/pパルスオキシメーター測定できない理由。出典【日本呼吸器学会パルスオキシメーターハンドブック】他
【日本呼吸器学会パルスオキシメーターハンドブック】抜粋
パルスオキシメーターハンドブックパルスオキシメーターハンドブックwww.jrs.or.jp/uploads/.../pulse-oximeter_medical.pdf
日本呼吸器学会肺生理専門委員会2014年3月
生理学的基本事項
Q1、酸素飽和度の表記にはSpO2 と SaO2 があります。 違いは何ですか?
A SpO2はパルスオキシメータで測定した動脈血酸素飽和度を示します。 SaO2は動脈血ガス分析値から計算で求める場合と、動脈血をCO オキシ メータで直接測定する場合があります。
測定方法の違いから、表記も違っています。
動脈血酸素飽和度(arterial oxygen saturation, Sa02) は 血液中のヘモグロビンの何%が酸素と結合しているかを表 し、動脈血酸素分圧(PaO2)と相関があります。Sa02は 動脈血ガス分析装置に組み込まれたCO オキシメータで測定できますが、それに対し、経皮的にパルスオキシメー タを用いて測定したSa02は、上記と区別するためにSpO2 (pereutaneous oxygen saturation)と表記されます。パルス オキシメータではSpO2 を測定するため指尖部などの組織に 赤色光と赤外光の2つの波長の光を当て、脈拍による透過光 の変化で動脈成分を識別します。また、酸化ヘモグロビンは 赤色光をよく透過し、還元ヘモグロビンは赤色光を吸収する ため、動脈血の吸光成分の各波長における吸光度の比から 酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を求め、SpO2を 算出しています。 SpO2は測定が簡便だが、注意が必要です。
パルスオキシメータによるSp02測定は簡便で、非侵襲的 であり、持続的なモニタリングも可能ですが、測定を主に指 先の毛細血管で行うため、寒冷による末梢血管収縮などの末 梢循環障害、プロープの装着不良、汚れやマニキュアなどに よる透光性低下、体動などの影響を受け、SaO2
を正確に反 映しない場合があることに注意が必要です。
Q2,SpO2 が正常なら生体は低酸素状態に ならないのですか?
A SpO2 が正常でも生体における低酸素状態は生じることがあり、臓器の血流量低下、貧血、異常ヘモグロビンの存在する場合などがあります。
低酸素状態になる要因
生体組織への酸素供給は臓器への血流量により規定されて おり、この酸素供給量oxygen delivery: DO2)は、心拍出量と動脈血酸素含量(arterial oxygen content : CaO2)を 乗じた式で表され、動脈血酸素含量はヘモグロビン濃度に影響されます(表1)。そのため、血液中の酸素含量が充分な 状態でも、それを運搬する血液が、単位時間あたりに少しし か拍出されない、すなわち心拍出量が低下していると、組織への酸素供給量は不充分となり、また、ヘモグロビン濃度が 低い場合も動脈血に含まれる酸素の量は低下します。
その他、異常ヘモグロビンが存在する場合にも生体における低酸素血症が生じます。主な異常ヘモグロビンには一酸化炭素中毒による一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)やニトログリセリンなどの亜硝酸薬、局所麻酔薬などの薬物、アニリンなどの化学物質によって出現したり、遺伝性に出現するメトヘモグロビン(Met-HB:鉄が酸化され、三価の状態になったヘモグロビン)があります。これらの異常ヘモグロビンが 存在するとパルスオキシメータによるSpO2の測定に誤差を 生じます。Sp02の値のみでなく、動脈血ガス分析も必要になります。
表1. 酸素供給に影響を与える因子
酸素供給量(DO2) = CO x CaO2
動脈血酸素含量(CaO2) = (1.34 x Hb x SaO2/100) + PaO2 0.003
CO:心拍出量 (L/min), Hb:ヘモグロビン濃度(g/dL), Sao2:動脈血酸素飽和度(%), PaO2:動脈血酸素分圧度(mmHg)
Q3、SpO2 が正常なのに呼吸困難を訴える場合があります。 なぜですか?
A SpO2の値が呼吸困難に直接結びつくわけではないからです。 呼吸困難には、呼吸の努力感と充足感のバランスが大きく影響します。
呼吸困難が起きる状況は様々
SpO2は動脈血酸素飽和度の指標ですので、低酸素血症の指標ともなります。低酸素血症は、頭動脈小体などの化学受容体を刺激します。この情報は中枢神経系にフィードバック されて、直接的に不快感を起こしたり、呼吸中枢刺激による呼吸努力の増大を通し間接的に呼吸困難を起こしたりします。
一方、低酸素血症以外にも、高二酸化炭素血症や運動による呼吸刺激、心理的な興奮、外気温度の上昇、疾患による換気障害、など様々な刺激を通して、呼吸中枢は換気を増大さ せようと横隔膜などの呼吸筋に呼吸努力を指令します。呼吸の努力と充足感のバランスは、中枢神経系により判断され、状況によって呼吸困難と感知されます。
呼吸困難が起こる状況は、必ずしも低酸素血症とは限りません。例えば、能力の限界近くまで激しい運動をした健常人の場合、呼吸数も1回換気量も限界に達し、呼吸努力は最大となり、運動直後しばらくは、呼吸が苦しい状態が続くでしょう。臨床の運動負荷試験などで、健常人で最大負荷まで行った場合などと同様です。このような場合、SpO2がそれほど 低下するということはほとんどありません。SpO2値が正常 なのに呼吸困難を訴える、ということは珍しくないのです。
臨床では、特にSpO2が良好な場合には、呼吸困難がないものと勘違いして思い込みやすいものです。例えば、十分な酸素療法を既に行っている喘息発作や慢性閉塞性肺疾患
(COPD) 急性増悪の患者などを想像してみてください。呼 吸困難を訴えていても、酸素療法のおかげで SpO2 は正常か もしれません。しかし、実際は、発作による気管支収縮など によって十分に呼吸できない状況は、臨床ではよく見られる ことです。特に、このような状況では、SpO2が良好で、苦 しいのは気のせいだと誤認されやすいのです。患者の切実な 訴えが理解できずに正しい対応が行われない状況になり得ま すので注意が必要です。
図 1. 呼吸困難が生じるメカニズムの概略
呼吸中枢刺激因子:低酸素血症、低酸素血症以外の因子、高二酸化炭素血症 運動、他
→
呼吸筋の仕事量の増大 一呼吸努力感↑
呼吸の努力感との 充足感のアンバランス→呼吸困難感
Q4、肺から測定部位までの循環による遅れを考慮する必要がありますか?
