031.急性硬膜外血腫

031.急性硬膜外血腫:出典脳神経外科疾患情報ページ
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Ⅰ.概要

急性硬膜外血腫は主として頭部外傷により発生します.外傷性頭蓋内血腫には解剖学的位置関係から,硬膜外血腫,硬膜下血腫,脳内血腫(脳挫傷)がありますが,これらのうち硬膜外血腫は頭蓋骨と硬膜の間に発生するものであり(図1),出血源は硬膜に存在する動脈(中硬膜動脈)または静脈(静脈洞)であります.頻度は全頭部外傷の1~3%,致命的頭部外傷の5~15%を占めるといわれています.

図1:頭皮・頭蓋・髄膜・脳の解剖

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年齢は10~30歳の若年者に多く,2歳以下の乳幼児や65歳以上の高齢者には少ないとされていますが,実際には高齢者でも認められることが少なくありません.
血腫の好発部位は中硬膜動脈が走行する側頭部または側頭・頭頂部が最も多く,50~60%を占めます.その他,前頭部,頭頂・後頭部や後頭蓋窩にも発生します. 症状の経過は必ずしも血腫量とは相関せず,出血部位や出血する速度と関係するといわれています.具体的には側頭部に発生するものでは意識障害よりも,瞳孔不同が先行する傾向にあり,また出血速度が速いものでは急激に意識障害が進行し,不可逆的な変化をきたします. 臨床経過は合併する脳損傷の有無により異なります.脳損傷を合併しない例では血腫の増大とともに症状が悪化しますのに対し,合併する例では通常受傷直後より意識障害が出現します. 予後は脳損傷合併の有無で決まるといっても過言ではありません.合併しない例では血腫除去の時期を失しない限り予後は良好ですが,合併する例では脳損傷の程度により予後が決定されます.


*硬膜外血腫の特殊型として,後頭蓋窩硬膜外血腫と遅発性硬膜外血腫があります. 両者はともに静脈性出血であることが多く,比較的亜急性~慢性に発症してきます.前者は10歳以下の小児に多く,後者は出血性ショックや播種性血管内凝固症候群(Disseminated intravascular coagulopathy: DIC)に合併して認められます。

Ⅱ.重症度

頭部外傷の重症度を表す尺度として代表的なものはグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)(表1)とジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale: JCS)があります.GCSは開眼反応,言語反応,最良の運動反応で評価され,その合計点の範囲は3~15点となります.一般的には3~8点を重症,9~13点を中等症,14~15点を軽症と定義されています

表1:グラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)
年齢は10~30歳の若年者に多く,2歳以下の乳幼児や65歳以上の高齢者には少ないとされていますが,実際には高齢者でも認められることが少なくありません.
血腫の好発部位は中硬膜動脈が走行する側頭部または側頭・頭頂部が最も多く,50~60%を占めます.その他,前頭部,頭頂・後頭部や後頭蓋窩にも発生します. 症状の経過は必ずしも血腫量とは相関せず,出血部位や出血する速度と関係するといわれています.具体的には側頭部に発生するものでは意識障害よりも,瞳孔不同が先行する傾向にあり,また出血速度が速いものでは急激に意識障害が進行し,不可逆的な変化をきたします. 臨床経過は合併する脳損傷の有無により異なります.脳損傷を合併しない例では血腫の増大とともに症状が悪化しますのに対し,合併する例では通常受傷直後より意識障害が出現します. 予後は脳損傷合併の有無で決まるといっても過言ではありません.合併しない例では血腫除去の時期を失しない限り予後は良好ですが,合併する例では脳損傷の程度により予後が決定されます.


