037.【新介護報酬で介護現場に「医療の介入」が高まることへの懸念】
新聞編集
【目次】
来年8月から「介護離職」が急増するワケ】プレジデントオンライン
11/25(土) 11:15配信
11/25(土) 11:15配信
【神戸の老人施設で入所者死亡 「事件性低い」一転、監察医解剖で骨折判明で立件へ】神戸新聞
11/25(土) 13:16配信
11/25(土) 13:16配信
【介護保険改定で自立支援介護が「一歩前進、二歩後退」となった理由】:ダイアモンド12/20(水) 6:00配信
【老衰死の割合高いと医療費低く。健康寿命長くなれば皆保険制度維持も可能?】The Page1/6(土) 8:00配信 抜粋
【16万円負担増も! 全国で頻発する介護認定“格下げ”の阿鼻叫喚】女性自身1/19(金) 11:11配信
【新介護報酬で介護現場に「医療の介入」が高まることへの懸念】ダイアモンド
1/31(水) 6:00配信
1/31(水) 6:00配信
【記事】
【来年8月から「介護離職」が急増するワケ】プレジデントオンライン
11/25(土) 11:15配信
「利用者さんにとって負担が増えること以上に問題だと思える点があるんです。それは、“要介護度”が改善された自治体には、国から交付金などのインセンティブ(報奨)が与えられるという部分です」
11/25(土) 11:15配信
「利用者さんにとって負担が増えること以上に問題だと思える点があるんです。それは、“要介護度”が改善された自治体には、国から交付金などのインセンティブ(報奨)が与えられるという部分です」
Mさんの話をかみ砕くとこうなります。
介護保険で介護サービスを受けるには、事前に「要介護認定」を受ける必要があります。市区町村の窓口に申請し、利用者本人や家族が調査員からの聞き取り調査を受けます。この結果に主治医の意見書を加え、コンピュータによって要介護認定の一次判定が下されます。
この一次判定をもとに学識経験者による「介護認定審査会」の二次判定が行われ、要介護度が認定されます。認定は、症状軽いほうから順に「要支援」1~2、「要介護」1~5の7つの区分に分けられます。この区分によって介護保険が適用される範囲は異なり、受けられるサービスの内容や支給限度額が変わるわけです。
「親しいケアマネが集まった時などに、『A市はだいたい予想通りの判定が出る』とか『B市は判定が厳しくて、予想より軽い判定になることがある』といった話が出ることがあります。判定が厳しい自治体は財政状態の苦しいところが多い。福祉予算を切り詰めるため意図的に判定を厳しくしていると考えざるを得ません」
「国の狙いは、介護予防講習などの『努力』で、要介護度が改善することでしょう。しかし、『努力』をしなくても、判定を厳しくすれば、結果として要介護度は改善され、インセンティブを得ることができます。多くの自治体は、判定を厳しくするのではないでしょうか」
「たとえば要介護3の方を同居している娘さんが介護しているとします。平日はすべてデイサービスを利用することで、仕事を続けることができた。ところが、認定更新によって要介護2と判定されてしまった。2では他のサービスとの兼ね合いで、デイサービスを減らすことになり、娘さんが自力で介護する日が増えてしまい、離職を決断せざるを得なくなった。それによって困窮し、追い詰められていく……。こんな事態が起きることも考えられます」
「親しいケアマネが集まった時などに、『A市はだいたい予想通りの判定が出る』とか『B市は判定が厳しくて、予想より軽い判定になることがある』といった話が出ることがあります。判定が厳しい自治体は財政状態の苦しいところが多い。福祉予算を切り詰めるため意図的に判定を厳しくしていると考えざるを得ません」
「国の狙いは、介護予防講習などの『努力』で、要介護度が改善することでしょう。しかし、『努力』をしなくても、判定を厳しくすれば、結果として要介護度は改善され、インセンティブを得ることができます。多くの自治体は、判定を厳しくするのではないでしょうか」
「たとえば要介護3の方を同居している娘さんが介護しているとします。平日はすべてデイサービスを利用することで、仕事を続けることができた。ところが、認定更新によって要介護2と判定されてしまった。2では他のサービスとの兼ね合いで、デイサービスを減らすことになり、娘さんが自力で介護する日が増えてしまい、離職を決断せざるを得なくなった。それによって困窮し、追い詰められていく……。こんな事態が起きることも考えられます」
