、無月経、乳汁分泌、陰萎などを含む。
ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断作用には、便秘、眼のかすみ、口渇などが挙げられる。ヒスタミンH1受容体遮断作用などによる眠気、鎮静、体重増加などが挙げられる。α1アドレナリン受容体遮断作用による低血圧、めまい、射精障害、おそらくは中枢における過度のドーパミン抑制によって誘起されると言われている悪性症候群などがある。
また特に非定型抗精神病薬においては体重増加、糖尿病という副作用が見られることがある。非定型抗精神病薬の服薬にあたっては、定期的な血糖値検査が必要とされる。
抗精神病薬の副作用はいくつかの異なる薬によって管理することができる。例えば、抗コリン薬は、抗精神病薬による運動性の副作用を軽減するのに用いられる。[24]副作用の一部は、薬が長期間用いられた場合にのみ生じる。
精神病のない「健常」人における抗精神病薬の投与は、いわゆる統合失調症の「薬原性陰性症状」(例えば情緒と意欲の問題)を生じさせる[25]。
いわゆる錐体外路症状(EPS)と言われるものである[1]。パーキンソン症候群、不随意運動としてアカシジア、ジストニア、ジスキネジアが有名である[1]。命にかかわる重篤な副作用としては悪性症候群が知られている[1]。内服後、どの程度の時間経過で出現するかによって早発症状、遅発症状に分けられる。遅発性が薬物の減量で改善しないこともあり治療に工夫が必要となる。また、高プロラクチン血症による女性化乳房も気になりやすい副作用である。
遅発性ジストニア(tardive dystonia, TDt)
異常姿勢が一般的である。眼球回転発作、ピサ症候群、メージュ症候群、書痙といった亜型も知られている。感覚トリックといわれ、自分では拘縮で動かせないが他動的には動かせるなど特徴的な不随意運動である。抗コリン薬、筋緊張治療薬、ビタミンE、抗てんかん薬を用いることがある。非定型抗精神病薬で治療することもある。
(後略)
【01抗精神病薬】定型・非定型未編集
【02ベゲタミン】
【【本文】
【02ベゲタミン】
【「飲む拘束衣」販売中止へ―佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」】
2016年6月30日YomiDr.
2016年6月30日YomiDr.
「赤玉」「白玉」の呼び名で知られ、強力な鎮静催眠作用のために「飲む拘束衣」と称されることもある劇薬指定の向精神薬「ベゲタミン」(赤いA配合錠と白いB配合錠)が、今年いっぱいで販売中止になりそうだ。依存性も高く、このコラムの記事「乱用処方薬トップ5発表」にも登場していた。
製造販売する塩野義製薬は、2016年6月、医療関係者向けのウェブサイトに「販売中止予定のご案内」とする文書を掲載した。「日本精神神経学会から『薬物乱用防止の観点からの販売中止』のご要望を提起いただき、社内検討を進めた結果、2016年12月31日をもちまして弊社からの供給を停止し、以降は流通在庫品限りで販売中止とさせていただきたく、謹んでご案内申し上げます」と書いている。
塩野義製薬の広報に尋ねたところ、「販売中止は決定ではなく、まだ予定の段階です。処方していただいている医師や薬局への説明を行っており、様々なご意見を集めた上で、年末までに最終的な判断を行いたいと考えています」とのこと。ベゲタミン好きの精神科医への説明をつつがなく終えるまでは、「決定」という言葉は使いたくないのだろう。万が一、反対意見に押されて「やっぱり販売継続します」となれば、日本精神神経学会は面目丸つぶれになってしまうのだが。
製造販売する塩野義製薬は、2016年6月、医療関係者向けのウェブサイトに「販売中止予定のご案内」とする文書を掲載した。「日本精神神経学会から『薬物乱用防止の観点からの販売中止』のご要望を提起いただき、社内検討を進めた結果、2016年12月31日をもちまして弊社からの供給を停止し、以降は流通在庫品限りで販売中止とさせていただきたく、謹んでご案内申し上げます」と書いている。
塩野義製薬の広報に尋ねたところ、「販売中止は決定ではなく、まだ予定の段階です。処方していただいている医師や薬局への説明を行っており、様々なご意見を集めた上で、年末までに最終的な判断を行いたいと考えています」とのこと。ベゲタミン好きの精神科医への説明をつつがなく終えるまでは、「決定」という言葉は使いたくないのだろう。万が一、反対意見に押されて「やっぱり販売継続します」となれば、日本精神神経学会は面目丸つぶれになってしまうのだが。
