030宮本.寝たきり高齢者食事の強制

【有料老人ホーム事故原因ランキング 2位・誤薬、3位・打撲】
6/15(金) 16:00配信     ポスト 抜粋
◆誤嚥性肺炎を招く介助
 今回調査した中で、死亡件数が最も高い事故は「誤嚥(飲食物の飲み込みがうまくいかないこと)」で、事故件数が357件に対し、死亡者数は72人。誤嚥を起こした人のうち、およそ5人に1人が亡くなっている計算だ。
 飲食物の飲み込みがうまくいかないことがどうしてこれほどの死亡率の高さに繋がるのか。『認知症を堂々と生きる』の著書もある宮本礼子医師が語る。
「誤嚥での死亡とは、誤嚥性肺炎になることによる死亡です。飲食物を飲み込む時、喉の奥の弁が自動で開閉し、肺に飲食物が入ってしまわないように調節します。ところが高齢になると弁の開閉がうまくいかず、飲食物の一部が肺に入ってしまう。肺へ不純物が入ると、これが原因で肺炎を患ってしまうのです」
 🐱猫:介護施設での食事介助が誤嚥性肺炎を助長していると宮本医師は嘆く。
看護・介護の現場では職員が認知症の老人に食べ物を無理やり口に運ぶことが多々あります。口を開けない場合は職員が指を口の中に入れてまで食べさせようとする。それで食べ物を喉に詰まらせて窒息したり、誤嚥性肺炎になったりするのです

