新聞編集2019.2~3

【目次】
【01入所者がおやつ詰まらせ死亡、介助の准看護師に有罪判決】朝日新聞3/25(月) 13:49配信
【02有力とされた「アルツハイマー病治療薬」の失敗 苦戦が続く認知症薬の開発、今後の見通しは】
【03介護施設 事故死1547人 転倒・誤薬など 17年度、厚労省初調査】東京新聞 2019年3月15日 朝刊
【04障害者の逸失利益認める、東京地裁判決 19歳までの健常者と同基準2200万円】東京新聞2019年3月23日 朝刊
【05訪問介護の半数が被害 ハラスメント、厚労省が初調査】東京新聞2019年3月25日 朝刊
【06公立福生病院「透析中止」の選択肢 腎臓病男性、ブログで発信「未来の希望まで奪うな」】2019年3月9日東京 夕刊
【07人工血管メーカー、ゴア社「直ちに人工血管20本を供給」】3/12(火) 7:48配信ハンギョレ新聞
【08精神科、身体拘束1万2000人 17年度最多更新 6割は高齢者】:2019年2月17日 東京朝刊
【09社説:精神科の拘束 医療の在り方見直しを】京都新聞19.2.18
【10厚労省、ADHD新薬を承認へ=覚せい剤原料含有「厳重管理を」】時事通信2/21(木) 22:43配信
【11透析中止の女性、死の前日に「撤回したいな」 SOSか、夫にスマホでメールも】
毎日19.3.7
【12入院後に透析中止撤回 死亡女性意向 公立福生病院も把握】2019年3月10日 東京朝刊
【13汚物分離装置の条件案公表 紙おむつ処理で国交省】
【14精神科、身体拘束1万2000人 17年度最多更新 6割は高齢者】:2019年2月17日 東京朝刊
【15精神科病院調査、非開示相次ぐ 自治体、閉鎖性助長の懸念】共同19.2.19
【16「不平等を見過ごせない人」はうつになりやすい?】(毎日19.2.17)
【17発達障害の一つ「ASD」の人が見る世界って? 「コントラストが強い」「たくさんの点」VRで体験】with news3/29(金) 7:00配信
【18新生児死亡事故、遺族への対応で精神的負担 うつとの因果関係認める 那覇地裁、看護師の労災認定3/27(水) 10:19配信

【19親族重視へと回帰する成年後見制度の危うさ、身内は本当に信用できるか】:ダイヤモンド3/27(水) 6:01配信
【20大人の発達障害 4割超「うつ病」発症】 毎日新聞調査3/26(火) 20:03配信
【本文】
【01入所者がおやつ詰まらせ死亡、介助の准看護師に有罪判決】朝日新聞3/25(月) 13:49配信
 2013年12月、長野県安曇野市の特別養護老人ホームで、女性入所者(当時85)がおやつをのどに詰まらせ、1カ月後に死亡したとされる事件があった。長野地裁松本支部(野沢晃一裁判長)は25日、食事の介助中に女性に十分な注意を払わなかったなどとして、業務上過失致死の罪に問われた長野県松本市の准看護師山口けさえ被告(58)に、求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡した。
  起訴状などによると、山口被告は同年12月12日午後、同ホームの食堂で女性におやつのドーナツを配った。検察側は女性には口に食べ物を詰め込む癖があったのに、被告は他の利用者に気を取られ、女性への十分な注意を怠ったほか、窒息などに備えておやつがゼリーに変更されていたのに、その確認も怠ったなどと主張した。
  一方、被告側は女性は脳梗塞で死亡したと考えるのが最も合理的で、ドーナツによる窒息が原因で死亡したとの検察側の主張を否定。その上で女性の食べ物を飲み込む力には問題がなく、食事の様子を注視しないといけない状況ではなかった▽ゼリーへの変更は女性が食べ物を吐いてしまうことが理由で窒息対策ではなく、確認の義務はなかった、などとして無罪を求めていた。
  食事介助中の出来事を罪に問うことは介護現場での萎縮を招くとして、裁判は介護関係者の強い関心を呼んだ。無罪を求める約44万5500筆の署名が裁判所に提出された。弁護団も結成され、公判はこの日の判決も含めて23回に及んだ。(佐藤靖)
【02有力とされた「アルツハイマー病治療薬」の失敗 苦戦が続く認知症薬の開発、今後の見通しは】| 医療の「翻訳家」 市川衛3/24(日) 8:54
 3月21日、大手製薬企業「バイオジェン」と「エーザイ」は、開発中のアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」の臨床試験を中止すると発表しました。(プレスリリース)
 認知症の最大の原因となっているアルツハイマー病には、現在のところ、病気の進行そのものを抑える「根本治療薬」は開発されていません。
 アデュカヌマブは「こんどこそ第1号になる」と世界中で注目されていたものでした。
 というのも、世界で最も権威のある専門誌のひとつ「Nature」に、効果を期待できるデータが報告されていたからです。
 アルツハイマー病の原因として疑われているのがアミロイドベータ(Aβ)という物質です。この物質が脳にたまると、神経が傷つき、脳の働きを衰えさせるのではないか?と考えられています(アミロイドベータ仮説)。
 2016年にNatureに報告された研究では、アデュカヌマブを使うと、脳にたまったアミロイドベータが減り、しかも、薬の量を増やせば増やすほど減り方が大きいことが示されました。
 さらに投与を受けた人の中には、アルツハイマー病によるものと思われる症状(認知機能テストの点数の低下など)の進行が抑えられた人がいました。
 この結果を受けてバイオジェン社は、治療薬としての承認を目指し、多くの人に使って効果を検証する試験を行っていたのですが、そのデータは予想に反して「十分な効果は見込めそうにない」ことを示しており、試験の中止を決めたのです。
「アミロイドベータ仮説」は誤りなのか?深まる疑い
 実はここ5年ほど、アルツハイマー病治療薬の開発を目指した試みは「連戦連敗」を続けています。
 世界の大手製薬企業が巨額の予算をかけて薬剤を開発し、動物や少人数の試験で期待できるような結果が表れ、「こんどこそ」とチャレンジした臨床試験で「効果なし」という結果に終わる。そんなことが相次いでいるのです。
 今回のアデュカヌマブの試験中止は「もうひとつ敗戦が加わっただけ」ともいえるかもしれません。しかし、製薬業界に与えるショックは大きいものがあるだろうと想像できます。
 これまで繰り返された失敗に関しては、様々な理由が提唱されています。有力なものとして「薬は早めに投与しなければ効果が出ないのでは?」というものがあります。
  そこでアデュカヌマブの臨床試験は、早期の人や、まだアルツハイマー病とは診断されていないMCI(軽度認知障害)の人を対象として選んでおり、効果を示しやすいと考えられていました。
 さらに2017年には、日本に本社を置く製薬企業「エーザイ」が、開発費用をバイオジェン社と分担することを発表していました。エーザイといえば世界初の抗認知症薬「アリセプト」を開発し、現在もアルツハイマー病の根本治療薬の研究を積極的に進めていることで知られます。
 そのエーザイが、わざわざ開発費を分担するリスクをとったわけですから、これは成功を確信するようなデータをつかんだのではないか?と期待が高まっていました。実際、エーザイの内藤晴夫CEOは2017年のプレスリリースの中で「Aβ仮説に基づく創薬への確信を深めています」と自信を示していました。
 成功を期待できる状況が積み重なっていたなかでの「失敗」のニュース。驚きと失望の思いが広がり、開発を進めていたバイオジェンとエーザイの株価は大幅に下落しました。
認知症の根本治療薬 今後の開発の見込みは
 実はエーザイは、アデュカヌマブの試験中止の発表の翌日、「BAN2401」という別のアルツハイマー病薬の臨床試験の開始を発表しており、積極的な開発を続ける方針を明確にしています。アデュカヌマブの試験中止は、もっと有望な薬候補に予算を集中するためなのかもしれません。
 しかしここ5年ほどだけを見ても、ファイザーやメルク、イーライリリーなど世界の名だたる製薬企業が、根本治療薬の臨床試験に失敗しています。今度こそ、今度こそと繰り返される臨床試験が失敗するたびに、「有望株」の数が減ってきています。
 アミロイドベータがアルツハイマー病の原因であるとする「アミロイドベータ仮説」が提唱されたのは、2000年代初頭のことです。そこから20年近く、この仮説に基づいて根本治療薬を開発しようとする試みは世界各国で行われ、そして残念なことに、ことごとく失敗に終わってきました。
 いま世界中で、「アミロイドベータ仮説」が間違っていたのではないか?という疑いが広がりつつあります。そもそもアミロイドベータが「主要な原因ではなかった」とすれば、薬の失敗が相次ぐことの説明がつくからです。
 しかしアミロイドベータ仮説の否定は、長年の研究の蓄積を根底から覆すものになりかねず、簡単に議論できるものではありません。現在もアミロイドベータ仮説に基づく研究は世界中で行われ、多額の研究費が投じられています。
 いわば「なかなか先の見えない森の中を、もはや引き返すに引き返せず、ただ前に向かって進むしかない」状況といえるかもしれません。
 「認知症」にどう向き合うか 変わり続けるパラダイム