要介護度の判定が厳しくなると、ケアマネージャーにもプレッシャーがかかるといいます。要介護認定は、申請から認定まで約1カ月かかります。ただ、突然寝たきりになったというケースでは、認定が出る前に介護サービスを受ける必要があります。
こんな時、ケアマネは利用者の状態を見て、たとえば「要介護2の認定はおりるだろう」といった見込みを立ててケアプランを作成し、サービスを入れることが多いそうです。これまでは、そうした想定でサービスを開始できましたが、判定が厳しくなれば、「想定外」のケースが増えるかもしれません。
「判定が厳しくなれば、要介護2の人が要介護1に“格下げ”されることが考えられます。要介護1の限度額を超えるサービスを入れてしまった場合、超えた部分は利用者さんやご家族に10割負担を強いることになります。結果的に軽めの要介護度でサービスを入れざるをえないでしょう。しかし、それでは十分なサービスが提供できているとはいえません。利用者さんの期待に応えられないということは、ケアマネにとってつらいことです」(Iさん)
【【神戸の老人施設で入所者死亡 「事件性低い」一転、監察医解剖で骨折判明で立件へ】神戸新聞
11/25(土) 13:16配信
11/25(土) 13:16配信
神戸市垂水区の有料老人ホームで今年1月、80代の女性が亡くなり、兵庫県警は「事件性が低い」と判断していたが、県監察医の解剖結果を受け、業務上過失傷害の疑いで30代の女性職員を書類送検する方針を固めたことが24日、分かった。入浴介護中に寝具から落下して腰の骨を折る重傷を負っていたといい、職員が必要な措置を取っていなかった疑いが判明。事件は全国で廃止が相次ぐ監察医制度の役割を巡っても関心を呼びそうだ。
捜査関係者らによると、1月14日午後10時半ごろ、市内の病院が「老人ホームから運び込まれた女性が死亡した」と垂水署に連絡。駆け付けた署員が検視したところ、目立った外傷がなかったことなどから「事件性は低い」と判断。死因が不明の「異状死」として監察医が行政解剖を実施したという。
【介護保険改定で自立支援介護が「一歩前進、二歩後退」となった理由】:ダイアモンド12/20(水) 6:00配信
(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)
(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)
「介護はこれから自立支援に軸足を置く」と宣言した安倍首相
来年4月から始まる第7期の介護保険報酬の0.54%引き上げが決まり、サービス内容についても厚労省の改定案がまとまった。サービス内容は、今春から20回にわたって開かれた社会保障審議会介護給付費分科会の審議結果によるものだ。なかで、注目されたのは、「自立支援」をどのように制度の中に取り込んでいくかであった。
昨年11月10日の政府の未来投資会議の席上、安倍首相が介護保険制度について「介護はこれから自立支援に軸足を置く。パラダイムシフトを起こす。介護の要らない状態までの回復を目指す」と大胆な提案をぶち上げ大きな話題となった。自立支援により重度者を減らして、介護費の抑制につなげる方針を高らかに宣言したのである。
同会議では、「自立支援介護」を主張する竹内孝仁医師による「4つの介護」の成果の発表などもあり、一躍「自立支援」の嵐が介護関係者の間を席巻し始めた。「自立を目指す介護をした結果、要介護度が軽くなると事業所に入る介護報酬が下がるのは、制度が孕む矛盾である」という声も高まってきた。
「要介護度を改善させたらインセンティブ措置として報酬増を、悪化させたらディスインセンティブとして報酬減を」という提言も未来投資会議であった。
自治体の中には、要介護度が軽くなれば事業所に「ご褒美」として一般財源から奨励金を出すところも続出している。施設入居者に対して、要介護度が1段階下がると月2万円を渡している東京都品川区はその典型だろう。
こうした、「自立支援」の大波を受けて、厚労省がどのような判断を下したのか。答えは「一歩前進、二歩後退」というわかり難い裁定を下したと見ていいだろう。「前進と後退」はいずれも利用者目線であることは言うまでもない。
「前進」と「後退」の中身とは?