*硬膜外血腫の特殊型として,後頭蓋窩硬膜外血腫と遅発性硬膜外血腫があります. 両者はともに静脈性出血であることが多く,比較的亜急性~慢性に発症してきます.前者は10歳以下の小児に多く,後者は出血性ショックや播種性血管内凝固症候群(Disseminated intravascular coagulopathy: DIC)に合併して認められます。

Ⅱ.重症度

頭部外傷の重症度を表す尺度として代表的なものはグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)(表1)とジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale: JCS)があります.GCSは開眼反応,言語反応,最良の運動反応で評価され,その合計点の範囲は3~15点となります.一般的には3~8点を重症,9~13点を中等症,14~15点を軽症と定義されています

表1:グラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)
年齢は10~30歳の若年者に多く,2歳以下の乳幼児や65歳以上の高齢者には少ないとされていますが,実際には高齢者でも認められることが少なくありません.
血腫の好発部位は中硬膜動脈が走行する側頭部または側頭・頭頂部が最も多く,50~60%を占めます.その他,前頭部,頭頂・後頭部や後頭蓋窩にも発生します. 症状の経過は必ずしも血腫量とは相関せず,出血部位や出血する速度と関係するといわれています.具体的には側頭部に発生するものでは意識障害よりも,瞳孔不同が先行する傾向にあり,また出血速度が速いものでは急激に意識障害が進行し,不可逆的な変化をきたします. 臨床経過は合併する脳損傷の有無により異なります.脳損傷を合併しない例では血腫の増大とともに症状が悪化しますのに対し,合併する例では通常受傷直後より意識障害が出現します. 予後は脳損傷合併の有無で決まるといっても過言ではありません.合併しない例では血腫除去の時期を失しない限り予後は良好ですが,合併する例では脳損傷の程度により予後が決定されます.


*硬膜外血腫の特殊型として,後頭蓋窩硬膜外血腫と遅発性硬膜外血腫があります. 両者はともに静脈性出血であることが多く,比較的亜急性~慢性に発症してきます.前者は10歳以下の小児に多く,後者は出血性ショックや播種性血管内凝固症候群(Disseminated intravascular coagulopathy: DIC)に合併して認められます。

Ⅱ.重症度

頭部外傷の重症度を表す尺度として代表的なものはグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)(表1)とジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale: JCS)があります.GCSは開眼反応,言語反応,最良の運動反応で評価され,その合計点の範囲は3~15点となります.一般的には3~8点を重症,9~13点を中等症,14~15点を軽症と定義されています

表1:グラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)
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はE+V+Mの合計点で評価され,スコアは3~15点となる.スコアが低いほど,重症である.

Ⅲ.日本頭部外傷データバンク(Japan Neurotrauma Data Bank: JNTDB)

JNTDBには重症例(搬送時に半昏睡~昏睡状態,GCS 3-8)のほかに,「受傷時はGCSが9以上であったが,その後意識障害が悪化した」(talk and deteriorateを含む)例およびGCS 9-15の脳神経外科手術例が登録されています.これまでプロジェクト1998 (P1998)とプロジェクト2004 (P2004)の2つの大規模研究が行われ,両研究を比較することにより,最近の動向が明らかになります.P1998とP2004で登録された症例数はそれぞれ1002例,1101例でありますが,そのうち硬膜外血腫は前者で130例(13%),後者で121例 (11%)で,両プロジェクトの頻度に差はありませんでした.

  1. 年齢分布を図2に示します.P1998, P2004ともに10-20歳代の若年層と40-60歳の壮年層に2つのピークがありますが,P2004では多少若年層が減少傾向,高齢者が増加傾向を示しています.なお,平均年齢,中央値はP1998では40.0±22.3 歳, 38歳でありましたのに対し,P2004ではそれぞれ43.2±22.2歳.42歳と上昇傾向を示しています.
  2. 受傷原因:P1998では交通事故が52%,転落・転倒が38%,その他が10%であり,P2004ではそれぞれ55%,33%,12%であり,変化がありませんでした.
  3. 重症度:P1998ではGCSスコア8点以下が58%,9~14点が32%,15点(ほぼ意識清明)が10%でありましたのに対し,P2004ではそれぞれ36%, 54%, 10%であり,有意に重症例が減少しています (p=0.0010).
図2.日本頭部外傷データバンクにおける硬膜外血腫の年齢分布(略)

Ⅳ.診断方法

臨床(神経学的)診断で硬膜外血腫に特異的なものはありません.確定診断を得るには下記の画像診断が重要となります.