 認知症を抱える人の増加が問題化して以来、世界中で「根本治療薬」を求める切実な声があげられ続けています。それに応えようと、多くの研究者たちがいまも真摯な努力を続けています。アミロイドベータ仮説以外のメカニズムをもつ薬の開発も始まっています。
 個人的には将来、そうした努力が実を結び、アルツハイマー病を中心とした認知症の人を減らせる治療法が出てくると考えています。
 ただ、近年報告される研究成果を見ると、もし薬の開発が成功したとしても、その効果には「限界」があると予測されます。根本治療薬と言った場合に通常イメージされる「すっかり治す」というようなものではなく、「病気の進行を、何割かゆるやかにできる」というものになりそうです。
 つまり、もし「根本治療薬」ができたとしても、それさえあれば認知症はすっかり解決!とはいかない状況が見えてきたということです。
 今回の開発中止のニュースを目にして、私は15年ほど前に、ある医療関係者と交わした会話を思い出しました。
 当時、アミロイドベータ仮説に基づく研究が進み、次々と根本治療薬の候補が開発され、いくつもの臨床試験が世界中で始められつつありました。
 「アミロイドベータ仮説が出てくるまで、老年期のアルツハイマー病は、病気というより『老化現象の一種』だと思っていた。治療するなんて『老化を食い止める』みたいな、ありえないことだという気持ちだったよ。
 でも、時代は変わった。認知症は老化現象ではなく病気、しかも『完治できる病気』になっていくんだ。」
 私は大きくうなずき、医学の進歩のすばらしさに胸を躍らせたのを覚えています。
 以前は「痴呆(ちほう)」とも呼ばれていた認知症。いちど発症すれば手立てはなく、絶望だけが待っていると恐れられていました。アミロイドベータ仮説の登場により、認知症のイメージは「撲滅しうる病」に変わり、希望が生まれたといえるかもしれません。
 しかしそれから15年、当時多くの関係者が夢見た未来予想図は、いまだに実現していません。
 その一方で認知症を抱える当事者からは、認知症を予防や治療によって「撲滅しうる病」とする考え方が強まりすぎると、当事者を社会から「見えない存在」として排除する空気が生まれかねない、という危惧が指摘されるようになっています。
 認知症は「病気」ではない 当事者から上げられた声
 では、どうしていけば良いのか。
 いま世界的に進んでいるのは、認知症の「撲滅」を目指すのではなく、どうしたら「認知症になってからも安心して暮らせる社会」を作れるのか?について考えようとする取り組みです。
 アルツハイマー病治療薬・フランスで医療保険から外れる 変わる認知症治療の潮流とは
 介護の方法や支援のやり方を工夫し、認知症によって起きる様々な状態の変化に対応できる環境を作ることで、本人や支える人の生活の質を維持しつつ、社会として持続可能な仕組みを整えようとする取り組みが国内海外を問わず進められつつあります。
 将来的に開発されるだろう「根本治療薬」も、「認知症に対応できる社会」を作るための手段のひとつとして、必要な人に必要なタイミングで使われる、というものになっていくのかもしれません。
 「対応不能な絶望」から「撲滅しうる病」へ、そして「対応可能な状態の変化」へと、認知症へのイメージは、この20年ほどでも目まぐるしく変わっています。
 それは、医療の進歩による「長命化」を達成した人類が、それゆえに直面することになった「認知症」という状態への本質的な理解を深め、受け入れようとする過程そのものなのかもしれません。
<市川衛>(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/医療ジャーナリスト/メディカルジャーナリズム勉強会代表/京都大学医学部非常勤講師。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。【主な作品】(テレビ)NHKスペシャル「腰痛 治療革命」「医療ビッグデータ」ためしてガッテン「認知症!介護の新技」など。(書籍)「脳がよみがえる・脳卒中リハビリ革命(主婦と生活社)」「誤解だらけの認知症(技術評論社)」など。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。
【03介護施設 事故死1547人 転倒・誤薬など 17年度、厚労省初調査】東京新聞 2019年3月15日 朝刊
 厚生労働省は十四日、全国の特別養護老人ホーム(特養)と老人保健施設(老健)で、二〇一七年度の一年間に事故で死亡した入所者が少なくとも計千五百四十七人いたとの調査結果の速報値を公表した。これまで国は介護施設での事故の件数を把握しておらず、初の全国調査。都道府県別の内訳や詳細な内容は明らかにしていない。
 介護施設から全国の市区町村に報告があった件数をまとめ、十四日の有識者会議で示した。ただ、回収率は半分強にとどまる。報告の基準も明確化されておらず、施設によって報告するかどうかの判断にばらつきがあるため、実際にはもっと多いとみられる。厚労省は今後、さらに内容を精査し、再発防止策に役立てる。
 調査は昨年十月、市区町村を対象に実施。転倒や誤嚥(ごえん)、誤薬などの事故件数を調べた。死亡事故の内訳は特養が計七百七十二施設で千百十七人、老健が二百七十五施設で四百三十人だった。
 昨年六月時点で特養は全国に約一万百カ所あり、入所者は約六十万人。老健は約四千三百カ所で約三十六万人。
 入所者がけがをするなど事故が起きた場合、施設は国の省令に基づき、市区町村や入所者の家族に報告する義務がある。だが、自治体が国に報告する必要はないため、国は事故件数を集計していなかった。
【04障害者の逸失利益認める、東京地裁判決 19歳までの健常者と同基準2200万円】東京新聞2019年3月23日 朝刊
 二〇一五年に東京都八王子市の福祉施設から行方不明となり遺体で見つかった松沢和真さん=当時(15)=の両親が、原因は安全管理を怠った施設側にあるとして施設を運営する社会福祉法人藤倉学園(東京)に約一億一千四百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十二日、知的障害のあった松沢さんが将来得たはずの収入「逸失利益」約二千二百万円を含む計約五千二百万円の支払いを施設側に命じた。 (蜘手美鶴)
 判決は、健常者の男女の十九歳までの平均賃金を根拠に逸失利益を算出。両親が求めた男性の全年齢の平均賃金ではなかったため、請求額の約七千四百万円には及ばなかったが、弁護団は「障害者の逸失利益が平均賃金の十割で算出されたのは初めてとみられ、画期的な判決だ」と評価した。
 施設側は行方不明になったことへの責任は認めていたが、知的障害を理由に逸失利益は「ゼロ」としていた。
 田中秀幸裁判長は、健常者と同様の逸失利益の算出を認めた点について「(松沢さんは)特定の分野や範囲に限っては、高い集中力をもって健常者よりも優れた能力を発揮する可能性があり、一般就労を前提とした平均賃金を得る蓋然(がいぜん)性はあった」と説明。
 一方で、「(障害者と健常者の間に)現存する就労格差や賃金格差は無視できない」として、男性の全年齢の平均賃金は基準としなかった。
 判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した父の正美さん(62)は「私たちの思いをくみ取ってくれた判決」と評価。母敬子さんは「今後裁判をする同じ境遇の人がいるなら、少しは道を切り開けたのかなと思う」と話した。弁護団の清水建夫弁護士は「和真君の可能性を高く評価してくれ、非常に温かみのある判決だ」と語った。
 藤倉学園の橋本進常務理事は「松沢和真さんのご冥福をお祈りするばかりです」とコメントを発表した。
【05訪問介護の半数が被害 ハラスメント、厚労省が初調査】東京新聞2019年3月25日 朝刊
 介護現場で働く人を対象にした厚生労働省の委託調査で、サービス利用者からセクハラや身体・精神的暴力のハラスメント被害を受けた経験がある人は、訪問介護職員の半数に上ることが二十四日、分かった。介護現場のハラスメント実態に関し厚労省が大規模な調査を実施したのは初めて。利用者の家族からの被害も17%の職員が経験しており、被害の深刻さが浮き彫りとなった。
 訪問介護は女性ヘルパーが一人で利用者宅を訪ねることが多く、施設に比べ密室性が高い。人手不足で待遇改善が求められる介護現場にとってハラスメント対策は急務だ。事業者向けマニュアルを近くまとめ、厚労省は現場への周知を図る。
 調査は民間シンクタンクに委託し今年二月に実施。訪問介護のほかデイサービス、施設など全国の二千百五十五事業所と職員一万百十二人が回答した。ハラスメントの類型を(1)不必要な体への接触や性的発言などのセクハラ(2)物を投げつけるといった身体的暴力(3)攻撃的な態度や大声、人格・能力の否定などの精神的暴力-に分けて集計、分析した。
 回答数が二千五百三十二人と最も多かった訪問介護では、50%の職員がこれまでに利用者からハラスメントを受けていた。昨年の被害を類型別(複数回答)に見ると、精神的暴力が81%で最も多く、身体的暴力は42%、セクハラが37%。家族からのハラスメントでも精神的暴力が最多だった。
 ハラスメントが発生する原因については、43%が「利用者・家族がサービスの範囲を理解していない」と答え、最も多かった。「職員の仕事の意義や価値が低くみられている」(39%)との回答もあった。