A、循環による遅れが存在します。安静時の SPO2円の評価では問題になりませんが、変動するSPO2の評価では、場合に応じて考慮すべきです。
遅延が起こる要因を把握しておく 無呼吸から呼吸をする場合や、酸素投与した場合に、 期時にSPO2が反応せずに、10秒から30秒くらいの遅れが 生じることは、しばしば経験されます。これらの原因 として、健常者では、生理的及び機械的要因が考えられ ます。生理的要因では、肺胞気の組成が変化するまでの時間なども ありますが、メインは循環のための時間です。 肺循環で赤血球が肺胞を通って酸素化されてから左心房に到達するまで2~ 3秒かかり、左心室から末梢まで届くまでも数秒から部位によっては10秒以上の時間がかかります。
🎏鯉:実際に測定して得られる時間には、機械的な要因が加わります。SPO2の値をどのように出力しているかによって 生じるもので、 機械ごとに異なっています。また、一般に、 SPO2は、一定時間、あるいは一定の脈拍数ごとに得られた値を移動平均により求められているため、この時間の長さの 設定にも影響を受けます。機械 によっては、この設定が可変 になっている場合がありますので、移動平均時間を短くすれ は、測定値が変動しやすくなる代わりに遅延は少なくなりま すし、長くすれば測定値が安定する代わりに遅延は大きくな ります。肺疾患や循環器疾患を持つ患者では、これらに病的な要因が加わります。即ち、肺胞気の組成変化や肺およ びた体循環の循環時間の変化などによる因子です。
測定の状況が安静時であれば、これらの遅延は考慮する必 要がありませんが、酸素を投与、運動、体位変換など呼吸循 環動態が変化した直後などには、測定値に遅延が起こること を考慮しながら測定を行うなど、状況に応じた対応をとるべ きです。また、睡眠時の呼吸の検査などで、睡眠時間全体で 評価する場合には問題ありません。しかし、無呼吸イベント の前後における変化などにフォーカスを当てる場合では、換 気指標等と SpO2 変化のタイミングには遅延があることを認 識しておくべきです。
2. SpO2測定値に遅延が起こる要因
1. 機械的要因:機器自体の応答性、移動平均の設定時間 など
2. 生理的要因:肺胞から末梢循環までの到達時間 など
3 病的要因:循環時間の延長(例えば心不全)など
【測定に影響する生体側の要因及び関連事項】
Q5、測定部位は影響しますか?
A 十分な脈波信号を得られる部位に発光部と受光部が位置し、外部光が回り込まない適切なサイズのプローブであれば測定部位に影響を受けません。
パルスオキシメータの プローブの種類と測定部位の影響
パルスオキシメータのブロープには透過型と反射型がありますが、SpO2を測定する対象の測定部位や用途により多種類のものが使用されています。透過型プロープは、手指を挟むもフィンガークリップタイプが従来から使用されていますが、手指を差し込むタイプ、粘着テープで固定するタイプやディスポーザブルタイプがあります。装着する反射型ブロープは、発光部と受光部が同一面に存在し、前額部などに装着 します。
手指・足趾・耳朶などに使用する際、受光部で検出するシグナルレベルは非常に小さいため、正確な値を得るためには 装着部位の厚みや装着状態に注意しなければなりません。
発光部と受光部の間隔が広くなるに従って透過光強度が低下し、反対に、間隔が狭いと血流が少なくなって脈波シグナルが小さくなるため、通常6~18mm厚(10mm 程度が最適)の部位に装着します。耳朶での測定は、耳朶厚が10mm 以下で血流量が少なく脳波シグナルが小さいため、手指・足趾で測定する方が良いでしょう。しかし、四肢末梢循環不全状態では、比較的血流が保たれる耳朶や前額部にブロープを 装着して測定した方がより正確でしょう。
フィンガークリップタイプのブロープで測定する場合は、 発光部と受光部が爪の生え際付近の位置に装着すると脈波シ グナルが比較的大きくなり、関節部位に装着するとシグナルが小さくなります。また、先端と指先に隙間ができると 外部光が回り込みやすくなるため、被験者に合わせ、隙間の空かないプロープを選択します。指を90度、180度に回しても、十分な脳波シグナルを得られ、外部光が回り込まなければ、正確なSpO2値が得られますが、通常は発光部を爪側 にします。爪白癬症で爪が著しく肥厚し、表面が凹凸の場合には、発光部と受光部の間隔や外部光が回り込むことに注意しなければなりません。
粘着テープで固定するタイプとディスポーザブルプロープ は、発光部と受光部が互いに対向しないと、生体を透過しない外部光が、受光部に回り込みやすくなる可能性が大きくな ります。
なお前出(P6. Q4) にあるように、動脈血ガスの変化は主として循環による遅れのために、手指で耳朶より数秒、足趾 ではそれ以上に遅れるため、足趾に装着したプロープでは、 呼吸状態の変動をすばやく捉えることができない点は考慮する必要があります。
Q6、測定値に影響する因子には何がありますか?
