024.杜子春
【杜子春】。。。。
。。。芥川龍之介。。。。
。。。芥川龍之介。。。。
ある春の日暮です。
唐の都、洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がおりました。。。。。
若者は名を、杜子春、といって、元は金持の息子でしたが、今は財産をつかい尽して、その日の暮しにも困る位、あわれな身分になっているのです。。。。
何しろその頃洛陽といえば、天下に並ぶもののない、はんじょうを極きわめた都ですから、往来にはまだしっきりなく、人や車が通っていました。門いっぱいに当っている、油のような夕日の光の中に、老人のかぶった、薄い、絹の帽子や、トルコの女の金、の、みみわや、しろうまに飾った色糸のたづなが、絶えず流れてゆくようすは、まるで絵のような美しさです。。。。
唐の都、洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がおりました。。。。。
若者は名を、杜子春、といって、元は金持の息子でしたが、今は財産をつかい尽して、その日の暮しにも困る位、あわれな身分になっているのです。。。。
何しろその頃洛陽といえば、天下に並ぶもののない、はんじょうを極きわめた都ですから、往来にはまだしっきりなく、人や車が通っていました。門いっぱいに当っている、油のような夕日の光の中に、老人のかぶった、薄い、絹の帽子や、トルコの女の金、の、みみわや、しろうまに飾った色糸のたづなが、絶えず流れてゆくようすは、まるで絵のような美しさです。。。。
しかし、杜子春は相変らず、門の壁にからだをもたせて、ぼんやりと空ばかりをながめていました。空には、もうほそい月が、うらうらと、なびいた、かすみの中に、まるで爪のあとかと、思う程、かすかに、白く浮んでいるのです。。。。。
。。。日は暮れるし、腹は減るし、そのうえ、もう、どこへ行っても、泊めてくれる所は、なさそうだし。。。
。。。こんな思いをして生きている位なら。。。
。。。いっそう、川へでも、みを投げて、死んでしまったほうが、ましかも知れない。。。。
。。。日は暮れるし、腹は減るし、そのうえ、もう、どこへ行っても、泊めてくれる所は、なさそうだし。。。
。。。こんな思いをして生きている位なら。。。
。。。いっそう、川へでも、みを投げて、死んでしまったほうが、ましかも知れない。。。。
。。。。。。。。わたしですか。私は今夜、寝る所もないので、どうしたものかと、考えているのです。。。。
老人の尋ね方が急でしたから、杜子春はさすがに、目を伏せて、思わず正直な答えをしてしまいました。。。。
老人は、
。。。。そうか。それは可哀そうだな。。。。
と、ゆうと、。。
。。しばらくなにごとかか考えているようでしたが、やがて、往来にさしている、夕日の光を指さしながら、。。
。。。では俺がいいことを、一つ教えてやろう。今、この夕日の中に立って、お前の影が地に映ったら、その頭に当る所を、よなかに掘って見るがよい。きっと、車に、お~ごんがいっぱいうまっている、はずだから。。。
老人の尋ね方が急でしたから、杜子春はさすがに、目を伏せて、思わず正直な答えをしてしまいました。。。。
老人は、
。。。。そうか。それは可哀そうだな。。。。
と、ゆうと、。。
。。しばらくなにごとかか考えているようでしたが、やがて、往来にさしている、夕日の光を指さしながら、。。
。。。では俺がいいことを、一つ教えてやろう。今、この夕日の中に立って、お前の影が地に映ったら、その頭に当る所を、よなかに掘って見るがよい。きっと、車に、お~ごんがいっぱいうまっている、はずだから。。。
杜子春は、
「ほんとうですか」
。。と、驚いて、伏せていた眼をあげました。。。。
「ほんとうですか」
。。と、驚いて、伏せていた眼をあげました。。。。
。。。ところが、不思議なことに。。。あの老人はどこへいったのか、もうあたりには、それらしい、影も形も見当りません。。。。そのかわり、空の月の色は、前よりも、なお、白くなつて、休みない往来の、人通りの上には、も~う、気の早い、こうもりが、にさんびき、ひらひらと舞っていました。。。。。。。
。。。。。。
。。。第二章。。。。。。。。