ベゲタミン販売中止の影響を推し量るには、現在の使用患者数のデータが必要だ。塩野義製薬の社内検討でも欠かせない情報だったはずだが、広報は「使用患者数は推計でも出すことが難しく、分かりません。ベゲタミンは出荷量を公開していないので、以前と比べた出荷量の増減も申し上げられません。薬価は1錠7円前後ですので、利益が多く出る薬ではありません」としている。
乱用や自殺、横紋筋融解症も……
ベゲタミンは、1957年に発売された“還暦”間近の薬だ。バルビツール酸系睡眠薬のフェノバルビタール、抗精神病薬のクロルプロマジン、抗ヒスタミン作用などがあるプロメタジンの3剤を合わせた合剤で、依存症患者による乱用だけでなく、自殺や自殺未遂に用いる例も目立っていた。死亡には至らなくても、過量服薬で 昏睡こんすい 状態となり、自宅で何日も倒れているうちに筋肉細胞の一部が壊れ、成分が血中に溶け出す横紋筋融解症を起こして長期入院になる例もあった。
このようなケースを朝刊連載「医療ルネサンス」などで度々取り上げてきた。2014年2月には、向精神薬の過量服薬患者を引き受ける救急現場の混乱を1面と3面で特集。「精神科医の安易な処方のためにICUのベッドが塞がり、他の救急患者を受けられない」などとする全国の救急医の怒りの声を伝えた。この「安易な処方」の中でも、救急医たちがベンゾジアゼピン系薬剤、三環系抗うつ薬と並んで問題視したのが、ベゲタミンだった。当時、塩野義製薬にベゲタミンの販売中止を直接訴えた救急医もいた。
ここで精神科の名誉のために補足しておく。ベゲタミンの依存性の高さや、過量服薬した場合の危険性は、精神科でもだいぶ前から認識されており、ベゲタミンを処方しない精神科医は既に多かった。それでも乱用薬物の上位に入っていたのは、一部の精神科医が安易な処方を繰り返していたためだ。問題の認識から実行までにかなりの年月を要したとはいえ、日本精神神経学会が2015年3月、塩野義製薬に販売中止の要望を伝えたことは、学会のあるべき姿を示したといえる。ベゲタミンが処方薬依存症患者の乱用薬物の上位にあり、自殺遺体から検出される向精神薬の上位にもあることを、学会も極めて深刻に受け止めたのだ。以前から処方薬の乱用や依存を問題視し、同業者の冷たい視線を浴びながらも、地道な調査に取り組んできた精神科医が少数ながら存在したことも大きかった。
ただ、ベゲタミンの販売を中止しても、成分の3剤はそれぞれ販売されているので、同様の薬の処方を漫然と続けることはできる。これを機に処方が良い方向に変わるかどうかは、医師の判断と力量にかかっている。ベゲタミンを漫然と処方してきた重篤な「薬物処方依存症」の精神科医の「治療」(再教育)にも、日本精神神経学会が力を発揮してほしい。
【向精神薬等の過量服薬を背景とする自殺について】
障精発0624第2号
平成22年6月24日
平成22年6月24日
(社)日本医師会 会長 | 殿 | ||
(社)日本精神科病院協会 会長 | |||
(社)日本精神神経科診療所協会 会長 | |||
(社)日本自治体病院協議会 会長 | |||
(社)日本総合病院精神医学会 理事長 | |||
精神医学講座担当者会議 会長 | |||
国立精神医療施設長協議会 会長 | |||
(社)日本精神神経学会 理事長 |
厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部精神・障害保健課長
平素より精神保健福祉行政の推進にご協力を賜り、ありがとうございます。
また、自殺者が毎年3万人を超える高い水準で推移しているなか、救急医療機関や一般の医療機関においては、うつ病等の精神疾患の患者を発見し適切に専門医療機関に紹介するとともに、精神科医療機関においても医療の一層の質の向上を図るなど、自殺者を減らすための対策にご尽力を賜っておりますことに、御礼申し上げます。
さて、最近の厚生労働科学研究において、精神科に受診していた自殺者が、自殺時に向精神薬その他の精神疾患の治療薬(以下、「向精神薬等」という。)の過量服薬を行っていた例(薬物が直接の死因ではない場合を含む)が多くみられるという結果が出ております。また、最近の報道にもみられるように、向精神薬等の適切な処方について国民の関心が高まっていること等も踏まえ、自殺念慮等を適切に評価したうえで、自殺傾向が認められる患者に向精神薬等を処方する場合には、個々の患者の状況を踏まえて、投与日数や投与量に注意を払うなど、一層の配慮を行っていただくよう、貴会員に周知方お願い申し上げます。
【ベゲタミン(Vegetamin)】