A、プロープ装着不良、吸光度曲線に混入するノイズ、吸光度曲線の測定障害、 透過光強度の減弱をする物質の存在により測定値が影響されます。
正確な吸光度曲線が得られないと誤差を生じます。
最近のパルスオキシメータは、誤差要因となる各因子の影響が少なくなるように改良が進んできましたが、測定誤差を生じるいくつかの要因があり、使用に際してはこれらの事に留意する必要があります。
パルスオキシメータの誤差要因
①プローブの装着不良:ブロープの装着が不良であると、測定に必要な服波信号が得られずに SpO2が 低下します。また、ブロープの発光部と受光部の汚れも、脈波信号が減弱する原因となります。
②吸光度曲線に混入するノイズ:吸光度曲線に混入するノイズの原因として、体動・電磁波・外部光などがあります。体動は、静脈血や周囲組織の吸光度を変化させ、特に心拍数の倍数に近い 周期的な体動は誤差を生じ易くします。テレビなどの電化製品、携帯電話の使用時や電気メスなどの電磁放射の多い医療機器の近くで測定すると、電磁波の影響により正確に測定ができないことがあります。また、照明灯、蛍光灯、赤外線加 熱ランプ、直射日光などの外部光が強すぎると、誤差の原因となります。
③吸光度曲線の測定障害:吸光度曲線の測定障害としては、寒冷による血管の収縮や血管の圧迫により血流が減少すると、透過光量の変動情報が得られずに正確な測定が困難となることがあります。
④透過光強度をする物質の存在:
透過光強度の弱をする物質の存在としては、異常ヘモグロビン、体内に注入された色素、マニキュアや皮膚の色素沈着などがあります。異常ヘモグロビンは、 喫煙や一酸化炭素中毒による一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)や亜硝酸薬・抗不整脈薬などの服用によるメトヘモグロビン(Met-Hb)などがあります。検査で使用するインドシアニングリーン(ICG)やカルディオグリーン、重症メトヘモグロビン血症の治療に用いるメチレンブルーの静注は、透過光強度に影響します。 マニキュアや皮膚の色素沈着などは透過光を吸収するため、生体を透過するシグナルが変化します。
Q7、測定に際し、プローブ取扱い上の注意点は何ですか?
A、プローブの移動、外部光、測定する状況等によって SpO2 値が影響されることに留意して、体型や体重に応じたプローブを選択します。
プローブの装着状況によって SpO2は誤差を生じます
前述したようにパルスオキシメータのブロープには透過型性と反射型があり、透過型ブロープは、手指を挟むフィンガークリップタイプ、手指を差し込むタイプ、粘着テープで固定するタイプやディスポーザブルタイプがあります。
体動によりプロープが動くと、動脈と静脈の脈波シグナルの区別ができないことがあり、また、外部光が回り込むと誤差の原因となります。ブロープは体型や体重に応じて選択してテーブで動かないように固定し、可能な限り動きが少ない部位に装着します。また、プロープと本体回路を接続するケーブルの揺れも、誤差原因になることに留意する必要があ ります。ブロープを固定するためテープで締めすぎると、血管が過度に圧迫され、装着部局所が循環不全に陥って動脈の脈波シグナルを検出できません。また、発光部の温度は通常は2~3℃上昇し、圧迫にり血流が途絶えると代謝によって産生される熱が放散されません。不穏が高度な呼吸不全患者に対して、ブロープを外れないように一カ所に強く長時間固定すると、装着局所の温度が上昇して低温熱傷を生じる可能性が あります。 発光部と受光部の表面の汚れは、基本的に吸光度の相対比でSpO2を算出するため、わずかな汚れは SpO2値に影響しません。しかし、高度な汚れは脈波シグナルを減弱する可能性もあり、使用後にエタノールを含んだ脱脂綿で清掃・消毒 します。
パルスオキシメータは、受光部に外部光が回り込むと SpO2値が影響を受けます。屋外で SpO2を測定する場合は 太陽光の干渉を受けるため、日陰で外部光が受光部に到達し ないように測定すべきです。
末梢循環不全に陥っている患者では脈波シグナルが減弱するために、正確なSpO2を測定できない可能性があり、プロープの位置や固定方法により影響を受けます。プローブ装着部位の末梢循環が正常であることを確認してから、SpO2を測 定しましょう。
携帯電話の使用時も電磁波が放射されるため、医療機関で は携帯電話の使用が制限されています。パルスオキシメータも、受光素子(フォトダイオード:PD)が電磁波の影響を 受けるため誤差原因となります。
Q①プローブの大きさはフィットするものが良いか? プローブの挟み方は? 圧迫の影響は?