まず、「一歩前進」だが、厚労省は「要介護度の動きによって介護報酬を変えない」とした。「制度が孕む矛盾」ではないと断言し反論した。
厚労省は「要介護度が改善すると事業所の収入は下がるが、必要な手間も減るため、人件費等も減少する。また利用者の自己負担も減少する」(参考:第153回社会保障審議会介護給付費分科会の資料2)と原則論を唱える。その通りだろう。
要介護度が軽くなると、その利用者に対するケアの難易度やケア時間が後退するので、報酬が減るのは当然である。厚労省の「手間」という用語は「行いたくないこと」につながり、いささか問題だが、全体としては正しい判断だ。ケアの密度が薄くなれば、経験年数の少ない、つまり人件費のより少ないスタッフに交代するなどマネジメントの工夫で対応すべきだろう。
さらに、「利用者の要介護度の変化と事業所の収入・収支差の変化」についても、「介護老人福祉施設(特養)、通所介護について分析すると、利用者の要介護度と利用者1人あたりの年間収支差、及びそれぞれの変化の間に相関は認められなかった」(同)と明言し、念を押すように特養と通所介護のそれぞれの相関グラフを付けて否定した。
特筆すべきは利用者側の心理への言及である。「個々人の改善についてインセンティブを設定した場合、自己負担減がインセンティブによって相殺され、利用者の改善や区分変更申請へのモチベーションを損なう可能性あり」(同)とわざわざ記している。
要介護度が軽くなって1割負担分が少なくなるはずなのに、インセンティブが加わると阻害されてしまい、改善の意欲が失われるという。言い分にはやや疑問ではあるが、厚労省が利用者側に立ってよく踏み込んだな、という感がする。それほどまでに、要介護度の改善によるインセンティブ設定を反駁したかったのだろう。よく言った、と拍手だ。
では次に「二歩後退」の方である。通所介護(デイサービス)で利用者のADLが改善したら報酬を増やすことにした。インセンティブ制度の導入といえよう。ADLの評価法として「バーセル・インデックス」を採用。「自立支援介護」の圧力に屈し、「QOLを無視したADL至上主義」と批判されかねない。
ADLとは、「activities of daily living」の略。歩いたリ、食べたり、トイレに通ったりなどの日常生活動作、日常生活活動のこと。
その機能がどのような状態であるかを判定する方式の一つが「バーセル・インデックス」である。ほかにカッツ・インデックスやFIMという手法もあるが最も普及しているので採用したと厚労省は説明する。
評価法は、食事、トイレ動作、階段昇降、更衣、排便、排尿、整容、入浴、歩行、車いすからベッドへの移動の10項目が対象。5点刻みで点数を付け、点数が高いほど基本的生活動作が可能だと判断される。
そのうち過半は3段階評価なので最高点は15点。だが、歩行と車椅子からベッドへの移動は重視されて4段階で最高点は15点。逆に、整容と入浴は2段階となり最高点は10点。全部で合計100点満点となる。
ただし、100点満点だからといって日常生活が不自由なく送れるとは限らない、と言われている。
例えば、「トイレ動作」では、衣服の操作や後始末を一人ででき、ポータブル便器を使えばその洗浄までできれば満点の10点となる。体を支えられたり、トイレットペーパーの使用に介助が必要なら5点。全介助が欠かせないと0点である。
「歩行」で15点の最高点となるのは、車いすや歩行器に頼らずに45m以上歩けること。介助や監視が付いて45m以上歩行可能であれば10点。車椅子を使って45m移動できれば5点となる。
そして、バーセル・インデックスに基づいて報酬を付ける際に3つの条件を課した。利用者数が一定数以上あるうえに、要介護3以上の中重度者が一定割合以上であること、加えて食事や入浴の提供の3点だ。
また、定めた評価期間の終了後にもバーセル・インデックスを測定、報告した場合には、さらに報酬を手厚くするという。
要介護3以上が相当割合以上、としたのは、事業者がより改善しやすい「いいとこ取り」、即ち軽度者ばかりを集めるような事態を避けるための措置である。だが、改善の可能性が高く、早いのは軽度者なのは当然なので、その思惑は必ず入り込むだろう。
「クリームスキミング」である。牛乳から最もおいしいクリームだけを すくいとるところから名づけられ、一般的には 需要のうち儲かる部分にのみ商品・サービスを提供することだ。