【宮本顕二・礼子夫妻(1)寝たきり老人がいない欧米、日本とどこが違うのか】
2015年6月4日yomiDr.抜粋
夫妻🐱猫:「日本では高齢者が終末期に食べられなくなると、点滴や経管栄養(鼻チューブ、胃ろう)で水分と栄養が補給されます。本人は何も分らないだけでなく、とても苦しい痰の吸引をされ、床ずれもできます。栄養の管を抜かないように手が縛られることもあります。人生の終わりがこれでよいのだろうかとブログで発信すると、多くの読者から体験に基づいた切実な意見が寄せられました。これを本にして多くの人に紹介し、高齢者の延命問題を一緒に考えたいと思いました」
礼子「医学生時代は終末期医療の教育を受けませんでした。医療現場では終末期医療について、先輩や同僚と話をすることはありません。そのため、延命に対して問題意識を持つまでは、点滴や経管栄養を減らすとか、行わないとかは考えもしませんでした。むしろ、脱水状態や低栄養にしてはいけないと思っていました。終末期の高齢者だからといって、医療の内容を変えることはしませんでした」
 礼子「スウェーデンが初めての海外視察だったのですが、食べなくなった高齢者に点滴も経管栄養もしないで、食べるだけ、飲めるだけで 看取るということが衝撃的でしたね。脱水、低栄養になっても患者は苦しまない。かえって楽に死ねるとわかり、夫と私の常識はひっくり返ったのです。そして施設入所者は、住んでいるところで看取られるということも、日本の常識とは違うので驚きました。視察先の医師も、自分の父親が肺がんで亡くなった時に、亡くなる数日前まで普通に話をしていて、食べるだけ、飲めるだけで穏やかに逝ったと言っていました」
顕二「日本では、高齢で飲み込む力が衰えた人は、口内の細菌や食べ物が肺に入って起きる『誤嚥ごえん性肺炎』を繰り返して亡くなることが多いです。誤嚥性肺炎の論文もほとんど日本人の研究者が書いているのです。当時も今も誤嚥性肺炎対策が高齢者医療の重要なテーマです。この誤嚥性肺炎について、スウェーデンで尋ねたら、『何それ?』ときょとんとされたのが衝撃でした。スウェーデンでは、誤嚥性肺炎を繰り返すような悪い状態になる前に亡くなっているので、あまり問題にならないのです。延命処置で病気を作って、かえって患者を苦しめている日本の現状を強く認識しました」
礼子「オーストラリアに行った理由は、緩和医療に熱心に取り組んでいる国と聞いたからです。しかし正直なところ、スウェーデンがあまりにも日本と違うことをしているので、スウェーデンだけが特殊な国ではないかと思い、他の国の実態を確かめに行ったのです。そうしたら、日本のほうが特殊な国だった。ただ、よく考えてみると、日本も昔はスウェーデンと同じで、食べられなくなった高齢者はリンゴの搾り汁を口に含む程度で、家で穏やかに亡くなっていました。昔の日本の終末期医療は、今のスウェーデンやオーストラリアと同じであったことに気がつきました」
顕二「スウェーデンに行った時、研修医の時にお世話になった、ベテランの副院長のことを思い出しました。僕ら研修医はがんがん延命処置をするわけですが、副院長は当時の僕から見たらのらりくらりで何もしない。しかし、僕ら研修医が手を尽くした患者さんが亡くなった時、その患者さんの状況はというと悲惨なのです。血が飛び散って、点滴による浮腫みもひどい。だから、看護師が家族をいったん外に出し、患者さんの体をきれいにしてから対面させたものです。一方、副院長が看取った患者さんは皆きれいで穏やかでした。当時の副院長の思いが、今になってわかりました」
礼子「帰国後に、以前勤めていた病院で報告会をしたんです。その病院は、99歳でも胃ろうを作るし、終末期であっても人工呼吸器をつけたり血液透析をしたりする、スウェーデンとは正反対の病院でした。点滴や気管に入っている管を抜かないように、体がベッドに縛り付けられる患者さんの姿に、『年を取るのが恐ろしい』、『このようなことが許されるのか。医療が高齢者を食い物にしている』と怒っていた看護師もいました。そのためか、私の報告に対して、現場の看護師から称賛の声が上がりました。『私も年を取った時に、こういう亡くなり方をしたい』と。海外視察で、日本の高齢者の終末期の悲惨さは許されないことであることに気づき、この現状を変えるために何かしようと思い始めたのです」
 顕二海外では、がん以外の患者にもモルヒネを使い、痛みや苦しさを緩和することを重視していますが、日本ではあまり使いません。また、日本では延命処置をしないことが緩和医療につながると理解している医療者は少ないです。点滴の針を刺したり、尿道にカテーテルを入れて、つらい思いをさせます。水分も過剰に投与するので、 痰たん が多く、痰を吸引する苦しみを与えています。ストレスから消化管出血もよく起こします。誤嚥性肺炎を繰り返し、発熱や呼吸困難が起きます。問題は濃厚な延命処置を行って、患者を苦しめていることに気がついていない、あるいは気がついても目をつぶっていることと思います。その視点に立つと、日本では緩和医療がおろそかにされていると思います」
宮本顕二「家族との対応ひとつにしてもそうです。たとえば、今の状況で、自分の考えに従って自然な看取りを実践しようとしても、患者の家族に一人でも反対者がいれば、後で訴訟に巻き込まれる可能性があります。それを防ごうとしたら、ものすごく手間と時間をかける必要があります。家族に説明する時間も10分や20分で済むはずがありません。しかも繰り返す必要があります。多忙な医療現場でそんな余裕はないでしょう」
礼子病院経営の問題もあります。今や、療養病床の半分以上、多分7、8割は、経管栄養や中心静脈栄養で延命されている人たちです。そのため、点滴や経管栄養を行わなかったり、中止したりすると、患者さんは2週間ほどで亡くなるので、病床が空き、病院経営が苦しくなります。しかし、2030年には死亡者が今より40万人増加し、看取り先の確保が困難になると言われています」
――先生方は医師ですが、病院経営側から、終末期の医療に口を出されることがありますか?
 礼子「直接はありません。しかし療養病床は、中心静脈栄養や24時間の持続点滴を行ったり、人工呼吸器をつけたりすると診療報酬が高くなります。そうすると、点滴も何もしないで看取る患者は診療報酬が低いので、経営的には不利になります。そのため、診療報酬が低い人は何名までに抑えてください、と言われます。診療報酬が低い人は、入院できないことが多いです。」
 顕二🐱猫:「インフォームド・コンセント(説明の上の同意)と言うと、若い医師は、同じ価値づけをして選択肢を示します。でも、それでは家族は困ります。優先順位を付けてあげるのが、専門職の仕事だと思います。」
 礼子「『私はこれを勧めます』とか『自分が患者ならこれを選びます』と」
 顕二「『自分の親だったら、こうします』とか」
 