プローブ装着状態によっては、SpO2の誤差や皮膚障害を生じます (体動時に軟部組織や静脈血が動くと、動脈の拍動によるシグナルの変動に影響するためにSpO2低の誤差原因となり、体動時にSp02値が不安定である場合は個頼性が乏しく装着部に対してプロープが大きすぎると、ブロープの動きも加わって体動の影響が大きくなります。また、プロープと本体をつなぐケーブルの揺れもプロープを動かすため、揺れが伝わらないようにテープでケーブルを固定します。指と耳朶ブロープの影響については、手指プローブの方が動きによる誤差が少ないと報告されており、一般に手指の大きさと形状は個人差が少ないために耳朶よりプロープは密着し、発光部と受光部での光の散乱変動が少なくなります。反対に圧迫がきつすぎると動脈拍動が減弱~消失し、測定に必要な十分な脈波シグナルが得られなくなることがあり、 プローブは血流がある状態を維持できるように装着しなけれ ばなりません。固定がきつすぎると装着部位の低温熱傷や圧迫による皮膚障害が起こりやすくなります。発光部の温度上 昇は通常は2°C程度ですが、圧迫により血流が途絶えると代謝によって産生される熱が放散されないため、長時間装着すると局所的に温度が上昇してプローブの圧迫との相乗作用により低温熱傷を生じる可能性があります。
フィンガークリップタイプの挟み方については、SpO2 の測定に必要な十分な脈波シグナルを得られて、外部光が回り込まないように装着すれば制限はありません。
Q②、外部光の影響は
A、外部光は動脈の脈波シグナルの変動に影響して誤差を生じます。 パルスオキシメータは、動脈血だけが拍動していると仮定して脈波シグナルの変動からSpO2を測定します。測定中に、外部光が受光部に回り込むと誤差の原因となります。
パルスオキシメータの発光は、赤色光の発光・赤外光の発光・両者が発光しない3フェーズを1サイクルとします。機種により異なりますが毎秒数十回から数百回の発光を繰り返し、一定のアルゴリズムを用いてSpO2を測定しています。 蛍光灯や手術室の無影灯など外部光は、3つのフェーズに影響を与え、誤差の原因となります。またマニキュアは種類によって、発光部から照射した光を強く減衰させることがありますので、外部光の影響を増強する可能性があります。
屋外でSpO2を測定する際は、太陽光の赤色光や赤外光の千渉を受けます。最近は安価なこともあり、患者自身が外出や散歩などにパルスオキシメータを携帯することが多くなりましたが、外部光が受光部に到達しないようにするため、屋外で SpO2 を測定する時は日陰で行うように指示をします。 ただし、プロープを完全に遮光していれば問題ありません。 遮光は側面方向だけでなく、指の先端方向にも必要です。
Q3、測定値の位置(心臓の高さと比べて)
プローブが心臓より高くても低くても 誤差の原因になります
血圧の低下、手足が冷たくなっている状態、手足の浮腫が高度な状態など、末梢循環不全に陥っている患者ではセンサーが動脈の拍動を正しく検出できません。表示される SpO2値は、動脈血酸素飽和度と静脈血酸素飽和度の間の値を示すことがあります。
血圧は血管の部位によりかなりの差があり、大動脈基始部 が最も高く、末梢に行くに従って低下します。血圧が低下して血流量が低下すると、動脈拍動による脈波シグナルの変動 が小さくなって、SpO2の誤差の原因となる可能性がありま す。プローブの位置が心臓より高いと、プローブ装着部位の血流が少なくなり、低血圧や動脈硬化が高度な患者では脈波シグナルの変動が小さくなります。従って正確なSpO2 測 定できない原因となります。
一方、プロープが心臓よりかなり低い位置になると、うっ血などで静脈拍動による体動誤差が出やすくなるという問題があります。プロープは可能であれば心臓と同じくらいの高さに置くことが良いでしょう。
プローブ装着部位の末梢循環が正常であることは、1) 脈波が表示される場合には波形上にdicrotic notch を伴う脈波 シグナルが表示、2) パルスオキシメータの脈拍数と心拍数 が等しいことなどにより確認することができます。
参考:【末梢循環不全・】
https://www.umin.ac.jp/kagoshima/jgopher/2/N0232.txt
要因:末梢循環血流は臓器の代謝需要に応じてその流量が調節されて
いるが、酸素不足が明らかな場合には重要臓器の需要に対する
正常な供給が先ず優先されることに因る。つまり、心臓、脳の
ような重要器官の血流維持の為、生存に直接必要でない臓器か
ら血流が代償される。
症状:末梢冷感
アシド-シス
チアノ-ゼ
治療:①原因の除去
②血管拡張剤の使用
③保温
④輸液負荷
看護のポイント
①保温
②指示に応じた輸液、薬液の適正な管理
【【パルスオキシメーター】】出典:Wikkipedia
パルスオキシメーター(pulse oximeter)とは、検知器(プローブ)を指先や耳などに付けて、侵襲を伴わずに脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)をリアルタイムでモニターするための医療機器である。モニター結果を内蔵メモリーに記録できるものや腕時計のような小型のものもある。
【 原理】プローブは発光部と受光部(センサー)で構成されている。発光部は赤色光(波長約660nm)と赤外光(波長約940nm)を発し、これらの光が指先等を透過したもの(または反射したもの)を受光部(センサー)で測定する。 血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無により赤色光(脱酸素化ヘモグロビン(RHb)がよく吸収する)と赤外光(酸素化ヘモグロビン(O2Hb)がよく吸収する)の吸光度が異なるため、センサーで透過光や反射光を測定して分析することによりSpO2を測定することができる。透過光・反射光全体のうち動脈血を透過したものと静脈血や軟部組織を透過したものの区別は、拍動のある成分が動脈血によるものであることを利用する。このため、動脈の拍動が検知できない状態においては測定ができない。また、拍動のある脈波成分より脈拍数を計数している。なお、以上の原理より明らかなように、これらがパルスオキシメーターで検知できているということは、パルスオキシメーターのプローブが取り付けられている位置(指先のような末梢)において血行が保たれていることも意味する。 【正常値】 しかし生命維持に必要な酸素の各臓器への供給は、酸素飽和度のほか、ヘモグロビン濃度、心拍出量が関与している。必要とされる酸素量は酸素消費量と供給量のバランスであり、症例によってはより高いSpO2が求められることもある。【注意点】 拍動を感知することで飽和度を測定する動脈血とそうでないものを判別するため、拍動の検知ができない極度の低血圧、極度の末梢の血流低下、無拍動型の人工心肺装置使用時には正確な測定ができない。
パルスオキシメーターハンドブックパルスオキシメーターハンドブックwww.jrs.or.jp/uploads/.../pulse-oximeter_medical.pdf
日本呼吸器学会肺生理専門委員会2014年3月
生理学的基本事項
Q1、酸素飽和度の表記にはSpO2 と SaO2 があります。 違いは何ですか?