。。。 杜子春は、いちにちの、うちに、洛陽の都でも、一番の、おおがねもちに、なりました。。。。あの老人の言葉の通り、夕日に影を映して見て、その頭に当るところを、夜中に、ひとしれず、掘つて見たら、大きな車に、あまるくらいの、おおごんが、ひとやま、出て来たのです。
おおがねもちに、なつた杜子春は、すぐに立派な家を買って、玄宗皇帝にも負けないくらい、贅沢な暮しを、始めました。欄稜の、酒を買いよせるやら、桂州の竜眼肉をとりよせるやら、いちにちに、よんど、色の変る牡丹を庭に植えさせるやら、白孔雀を何羽も放し飼いにするやら、玉を集めるやら、錦を、ぬわせるやら、香木の車を造らせるやら、象牙の椅子を、あつらえるやら、その贅沢を一々書いていては、いつになっても、この話が、おしまいに、ならない、くらいです。。。。。
おおがねもちに、なつた杜子春は、すぐに立派な家を買って、玄宗皇帝にも負けないくらい、贅沢な暮しを、始めました。欄稜の、酒を買いよせるやら、桂州の竜眼肉をとりよせるやら、いちにちに、よんど、色の変る牡丹を庭に植えさせるやら、白孔雀を何羽も放し飼いにするやら、玉を集めるやら、錦を、ぬわせるやら、香木の車を造らせるやら、象牙の椅子を、あつらえるやら、その贅沢を一々書いていては、いつになっても、この話が、おしまいに、ならない、くらいです。。。。。
。。。。
。。。 すると、こういう、うわさを、聞いて、今までは、道であっても、挨拶さえ、しなかった友だちなどが、朝夕遊びにやって来ました。それも、一日ごとに、数が増して、半年ばかり経つ内には、洛陽の都に名を知られた、才子や美人が多い中で、杜子春の、家へこないものは、一人も、いないくらいに、なってしまったのです。。。。。杜子春は、このお客たちを相手に、毎日、酒盛りを、開きました。その酒盛りの、又、豪勢なことは、なかなか、口には尽されません。。。。ごく、かいつまんだだけをお話しをしても、杜子春が、きんのさかづきに、西洋から来た、葡萄酒を汲んで、天竺生れの魔法使いが、刀を呑んで見せる芸に、見とれていると、そのまわりには、20人の、女たちが、10人は、ひすいの、蓮の花を、10人は、めのうの、牡丹の花を、いづれも髪に飾りながら、笛や琴をふしおもしろく、奏でている、という景色なのです。
しかし、いくら、おおぅがねもちでも、お金には際限が、ありますから、さすがに、贅沢屋の、杜子春も、一年、二年と、経つうちには、だんだんと貧乏になり出しました。そうすると、人間は薄情なもので、昨日までは毎日来た友だちも、今日は門の前を通ってさえ、挨拶ひとつして行きません。ましてとうとう三年目の春、又、杜子春が以前の通り、一文無しになって見ると、広い洛陽の都の中にも、彼に宿を貸そうという家は、一軒も、なくなってしまいました。いや、宿を貸すどころか、今では、お椀に一杯の水も、恵んでくれるものは、いないのです。
そこで、杜子春は、ある日の夕方、もう一度、あの洛陽の西の門の下へ行って、ぼんやりと、空を眺めながら、途方に暮れて立っていました。すると、やはり昔のように、独眼の老人が、どこからか、姿を現して、。。。
。。。お前は何を考えているのだ。。。。。
と、
声をかけるではありませせんか。。。。。
杜子春は、独眼の老人の顔を見ると、はずかしそうに、下を向いたまま、しばらくは、返事もしませんでした。。。。
しかし、
。。。独眼の老人はその日も親切そうに、同じ言葉を、繰返しますから、こちらも前と同じやうに、。。。
。。。私は今夜寝る所もないので、どうしたものかと考えているのです。。。。
と、
。。おそるおそる、返事を、しました。。。
。。。。そうか。。。。。それは、かわいそうだな、では俺がよいことを、ひとつ教えてやろう。。。。
今、この夕日の中へ立って、お前の影が地面に映ったら、その胸に当るところを、夜中に掘って見るがよい。
。。。きっと車に、いっぱいの、おおごんが埋まっているはずだから。。。。。
独眼の老人はこう言ったと思うと、今度も、また、人ごみの中へ、掻き消すように、隠れてしまいました。。。。。
杜子春は、その翌日から、たちまち、天下第一のおお金もちに返りました。と同時に、相変らず、しほうだいな、贅沢をし始めました。。。。庭に咲いている牡丹の花、その中に眠つている白孔雀、それから刀を呑んで見せる、天竺から来た魔法使い。。。。。