 この三年間でハラスメントが増えたか減ったかを尋ねると、事業所管理者の回答は「減っている」の方が多い一方、職員側は「増えている」の方が多く、認識の違いが鮮明となった。
【06公立福生病院「透析中止」の選択肢 腎臓病男性、ブログで発信「未来の希望まで奪うな」】2019年3月9日東京 夕刊
「医療の発展で健常者としてまた生活できる日を夢見て、つらい人工透析に耐えているのに、未来の希望まで奪うんじゃねぇ」。東京都の公立福生病院の医師が、腎臓病の女性患者に「死」の選択肢を示していた問題に対し、北九州市の山本大輔さん(34)が自身のブログ上で憤りの声を上げた。
 山本さん自身も腎臓病を患い、二〇〇四年に透析治療を始めた。週三日、大きな針を腕に刺し、五時間を病院のベッドの上で過ごす。心身にかかる負担は大きく、うつ病や貧血、不安定な血圧、不眠症などに悩まされてきた。
 二十代のとき、透析を拒み、命を危険にさらしたことも。通院先の病院がある地元を離れ、青森まで車で向かった。
 自殺を踏みとどまれたのは「生きてほしい」と言ってくれた友人の言葉だった。担当の医師は、いつ戻ってきても透析治療ができるように二十四時間態勢で待っていてくれた。
 透析による時間的な制約から仕事に就けない時期も続いた。現在は「だいちゃん.com」の名前でブログを開設し、さまざまな社会的事象について自身の考えを執筆し、広告収入を得られるようになった。
 今回の問題については「患者を自殺に誘導した悪意のある行為だと感じる。患者を説得し、人工透析をしながらでも楽しく生きられる方法を寄り添って考えるべきだった」と思いをつづった。
 病院に行きたくないと思うときは今もある。取材に対し「(公立福生病院の)医師が担当だったら、私も死んでいたと思う」と語り、「医師がすべきなのは生きることを説得することだ」と言葉に力を込めた
【07人工血管メーカー、ゴア社「直ちに人工血管20本を供給」】3/12(火) 7:48配信ハンギョレ新聞
緊急治療が必要な患者ら、近く手術受けられる見込み 完全供給は今後、政府および患者団体と協議 患者団体、歓迎しながらも全ての材料の供給を要求 政府、医療関連多国籍企業への共同対応策を模索
  多国籍医療企業のゴア社が11日、小児心臓疾患の手術に必要な人工血管20個を直ちに供給すると発表した。これによって、先天性心臓病を患い、治療が急がれるにもかかわらず、人工血管がなくて手術が無期限延期されてきた子どもたちが、近く手術を受けられる見込みだ。
 患者団体と政府は歓迎の意を示しながらも、再供給の具体的な時期と手術に必要なあらゆる種類の製品が供給されるかなどに神経を尖らせている。子どもの先天性心臓疾患の手術に必要な人工血管などを供給してきたゴア社は、2017年9月に韓国から撤退しており、最近、病院があらかじめ確保しておいた人工血管の在庫が底をついたため、小児心臓疾患者が手術を受けられない状況に陥った。
 保健福祉部と食品医薬品安全処は同日、ゴア社が小児心臓手術に必ず必要な小児用人工血管20本を直ちに供給することにしたと発表した。これは保健当局が米国のゴア社本社を訪問するため、日程を協議する書簡にゴア社が答えたことで明らかになったという。ゴア社は、撤退以前のようにすべての治療材料を供給することについては、韓国政府との対話を通じて、できるだけ早期に解決するという立場を示している。食薬処は「(人工血管)20本の優先供給は、1週間から10日ほどかかる見込みだ」とし、「早ければ今週中に米国で全体供給について話し合う予定だが、医療界が要請した材料はすべて供給してもらう方向で協議を進める」と明らかにした。
 これに先立ち、ゴア社は同日午後、公式の立場文を発表し、「2017年に韓国市場における医療機器事業の終了を決定しており、その後、患者の家族や医療団体、政府関係者から、こうした決定の見直しを求める要請があった」としたうえで、「ゴア社だけが提供可能で、医療上必須とされるものの韓国市場では代替品のない医療機器については、制限的に再供給することについて積極的に検討している」と明らかにした。しかし、ゴア社は人工血管の再供給時期については具体的に言及せず、2017年に韓国市場から撤退した理由も明かさなかった。
 ゴア社は、子どもたちの心臓手術に必要な人工血管の種類と量を把握し、再供給に必要な韓国の規制要求事項を遵守できるよう、医師や患者弁護団体、政府関係者らと協議していることも明らかにした。これまで韓国の患者団体や医師らが必須だとして再供給を要請した各製品の種類について、ゴア社側は「一部の製品は、ほかのメーカーを通じて購入できる」という立場を示し、意見の隔たりがあった。
 政府と患者団体は歓迎の意を示しながらも、手術に必要な人工血管のすべての種類と量を供給してもらう方向で協議を進めるべきという立場だ。ちなみに、今回在庫が底をついた人工血管は、2016年の場合、50本が国内で使われた。福祉部の関係者は「米ゴア社本社との本格的な協議の前に良い知らせが届いた」と話した。アン・サンホ韓国先天性心臓病患友会代表は「先週末、電話でゴア社は子どもたちの心臓手術に必要な人工血管は供給するという立場を示した」とし、「当該種類の人工血管がなく、手術を受けられない子どもたちの問題は解決されるものとみられる」と話した。また、アン代表は「ただし、具体的な供給時期がまだ確定しておらず、これについて話し合っており、必要な人工血管の一部の種類については、国内の医療陣とゴア社との間に意見の隔たりがあるため、2017年撤退以前のように心臓手術に必要な人工血管などをすべて供給するよう要請している」と明らかにした。
 一方、ゴア社のように希少な医薬品や治療材料を独占生産・供給する多国籍医療企業の問題と関連し、パク・ヌンフ保健福祉部長官は同日、「2019年保健福祉部業務計画」を発表し、「5月の世界保健機関(WHO)総会で、この問題をアジェンダとして正式に提起する」と述べた。多国籍医療関連企業と政府との間で、価格や許可、審査などをめぐる対立を解消する解決策を国際的に模索するということだ。パク長官は「多国籍製薬会社や医療機器会社が、独占供給する製品をめぐり、独占・寡占の専横を極めている」とし、「独占製品の場合には、一国の力だけで対処するのが非常に難しく、他国政府との共同対処が必要だ」と述べた。
キム・ヤンジュン医療専門記者、ファン・イェラン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
【08精神科病院調査、非開示相次ぐ 自治体、閉鎖性助長の懸念】共同19.2.19
全国の精神科の医療機関を対象に患者の身体拘束の状況や入院期間などを調べている国の調査を巡り、従来は情報公開請求に対して病院ごとの調査結果を開示していた自治体の中で、一転して非開示や一部のみ開示とする例が相次いでいることが分かった。
  厚生労働省が自治体に出した通知や、開示に反対する病院団体の意向が影響したとみられる。患者団体からは「精神科病院の閉鎖性が進みかねない」との懸念が出ている。
  この調査は毎年6月末の状況を調べるため、厚労省が都道府県と政令指定都市を通じて実施。各地の市民団体が情報公開制度を使って病院ごとの調査結果の開示を受けていた。
【09社説:精神科の拘束 医療の在り方見直しを】京都新聞19.2.18
 精神科病院で手足をベッドにくくりつけるなどの身体拘束を受けた入院患者が、10年間で2倍近くに急増していることが厚生労働省の調査で分かった。
 2017年度の年次調査によると、全国で1万2千人強にのぼる。調査方法が変わったため単純比較はできないものの、03年度の5千人強から増加の一途だ。施錠された保護室に隔離された患者も1万3千人近くに増えている。
 本来は極めて限定的な場合だけに認められる身体拘束が、安易に行われている可能性がある。
 拘束は、患者がさらに精神的に不安定になる悪循環を招く。人権侵害の恐れにとどまらず、長期間の拘束によるエコノミークラス症候群などで死亡し、訴訟になるケースも起きている。
 問われているのは、日本の精神医療の在り方である。
 日本は人口当たりの精神科ベッド数が先進国で最多であり、必要がないのに長期入院を続ける「社会的入院」が生じやすいとされる。平均入院日数も、身体拘束の期間も突出して長い。
 諸外国では施設を脱して地域で暮らしながら治療する流れが一般的だ。イタリアのように精神科病院をなくした国もある。身体拘束が増えるのは逆行している。
 厚労省は「増加の原因は分析できていない。不要な拘束などをしないよう引き続き求めていく」としている。だが、実態を詳しく調査し、状況の改善に本腰を入れるべきではないか。
 拘束が適切かどうかを第三者が検証できる仕組みが求められる。「閉鎖的」と言われがちな日本の精神医療を見直し、透明化するきっかけとしてほしい。
 現場の人手不足が身体拘束の一因との声もある。一般病床と比べて少ない医師や看護師の配置を増やす必要がある。
 さらに気になるのは、患者に対する意識の問題だ。「(患者への対応のため)精神科医に拳銃を持たせてくれ」。昨年6月、日本精神科病院協会の会長が機関誌に、部下の医師のそんな発言を引用して載せていたことが問題となった。