A SpO2はパルスオキシメータで測定した動脈血酸素飽和度を示します。 SaO2は動脈血ガス分析値から計算で求める場合と、動脈血をCO オキシ メータで直接測定する場合があります。
測定方法の違いから、表記も違っています。
動脈血酸素飽和度(arterial oxygen saturation, Sa02) は 血液中のヘモグロビンの何%が酸素と結合しているかを表 し、動脈血酸素分圧(PaO2)と相関があります。Sa02は 動脈血ガス分析装置に組み込まれたCO オキシメータで測定できますが、それに対し、経皮的にパルスオキシメー タを用いて測定したSa02は、上記と区別するためにSpO2 (pereutaneous oxygen saturation)と表記されます。パルス オキシメータではSpO2 を測定するため指尖部などの組織に 赤色光と赤外光の2つの波長の光を当て、脈拍による透過光 の変化で動脈成分を識別します。また、酸化ヘモグロビンは 赤色光をよく透過し、還元ヘモグロビンは赤色光を吸収する ため、動脈血の吸光成分の各波長における吸光度の比から 酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を求め、SpO2を 算出しています。 SpO2は測定が簡便だが、注意が必要です。
パルスオキシメータによるSp02測定は簡便で、非侵襲的 であり、持続的なモニタリングも可能ですが、測定を主に指 先の毛細血管で行うため、寒冷による末梢血管収縮などの末 梢循環障害、プロープの装着不良、汚れやマニキュアなどに よる透光性低下、体動などの影響を受け、SaO2
を正確に反 映しない場合があることに注意が必要です。
Q2,SpO2 が正常なら生体は低酸素状態に ならないのですか?
A SpO2 が正常でも生体における低酸素状態は生じることがあり、臓器の血流量低下、貧血、異常ヘモグロビンの存在する場合などがあります。
低酸素状態になる要因
生体組織への酸素供給は臓器への血流量により規定されて おり、この酸素供給量oxygen delivery: DO2)は、心拍出量と動脈血酸素含量(arterial oxygen content : CaO2)を 乗じた式で表され、動脈血酸素含量はヘモグロビン濃度に影響されます(表1)。そのため、血液中の酸素含量が充分な 状態でも、それを運搬する血液が、単位時間あたりに少しし か拍出されない、すなわち心拍出量が低下していると、組織への酸素供給量は不充分となり、また、ヘモグロビン濃度が 低い場合も動脈血に含まれる酸素の量は低下します。
その他、異常ヘモグロビンが存在する場合にも生体における低酸素血症が生じます。主な異常ヘモグロビンには一酸化炭素中毒による一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)やニトログリセリンなどの亜硝酸薬、局所麻酔薬などの薬物、アニリンなどの化学物質によって出現したり、遺伝性に出現するメトヘモグロビン(Met-HB:鉄が酸化され、三価の状態になったヘモグロビン)があります。これらの異常ヘモグロビンが 存在するとパルスオキシメータによるSpO2の測定に誤差を 生じます。Sp02の値のみでなく、動脈血ガス分析も必要になります。
表1. 酸素供給に影響を与える因子
酸素供給量(DO2) = CO x CaO2
動脈血酸素含量(CaO2) = (1.34 x Hb x SaO2/100) + PaO2 0.003
CO:心拍出量 (L/min), Hb:ヘモグロビン濃度(g/dL), Sao2:動脈血酸素飽和度(%), PaO2:動脈血酸素分圧度(mmHg)
Q3、SpO2 が正常なのに呼吸困難を訴える場合があります。 なぜですか?
A SpO2の値が呼吸困難に直接結びつくわけではないからです。 呼吸困難には、呼吸の努力感と充足感のバランスが大きく影響します。
呼吸困難が起きる状況は様々
SpO2は動脈血酸素飽和度の指標ですので、低酸素血症の指標ともなります。低酸素血症は、頭動脈小体などの化学受容体を刺激します。この情報は中枢神経系にフィードバック されて、直接的に不快感を起こしたり、呼吸中枢刺激による呼吸努力の増大を通し間接的に呼吸困難を起こしたりします。
一方、低酸素血症以外にも、高二酸化炭素血症や運動による呼吸刺激、心理的な興奮、外気温度の上昇、疾患による換気障害、など様々な刺激を通して、呼吸中枢は換気を増大さ せようと横隔膜などの呼吸筋に呼吸努力を指令します。呼吸の努力と充足感のバランスは、中枢神経系により判断され、状況によって呼吸困難と感知されます。
呼吸困難が起こる状況は、必ずしも低酸素血症とは限りません。例えば、能力の限界近くまで激しい運動をした健常人の場合、呼吸数も1回換気量も限界に達し、呼吸努力は最大となり、運動直後しばらくは、呼吸が苦しい状態が続くでしょう。臨床の運動負荷試験などで、健常人で最大負荷まで行った場合などと同様です。このような場合、SpO2がそれほど 低下するということはほとんどありません。SpO2値が正常 なのに呼吸困難を訴える、ということは珍しくないのです。
臨床では、特にSpO2が良好な場合には、呼吸困難がないものと勘違いして思い込みやすいものです。例えば、十分な酸素療法を既に行っている喘息発作や慢性閉塞性肺疾患
(COPD) 急性増悪の患者などを想像してみてください。呼 吸困難を訴えていても、酸素療法のおかげで SpO2 は正常か もしれません。しかし、実際は、発作による気管支収縮など によって十分に呼吸できない状況は、臨床ではよく見られる ことです。特に、このような状況では、SpO2が良好で、苦 しいのは気のせいだと誤認されやすいのです。患者の切実な 訴えが理解できずに正しい対応が行われない状況になり得ま すので注意が必要です。
図 1. 呼吸困難が生じるメカニズムの概略
呼吸中枢刺激因子:低酸素血症、低酸素血症以外の因子、高二酸化炭素血症 運動、他
→
呼吸筋の仕事量の増大 一呼吸努力感↑
呼吸の努力感との 充足感のアンバランス→呼吸困難感
Q4、肺から測定部位までの循環による遅れを考慮する必要がありますか?