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベゲタミン(Vegetamin)とは、抗精神病薬の成分クロルプロマジンと、バルビツール酸系のフェノバルビタール、抗ヒスタミン作用のあるプロメタジンを含む合剤である[1]。塩野義製薬から1957年から2016年12月31日まで販売された。ベゲタミンは同社の登録商標(第5234290号)である。処方箋医薬品であり、世界でも日本でのみ流通していた[1]。劇薬、習慣性医薬品、麻薬及び向精神薬取締法における第三種向精神薬の指定があった。
ベゲタミンの薬効分類名は精神神経用剤で、適応は各種の精神障害の鎮静催眠に用いられる。フェノバルビタールは、過量投薬のリスクが高く、治療薬物モニタリングが必要である[2]。バルビツール酸系は薬物の離脱時の痙攣大発作に注意が必要である[3]。
2005年から2010年までの5年間でも、不審死からのベゲタミンの成分3種の検出が増加しており[4]、オーバードース時に致死性の高い薬の2位の薬だと同定されていた[5]。ベゲタミンは外来患者には用いるべきではない[6]、極力処方を回避すべき[7]、いかなる場合にも処方すべきではない医薬品[8]、飲む拘束衣[1]と言われていた。
歴史
ベゲタミンの成分の一つであるフェノバルビタールは、20世紀初頭に合成されたバルビツール酸系薬である。1940年代にもパリのローヌプーランは、H1受容体の拮抗薬であるフェノチアジン系薬物が、バルビツール酸系の作用を増強したり、体温制御を欠損させ低体温化をもたらすといった生理作用を研究した[9]。
第二次世界大戦後には、フランスの外科医アンリ・ラボリは、麻酔科医のユグナーと共に、遮断カクテル(カクテル・リティック)を用い、手術後ショック反応を減らす目的で、バルビツール酸系を増強する研究を行っており、フェノチアジン系のプロメタジンを加えた時、いい反応を得た[9]。
そこでラボリは、ローヌプーランに問い合わせ、フェノチアジン系のRP4560(後にクロルプロマジンと命名される)という化合物があるとの返答を得て、そしてクロルプロマジンを用い、麻酔薬とみなした[9]。遮断カクテルの一例は、クロルプロマジン、プロメタジン、メペリドンといった組み合わせであった[10]。
ベゲタミン自体は、1957年(昭和32年)、広島静養院の松岡龍三郎により創製されたとされている[11]。なお日本国外では全く販売されていない。ベゲタミンはラボリの遮断カクテルに類似し、各成分が効果を増強しあう[5]。
ラボリの研究のすぐ後に、ジャン・ドレーらは、クロルプロマジン単剤の投与で、患者を静穏化することを発見した[12]。バルビツール酸系は、依存を形成しやすい上、治療域と毒性域が近く、過剰摂取時に致命的となりえるため、現在では、より依存が形成しにくく、安全なベンゾジアゼピン系に置き換えられた[3]。
特に2010年代に入り、後述するように、乱用や死亡の点から問題視されていた。ナショナルデータベースの処方の分析から、2011年でも、ベゲタミンは入院患者の約15%、外来患者の約8%に処方されており、20代の患者に限っても6.4%に処方されていた[13]
ベゲタミンA・Bが、伴に2016年(平成28年)12月31日をもって、供給停止となることが塩野義製薬から発表された[1]。日本精神神経学会から「薬物乱用防止の観点からの販売中止」の要請を受けたことによる[14]。
薬理作用
脳の中枢に直接作用し、催眠鎮静作用を現す。
ベゲタミンに含まれているクロルプロマジンは、α1受容体に親和性を持ち、この受容体を遮断するため強い鎮静作用を示す。
フェノバルビタールは、バルビツレート結合部位-ベンゾジアゼピン結合部位-Cl-チャネルと高分子複合体を形成するGABAA受容体に結合し、Cl1チャネルの開口時間を延長することで、GABAの抑制作用を増大させ神経細胞の興奮を抑制し、催眠作用を示す。
なお、プロメタジンは抗ムスカリンM1受容体遮断作用により抗パーキン作用を併せ持ち、クロルプロマジンの副作用であるパーキンソン症状を抑える働きを併せ持つ。しかしこのような併用は避けることが推奨されている[15]
適応
2010年代の位置付け
後述する死亡の危険性の経緯に加え、飲む拘束衣と言われ[1]、上述の通り、多くの症例を比較的安全にコントロールできる薬剤が登場してきたことから、医師・薬剤師向けの処方箋医薬品に関する書籍にも「本薬の投与は極力控える」と記述されている[17]。
副作用
一般的に多いのは服用後のめまい、ふらつき、注意力の低下、翌日への持ち越しなどである。