 精神疾患はいつ、だれが発症してもおかしくない。認知症による入院も増えている。
 それなのに、日本では患者に対する差別意識が残り、精神医療の問題をタブー視して遠ざける感覚も根強いとされる。
 身体を拘束される人が増える社会は健全とはいえない。一人一人が関心を持ちたい。 (京都新聞 2019年02月18日掲載)
【10厚労省、ADHD新薬を承認へ=覚せい剤原料含有「厳重管理を」】時事通信2/21(木) 22:43配信
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会部会は21日、塩野義製薬が申請していた小児期の注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬「ビバンセカプセル」の国内製造販売の承認を了承した。
 近く正式承認される見通し。
  同社の申請後、含有される新有効成分の「リスデキサンフェタミンメシル酸塩」が覚せい剤原料(覚せい剤の原料になり得る物質)に指定されており、部会は厳重管理を承認条件とした。
  このため、同社は適正流通管理策をまとめ、部会の了承を得た。扱う医療機関や医師、患者、薬局、卸売り販売業者を統一システムに登録して一元管理し、登録者以外への納入を禁止。医師は、ADHDの治療経験などを確認して登録する。医師や弁護士らで組織する社外委員会が、登録の審査や取り消し、実施状況の確認などを行う。
  厚労省によると、ADHD治療薬が国内で承認されるのは4剤目。ビバンセカプセルは、他の治療薬の効果が不十分な場合にのみ使用する。脳内の神経伝達物質ノルアドレナリンとドーパミンの濃度を高め、ADHDの症状を改善すると考えられるという。 
【11透析中止の女性、死の前日に「撤回したいな」 SOSか、夫にスマホでメールも】
毎日19.3.7

「とうたすかかか」。スマートフォンに残されたメールの平仮名7文字は、助けを求める最後のSOSだったのか。公立福生病院(東京都福生市)で明るみに出た「死」の選択肢の提示。亡くなった腎臓病患者の女性(当時44歳)の夫(51)が毎日新聞の取材に胸中を明かした。
「(死亡から)半年過ぎてもダメ。何とか気持ちの整理はつけたつもりだけど、だいぶ引きずっている」。そう夫は明かす。同じ団地に住んでいた女性と知り合って約30年。結婚後は3人の子どもを2人で育てた。女性が人工透析治療を始めてからは医療機関への送り迎えなどで支えた。
昨年8月9日、病院から突然呼び出された。見せられたのは透析治療をやめる意思確認書。いっぺんに力が抜け、受け入れるしかなかった。「透析に疲れちゃったのかな……」。迷ったことは覚えているが、承諾した理由ははっきりしない。
死の前日(同15日)のことを悔やむ。夫によると、病室で女性は「(透析中止を)撤回したいな」と生きる意欲を見せた。「私からも外科医に頼んでみよう」。そう思って帰宅しようとしたところ腹部に痛みが走った。ストレスで胃に穴が開き、炎症を起こしていた。外科医に「透析できるようにしてください」と頼み、同じ病院で胃潰瘍の手術を受けた。翌16日、麻酔からさめると女性は既に冷たくなっていた。
「透析治療の中止は『死ね』と言っているようなものだ」と夫は言う。治療を再開しなかった外科医に対する不信感は消えない。「医者は人の命を救う存在だ。『治療が嫌だ』と(女性)本人が言っても、本当にそうなのか何回も確認すべきだと思う。意思確認書に一度サインしても、本人が『撤回したい』と言ったのだから、認めてほしかった」
今も胸を締め付けるのは、助けを求めたとみられる女性からの1通のメールだ。夫は手術の際、自分のスマホを病院に預かってもらった。退院して電源を入れるとメールが届いていた。「とうたすかかか」。死の当日(16日)の午前7時50分の発信。自分も病室で横たわっていた時刻だ。「とう」は「父ちゃん」の略で、夫の愛称だという。死の間際、「父ちゃん、たすけて」と打とうとしたのではないか――。
形見になった平仮名の7文字。「あの時すぐにメールを見ていれば、助けに行って、透析治療を受けられるようにしてあげたのに。今も生きててほしかった」【斎藤義彦】
◇都が立ち入り検査 「自己決定ゆがめられなかったか」など調査へ
 東京都医療安全課は6日午後、医療法に基づき公立福生病院を立ち入り検査した。同法は病院の設置許可や管理・運営を規定。都道府県知事などは必要があれば検査を実施し、カルテなどの資料を提出させる権限がある。
  同日午後3時40分ごろ、都医療安全課の職員数人が病院に入り、検査は午後6時20分ごろに終了した。
  医療法は、患者に対する正確で適切な情報提供を病院側に求めている。外科医らの行為について都は今後、▽標準的な医療に基づいて治療の選択肢が提示されたか▽適切でない情報で、死亡した女性の自己決定がゆがめられなかったか――などを調べるとみられる。
東京都医療安全課は6日午後、医療法に基づき公立福生病院を立ち入り検査した。同法は病院の設置許可や管理・運営を規定。都道府県知事などは必要があれば検査を実施し、カルテなどの資料を提出させる権限がある。
  同日午後3時40分ごろ、都医療安全課の職員数人が病院に入り、検査は午後6時20分ごろに終了した。
  医療法は、患者に対する正確で適切な情報提供を病院側に求めている。外科医らの行為について都は今後、▽標準的な医療に基づいて治療の選択肢が提示されたか▽適切でない情報で、死亡した女性の自己決定がゆがめられなかったか――などを調べるとみられる。
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【12入院後に透析中止撤回 死亡女性意向 公立福生病院も把握】2019年3月10日 朝刊
 福生市の公立福生病院で昨年八月、医師が腎臓病の女性=当時(44)=に人工透析治療を中止する選択肢を示していた問題で、女性が中止に同意する文書に署名した五日後に体調を崩して入院し、死亡前には一時、撤回意向と受け取れる発言をしていたことが九日、関係者への取材で分かった。この意向は病院側にも伝わっていた。
 関係者によると、女性を担当していた医師は容体が悪化した女性に、透析を再開するか、苦しさを和らげるかの選択肢を示し、女性は苦しさを和らげる方を選び、透析は再開されなかった。
 東京都や日本透析医学会は、女性が冷静な判断を下せる状態だったかどうかや選択肢の内容自体が適切だったか調査を進める。
 治療の中止や再開などの条件を示す透析医学会の提言は「患者や家族が治療方針に関する自己決定を変更した場合は透析を再開する」と定めている。
 この女性の治療中止に関しては、病院幹部の判断で倫理委員会が開かれていなかった。担当医師だけでなく、病院幹部も治療中止判断に関与していた。
 関係者によると、女性は昨年八月九日、長年透析を受けていた医療機関の紹介状を持って来院。透析に使う腕の血管の分路(シャント)が閉塞(へいそく)し、これまでの方法では透析が続けられない状態だった。
 担当医師は、女性に(1)首に管を入れる新たな手段で透析を続ける(2)透析を中止する-との選択肢を示し、中止すれば死に至ることを説明した。
 女性は中止に同意する文書に署名。その場には夫が同席していた。病院側は担当医師の他、病院のメディカルソーシャルワーカー、看護師がいた。
 女性は体調不良を訴え、同十四日に福生病院に入院した。同十六日午後五時すぎに死亡するまでの間に苦しさを訴え、透析再開を求める趣旨とも受け取れる発言をしたという。
【13汚物分離装置の条件案公表 紙おむつ処理で国交省】:東京2019年2月18日 18時15分
 国土交通省は18日、使用済み紙おむつから汚物を分離して下水に流す処理方法の実用化に向けて、薬品を使う分離装置が備えるべき条件案を公表した。繊維片などが混入しないようおむつの破砕を禁じ、下水管などの腐食を防ぐため排水の水質基準値を設定。下水道を管理する自治体に対しては、装置を導入した住民や高齢者施設へのルール周知を促す。
 分離装置の開発が遅れており、条件案は自治体による実証試験などを想定した暫定的な対応。意見公募を経て決定し、実用化のめどが付いた段階で条件を見直す方針だ。
【14精神科、身体拘束1万2000人 17年度最多更新 6割は高齢者】:2019年2月17日 東京朝刊
 精神科病院で手足をベッドにくくりつけるなどの身体拘束を受けた入院患者が、二〇一七年度に全国で一万二千人強に上り、六割は高齢者だったことが厚生労働省の年次調査で分かった。施錠された保護室に隔離された患者も一万三千人近くいた。一七年度から調査方法が変わったため、過去と単純には比較できないが、いずれも最多を更新した。
 精神保健福祉法で拘束や隔離が認められるのは、本人や他人を傷つける恐れなどがあり、指定医が「ほかに方法がない」と判断した場合に限られる。患者団体や専門家からは「実際には安易に行われ、長時間の拘束で死亡する例も出ている。人権侵害の恐れがある」との指摘が出ている。
 拘束は十年間で一・八倍、隔離は一・六倍に増えた。厚労省は「増加の要因は分析できていない。不要な拘束などをしないよう引き続き求めていく」としている。
 厚労省は毎年度、総合病院の精神科病床を含めた六月末時点の状況を調べており、指定医から拘束や隔離の指示が出ていた人数を集計。一七年度からの調査方法の変更で、これまで分からなかった年代別や疾患別などの内訳も初めて判明した。