A、循環による遅れが存在します。安静時の SPO2円の評価では問題になりませんが、変動するSPO2の評価では、場合に応じて考慮すべきです。
遅延が起こる要因を把握しておく 無呼吸から呼吸をする場合や、酸素投与した場合に、 期時にSPO2が反応せずに、10秒から30秒くらいの遅れが 生じることは、しばしば経験されます。これらの原因 として、健常者では、生理的及び機械的要因が考えられ ます。生理的要因では、肺胞気の組成が変化するまでの時間なども ありますが、メインは循環のための時間です。 肺循環で赤血球が肺胞を通って酸素化されてから左心房に到達するまで2~ 3秒かかり、左心室から末梢まで届くまでも数秒から部位によっては10秒以上の時間がかかります。
🎏鯉:実際に測定して得られる時間には、機械的な要因が加わります。SPO2の値をどのように出力しているかによって 生じるもので、 機械ごとに異なっています。また、一般に、 SPO2は、一定時間、あるいは一定の脈拍数ごとに得られた値を移動平均により求められているため、この時間の長さの 設定にも影響を受けます。機械 によっては、この設定が可変 になっている場合がありますので、移動平均時間を短くすれ は、測定値が変動しやすくなる代わりに遅延は少なくなりま すし、長くすれば測定値が安定する代わりに遅延は大きくな ります。肺疾患や循環器疾患を持つ患者では、これらに病的な要因が加わります。即ち、肺胞気の組成変化や肺およ びた体循環の循環時間の変化などによる因子です。
測定の状況が安静時であれば、これらの遅延は考慮する必 要がありませんが、酸素を投与、運動、体位変換など呼吸循 環動態が変化した直後などには、測定値に遅延が起こること を考慮しながら測定を行うなど、状況に応じた対応をとるべ きです。また、睡眠時の呼吸の検査などで、睡眠時間全体で 評価する場合には問題ありません。しかし、無呼吸イベント の前後における変化などにフォーカスを当てる場合では、換 気指標等と SpO2 変化のタイミングには遅延があることを認 識しておくべきです。
2. SpO2測定値に遅延が起こる要因
1. 機械的要因:機器自体の応答性、移動平均の設定時間 など
2. 生理的要因:肺胞から末梢循環までの到達時間 など
3 病的要因:循環時間の延長(例えば心不全)など
【測定に影響する生体側の要因及び関連事項】
Q5、測定部位は影響しますか?
A 十分な脈波信号を得られる部位に発光部と受光部が位置し、外部光が回り込まない適切なサイズのプローブであれば測定部位に影響を受けません。
パルスオキシメータの プローブの種類と測定部位の影響
パルスオキシメータのブロープには透過型と反射型がありますが、SpO2を測定する対象の測定部位や用途により多種類のものが使用されています。透過型プロープは、手指を挟むもフィンガークリップタイプが従来から使用されていますが、手指を差し込むタイプ、粘着テープで固定するタイプやディスポーザブルタイプがあります。装着する反射型ブロープは、発光部と受光部が同一面に存在し、前額部などに装着 します。
手指・足趾・耳朶などに使用する際、受光部で検出するシグナルレベルは非常に小さいため、正確な値を得るためには 装着部位の厚みや装着状態に注意しなければなりません。
発光部と受光部の間隔が広くなるに従って透過光強度が低下し、反対に、間隔が狭いと血流が少なくなって脈波シグナルが小さくなるため、通常6~18mm厚(10mm 程度が最適)の部位に装着します。耳朶での測定は、耳朶厚が10mm 以下で血流量が少なく脳波シグナルが小さいため、手指・足趾で測定する方が良いでしょう。しかし、四肢末梢循環不全状態では、比較的血流が保たれる耳朶や前額部にブロープを 装着して測定した方がより正確でしょう。
フィンガークリップタイプのブロープで測定する場合は、 発光部と受光部が爪の生え際付近の位置に装着すると脈波シ グナルが比較的大きくなり、関節部位に装着するとシグナルが小さくなります。また、先端と指先に隙間ができると 外部光が回り込みやすくなるため、被験者に合わせ、隙間の空かないプロープを選択します。指を90度、180度に回しても、十分な脳波シグナルを得られ、外部光が回り込まなければ、正確なSpO2値が得られますが、通常は発光部を爪側 にします。爪白癬症で爪が著しく肥厚し、表面が凹凸の場合には、発光部と受光部の間隔や外部光が回り込むことに注意しなければなりません。
粘着テープで固定するタイプとディスポーザブルプロープ は、発光部と受光部が互いに対向しないと、生体を透過しない外部光が、受光部に回り込みやすくなる可能性が大きくな ります。
なお前出(P6. Q4) にあるように、動脈血ガスの変化は主として循環による遅れのために、手指で耳朶より数秒、足趾 ではそれ以上に遅れるため、足趾に装着したプロープでは、 呼吸状態の変動をすばやく捉えることができない点は考慮する必要があります。
Q6、測定値に影響する因子には何がありますか?