過剰摂取によって救急搬送された676名のデータの解析から、ベゲタミンを過剰摂取した場合、4日以上の集中治療室への入室が20%、誤嚥性肺炎の発症が29%と他の薬よりも突出していたことが判明している[19]。
死亡の危険性に関して
2005年から2010年まででも、不審死から、ベゲタミンの成分3種の検出が突出していることが報告された[4]。これは処方割合が多いからということではなく、2016年には、110種類の精神科の薬を過剰摂取した日本のデータから、過剰摂取時に致死性の高い薬の2位の薬だと同定され、3位の薬よりも、8.5倍の死亡リスクを持っていた[5]。
【01抗精神病薬】
抗精神病薬(Antipsychotics)は、広義の向精神薬の一種で、主に統合失調症や躁状態の治療に承認されている精神科の薬である[1][2]。過去には、神経遮断薬(Neuroleptics)[3]、あるいはメジャートランキライザー(Major tranquilizers)とも呼ばれ、1950年代には単にトランキライザーと呼ばれた。薬事法における劇薬に指定されるものが多い。抗精神病薬は、それ以外にも幅広い精神障害に使用される。
抗精神病薬は大きく2分類することができ、古い定型抗精神病薬と、新世代型の非定型抗精神病薬がある。非定型抗精神病薬は、双極性障害のうつ状態やうつ病にも適応がある薬がある。非定型抗精神病薬は、従来の定型抗精神病薬と比較してドーパミンD2受容体拮抗作用に加えてセロトニン5HT2A受容体拮抗作用を有したり、「緩い」ドーパミンD2受容体拮抗作用を有するなどの特徴をもった薬剤である。非定型抗精神病薬は、錐体外路症状、口が渇く、便秘といった副作用が少なく、統合失調症の陰性症状にも効果が認められる場合があるとされる。しかし#定型対非定型節に見られるように、大規模な試験による分析によれば、非定型抗精神病薬が定型抗精神病薬よりも優れているという根拠は乏しい。
副作用として、口渇、便秘、無意識的に身体が動く錐体外路症状や、肥満といった代謝の異常、母乳が出るといった高プロラクチン血症などがある。代謝の異常は、特に非定型抗精神病薬に特徴的である。抗精神病薬を服用している患者の代謝のチェックが日常的に適切に行われていないことが多く、約90%の患者が1つ以上の代謝性の危険因子を持ち、約30%がメタボリックシンドロームである[4]。さらに抗精神病薬の使用は高い無職率の原因となっている[5]。また服薬を中断する場合#離脱症状が生じる可能性がある。#有効性節以下で示されるが、効果がなかったり副作用のため服薬の中止が多い薬剤である。
抗精神病薬の過剰処方が問題となっている。投与量の増大に伴う治療効果は頭打ちになるが、副作用発現率は上昇していくため、世界保健機関および英米の診療ガイドラインでは単剤療法を推奨している[1]。日本でも2010年に、抗精神病薬の種類が2種類以下である場合に診療報酬が有利になる改定が行われた[6]。厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームが「統合失調症に対する抗精神病薬多剤処方の是正に関するガイドライン」の策定を計画しており[7]、2013年10月にSCAP法という減薬ガイドラインが公開された[8]。抗精神病薬の大量処方からの減量は、過感受性精神病という離脱症状による精神症状の悪化を引き起こす可能性があり注意が必要である[9]。
抗精神病薬の使用は脳の容積を減少させるかについてはさらなる研究を要する[10]。抗精神病薬の使用は若年認知症発症の危険因子である[11]。
統合失調症に用いるのが典型的な用途である[1]。抗精神病薬は、ドーパミン拮抗薬(ドーパミン・アンタゴニスト)で、主な作用は脳内の神経伝達物質であるドーパミンの遮断である。主に、中脳辺縁系のドーパミン作動性ニューロンのドーパミンD2受容体を遮断する。そのことによって、妄想や幻覚といった精神症状を軽減させる。PET(ポジトロン断層法)での研究から、高プロラクチン血症や錐体外路などの副作用が生じるよりも少ない量で有効な反応がみられることが明らかになっている[12]。
単に適応が認められていないばかりでなく、小児や高齢者では死亡リスクを高めることが実証されているために、適応外使用の違法なマーケティングに対し、非定型抗精神病薬のエビリファイ(アリピプラゾール)、ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン)、リスパダール(リスペリドン)と罰金の史上最高額を塗り替えている[13]。