 拘束には、点滴を抜かないよう手指の動きを制限するミトン型手袋の着用なども含まれるとみられ、全体で一万二千五百二十八人。六十五歳以上の高齢者が64%を占めた。疾患別では統合失調症・妄想性障害が44%と最も多く、認知症の人も27%いた
 入院期間別に見ると、拘束が必要なケースは、暴れるなど激しい症状で入院してきた直後に多いとされるが、入院期間が一年以上の長期患者が51%を占めた。都道府県別では、病床数が多い北海道が千二百九十七人で最多。埼玉県の千二百三十八人、東京都の九百八十二人が続いた。最少は和歌山県で十五人だった。
 隔離は一万二千八百十七人で、統合失調症の患者が65%を占めた。
<精神科の入院患者> 厚生労働省の調査では、2017年6月末現在、精神科の病院ベッドは全国に約32万8000床あり、約28万4000人が入院している。入院期間の長期化で患者の高齢化が進んでおり、65歳以上が58%に上る。疾患別では、統合失調症・妄想性障害が半分以上を占めるが、認知症の人も16%いる。1年以上の長期入院者が61%で、約5万5000人は10年以上入院している。12年ごろのデータでは、日本の人口当たりの精神科ベッド数は先進国最多。平均入院日数も300日近くで突出して長い。
【15精神科病院調査、非開示相次ぐ 自治体、閉鎖性助長の懸念】共同19.2.19
 全国の精神科の医療機関を対象に患者の身体拘束の状況や入院期間などを調べている国の調査を巡り、従来は情報公開請求に対して病院ごとの調査結果を開示していた自治体の中で、一転して非開示や一部のみ開示とする例が相次いでいることが分かった。
  厚生労働省が自治体に出した通知や、開示に反対する病院団体の意向が影響したとみられる。患者団体からは「精神科病院の閉鎖性が進みかねない」との懸念が出ている。
  この調査は毎年6月末の状況を調べるため、厚労省が都道府県と政令指定都市を通じて実施。各地の市民団体が情報公開制度を使って病院ごとの調査結果の開示を受けていた。

【16「不平等を見過ごせない人」はうつになりやすい?】(毎日19.2.17)
経済的格差が小さくなれば、うつ病が減るかもしれない――。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センターの研究マネジャー、春野雅彦さんが率いるグループが、不平等とうつ病との間に、脳科学的に見て強い関連があるという仮説を立て研究を進めている。不平等とうつ病の相関はこれまで統計的調査、研究で語られてきたが、脳の活動変化から確認できるという。いったいどのような手法なのだろうか。春野さんの研究成果をライター西川敦子さんが紹介する。・・・・毎日新聞医療プレミア
  脳科学は、広くは脳や脳の機能についての学問分野を指すが、この分野に含まれる学問は、電気生理学、神経解剖学、分子生物学、心理学、理論神経科学などと幅広い。春野さんはそのなかでも計算論的神経科学、特に社会的な状況における意思決定や学習について研究している。
  春野さんは「不平等とうつ病傾向の関係については、国内外のいろいろな研究で明らかになっています。代表的なものが、英ロンドン大学が1967年から、官庁街で働く公務員を対象に実施している公衆衛生学の研究『ホワイトホール(※1)スタディー』です。職階層が低いほど体だけでなく精神的な健康度も低いことが明らかとなり、経済的不平等がうつなど精神疾患に影響していることが示されました」と話す。
  ※1 「ホワイトホール」は英ロンドン市内の道路名で、周辺に中央省庁や政府機関があることから英政治の中心地を指す言葉としても使われる。東京都千代田区の官庁街を「霞が関」と呼ぶことに似ている。
とはいえ、従来の研究はあくまで長期間の統計調査に基づくもので、脳のメカニズムについては明らかにされていなかった。
  ◇わざと不平等にお金を配分する実験
  前出の春野さんの研究グループは2010年と14年に、経済的不平等に対する脳の反応について調査し、研究論文を発表している。14年の研究で用いたのは「最終提案ゲーム」と呼ばれる行動経済学の実験手法だ。
  まず、提案者から被験者に対して「500円を2人で分けよう」と提案する。さらに「あなたは149円、私は351円ではどうか?」などと金額も伝える。被験者はOKすれば提案された金額をもらえるし、拒否すればお金は手に入らないルールだ。
「OKすればお金が手に入るのですから、どんな提案でも受け入れるかと思いきや、金額差が大きい場合は、取引を拒否する人が意外に多いのです」(春野さん)
  ◇不平等で脳の扁桃体が活発化
  さらに春野さんらは、機能的磁気共鳴画像化装置(fMRI)を使い、実験時の脳の活動を観察した。すると、向社会的(※2)で経済的な平等を重んじるパーソナリティー(性格)の人の脳では、金額差が大きい取引を提案されたとき、扁桃体(へんとうたい)が活発化するのが観察された。
  ※2 向社会的とは、報酬を期待せず他者や集団の役に立とうとする行動を指す心理学用語。人とのつながりを求めるタイプの人の性向をいう。
  一方、できるだけ自分が得をしたいと考える個人主義的パーソナリティーの人の扁桃体には、変化が見られなかった。
  扁桃体は、側頭葉にある神経細胞の集まり。感情に関わる部位と考えられ、ストレス物質放出に関与するなどうつ病と関連が深いとされている。
  ◇「不平等に対する扁桃体の活動が、うつ病症状の程度をあらわす“うつ病傾向”と関連があるのではないか。また、パーソナリティーの違いによって不平等に対するストレスに差があるのではないか、という仮説を立てました」(春野さん)
  ◇科学技術でうつ病のなりやすさを分析
  春野さんらは17年、研究結果に基づき、fMRIを使った新たな最終提案ゲームによる研究を実施した。今度は扁桃体と、同じくうつ病と関わりが深いとされる海馬(※3)の活動パターンから、被験者のうつ病傾向の予測を試みた。データからパターンを見つけ出し特定の指標の予測を可能にするスパースベイズ回帰というAI技術を適用することで、被験者のうつ病傾向や、1年後のうつ病傾向を予測できることが明らかになったという。 2年後に別の被験者で再度調査したが、やはり同様のデータが得られた。
  ※3 海馬は、記憶や空間学習能力をつかさどる脳の器官の一つ。うつ病になると萎縮することが分かっている。
  「自分が得できるなら、他人が損をしたところで関係ない」と考える人がいる一方、「他人が損をし、自分が得をするのはつらい」と感じる人もいる。そして、「つらい」と感じる人の方がうつ病傾向が高いという結果だった。
  「格差社会でより生きづらいのは、個人志向の人より、組織や集団、他者を重視する向社会的な人なのかもしれません。特に、個人プレーよりチームワークを尊重してきた日本人の中には、不安やストレスを強く感じやすい人が多いのではないでしょうか」と春野さんは分析する。
  ◇古い脳が感じる生きづらさ、新しい脳が抱く良心の痛み
 春野さんは15年、同様の手法で他者の期待を裏切る際の「罪悪感」についても研究した。その結果、罪悪感が高まった時に活性化するのは、脳の前頭前野であることが分かった。
  「人の扁桃体が、爬虫類(はちゅうるい)や哺乳類の祖先から引き継いだ「古い脳」と呼ばれているのに対し、前頭前野は、人類が誕生してから高次に進化してきた部分で、「新しい脳」と呼ばれることがあります」(春野さん)
  春野さんによると、これまでは「自分の取り分を増やしたい」という利己的な衝動を抑えるのは、社会の複雑化とともに発達した前頭前野が生み出す理性(制御機能)であると考えられていたという。春野さんは、この研究で、「不平等」の感覚は「古い脳」で、「罪悪感」の感覚は「新しい脳」で生み出されることが明らかになったと結論づけている。
  春野さんは、「罪悪感」はよく知られるうつ病の症状の一つだが、「不平等から生じるストレス」とは全く違う脳の部位で生じている可能性があると見ている。うつ病とひとくくりにされているが、じつは異なるメカニズムで起こっている精神疾患かもしれない――研究からは、このようなこともいえるという。
  経済のグローバル化や社会格差の拡大で、自律的な働き方や自己責任論はますます強調されるようになった。しかし、「自分さえ得すればいい」というタイプの人だけでは、人間同士の協力行動は成り立たず、社会は分解する。いろいろな脳の特質を持つ、いろいろなタイプの人がいてこそ、健やかで豊かな社会といえるのではないだろうか。
  春野さんらのグループは今後、社会行動のタイプの違いによる疾患の分類や治療法の開発についても研究する予定だ。
【17発達障害の一つ「ASD」の人が見る世界って? 「コントラストが強い」「たくさんの点」VRで体験】with news3/29(金) 7:00配信
「コントラストが強くてまぶしい」「たくさんの点がキラキラして見える」。これは、発達障害の一つ「自閉スペクトラム症(ASD)」の人の一部が見る世界です。書籍や取材を通して、このように視覚が敏感な人たちがいることは知っていましたが、見え方まではなかなか想像できませんでした。そんなとき、彼らが見る世界を知ることができるVR(バーチャルリアリティー)機器があると聞き、体験してきました。(withnews編集部・河原夏季)
ASDとは?