A、プロープ装着不良、吸光度曲線に混入するノイズ、吸光度曲線の測定障害、 透過光強度の減弱をする物質の存在により測定値が影響されます。
正確な吸光度曲線が得られないと誤差を生じます。
最近のパルスオキシメータは、誤差要因となる各因子の影響が少なくなるように改良が進んできましたが、測定誤差を生じるいくつかの要因があり、使用に際してはこれらの事に留意する必要があります。
パルスオキシメータの誤差要因
①プローブの装着不良:ブロープの装着が不良であると、測定に必要な服波信号が得られずに SpO2が 低下します。また、ブロープの発光部と受光部の汚れも、脈波信号が減弱する原因となります。
②吸光度曲線に混入するノイズ:吸光度曲線に混入するノイズの原因として、体動・電磁波・外部光などがあります。体動は、静脈血や周囲組織の吸光度を変化させ、特に心拍数の倍数に近い 周期的な体動は誤差を生じ易くします。テレビなどの電化製品、携帯電話の使用時や電気メスなどの電磁放射の多い医療機器の近くで測定すると、電磁波の影響により正確に測定ができないことがあります。また、照明灯、蛍光灯、赤外線加 熱ランプ、直射日光などの外部光が強すぎると、誤差の原因となります。
③吸光度曲線の測定障害:吸光度曲線の測定障害としては、寒冷による血管の収縮や血管の圧迫により血流が減少すると、透過光量の変動情報が得られずに正確な測定が困難となることがあります。
④透過光強度をする物質の存在:
透過光強度の弱をする物質の存在としては、異常ヘモグロビン、体内に注入された色素、マニキュアや皮膚の色素沈着などがあります。異常ヘモグロビンは、 喫煙や一酸化炭素中毒による一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)や亜硝酸薬・抗不整脈薬などの服用によるメトヘモグロビン(Met-Hb)などがあります。検査で使用するインドシアニングリーン(ICG)やカルディオグリーン、重症メトヘモグロビン血症の治療に用いるメチレンブルーの静注は、透過光強度に影響します。 マニキュアや皮膚の色素沈着などは透過光を吸収するため、生体を透過するシグナルが変化します。
Q7、測定に際し、プローブ取扱い上の注意点は何ですか?
A、プローブの移動、外部光、測定する状況等によって SpO2 値が影響されることに留意して、体型や体重に応じたプローブを選択します。
プローブの装着状況によって SpO2は誤差を生じます
前述したようにパルスオキシメータのブロープには透過型性と反射型があり、透過型ブロープは、手指を挟むフィンガークリップタイプ、手指を差し込むタイプ、粘着テープで固定するタイプやディスポーザブルタイプがあります。
体動によりプロープが動くと、動脈と静脈の脈波シグナルの区別ができないことがあり、また、外部光が回り込むと誤差の原因となります。ブロープは体型や体重に応じて選択してテーブで動かないように固定し、可能な限り動きが少ない部位に装着します。また、プロープと本体回路を接続するケーブルの揺れも、誤差原因になることに留意する必要があ ります。ブロープを固定するためテープで締めすぎると、血管が過度に圧迫され、装着部局所が循環不全に陥って動脈の脈波シグナルを検出できません。また、発光部の温度は通常は2~3℃上昇し、圧迫にり血流が途絶えると代謝によって産生される熱が放散されません。不穏が高度な呼吸不全患者に対して、ブロープを外れないように一カ所に強く長時間固定すると、装着局所の温度が上昇して低温熱傷を生じる可能性が あります。 発光部と受光部の表面の汚れは、基本的に吸光度の相対比でSpO2を算出するため、わずかな汚れは SpO2値に影響しません。しかし、高度な汚れは脈波シグナルを減弱する可能性もあり、使用後にエタノールを含んだ脱脂綿で清掃・消毒 します。
パルスオキシメータは、受光部に外部光が回り込むと SpO2値が影響を受けます。屋外で SpO2を測定する場合は 太陽光の干渉を受けるため、日陰で外部光が受光部に到達し ないように測定すべきです。
末梢循環不全に陥っている患者では脈波シグナルが減弱するために、正確なSpO2を測定できない可能性があり、プロープの位置や固定方法により影響を受けます。プローブ装着部位の末梢循環が正常であることを確認してから、SpO2を測 定しましょう。
携帯電話の使用時も電磁波が放射されるため、医療機関で は携帯電話の使用が制限されています。パルスオキシメータも、受光素子(フォトダイオード:PD)が電磁波の影響を 受けるため誤差原因となります。
Q①プローブの大きさはフィットするものが良いか? プローブの挟み方は? 圧迫の影響は?