1. CTスキャン

画像診断の第一選択はCTスキャンであります.単純CTで頭蓋骨直下に両凸形,ときに三日月形の高吸収域が認められ,縫合線を超えていなければ診断は容易であります(図3).また超急性期にみられる混合吸収域は,初回検査では少量であっても,急激に増大する可能性があり,注意深い経過観察が必要であります.鑑別すべきは急性硬膜下血腫であります(表2).急性硬膜下血腫では多くは三日月形を呈し,縫合線を超えて大脳半球表面に拡がるのが特徴的であります.また重症例のCT所見では硬膜外血腫のほかに,脳損傷(脳内出血巣,脳腫脹など)やクモ膜下出血(図4)が認められる場合があります.

表2.硬膜外血腫と急性硬膜下血腫の鑑別


2. 頭蓋単純撮影

中硬膜動脈や静脈洞に一致した血管溝を横切る線状骨折(図3)を認めれば,硬膜外血腫を疑うことができます.また陥没骨折でも発生することがあります.しかし骨折を認めない例が10%程度存在するといわれています.ちなみにJNTDBのP1998のデータでは線状骨折の頻度は88%でありました.

3. MRI

より精度の高い診断方法でありますが,撮像時間が長く,急性期の画像断としては適さない場合があります.しかし冠状断や矢状断を撮像することが可能で,また頭蓋骨の影響を受けないため,頭蓋底部の硬膜外血腫の拡がりを診断するには有用であります(図5).
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4. 硬膜外血腫と脳損傷との関係

画像(CT)上の脳損傷には前述のように,脳内血腫,挫傷性血腫(いわゆるsalt and pepper appearance),脳腫脹(片側,両側)などが報告されています.脳損傷の合併頻度は重症例(GCS 8以下)のみを対象としますと69%と高く報告されていますが,JNTDB P1998のデータ分析では非重症例も含まれていますので32%でありました.内訳は脳内血腫巣を呈する例が多い傾向にあり,次いで脳腫脹の順でありました

Ⅴ.治療選択

治療選択は神経症状の進行度や合併する脳損傷の程度によって決定されます.
1.血腫が増大し脳幹反応(対光反射,人形の目反射,角膜反射など)が消失した例や脳損傷の程度が重症で回復が望めない例では,積極的治療の適応外となります.
2.脳損傷を伴わないか,伴っても軽度の硬膜外血腫では,血腫の量が少なければ保存的治療で経過観察を行い,良好な結果が得られます(図6).ただし,前述のように,超急性期(発症後数時間以内)に血腫が小さくても,その後急激に増大する例がありますので,保存的に経過をみる場合には注意深い経過観察が必要であります.血腫の量が多くなれば外科的治療(手術)の対象となります.2006年に改訂されました重症頭部外傷治療・管理のガイドライン第2版における硬膜外血腫の手術 適応と手術方法を表3に呈示します.しかしガイドラインはあくまでも指標であり,神経症状,画像所見などを総合的に評価し,手術適応が決定されます.
表3.硬膜外血腫の手術適応と手術方法(重症頭部外傷治療・管理のガイドライン第2版)

適応基準:
  1. 厚さ1~2 cm以上の血腫,または20~30 ml以上の血腫(後頭蓋窩は15~20 ml以上)や合併血腫の存在時には原則として手術を行う.
  2. 神経症状が進行性に悪化する場合は緊急手術の適応となる(とくに,受傷後24時間以内の経時的観察とrepeat CTがひつようである).
  3. 神経症状がない場合は厳重な監視下に保存的治療を行うことも可能である.
時期:
可及的早期に行うのが望ましい.
方法:
開頭血腫除去術が原則である

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