いずれにせよ、各々の薬剤の特徴を考え、標的症状の性質と照らし合わせながらエビデンスに基づいた薬剤使用が望まれる。また、いたずらな多剤併用は避け、可能な限り単剤投与を心がけるべきであり、WHOガイドラインでも「一度に1種類の抗精神病薬を処方する」という立場である[1]。
WHOのガイドラインでは、急性精神病の管理に抗精神病薬の治療を開始するとしている[1]。NICEガイドラインでは、統合失調症の治療第一選択肢は抗精神病薬および心理療法の併用である[14]。しかしプライマリケア医は、専門医の確定診断が無い限り、初回発症の段階で抗精神病薬を処方してはならないともしている[15]。
またNICEは発症防止、予防を目的とした抗精神病薬の投与は行ってはならないとも述べている[16]。
WHOガイドラインでは、双極性障害の急性躁エピソードの治療選択肢のひとつとして抗精神病薬が挙げられている[2]。抗精神病薬の処方を中断する場合は、最低4週間かけ徐々に減薬する必要がある[17]。
認知症患者のBPSD管理に用いられる。処方は強い精神病症状、暴力、攻撃性、行動障害の症状に限り、正しい利用に努め、低用量にて副作用を監視しながら慎重に投与すべきである[18][19]。
NICEの2006年ガイドラインは、BPSDに対して薬物介入を第一選択肢とするのは、深刻な苦痛または緊急性のある自害・他害リスクのある場合に限らなければならないとしている[18]。
脳の興奮状態を抑制させる作用を利用して、抗不安薬では取り除けないような強度の不安や極度のうつ状態、不眠に対する対処薬としても利用される場合もある。また、ドーパミン遮断作用を応用し、嘔気・嘔吐などの消化器症状や吃逆の対症薬として利用される場合もある。
アメリカ精神医学会(APA)は成人の不眠症に対し、抗精神病薬を継続的にファーストライン治療としてはならないと勧告している[20]。NICEは不安障害に対し、抗精神病薬は特別の事情(specifically indicated)を除き処方してはならないとし、かつルーチン処方を禁じている[21]。
抗精神病薬は様々な副作用に結びついている。有害事象が原因で多くの人々(対照臨床試験で約3分の2)が服薬を中止することは、よく認識されている[22]。
ドーパミンD2受容体遮断作用による錐体外路反応は以下のようなものを含む、急性ジストニア、アカシジア、パーキンソン症候群(硬直と振戦)、遅発性ジスキネジア、頻脈、低血圧、勃起不全、傾眠、発作、強烈な夢あるいは悪夢、高プロラクチン血症[23][1]。高プロラクチン血症は、無月経、乳汁分泌、陰萎などを含む。
ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断作用には、便秘、眼のかすみ、口渇などが挙げられる。ヒスタミンH1受容体遮断作用などによる眠気、鎮静、体重増加などが挙げられる。α1アドレナリン受容体遮断作用による低血圧、めまい、射精障害、おそらくは中枢における過度のドーパミン抑制によって誘起されると言われている悪性症候群などがある。
また特に非定型抗精神病薬においては体重増加、糖尿病という副作用が見られることがある。非定型抗精神病薬の服薬にあたっては、定期的な血糖値検査が必要とされる。
抗精神病薬の副作用はいくつかの異なる薬によって管理することができる。例えば、抗コリン薬は、抗精神病薬による運動性の副作用を軽減するのに用いられる。[24]副作用の一部は、薬が長期間用いられた場合にのみ生じる。
精神病のない「健常」人における抗精神病薬の投与は、いわゆる統合失調症の「薬原性陰性症状」(例えば情緒と意欲の問題)を生じさせる[25]。
いわゆる錐体外路症状(EPS)と言われるものである[1]。パーキンソン症候群、不随意運動としてアカシジア、ジストニア、ジスキネジアが有名である[1]。命にかかわる重篤な副作用としては悪性症候群が知られている[1]。内服後、どの程度の時間経過で出現するかによって早発症状、遅発症状に分けられる。遅発性が薬物の減量で改善しないこともあり治療に工夫が必要となる。また、高プロラクチン血症による女性化乳房も気になりやすい副作用である。
遅発性ジストニア(tardive dystonia, TDt)
異常姿勢が一般的である。眼球回転発作、ピサ症候群、メージュ症候群、書痙といった亜型も知られている。感覚トリックといわれ、自分では拘縮で動かせないが他動的には動かせるなど特徴的な不随意運動である。抗コリン薬、筋緊張治療薬、ビタミンE、抗てんかん薬を用いることがある。非定型抗精神病薬で治療することもある。
(後略)
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