ということは、逆に、改善の見込みが少ないとして重度者や80歳以上の高齢者が排除されかねない。特に、認知症の人にはそれぞれの動作について、より向上しようという意欲を持つことができるのか疑問でもあり、事業者は一斉に敬遠し、利用者が行き場を失う可能性も高い。
デイサービス利用者を身体機能だけで評価していいのか
いずれにしろ、デイサービスの利用者を身体機能だけで評価するのは介護保険の基本精神に反するだろう。厚労省はそんな批判を予期したかのように、根拠を示している。「基本方針について」と題し、基準省令第92条を参考資料として提示した。
「指定居宅サービスに該当する通所介護(以下「指定通所介護」という。)の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない」
「心身機能の維持」を赤字にして強調する。だが、この基準では通所介護の目的を、(1)社会的孤立感の解消(2)心身機能の維持(3)家族の身体及び精神的負担の解消、としており、(2)だけではない。
(1)の孤立感の解消には、利用者の間での世間話や社会的話題の日常会話のおしゃべりをはじめ、合唱や手芸、工作などの手仕事、神社や公園への散策など社会性を育む活動があるだろう。この文中でも「日常生活上の世話」と記されている。
(2)は、家族の身体的精神的負担の軽減、つまりレスパイトも目的であるとしている。家族と離れていること自体がデイサービスの役割であるという。
つまり、3つの役割のうちその1つだけを取り上げ、点数評価することになる。おまけに、「自立した日常生活を営む」と大きな目標を記してあるが、その直前には「その有する能力に応じ」とある。車椅子の利用や人の手助けが必要ないろいろなレベルがあることを前提にしている。それを「有する能力」と表現しているのであり、必ずしも「有する能力のレベルアップ」が目的ではないだろう。
そもそも、ADLの向上を目指して人は生活しているのではない。精神面も含めた生活全般の満足度、即ちQOL(quality of life、生活の質)の充実度が大切なのではないか。
日々の暮らしをこれまでと同じように営みたいというQOLの維持・向上があるからこそ、ADLの改善に挑むのである。
「リハビリ漬け」の懸念も
「リハビリ漬け」の懸念も
バーセル・インデックスの歩行評価では45mを判断基準としているが、45mもかけてベッドからトイレまで歩かねばならない豪邸に日本人は住んでいるのだろうか。45mの根拠は何なのか。
いったん評価法が導入されると、現場のセラピストや介護職員はその目標基準に到達しようと懸命に動き出す。リハビリ漬けになるかもしれない。本人の生活とはかけ離れたリハビリが訓練として行われると、それは虐待に近付く恐れがある。
昨年12月5日に特養の全国団体、全国老人福祉施設協議会は、未来投資会議の「自立支援介護」に反対する意見書を厚労相に提出し、その中で「ADLとはQOL向上を実現するための手段であり、それ自体を自立と捉えることは出来ません」と記した。
厚労省は、要介護度の改善を自立支援の成果とはみなさなかったが、ADL評価を無視できないまま、その罠にははまってしまったようだ。
もう一歩下がって視野を広げてみると、そもそもデイサービスで過ごす時間は長くても7~8時間に過ぎない。そのほかの10数時間は自宅にいる。加えて、日曜休みが多く、毎日通う人は少ない。1週間の特定の曜日だけだろう。
自宅で過ごす時間が圧倒的に長い。自宅での食事や睡眠、運動、娯楽などが身体機能に与える効果も大きいはず。例え、ADL改善があってもデイサービスでの活動成果であるか見極めは難しいのではないだろうか。
厚労省の審議会は年明けも引き続き開かれ、次は各介護サービスの料金体系が議論される。デイサービスのインセンティブとして、「バーセル・インデックス」による点数がどの程度の加算になるのか。その加算金額に現場は注視している。リハビリ機器の導入競争という余波が起こらねばいいのだが……。
【老衰死の割合高いと医療費低く。健康寿命長くなれば皆保険制度維持も可能?】The Page1/6(土) 8:00配信 抜粋
同社が人口20万人以上の130市区について調査を行ったところ、老衰死の割合が高い自治体は1人あたりの医療費(高齢者)が低く、逆に老衰死の割合が低い自治体は医療費が高いことが分かりました。調査した自治体の中で、老衰死の割合がもっとも高かったのは神奈川県茅ヶ崎市で、もっとも低かったのは大阪府の茨木市でした。