すべてが昔の通りなのです。
。。。。 ですから車にいっぱいあった、あの、おびただしい、おおごんも、又、三年ばかりたつうちに。。すっかり、なくなつてしまいました。
しかし、いくら、おおぅがねもちでも、お金には際限が、ありますから、さすがに、贅沢屋の、杜子春も、一年、二年と、経つうちには、だんだんと貧乏になり出しました。そうすると、人間は薄情なもので、昨日までは毎日来た友だちも、今日は門の前を通ってさえ、挨拶ひとつして行きません。ましてとうとう三年目の春、又、杜子春が以前の通り、一文無しになって見ると、広い洛陽の都の中にも、彼に宿を貸そうという家は、一軒も、なくなってしまいました。いや、宿を貸すどころか、今では、お椀に一杯の水も、恵んでくれるものは、いないのです。
そこで、杜子春は、ある日の夕方、もう一度、あの洛陽の西の門の下へ行って、ぼんやりと、空を眺めながら、途方に暮れて立っていました。すると、やはり昔のように、独眼の老人が、どこからか、姿を現して、。。。
。。。お前は何を考えているのだ。。。。。
と、
声をかけるではありませせんか。。。。。
杜子春は、独眼の老人の顔を見ると、はずかしそうに、下を向いたまま、しばらくは、返事もしませんでした。。。。
しかし、
。。。独眼の老人はその日も親切そうに、同じ言葉を、繰返しますから、こちらも前と同じやうに、。。。
。。。私は今夜寝る所もないので、どうしたものかと考えているのです。。。。
と、
。。おそるおそる、返事を、しました。。。
。。。。そうか。。。。。それは、かわいそうだな、では俺がよいことを、ひとつ教えてやろう。。。。
今、この夕日の中へ立って、お前の影が地面に映ったら、その胸に当るところを、夜中に掘って見るがよい。
。。。きっと車に、いっぱいの、おおごんが埋まっているはずだから。。。。。
独眼の老人はこう言ったと思うと、今度も、また、人ごみの中へ、掻き消すように、隠れてしまいました。。。。。
杜子春は、その翌日から、たちまち、天下第一のおお金もちに返りました。と同時に、相変らず、しほうだいな、贅沢をし始めました。。。。庭に咲いている牡丹の花、その中に眠つている白孔雀、それから刀を呑んで見せる、天竺から来た魔法使い。。。。。
すべてが昔の通りなのです。
。。。。 ですから車にいっぱいあった、あの、おびただしい、おおごんも、又、三年ばかりたつうちに。。すっかり、なくなつてしまいました。
。。。。
。。。第三章。。。。。
。。。。
。。。お前は、何を考えているのだ。。。
独眼の、老人は、三度、杜子春の、前へ来て、同じことを問いかけました。。。。
勿論、杜子春はその時も、
洛陽の西の門の下に、
ほそぼそと、霞をやぶっている、。。。
みかづきの、光を眺めながら、
ぼんやりと、
たたずんで、いたのです。
独眼の、老人は、三度、杜子春の、前へ来て、同じことを問いかけました。。。。
勿論、杜子春はその時も、
洛陽の西の門の下に、
ほそぼそと、霞をやぶっている、。。。
みかづきの、光を眺めながら、
ぼんやりと、
たたずんで、いたのです。
。。。杜子春は。。。
。。。私ですか。。。
私は、今夜、寝るところもないので、どうしようかと、思っているのです。。。。
すると、独眼の老人は、
。。。私ですか。。。
私は、今夜、寝るところもないので、どうしようかと、思っているのです。。。。
すると、独眼の老人は、
。。。そうか。それは、かわいそうだな。では、俺が、よいことを、教えてやろう。。。。
今、この夕日の中へ立って、お前の影が地に映ったら、その腹に当る所を、夜中に掘って見るがよい。。。。
。きっと車に、
。いっぱいの。。
独眼の老人が、ここまで言いかけると。。
今、この夕日の中へ立って、お前の影が地に映ったら、その腹に当る所を、夜中に掘って見るがよい。。。。
。きっと車に、
。いっぱいの。。
独眼の老人が、ここまで言いかけると。。
。。。杜子春は、急に手を挙げて、その言葉を、さえぎりました。
。。。いや、
お金は、もういらないのです。。。。
。。。いや、
お金は、もういらないのです。。。。
独眼の老人は、
。。。かねは、もういらない?