プローブ装着状態によっては、SpO2の誤差や皮膚障害を生じます (体動時に軟部組織や静脈血が動くと、動脈の拍動によるシグナルの変動に影響するためにSpO2低の誤差原因となり、体動時にSp02値が不安定である場合は個頼性が乏しく装着部に対してプロープが大きすぎると、ブロープの動きも加わって体動の影響が大きくなります。また、プロープと本体をつなぐケーブルの揺れもプロープを動かすため、揺れが伝わらないようにテープでケーブルを固定します。指と耳朶ブロープの影響については、手指プローブの方が動きによる誤差が少ないと報告されており、一般に手指の大きさと形状は個人差が少ないために耳朶よりプロープは密着し、発光部と受光部での光の散乱変動が少なくなります。反対に圧迫がきつすぎると動脈拍動が減弱~消失し、測定に必要な十分な脈波シグナルが得られなくなることがあり、 プローブは血流がある状態を維持できるように装着しなけれ ばなりません。固定がきつすぎると装着部位の低温熱傷や圧迫による皮膚障害が起こりやすくなります。発光部の温度上 昇は通常は2°C程度ですが、圧迫により血流が途絶えると代謝によって産生される熱が放散されないため、長時間装着すると局所的に温度が上昇してプローブの圧迫との相乗作用により低温熱傷を生じる可能性があります。
フィンガークリップタイプの挟み方については、SpO2 の測定に必要な十分な脈波シグナルを得られて、外部光が回り込まないように装着すれば制限はありません。
Q②、外部光の影響は
A、外部光は動脈の脈波シグナルの変動に影響して誤差を生じます。 パルスオキシメータは、動脈血だけが拍動していると仮定して脈波シグナルの変動からSpO2を測定します。測定中に、外部光が受光部に回り込むと誤差の原因となります。
パルスオキシメータの発光は、赤色光の発光・赤外光の発光・両者が発光しない3フェーズを1サイクルとします。機種により異なりますが毎秒数十回から数百回の発光を繰り返し、一定のアルゴリズムを用いてSpO2を測定しています。 蛍光灯や手術室の無影灯など外部光は、3つのフェーズに影響を与え、誤差の原因となります。またマニキュアは種類によって、発光部から照射した光を強く減衰させることがありますので、外部光の影響を増強する可能性があります。
屋外でSpO2を測定する際は、太陽光の赤色光や赤外光の千渉を受けます。最近は安価なこともあり、患者自身が外出や散歩などにパルスオキシメータを携帯することが多くなりましたが、外部光が受光部に到達しないようにするため、屋外で SpO2 を測定する時は日陰で行うように指示をします。 ただし、プロープを完全に遮光していれば問題ありません。 遮光は側面方向だけでなく、指の先端方向にも必要です。
Q3、測定値の位置(心臓の高さと比べて)
プローブが心臓より高くても低くても 誤差の原因になります
血圧の低下、手足が冷たくなっている状態、手足の浮腫が高度な状態など、末梢循環不全に陥っている患者ではセンサーが動脈の拍動を正しく検出できません。表示される SpO2値は、動脈血酸素飽和度と静脈血酸素飽和度の間の値を示すことがあります。
血圧は血管の部位によりかなりの差があり、大動脈基始部 が最も高く、末梢に行くに従って低下します。血圧が低下して血流量が低下すると、動脈拍動による脈波シグナルの変動 が小さくなって、SpO2の誤差の原因となる可能性がありま す。プローブの位置が心臓より高いと、プローブ装着部位の血流が少なくなり、低血圧や動脈硬化が高度な患者では脈波シグナルの変動が小さくなります。従って正確なSpO2 測 定できない原因となります。
一方、プロープが心臓よりかなり低い位置になると、うっ血などで静脈拍動による体動誤差が出やすくなるという問題があります。プロープは可能であれば心臓と同じくらいの高さに置くことが良いでしょう。
プローブ装着部位の末梢循環が正常であることは、1) 脈波が表示される場合には波形上にdicrotic notch を伴う脈波 シグナルが表示、2) パルスオキシメータの脈拍数と心拍数 が等しいことなどにより確認することができます。
参考:【末梢循環不全・】
https://www.umin.ac.jp/kagoshima/jgopher/2/N0232.txt
要因:末梢循環血流は臓器の代謝需要に応じてその流量が調節されて
いるが、酸素不足が明らかな場合には重要臓器の需要に対する
正常な供給が先ず優先されることに因る。つまり、心臓、脳の
ような重要器官の血流維持の為、生存に直接必要でない臓器か
ら血流が代償される。
症状:末梢冷感
アシド-シス
チアノ-ゼ
治療:①原因の除去
②血管拡張剤の使用
③保温
④輸液負荷
看護のポイント
①保温
②指示に応じた輸液、薬液の適正な管理
【【パルスオキシメーター】】出典:Wikkipedia
パルスオキシメーター(pulse oximeter)とは、検知器(プローブ)を指先や耳などに付けて、侵襲を伴わずに脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)をリアルタイムでモニターするための医療機器である。モニター結果を内蔵メモリーに記録できるものや腕時計のような小型のものもある。
【 原理】プローブは発光部と受光部(センサー)で構成されている。発光部は赤色光(波長約660nm)と赤外光(波長約940nm)を発し、これらの光が指先等を透過したもの(または反射したもの)を受光部(センサー)で測定する。 血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無により赤色光(脱酸素化ヘモグロビン(RHb)がよく吸収する)と赤外光(酸素化ヘモグロビン(O2Hb)がよく吸収する)の吸光度が異なるため、センサーで透過光や反射光を測定して分析することによりSpO2を測定することができる。透過光・反射光全体のうち動脈血を透過したものと静脈血や軟部組織を透過したものの区別は、拍動のある成分が動脈血によるものであることを利用する。このため、動脈の拍動が検知できない状態においては測定ができない。また、拍動のある脈波成分より脈拍数を計数している。なお、以上の原理より明らかなように、これらがパルスオキシメーターで検知できているということは、パルスオキシメーターのプローブが取り付けられている位置(指先のような末梢)において血行が保たれていることも意味する。 【正常値】 しかし生命維持に必要な酸素の各臓器への供給は、酸素飽和度のほか、ヘモグロビン濃度、心拍出量が関与している。必要とされる酸素量は酸素消費量と供給量のバランスであり、症例によってはより高いSpO2が求められることもある。【注意点】 拍動を感知することで飽和度を測定する動脈血とそうでないものを判別するため、拍動の検知ができない極度の低血圧、極度の末梢の血流低下、無拍動型の人工心肺装置使用時には正確な測定ができない。
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