一般的には寿命が延びると、それに比例して医療費も増大します。2015年度における国民医療費の総額は42兆円を超えていますが、国民から徴収する保険料と患者の自己負担でカバーできているのは全体の約6割にすぎません。残りは税金などから補填される仕組みになっており、公的負担がなければ、制度を維持することが難しくなります。
【16万円負担増も! 全国で頻発する介護認定“格下げ”の阿鼻叫喚】女性自身1/19(金) 11:11配信
「具体的な統計データはありませんが、格下げされた家族からの相談や悩みを聞くことが非常に増えました。実際、私の母親も『要介護3』から『要介護2』になりました」
そう語るのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。国や自治体は、要介護度を軽くすればするほど、負担する支給額を減らすことができるのだ。
「アルツハイマーと脳血管型認知症の2つの症状がある『要介護3』の80代の女性は見守りが必要でしたが、つえをついて歩ける状態でした。ところが、次の認定更新のときには車いすでの生活に。認知症の症状も悪くなっていたのですが、『要介護2』に格下げ認定されたんです。利用者の家族は納得がいきませんでしたが、認定が覆ることはなかった。このケースは意識的に下げたとしか思えなかった典型的な例です」(横井さん)
「『要介護2』のひとり暮らしの85歳の女性がいました。ふだんは、妄想や幻覚の症状があって、会話が飛んでしまうこともしばしば。しかし、調査員との面談のときは、たまたま状態がよく、そこそこ受け答えができた。その結果、『要支援2』に格下げされました。たった一度の面談で、決まってしまったのです」
調査員が作成する調査票には特記事項という項目がある。
「『要介護2』のひとり暮らしの85歳の女性がいました。ふだんは、妄想や幻覚の症状があって、会話が飛んでしまうこともしばしば。しかし、調査員との面談のときは、たまたま状態がよく、そこそこ受け答えができた。その結果、『要支援2』に格下げされました。たった一度の面談で、決まってしまったのです」
調査員が作成する調査票には特記事項という項目がある。
「認定調査員がそのときに感じた印象を書きます。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるんです」(関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャー)
要介護度に応じた支給限度基準額内で、利用者は1割~2割負担で介護サービスを受けられる。要介護度が格下げされると、その額も減らされてしまうのだ。
たとえば、前出の「要介護3」から「要支援2」に引き下げられた80代女性のケース。支給限度基準額は「要介護3」であれば月額26万9,310円(負担割合が1割の場合、自己負担額は2万6,931円)だが、「要支援2」に格下げされると月額10万4,730円(同1万473円)と半額以下になる。
たとえば、前出の「要介護3」から「要支援2」に引き下げられた80代女性のケース。支給限度基準額は「要介護3」であれば月額26万9,310円(負担割合が1割の場合、自己負担額は2万6,931円)だが、「要支援2」に格下げされると月額10万4,730円(同1万473円)と半額以下になる。
もし、この女性が格下げ前と同じサービスを受けようとした場合、差額の約16万円を全額負担しなければならない。金銭的な余裕がない場合、これまで受けていた介護サービス(生活援助、身体介助など)が利用できなくなったり、回数を減らさざるをえない。利用者はもとより、家族にも負担がのしかかるのである。
東海エリアの介護事業所の責任者は次のように語る。
東海エリアの介護事業所の責任者は次のように語る。
「格下げにより、施設を退所させられた男性は、自宅での介護を余儀なくされました。その結果、同居する娘さんが離職してお父さんの介護をすることに……。結局、格下げのシワ寄せは家族に降りかかるのです」
【新介護報酬で介護現場に「医療の介入」が高まることへの懸念】ダイアモンド
1/31(水) 6:00配信
老化を逆行させる「医療」
1/31(水) 6:00配信
老化を逆行させる「医療」