  向かったのは、障害のある人の就労支援や学習支援などに取り組む「LITALICO」(東京都目黒区)。 ASDのある人に多くみられるという、「視覚過敏」の症状について、VRで体験できると知り、取材をしたいと考えたためです。
 そもそもASDとはどんな症状なのでしょうか? LITALICO発達ナビ(https://h-navi.jp/)によると、先天的な脳機能の凸凹により、以下のような特性があるといわれているそうです。
・言葉のコミュニケーションが苦手
 言葉の裏にある意味をくみとるのが難しい など
 ・人と関わるのが苦手(対人関係や社会性の障害)
 目を合わせない、空気を読むのが苦手 など
・こだわりや興味に偏りがある
予定が変わるとパニックになってしまう、同じ動きを繰り返す など
 また、ASDのある人のなかには、視覚や聴覚といった五感の一部が極端に過敏であったり鈍麻であったりといった、感覚の特異性(偏り)を伴う人も多いといわれています。ただ、過敏・鈍麻といった感覚の偏りには個人差があります。
こうした感覚の特異性によって日常生活に困りごとがある方も少なくありませんが、目には見えにくい症状のため、周囲の人からの理解や共感を得にくいという問題があります。
参考:
 【図解】発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?分類・原因・相談先・診断についてイラストでわかりやすく解説します!https://h-navi.jp/column/article/35027050(LITALICO発達ナビ)
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?https://h-navi.jp/column/article/35025728(LITALICO発達ナビ)
体験できる世界は三つ
「視覚過敏」の症状をVRで疑似体験できる機器「ASD視覚体験シミュレータ」は、情報通信研究機構と東京大学、国立精神・神経医療研究センター、LITALICOの四つの拠点が連携して研究を進めています。開発者は、工学が専門の情報通信研究機構主任研究員・長井志江(ながいゆきえ)さんです。
 【関連リンク】認知ミラーリング CREST PROJECT http://cognitive-mirroring.org/
【関連リンク】自閉スペクトラム症の人が「見ている世界」をVR体験!コミュニケーション障害に影響する特有の見え方とは https://h-navi.jp/column/article/35026985(LITALICO発達ナビ)
 体験できる世界は三つ。「コントラストが強くまぶしい世界」「色が消えてぼやけて見える世界」「たくさんの点が見える世界」です。映像はそれぞれ約3分間で、前半は視覚症状がない人の見え方、後半は視覚が敏感な人の見え方で構成されています。
いざ、ゴーグルとヘッドフォンを装着です。早くも視界にはVR空間が広がります。三つの映像があり、体験したいものに頭を動かしてカーソルを合わせました。選んだのは、視覚症状が出る人の多くが経験するという「コントラストが強い世界」です。
コントラストが強い世界は……
 スタートボタンを押すと、目の前に広がったのはマンションの玄関でした。
まずは症状がない人の見え方が映ります。
 少しだけ光が差し込む薄暗い玄関。晴れの日に照明をつけていない状況のようでした。ゆっくり外に通じるドアに近づき、ドアノブを押します。
 薄暗い部屋から明るい外に出たので少しまぶしさを感じましたが、2、3秒もすると明るさに慣れてきました。周辺の家の屋根や街路樹、車が通っている様子が見えます。頭を動かして周囲を見渡しましたが、違和感はありませんでした。
 続いて、ASDのある人の見え方に変わります。
 場面は同じ玄関です。しかし、さきほど薄暗く見えていた影は完全に真っ黒。光は入っていますが、陰影がはっきりしています。
 ドアを開けると、辺りは真っ白。雪景色に光が反射するようでした。さらに、丸い光がちかちかして見えたあとに消えていきました。
 あまりにも視界が白すぎて、あるはずの街路樹も屋根も見えません。かろうじて影になっている部分が黒く見え、そこに何かがある、くらいは認識できました。車が通っている様子も、黒い線が動いている程度で、形まではわかりませんでした。
 コントラストが強く映る症状は、瞳孔の調整能力が弱いためと推察されるそうです。瞳孔が暗いところで拡大、明るいところでは収縮するという機能自体は同じで、決定的に機能が違うことはないといいます。
 その他のシチュエーションは、駅のホーム(色が消えてぼやけて見える世界)と学生食堂(たくさんの点が見える世界)でした。
 駅のホームでは、電車が入ってくる場面が映ります。症状がある人の世界では、電車が大きな音をたてながら高速でホームに入ってくるにつれ、周りの風景が全体的にモノクロでぼやけて見えました。電車が走ってくる音は聞こえるのですが、形が認識できたのは直前です。
 これは、「動きによる、無彩色化・不鮮明化」のためだそうです。
 学食では、人がいない状況から人がたくさんいる状況へ移ったとき、カラフルな丸い点がちかちかして見えました。これは、「動き・音の強さの変化による、砂嵐状のノイズ」が起こるためといいます。脳の特異的な活動によるもので、幻覚などではなく、片頭痛の患者さんにも同様の症状が見られる人がいるそうです。短時間でも視界に動くものが入ると気が散ってしまいました。
 LITALICOでは、情報通信研究機構や東京大学と協力し、2017年から10回以上VR体験ができるワークショップを開いています。 ASD当事者の家族や支援者、教育者や企業の人事担当を中心に、400人以上が体験したそうです。
 体験した方の感想
 当事者の保護者
 「子どもは普段すごく刺激に溢れた世界にいて、それに伴う疲労感が強いんじゃないかなと思いました。今後は、安定できるところに過ごさせてあげたいと思いました」
 児童・障害福祉分野の支援者の方
 「放課後デイサービスで子どもたちとの関わり方をより細かく考え、声のトーンや動き方など行動できるようにしたい。公園や特定の遊びを嫌がる子どもの原因と思われることが体験でき良かった。ASDの子どもと一緒に良い支援員になりたい」
 企業の方
 「社内でASDの社員がより安心して働くことができるように生かしていきたい」
――LITALICO提供
「コミュニケーション以前の問題がある」
 シミュレータの開発者で情報通信研究機構主任研究員の長井志江さんに開発のきっかけを聞きました。
 「8年ほど前、ロボットや人工知能の研究をしていく中で、アスペルガー症(ASDの一種)の診断を受けている東京大学の女性研究者・綾屋紗月さんと会い議論をしたのがきっかけです。それまでASDはコミュニケーションの問題だと思っていました」
「綾屋さんの著書やお話から、コミュニケーション以前の問題が大きいことを知りました。著書では、綾屋さんが見ているコントラストの強い世界の写真があり、見え方が違うことに目からうろこが落ちました」
 「当時、見え方や聞こえ方が違うこと自体知られていない状況でした。エンジニアの立場から、知覚の世界でしたら映像技術を使っていろんな人に分かりやすく伝えられるのではないかと考え、綾屋さんたちと共同研究を始めました」
 VRの映像は、ASDの当事者22人の見え方をデータ化し、解析した平均値だといいます。22人のほぼ全員が、元々明るい場所がさらに明るく見え、約3分の1がちかちかした点が見えるという結果が出たそうです。
 VR体験をした当事者からは、「自分自身の経験を再確認できた」「周りに説明しても理解してもらえなかったが、共有できるようにしてくれた」という反応があったといいます。
 見える世界が違うことで、ASDがない人に「自分とは違う」「怖い」という印象を持たせてしまう可能性もあります。そのため、長井さんはワークショップなどで強調することがあるそうです。
 「ASDでない方もASDの方も、基本的に脳の中では同じ事が起こっていると伝えています。どのくらい敏感で、状態が長く続くかが分かれ目ではないかと思います」
 今後はさらに「教育機関と企業」に働きかけていく予定です。
 「教育機関では早い段階から発達障害を理解してほしいと思います。話し方一つにしても、抑揚をきれいに話されると聞き取りやすくなることがあります。どう接するか、環境を整えるかでコミュニケーションを取りやすくなります。授業の一環にワークショップを組み入れるような制度を作っていきたいです」