。。 わはぁはぁはぁ。。。、
では、贅沢を、することには
とうとう、飽きてしまったと、
見えるな。。。。
。。独眼の老人はいぶかしそうな
。。眼つきをしながら、じっと、
杜子春の、顔を見つめました。
。。。何、贅沢に飽きたのじゃ、
ありません。人間というものに、
愛想が、つきたのです。。。。
。。。杜子春は、不平そうな顔を、
しながら、つっけんどんに、
こう、いい、ました。。。。
。。。かねは、もういらない?
。。 わはぁはぁはぁ。。。、
では、贅沢を、することには
とうとう、飽きてしまったと、
見えるな。。。。
。。独眼の老人はいぶかしそうな
。。眼つきをしながら、じっと、
杜子春の、顔を見つめました。
。。。何、贅沢に飽きたのじゃ、
ありません。人間というものに、
愛想が、つきたのです。。。。
。。。杜子春は、不平そうな顔を、
しながら、つっけんどんに、
こう、いい、ました。。。。
。。。独眼の老人は、杜子春に聞きました。
。。それは、おもしろいな。。。
どうして、また、人間に、
愛想が、つきたのだ?。。。
。。それは、おもしろいな。。。
どうして、また、人間に、
愛想が、つきたのだ?。。。
。。。杜子春は、答えました。
。。。人間は、みんな、薄情です。。。
。。私が、おおぅがねもちに、
なった時には、
わたしに、気にいられようとして、
わたしのゆうことを、
なんでも、きいて、
機嫌をとりますけど、
一旦貧乏になって、ごらんなさい。
態度を急に、変えます。。。。
。。そんなことを考えると、たとえ、。。
。。。人間は、みんな、薄情です。。。
。。私が、おおぅがねもちに、
なった時には、
わたしに、気にいられようとして、
わたしのゆうことを、
なんでも、きいて、
機嫌をとりますけど、
一旦貧乏になって、ごらんなさい。
態度を急に、変えます。。。。
。。そんなことを考えると、たとえ、。。
もういちど、おおぅがねもち、になったところが、
なんにもならない
ような気がするのです。。。。
。。。 独眼の老人は、
杜子春の、言葉を聞くと、
急に、にやにやと笑い出しました。
。。そうか。いや、お前は若い者には、めずらしく
なんにもならない
ような気がするのです。。。。
。。。 独眼の老人は、
杜子春の、言葉を聞くと、
急に、にやにやと笑い出しました。
。。そうか。いや、お前は若い者には、めずらしく
。。。物が、わかる男だ。。。。
では、これからは貧乏をしても、
安らかに、暮してゆくつもりか。。。。
杜子春は、ちょっと、ためらいました。
杜子春は、ちょっと、ためらいました。
。。。。しかし、
。。。すぐに、思い切って。。
目を、挙げると、
訴えるやうに、
独眼の老人の、顔を見ながら、
。。。それも、今の私には出来ません。。。。
ですから、私は、あなたの弟子になって、
仙術の、修業を。したいと思うのです。。。
私には分かります。隠さないでください。。。。
あなたは、道徳の、高い仙人なのでしょう?。。。。
仙人、でなければ、一夜の、うちに私を、
天下第一のおおぅがねもちに、することは、出来ない筈です。
どうか、私の先生になって、
不思議な仙術を教えて下さい。。。。。。
。。。独眼の老人は
。。。独眼の老人は
眉を、ひそめたまま、暫くは黙って、
なにごとかを、考えていたようでした。。。
。。。しかし、。。やがて、また。にこにこ、笑いながら、
。。。いかにも、俺は、
。。。いかにも、俺は、
がびさん、に、すんでいる、鉄冠子と、いう仙人だ。。。。。
。。。始め、お前の、顔を見た時、
どこか、ものわかりが、よさそうだったから、
二度まで、ぉおおがねもちに、してやったのだが、
それほど、仙人に、なりたければ、俺の、弟子に、とり立ててやろう。。。。
と、
こころよく、願いをききいれて、くれました。
杜子春は、喜んだの、喜ばないのでは、ありません。。。。
杜子春は、喜んだの、喜ばないのでは、ありません。。。。
独眼の老人の、言葉が、
まだ、終らないうちに、