3年に1度の介護保険制度の改定内容が明らかになった。1月26日に開かれた第158回社会保障審議会介護給付費分科会で、厚労省が各介護サービスについて事業者に支払う報酬を示した。
報酬は全体としては0.54%の引き上げだが、介護の基本的な考え方を揺るがしかねない新しい加算報酬が広がりつつある。
報酬は全体としては0.54%の引き上げだが、介護の基本的な考え方を揺るがしかねない新しい加算報酬が広がりつつある。
社会保障費の伸びに危機感を抱く財務省から多くのサービスへ費用の削減要望が強い。そこで、厚労省は特定のサービスに加算して事業者を誘導することで、全体の費用を抑えていく方針を採った。
事業者や利用者を納得させる手段として、取り込んだのが「医療」である。患部を元通りに戻す、すなわち治すことが医療の目的と言われる。もしも、要介護者がこの医療の手法で、介護保険を使わなくてもよくなるほどに「回復」すれば、総費用は下がる。こうした医療の発想を介護の場に持ち込むことへの疑問はないのだろうか。
事業者や利用者を納得させる手段として、取り込んだのが「医療」である。患部を元通りに戻す、すなわち治すことが医療の目的と言われる。もしも、要介護者がこの医療の手法で、介護保険を使わなくてもよくなるほどに「回復」すれば、総費用は下がる。こうした医療の発想を介護の場に持ち込むことへの疑問はないのだろうか。
加齢とともに老衰の過程に入り、心身の機能が弱まっていくのが普通の人間であり、生物だろう。死に向かう日々が続くのは間違いない。ゆっくり進む老衰と寄り添いながら高齢者たちは日々の暮らしを営む。そこに「介護」が手助けすることで、生活の質が維持される。
介護の基本は暮らしやすさを支援することである。一時的に「回復」が訪れても、死への歩みは避けられない。自然の摂理である。無理矢理、自然の摂理に逆らえば、摩擦が生じる。耐えられない苦痛、苦役を伴いかねない。
普段の生活を重視する「介護」と、老化を逆行させて回復を目指す「医療」との間には、深い溝がありそうだ。「介護と医療の連携」は一筋縄では行かない。
介護の基本は暮らしやすさを支援することである。一時的に「回復」が訪れても、死への歩みは避けられない。自然の摂理である。無理矢理、自然の摂理に逆らえば、摩擦が生じる。耐えられない苦痛、苦役を伴いかねない。
普段の生活を重視する「介護」と、老化を逆行させて回復を目指す「医療」との間には、深い溝がありそうだ。「介護と医療の連携」は一筋縄では行かない。
「医療」がリハビリを通じて介護現場へ
今回の改定のキャッチフレーズは、「自立支援」であり「重度化防止」、そして結果としての「適正化・重点化」である。
最もわかりやすいのがリハビリだ。訪問リハビリと通所リハビリで、「医師の詳細な指示に基づく」マネジメント加算が大幅に増額された。従来の要介護者に加えて、要支援者にもマネジメント加算が新たに設けられ、訪問リハで月2300円、通所リハで月3300円となった。
また、「自立支援」「重度化防止」の代表として、「生活機能向上連携加算」が幅広く適用されることになった。医師とリハビリ専門職の活用である。自前の事業所に専門職がいなくてもいい。
外部の医療機関に所属する医師や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(OT)が通所介護事業所などを訪問して、助言(アセスメント・カンファレンス)を行い、個別機能訓練計画を作成すると、1人につき月2000円の報酬が得られる。従来は1000円だったから2倍になる。
これまでは訪問介護だけだったが、通所介護(デイサービス)をはじめショートステイ、地域密着型の特養や介護付き有料老人ホームなどに適用される。PTやOTが活動するには必ず医師の指示が必要。医療の考えがリハビリを通じて介護の現場に浸透していくことになる。
次いで、排便・排尿の際に介助を要する人への「おむつ外し」を支援する取り組みにも医療職が必要とされる。「排泄支援加算」として、月1000円の加算を新しく設けた。「自立支援」につながるからだという。
次いで、排便・排尿の際に介助を要する人への「おむつ外し」を支援する取り組みにも医療職が必要とされる。「排泄支援加算」として、月1000円の加算を新しく設けた。「自立支援」につながるからだという。