 「企業では、発達障害の方を雇用したいけど、その人たちのために何を用意したらいいかわからないという方もいます。人事課や周りの方に、ASDの人がどんな困難さを抱えているのかをきちんと理解してもらうように進めていきたいと思います」
取材を終えて感じた「思い込み」
  これまでも、視覚過敏のある人は見え方が違うという知識はありました。ですが、今回VR体験をしてみて、「自分が見ている景色は隣の人にも同じように見えている」という思い込みが強かったことに気づきました。
 コントラストが強い世界も、ちかちかが見える世界も、とてもストレスを感じました。電車が直前まで認識できないことは、恐怖でもありました。
 視覚症状は疲労度合いなどにも左右されるそうです。目に見えないことなので、周りの人が気づけないことも多いと思います。ただ、視覚症状がある人たちの世界を体験していると、違和感に気づけるようになるかもしれません。
 暗い空間から明るい空間へ移動したとき、一瞬まぶしくなるという体験は多くの人が共感できると思います。でも、感じ方は人それぞれです。隣にいる人が長時間まぶしさを引きずっているかもしれません。しんどそうにしていたら、室内で過ごすように声をかけたり、まぶしさを和らげる対策を取れたり、サポートできることはあります。
 多くの人が、体験を通して視覚症状のある人との距離が縮まることを期待しています。

【18新生児死亡事故、遺族への対応で精神的負担 うつとの因果関係認める 那覇地裁、看護師の労災認定 3/27(水) 10:19配信
  沖縄県内の病院に勤めていた看護師の女性が新生児の死亡事故に直面するなどし、うつ病を発症したとして、公務員の労災に当たる公務災害の認定を求めた訴訟の判決が26日、那覇地裁であった。平山馨裁判長は看護師が事故や遺族への対応で受けた精神的負担と、うつ病発症に因果関係が認められるとして、公務災害と認定しなかった地方公務員災害補償基金に判断の取り消しを命じた。
 判決によると、事故は2009年8月、原告の看護師が婦人科の深夜勤の当直に就いた時に起きた。看護師は容体が悪化した新生児の看護に当たり、パニック状態の母親に対応する役割も負った。事故後には親族から怒りを向けられる場面もあった。
  平山裁判長は事故と親族への対応を一手に引き受けた状況は非日常性の高い出来事と判断した。さらに事故後、病院は看護師を精神的にサポートをせず、遺族に説明する場に同席させたことも精神的混乱を助長させたとして、一連のことがうつ病発症に起因していると認定した。
【19親族重視へと回帰する成年後見制度の危うさ、身内は本当に信用できるか】:ダイヤモンド3/27(水) 6:01配信
 認知症の母親の成年後見人に 息子ではなく、弁護士が就くおかしさ
 認知症の人や知的障害者などの生活を支え、かつ財産管理を代行する成年後見制度が転機を迎えている。制度が始まって20年近くたつが、なかなか浸透しないため利用者が伸び悩んでいる。
 認知症の母親を抱えた50代の男性、Aさんは憤まんやるかたない表情で話す。
  「なぜ僕ではだめなのか、今でも納得できない」
  自身が母親のために成年後見人になろうと、家庭裁判所に申し立てた。裁判所から案内書を取り寄せて、記入した。母親が認知症であることを証明するため、かかりつけ医のいる診療所に同行して受診し、診断書を入手。
  だが、裁判所からは後見人に選任されなかった。全く知らない弁護士が後見人に就いた。裁判所の職員との間で「母親の預貯金や不動産など資産がかなりあるので、後見人になるのは難しいかもしれない」という会話が交わされていたが、はっきりとした拒否理由は示されなかった。
  「どの程度の資産があると、家族の後見人がダメなのか基準を教えてほしいと頼んだが、答えはなかった。後見制度はいい制度だと思っていたのに出端をくじかれ、がっかりです」
  後見人となった弁護士とのやり取りは簡単な書類程度。その後見費用は月に約3万円に達した。「弁護士は、本人の金銭の出し入れにこだわり、介護状況などを含めた日常生活への関心はあまりない。活動実績に比べ高額で驚いた」。
  そこで、後見人を変えようと裁判所に問い合わせたが、「後見人にふさわしくない不祥事を起こしていない。特別の理由がないので認められない」と言われた。
  「これほどおかしな制度だとは思わなかった。後見人の選任や後見費用などの基準が公表されないまま、すべて家裁の裁判官の一存で決まってしまうとは」と男性の不満は収まらない。
  後見制度が司法制度の一環であることを改めて思い知らされたようだ。こうした事例は少なくない。
 最高裁が大きく路線変更 「親族重視」「交代柔軟に」
  浮き彫りになった問題は2つ。家族後見人よりも弁護士という専門職後見人への誘導と、後見人の交代が難しいことである。いずれも現状の制度内では「当たり前のこと」とみなされている。
  ところが、3月18日に突如、最高裁判所が2つとも見直すと表明した。大きな路線変更に踏み切った。厚労省の審議会「成年後見制度利用促進専門家会議」(委員20人。委員長・大森彌東京大学名誉教授)で委員の最高裁家庭局長が、後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」とし、「後見人選任後も、柔軟に後見人の交代・追加選任を行う」との考え方を示した。
  最高裁が、後見人の選任と交代に関してこれほど具体的に姿勢を表明したのは初めてのこと。画期的な決断といえるだろう。その内容は、この1月に全国の家裁に伝えたという。
● なぜ専門職の後見人が増えたか 親族後見人の「不正」が背景に
 最高裁にこの決断をさせた理由を検討してみよう。まず、後見人にはどのような立場の人がふさわしいのか。成年後見制度そのものの成り立ちを振り返ってみると、その答えが得られそうだ。
  同制度は2000年4月1日から始まった。介護保険制度と同じ日である。介護保険は、介護サービスの提供法をがらりと変えた。公務員が決める税による「措置」制度から、利用者と事業者間の「契約」制度となった。
  契約内容を双方が了解して初めて、訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスを利用でき、施設に入所できる。したがって、契約を交わす利用者が、認知症などのためにその契約内容の理解に支障があると、契約が成り立たない。そこで利用者の契約代行者として登場してきたのが成年後見人である。
  介護保険制度と並んで成年後見制度が「車の両輪」といわれるのはこのためだ。
 それまで要介護者に寄り添い、介護の担い手になってきたのは同居家族だった。介護保険は「介護の社会化」をうたい、家族介護からの解放を目指した。だが、介護保険スタート時には、まだ家族一体での介護という認識が強く、後見人にも家族を含め親族が続々名乗りを上げた。
 成年後見制が法務省管轄の民法を改正して発足したこともあり、厚労省はこの制度に後ろ向きだった。このため、介護現場で制度全般への理解が進まなかった。選任された家族や親族に戸惑いが広がることになる。
  そんな背景の中で、2000年度は全後見人の中で親族後見人が90%を占めた。親族後見人が被後見人の預貯金を横領したり、不動産を勝手に売却したりするなど不正が目立つようになる。家族・親族といえども家裁から後見人に選任されれば、被後見人の財産はその人だけのために使わねばならない。「家族の財布は一緒」という通念は許されない。
  毎年のように不正件数と被害額が増え続けていく。ピークとなった2014年には、831件もの不正が報告され、その被害総額は56億円を超えた。
  後見制度への不信につながりかねない相次ぐ不正を前に、制度を統括する最高裁は対応策を打ち出す。まず、親族からの後見申し立てがあっても、専門職に振り替えるように動き出す。専門職とは、弁護士のほか司法書士、社会福祉士、行政書士、税理士、精神保健福祉士などの国家資格保持者である。
  現場で後見人を選任するのは各家裁の独自の判断だが、最高裁の姿勢が伝わり、親族後見人の割合は徐々に減少していく。代わりに専門職貢献人が増えだす。そして制度発足13年目の2012年には、遂に親族後見人の比率が48.5%となり、過半数を割りこむ。以降も、専門職後見人との逆転が加速し、最新の調査の2018年には、親族後見人は23.2%まで減少した。