 ――医学的に意味はないということを示すだけではなく、看護師さんでもいいから、現場レベルで、「浮腫んでで、痰が増えます。痰を定期的に吸引することになると本人はかえって苦しいです」とか、わかりやすい言葉で伝えてあげる必要があるのでは。
 礼子「私はそういうふうに説明をします。『点滴を500ミリリットルしたら、こうなります。しなかったらこうなります』と。過去の経験をありのままに伝えます。そうすると、『先生にお任せします』と言われることが多いです。食べるだけ、飲めるだけにすると決めると、患者さんを見舞う家族の表情も良くなります。もう先がないとわかるので、足しげく通って来て、『先生、ゼリーを3口食べました』と何気ないことに喜びを見いだすようになります。延命処置をして、先の見えない時間を 憂鬱ゆううつ に過ごすよりも、最後の時間を患者さんと共に大切に過ごすようになります。」
【2千人以上看取った在宅医が語る「延命治療をやめるタイミング」とは】AERAdot.
抜粋
週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん』(朝日新聞出版)の出版記念講演会が1月27日、朝日新聞東京本社読者ホールで開催された。『「平穏死」10の条件』などの著者で、同ムックを監修した長尾和宏医師が、延命治療のやめどきや在宅医の探し方などについて語った。講演の一部をお届けする。
なかには「そろそろやめますか?」と言ってくれるお医者さんもいますけど、言わない場合が多いです。

 いずれにしても終末期は見えない。見えないけども終末期はある。自分は終末期にあるのかないのか、闘病生活の中でちょっと考えてほしいなと思います。

平穏死の条件は脱水、その逆は溺れ死に

 では、平穏死とは一言で言ったらなんなのか。それは”枯れる”ということ。枯れていく最期なんですよ。

 人生とは水分含量の観点からいうと、水分がどんどん減っていくことです。生まれた時、赤ちゃんの水分は8割。成人は6割です。高齢者になると5割にまで減っていく。そして、平穏死寸前は4割くらいになる。

 枯れてしぼんで水分含量が少なくなってドライになる。医学的には脱水という言葉。脱水と言うと悪い言葉のように思う人も多いと思います。急に暑くなって熱中症になって脱水になる、これはよくない。だけど、病気でがんの末期、認知症でも、脱水があったら実は平穏死。平穏死の条件は脱水なんですよね。脱水があると、苦痛が少ない。そして、かつ長生きします。

 良かれと思って、最期まで点滴をすると、ある時点から命を縮めてしまう。それどころか、苦しみ出す。

 平穏死の反対は、延命死です。最期に良かれと思って、点滴をたくさんすると患者さんを溺れさせてしまう。もう終末期なのに、高カロリー栄養の点滴をやっている人がいる。その結果、どうなるか。みんな溺れ死にです。

 私は年間100人ちょっとの人を看取りますけど、みんな平穏死ですね。みんな枯れてます。がんの場合でも痛みが少ない。咳やたんで悩まない。呼吸困難がない、かつ、長生きできる、いいことばっかりです。

 これはがんでも、認知症でも、心不全でもみんないっしょ。平穏死の概念は病気の種類を問いません。

 心臓も何十年も動いていたら弱ってきます。水分含量が少ないからゆっくり動いています。そこにドバーっと点滴をしたら、心臓はパンクしてしまいます。たったそれだけのことなんです。
病院のご遺体はみんな重たい。みんなむくんでます。パンパン。家のご遺体はみんな軽い。むくんでません。きれいなお顔ですね。

 抗がん剤、点滴、延命治療……。私はやるなとは言ってません。やっていい。でも、いやだったらやめればいい。やるやらないではなく、いつやめるのかという問題なんです。延命治療をやめるタイミングはわかりにくいですから、患者さんのほうから「今かな?」って言ってほしいんですね。クエスチョンがついてていい。お医者さんもよくわからないですから、何度も話し合って、家族も含め、そして納得のいくやめ方をしてほしい。それをしないと平穏死は難しいんじゃないかと思います。

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