特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設(老健)などの施設でのことだ。居室内のベッド脇にポータブルトイレを置き、自分だけで排泄ができるようにすることなどが目指される。
その条件として「医師、又は医師と連携した看護師が判断」するとある。これまで、医師の同意を得ないで「おむつ外し」を実践してきた施設は新たな対応を迫られる。
その条件として「医師、又は医師と連携した看護師が判断」するとある。これまで、医師の同意を得ないで「おむつ外し」を実践してきた施設は新たな対応を迫られる。
そして、「自立支援」の目玉として投入されたのはデイサービスでの「成功報酬」の導入である。一昨年の安倍首相の「介護のパラダイム転換を目指す」という発言に端を発して、大きな話題を集めてきた(詳細は連載の90回を参照)。
「1500ccの水分、1500キロカロリーの栄養、おむつ外し、運動」の4要素を強調する「自立支援介護」論者たちの言動を内閣府や経産省が吸い上げて、政権の施策に盛り込んできた。要介護度の改善に応じた加算を要求する自治体の声も高まった。だが、厚労省は要介護度による加算案は退け、バーセルインデックスという評価手法を取り入れた。それも、デイサービスだけに限定し、「ADL維持加算」と命名した。
バーセルインデックスとは、自力でトイレや食事、歩行などができると15点で、手助けが必要なら10点と計算し、100点満点にどれだけ近づくかで評価する方式。評価活動は10項目に及ぶ。
点数から改善者と悪化者を見極め、改善した利用者が悪化した利用者より多ければ「成功報酬」として加算を設けた。日常生活の活動がどのくらいできるかを判定するもので、この日常生活動作をADL(activities of daily living)という。
その加算額だが、一人当たりわずか30円にとどめた。6ヵ月間の評価期間を過ぎてさらに1年間のバーセルインデックス評価を実施しても2倍の60円にしか増えない。
そしてかなり限定的な条件を付けた。対象利用者が20人以上であることと、その15%が要介護3以上の中重度者でなければならないとした。
「自立支援介護」を主張する政権からの声を一応受けとめて制度に導入したが、加算取得の条件を厳しくしたうえ加算額も相当抑え込んだ。「自立支援介護」への政治的判断、難しい立ち位置がうかがえる。
「バーセルインデックスの取り組みに手間がかかる割に、他の加算に比べ、報酬が少ないのでは」という問いかけにも、厚労省は「バーセルインデックスは最初だけ手数がかかるが後は簡単です。加算の報酬は適切です」と表向きの答えをせざるを得ない。
「自立支援介護」を主張する政権からの声を一応受けとめて制度に導入したが、加算取得の条件を厳しくしたうえ加算額も相当抑え込んだ。「自立支援介護」への政治的判断、難しい立ち位置がうかがえる。
「バーセルインデックスの取り組みに手間がかかる割に、他の加算に比べ、報酬が少ないのでは」という問いかけにも、厚労省は「バーセルインデックスは最初だけ手数がかかるが後は簡単です。加算の報酬は適切です」と表向きの答えをせざるを得ない。
看取りの現場にも「医療」が
医療の「介入」は看取りの現場でも広がりそうだ。特養で配置医師が施設の求めに応じて、早朝・夜間または深夜の急変時に訪問して診療した場合に報酬を加算する「配置医師緊急時対応加算」を新設した。早朝・夜間は1回当たり6500円、深夜は同1万3000円と高額だ。
特養内で入所者を看取った時に、医療側との連携がとれていれば「看取り介護加算」も増額することにした。
その連携条件は、緊急時の注意事項や病状などについての情報共有の方法や曜日・時間帯ごとの医師との連絡方法、診療を依頼するタイミングなどについて配置医師との間で取り決めが成されていることだ。
特養内で入所者を看取った時に、医療側との連携がとれていれば「看取り介護加算」も増額することにした。
その連携条件は、緊急時の注意事項や病状などについての情報共有の方法や曜日・時間帯ごとの医師との連絡方法、診療を依頼するタイミングなどについて配置医師との間で取り決めが成されていることだ。
改定後には、1万2800円の死亡日加算を3000円増額し、死亡日前々日・前日加算を1日当たり6800円から1000円増額した。
特養が配置医との関わりを深め、さらに看取りを増やしていけるようにとの思いが、手厚い加算からうかがえる。
