除放剤 砕く

出典:絶対に噛み砕いてはいけない薬も。薬の正しい飲み方講座
帝京大学薬学部教授の丸山一雄先生
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近年、朝1回飲めばいい、という1日1回しか服用しなくてよい薬が増えている。これがゆっくり長時間効果が持続する徐放製剤と呼ばれるものだ。
カプセルであれば、すぐに胃の中で溶けて効く薬と、胃では溶けないで腸管に行ってからゆっくり溶けて効く薬が組み合わされて入っている。これは吸収場所を変えることで時間差をつくって効果を持続させるものだ。
また、錠剤であれば、何層にもなっている外側から溶けていって、最後に中の核がゆっくり溶ける、というタイプもある。これは溶ける時間差を利用するものだ。
服用する側としてはとても便利だが、ひとつ不安がある。長時間効果が持続する分、強い薬を飲んでいるのではないかということだ。
しかし丸山先生によれば、1日1回の投与で済む徐放性剤のほうが副作用が少ないのだという。なぜなら、1日3回飲むと、飲む直前は血中濃度が低くなり、飲んだ後は血中濃度が跳ね上がるが、1日1回飲んで時間差で有効成分が溶け出すように調整されている薬のほうが、血中濃度が安定するからだという。つまり、血中濃度の上げ下げが頻繁にあるより、一定しているほうが副作用も少ないのだ。また、飲む回数を少なくした方が飲み忘れを起こす心配が減る。




薬のなかには、胃では溶けないで腸で溶けるように設計されている薬もある。胃液は酸性だが腸液は弱アルカリ性なので、酸性の胃液で効力を失う薬や、あるいは腸で吸収させたい薬などがこれにあたる。こうした薬を腸溶剤という。見た目は普通の薬と一緒なのだが、胃で溶けないように何層にも腸溶性ポリマーでコーティングされている。こうした薬も噛み砕いてしまったら、胃で溶けてしまう。じつは胃薬などにもこうした腸溶剤があるという。
「胃酸の分泌を抑え胃潰瘍や逆流性食道炎を治すプロトンポンプ阻害薬という薬は、胃薬なのに胃で溶けてはいけないんです。なぜかというと、胃で溶けてしまうと胃で分解されてしまうから。腸管にいって初めて吸収され、血液に運ばれて血液側から胃に働いてほしいのです。こうした腸で溶ける薬(腸溶剤)も絶対に割ったり噛み砕いたりせずに飲み下しましょう」
また、心臓に効くニトログリセリン舌下錠のように、舌下から吸収させる薬もある。
「狭心症の発作が起きたり、発作が始まりそうになったら、安静にして1錠だけ取り出し、舌の下に入れて溶かして下さい。舌下から吸収されて1分ほどで効き始めます。飲み込んでしまうと効きません。飲み込んでしまうと肝臓でほとんど分解されてしまいますが、舌の下に置いて舌の裏の粘膜から直接吸収させると、心臓に行くからです」
薬は正しい飲み方をしないと効かないか副作用が出ることがある。このように薬を必要な場所に適切に届ける技術を「DDS(ドラッグデリバリーシステム)」といい、まさに薬物送達学研究室教授である丸山先生の専門領域である。
「DDSという言葉を知るだけで薬の飲み方が違ってきます」(丸山先生)。
まずはしっかり医師と薬剤師の説明を聞くことから始めよう。
◆取材講座:薬学部40周年記念連続講座「大学教授が教える!知って得するお薬と健康の話」第3回「薬に技あり!秘められた製剤技術の紹介」(帝京大学総合博物館)

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