杜子春は、大地に、ひたいを、おしつけて、
なんども。鉄冠子に、おじぎを、しました。
。。。いや、そう、御礼などは言ってもらわなくてもよい。。。。
。。。いや、そう、御礼などは言ってもらわなくてもよい。。。。
いくら、俺の、弟子に、したところで、
立派な、仙人に、なれるか、なれないかは、
お前次第で、きまること、だからな。。。。。
――しかし、。。
ともかく、まづ、俺と、いっしょに、
がびさん、の、山奥へ来て、見るがよい。
おお~、さいわい、ここに竹の杖が一本落ちておる。
では、早速、これへ、乗って、ひとっ跳びに、
空を、渡ると、しよう。。。。。。
鉄冠子はそこにあった、青い竹を、
鉄冠子はそこにあった、青い竹を、
いっぽん、拾い上げると、口の中に
じゅもんを、となえながら、杜子春と、いっしょに
。。。その竹へ、馬にでも、乗るように、またがりました。。。。
すると、不思議では、ありませんか。。。。
竹の杖は、たちまち、竜の、ように、
勢い、よく、大空へ舞いのぼって、
晴れ渡った、春の、夕空を、
。。がびさんの、方角へ、飛んで、ゆきました。。。。。
杜子春は、きもを、つぶしながら、恐る恐る、
杜子春は、きもを、つぶしながら、恐る恐る、
真下を、見おろしました。。。。
しかし、
下には、ただ、青い山々が
、夕あかりの、底に見えるばかりで、。。
あの、洛陽の、都の、西の門は、とっくに、霞にまぎれました。。。。
どこを、探しても、洛陽の、都の、西の門は、見当りません。。。。。
。。。そのうちに、
鉄冠子は、
白い、もみあげまでのびた、あご髭を、風に、吹かせて、。。
高らかに、歌をうたい出しました。。。。。
。。大胆にも、俺は、おおきな大きな蛇を、
ふところの中に、いれて。。。
。。三度、岳陽の、まちの。。。
。。大きな、もんに。。はいって、いっても。。。
。。誰ひとりも、気が、つかない。。。
。。高らかに、俺は歌を、歌いながら。。。。
。。おおきな大きな、湖の上を、
飛んでゆく、のだ。。。。
ふところの中に、いれて。。。
。。三度、岳陽の、まちの。。。
。。大きな、もんに。。はいって、いっても。。。
。。誰ひとりも、気が、つかない。。。
。。高らかに、俺は歌を、歌いながら。。。。
。。おおきな大きな、湖の上を、
飛んでゆく、のだ。。。。
と、
鉄冠子はうたった、のでした。。。。。。
。。。。第四章。。。。。
。。。。。ふたりを、乗せた、竹の杖は、まもなく、峨眉山へ、舞い、おりました。。。。
。。。。
。。。。峨眉山は、深い谷に、臨んだ、幅の広い、一枚岩の、上でしたが、よくよく、高い所だと見えて、北の空の真ん中にある、北斗の星が、茶碗ぐらいの、大きさに光って、いました。。。。
。。。。もとより、人が住まなくなった、山なのですから、あたりはし~んと、静まり返つて、やっと、耳に聞こえてくるものは、うしろの絶壁に、生えている、曲りくねった、ひとかぶの、松の木が、こうこうと夜風に、鳴る音だけなのです。。。。
。。。。もとより、人が住まなくなった、山なのですから、あたりはし~んと、静まり返つて、やっと、耳に聞こえてくるものは、うしろの絶壁に、生えている、曲りくねった、ひとかぶの、松の木が、こうこうと夜風に、鳴る音だけなのです。。。。
。。。。二人がこの岩の上に来ると、
.....鉄冠子は、杜子春を、絶壁の下に坐らせて、
。。。。俺は、これから、天の上へのぼって、女神さまに、お目にかかって来るから、お前は、そのあいだ、ここに、座って、俺が帰るのを待っているがよい。。。。。多分、俺が、いなくなると、いろいろな、ましょうが、現れて、お前を、たぶらかそうとするだろうが、たとえ、どんなことが起ろうとも、けっして、声を出すのではないぞ。。。。。。もし、ひとことでも、口を利いたら、お前は。到底、仙人にはなれないものだと、覚悟をしろ。。。。よいか。。。。。天地が、裂けても、黙っているのだぞ。。。。。と、
言いました。。。。。