特養が配置医との関わりを深め、さらに看取りを増やしていけるようにとの思いが、手厚い加算からうかがえる。
特養だけでなく、在宅で亡くなる際にも医師の関与を積極的に後押しすることになった。そのため、ケアマネジャーに対して新たに「ターミナルケアマネジメント加算」を設けた。月に4000円である。
がん末期の患者宅に、亡くなる2週間以内に2日以上訪問して、その状況を主治医に伝え、助言を得ることによる加算である。
がん末期の患者宅に、亡くなる2週間以内に2日以上訪問して、その状況を主治医に伝え、助言を得ることによる加算である。
ケアマネジャーが通常ケアプランを作成する際には、関係する専門職を集めたサービス担当者会議で検討されるが、ガン末期の場合はその召集を不要とし、主治医からの助言さえあれば良しとした。介護職よりも医療職を重視する考え方と言えよう。
また、ケアマネジャーについては、病院や施設から退院・退所した利用者のケアプラン作成に当たり、医療機関と年間35回以上総合的に連携すれば「特定事業所加算」として、月に1250円得られることにした。
このほか、ケアプラン利用者の入院時に医療機関への情報提供をより早くするなど、「医療と介護の連携強化」の名のもとで、医療側とのつながりを強く求められるようになった。
また、ケアマネジャーについては、病院や施設から退院・退所した利用者のケアプラン作成に当たり、医療機関と年間35回以上総合的に連携すれば「特定事業所加算」として、月に1250円得られることにした。
このほか、ケアプラン利用者の入院時に医療機関への情報提供をより早くするなど、「医療と介護の連携強化」の名のもとで、医療側とのつながりを強く求められるようになった。
● 「治す」視点からの介入による弊害
こうした一連の医療重視策が介護現場に与える影響は大きい。「治す」視点からの介入が拡大していくと、「生活を共に」という介護本来のあり方が歪まざるを得ないだろう。身体機能の動作(ADL)から判断する傾向が強くなり、生活の質(QOL)が脇に置き去りにされかねない。
医療では、障害が生じた臓器への対応は一般性があり共通性が強く、確立された一定の治療法が適用される。個別性は退けられ、日常生活的な感情は排除される。ところが、介護では逆に、個別性や日常性が尊重される。食事の好みにはじまり日々の細かな仕草など1人1人異なる価値観を前提に、ライフスタイルごとの対応が求められる。
医療では、障害が生じた臓器への対応は一般性があり共通性が強く、確立された一定の治療法が適用される。個別性は退けられ、日常生活的な感情は排除される。ところが、介護では逆に、個別性や日常性が尊重される。食事の好みにはじまり日々の細かな仕草など1人1人異なる価値観を前提に、ライフスタイルごとの対応が求められる。
「百人一色」でまとめられる医療に対し、介護は「百人百色」として個別性が発揮されねばならない。
それが顕著に表れるのは認知症のケアだろう。心の落ち着きや安定をまず求められるのが認知症ケアである。日々のゆったりした環境から始まり、周囲の職員の声のかけ方の一つひとつが大切であり、医療の視点ではなかなか目が届かない。
そして、忘れてならないのは「本人の意思」「本人第一」についての医療と介護の溝であろう。「本人が選ぶ介護サービス」を掲げて制度化した介護保険法と「治す」技術者として権威を持つ医療が「連携」するには、道遠しと言わざるを得ない。ただ現実は、診療報酬と介護報酬が同時改定される6年に一度のダブル改定と言われてきたが、どうやら「介護への医療の浸透」となりつつある。
それが顕著に表れるのは認知症のケアだろう。心の落ち着きや安定をまず求められるのが認知症ケアである。日々のゆったりした環境から始まり、周囲の職員の声のかけ方の一つひとつが大切であり、医療の視点ではなかなか目が届かない。
そして、忘れてならないのは「本人の意思」「本人第一」についての医療と介護の溝であろう。「本人が選ぶ介護サービス」を掲げて制度化した介護保険法と「治す」技術者として権威を持つ医療が「連携」するには、道遠しと言わざるを得ない。ただ現実は、診療報酬と介護報酬が同時改定される6年に一度のダブル改定と言われてきたが、どうやら「介護への医療の浸透」となりつつある。
(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)
コメント
コメントを投稿