  一方、専門職の中でトップの司法書士は28.9%に達し、親族後見人を上回った。22.5%の弁護士を含めて他の専門職と合わせると67.6%になる。これだけ急速に専門職が増えたその勢いがストレートに表れたのが冒頭のAさんの事例だろう。
  最高裁が採ったもう1つの不正防止対策は、「後見制度支援信託」制度の創設である。被後見人が日常生活で使用する分を除いた金銭を、信託銀行や特定の銀行に信託すること。その信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするには、家裁の指示書を必要とした。これにより、後見人が払い戻しや解約を自由にできなくなり、被後見人の財産の横領を防ぐことができる。
  この制度信託は、後見人が専門職でなく親族の場合に限り、30万円の手続き収入が得られるのは弁護士か司法書士に限るなど、「専門職に傾斜した仕組み」という声も出た。
  また、利用者が同制度を断ると家裁から、弁護士か司法書士の後見監督人をつけるよう求められる。後見監督人は、後見人の活動を文字通り監督するお目付け役だ。後見監督人の就任条件に基準はなく、「必要があるときに」と家裁では説明している。
 認知症の高齢者急増の一方で 後見制度の利用者は頭打ち
 こうして、最高裁が主導して「親族後見から専門職後見へ」という大きな枠組みが整えられてきた。そこへ、今回の最高裁の意見表明だから驚きだ。「親族後見を優先」とは、この枠組みを逆転させることである。
  その理由を最高裁は説明していないが、答えは明らかだろう。後見制度の利用者が増えずに頭打ち状態だからだ。制度発足後の12年後、2012年に家裁への申し立てはやっと3万4000件に達した。その後は足踏み状態で、2018年になっても申し立て件数は3万6549件にとどまった。
  現実に2018年12月時点での成年後見利用者は約21万8000人しかいない。一方で、認知症の高齢者は急増している。今や500万人を上回り、軽度の認知症者障害(MCI)を含めると、1000万人時代を迎えようとしている。
  認知症が極めて日常的なこととして受け止められ、認知症ケアへの関心は急激に高まっている。認知症本人に代わって介護保険や医療保険の利用手続きをしなければならない場面も増加している。つまり、後見制度への需要は広がっているのに、実際の利用件数は頭打ちという状態である。
  なぜか。後見制度の使いにくさのためだろう。Aさんの事例がその典型だ。そこで、最高裁はやっと現場の苦情を救い上げる形で「専門職重視」の姿勢を見直した。後見人の交代を容認するのもその一環である。
  3月18日の専門家会議で最高裁から出された資料では「後見人選任後も、後見人の選任形態等を定期的に見直し、状況の変化に応じて柔軟に 後見人の交代・追加選任等を行う」と記されている。ここでも、専門職後見人にこだわらないという路線転換を行った。
  現在、すでに後見活動を受けている本人や家族にとっては、後見人交代の可能性への扉が開かれたことは朗報だろう。Aさんの交代への訴えが現実的になった。
親族でも専門職でもない 「市民後見人」という第3の存在
  では、今回の最高裁の決断は適切といえるだろうか。親族後見人への「里帰り」施策について検討してみよう。
  実は、後見人には、親族と専門職のほかに第3のグループがある。「市民後見人」である。後見人の選任には属性や資格の前提はない。家裁に制度利用を申し立てる際に、後見人候補は誰でもいい。
  一般市民が後見人の選任を受ければ「市民後見人」というわけだ。市民後見人は、家族や専門職と違うのだろうか。
  「家族は利益相反になる可能性があります」とある市民後見人は話す。被後見人が亡くなれば、家族は遺産相続できる。その前に「少しばかり拝借して、自分の事業に投入しても構わないだろう」と考えてしまうことがある。本人が施設に入所していたり、長期入院中だったりすると、身勝手な行動に走りがちだという。不正と紙一重の状況だ。
  また、専門職の活動は「あくまで仕事の範囲内。それも家庭状況が複雑だと訪問回数が増えるけれど、報酬がそれに比例しない。割の合わない業務となる」(前出の市民後見人)。弁護士の通常活動による報酬とはかけ離れているため、事務所職員が肩代わりすることもある。
  これに対し、前出の市民後見人は自身の活動を振り返り、「認知症の人と会えば、いずれ自分も同じような症状を抱えることが想定される。だから、施設訪問すると食事や入浴、トイレなど日常生活がどのようになされているかを、近い将来の自分のこととして関心を寄せざるを得ない」と、立場の違いを強調する。
  厚労省が最近打ち出している高齢者ケアの施策に「我が事・丸ごと」がある。市民後見人はこの「我が事」の実践者そのものだろう。
  実は、厚労省は老人福祉法第32条を改正し、2012年4月から市町村に後見人の人材育成を努力義務と課し、「市民後見推進事業」の音頭を取り始めた。認知症高齢者の増大を目前にして、法務省管轄だった後見制度に取り組まざるを得なかったようだ。その柱に据えたのが「市民後見」である。
  だが、残念ながら市民後見人はまだ極めて少ない。2018年には、わずか320件に過ぎない。総件数3万6298の0.88%だ。ただこの最高裁の集計では、「その他法人」として1567件を挙げており、この中にNPO法人として法人後見で活動している市民も多いとみられる。「その他法人」を合わせると、1887件で5.2%になる。
  最高裁は「親族重視」への姿勢転換を宣言したが、長期的な視点からは「市民重視」にかじを切ってほしかった。加えて、「財産管理」と並ぶ後見目的の「生活支援」(身上監護)を社会保障に引き寄せて見直してほしかった。後見活動の拠点となる市町村の「中核機関」の設立が遅滞している中、既存の地域包括支援センターへの統合も今後の検討課題になるだろう。(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)
【20大人の発達障害 4割超「うつ病」発症】 毎日新聞調査3/26(火) 20:03配信
 20歳以上の発達障害者を対象に毎日新聞が実施したアンケートで、回答した4割超が「うつ病を発症している」と明らかにした。厚生労働省によると、大人の発達障害と併存症に関する全国調査はなく、実態は分かっていない。専門家は「障害の特性が理解されないことで、いじめや虐待の被害に遭い、生きにくさが増している」と指摘している。
 1~2月、毎日新聞が「発達障害当事者協会」(東京都新宿区、新(しん)孝彦代表)を通じ、障害者の支援などに関わる62団体に依頼。インターネットでも受け付け、全国の20~70代以上の計1072人(男性482人、女性564人、その他・無回答26人)から回答を得た。その結果、発達障害の診断を受けた862人のうち、うつ病と診断された人は393人(45.5%)だった。対人緊張が強い社交不安症やパニック症などは24.8%▽ストレスなどから体の不調が表れる自律神経失調症は24.7%――で、日常生活でストレスにさらされていることがうかがえる。
 また、これまでの体験を聞いたところ、学校でいじめられた経験がある人は71.8%▽職場でのいじめ経験は45.4%▽親や周囲からの虐待は33%▽半年以上の引きこもりは27.4%▽年間30日以上の不登校は23.2%――だった。
  国内では2005年4月に発達障害者支援法が施行され、子どもに対する支援は進んでいるが、発達障害が知られていない時代に育った大人の中には、特性を「問題行動」として扱われてきた人もいる。
  昭和大付属烏山病院(東京都世田谷区)の岩波明医師は「うつや統合失調症などの治療を続けても改善しない人の背景に発達障害がある、という事例は一般的に認識されていない。適切な治療を進めるためにも、併存症が多い実態を知ることが重要だ」と話している。・・・塩田彩
◇発達障害
  先天的な脳機能障害が原因とされる。対人関係が苦手でこだわりが強く、感覚過敏(鈍麻)がある「自閉スペクトラム症」▽不注意や衝動的な行動が目立つ「注意欠如・多動症」▽読み書きや計算など特定の学習に著しい困難がある「限局性学習症」――などの総称。それぞれの特性が重複することもある。毎年4月2~8日は発達障害啓発週間。

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