。。。。俺は、これから、天の上へのぼって、女神さまに、お目にかかって来るから、お前は、そのあいだ、ここに、座って、俺が帰るのを待っているがよい。。。。。多分、俺が、いなくなると、いろいろな、ましょうが、現れて、お前を、たぶらかそうとするだろうが、たとえ、どんなことが起ろうとも、けっして、声を出すのではないぞ。。。。。。もし、ひとことでも、口を利いたら、お前は。到底、仙人にはなれないものだと、覚悟をしろ。。。。よいか。。。。。天地が、裂けても、黙っているのだぞ。。。。。と、
言いました。。。。。
。。。。杜子春は、
。。。。私は大丈夫です。けっして、声なぞは、出しは、いたしません。。。。。
たとえ、命がなくなったとしても、絶対に、黙っています。
と、
こたえました。。。。
鉄冠子は
。。。。。。そうか。それを聞いて、俺も安心した。では、俺は、いって来るから。。。。。
。。。すると、
杜子春に、別れの言葉を言うと。。。
また、あの竹の杖に、またがって、
、月と星の光だけでも、
険しく、尖って、
はっきりとみえる、山々の上に広がる空の中へと
まっすぐと、飛んでゆき、、消えてしまいました。。。。
。。。。。。そうか。それを聞いて、俺も安心した。では、俺は、いって来るから。。。。。
。。。すると、
杜子春に、別れの言葉を言うと。。。
また、あの竹の杖に、またがって、
、月と星の光だけでも、
険しく、尖って、
はっきりとみえる、山々の上に広がる空の中へと
まっすぐと、飛んでゆき、、消えてしまいました。。。。
。。。杜子春は、たった一人、岩の上に坐ったまま、静かに星を眺めていました。すると、かれこれ、1時間ばかり経って、奥深い山の、冷たい空気が、肌寒く、薄い着物に、しみこんできたころ、突然、空の中から声があがりました。。。。
。。。「そこにおるのは、何者だ。。。。。
と、叱りつけるのでございます。。。。。
。。。 しかし、杜子春は、仙人の教えの通り、何とも、返事をせずに、おりました。。。。
。。。「そこにおるのは、何者だ。。。。。
と、叱りつけるのでございます。。。。。
。。。 しかし、杜子春は、仙人の教えの通り、何とも、返事をせずに、おりました。。。。
。。。。ところが、また、しばらくすると、やはり、同じ声が響いて。。。
。。。。返事をしないのだな。。。命はないものと、覚悟しろ。。。。
と、
いかめしく、おそろおしく、おどし、つけるのです。。。。
。。。杜子春は、勿論、黙っておりました。。。。
。。。。返事をしないのだな。。。命はないものと、覚悟しろ。。。。
と、
いかめしく、おそろおしく、おどし、つけるのです。。。。
。。。杜子春は、勿論、黙っておりました。。。。
。。。 すると、
どこからか、登って来たのか、らんらんと、眼を、光らせた百獣の、王、虎が、こつぜんと、岩の上に躍りあがって、杜子春の、姿を睨みながら、大きな声で、ほえたのでございます。。。。
それどころか、それと同時に、頭の上の松の枝が、はげしく、そして、ざわざわと揺れたかと思うと、その瞬間、うしろの、絶壁のてっぺんからは、10メートルの巨大な白蛇が、まるで、炎のような舌を出して、見る見るうちに、近くへ、おりて来るではありませんか。。。。
杜子春は、しかし、平然と、眉毛も動かさずに、じっと、坐っておりました。。。。
どこからか、登って来たのか、らんらんと、眼を、光らせた百獣の、王、虎が、こつぜんと、岩の上に躍りあがって、杜子春の、姿を睨みながら、大きな声で、ほえたのでございます。。。。
それどころか、それと同時に、頭の上の松の枝が、はげしく、そして、ざわざわと揺れたかと思うと、その瞬間、うしろの、絶壁のてっぺんからは、10メートルの巨大な白蛇が、まるで、炎のような舌を出して、見る見るうちに、近くへ、おりて来るではありませんか。。。。
杜子春は、しかし、平然と、眉毛も動かさずに、じっと、坐っておりました。。。。
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