新聞2017子どもの「精神障害」はかなり誤解されている
新聞編集17年5月~
【目次】
【運転手の労災認定 待機は労働<東京労働局>運転手の待機時間は労働時間 労災を逆転認定】
(毎日17・5/26(金) 20:51 掲載)
【子どもの虫歯二極化、口腔崩壊も 経済格差背景か】(神戸新聞17・05・19)
【「ニート率」日本10.1% OECD調査、平均下回る 】(日本経済新聞2017/5/29 19:48)
【若い世代の死因、自殺最多=15~39歳「深刻」―政府白書】(時事通信 5/30(火) 8:51配信 )
【解雇トラブル金銭で解決 厚労省、制度導入本格検討へ 「解雇助長」労働界強く反発】
(北海道新聞 5/30(火) 7:02配信 )
【その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも……】National Geographic6/12(月) 7:30配信
【食物を誤ってのみ込む事故死 高齢者施設で続く理由とは】6/28(水) 9:49 配信
【子どもの「精神障害」はかなり誤解されている】(東洋経済オンライン・7/3(月) 6:00配信 )
【うつ病は女が多く、過労死に男が多いワケ】(president online精神科医 樺沢 紫苑 構成=伊藤達也.7/5(水) 9:15配信 )
【【本文】】
【目次】
【運転手の労災認定 待機は労働<東京労働局>運転手の待機時間は労働時間 労災を逆転認定】
(毎日17・5/26(金) 20:51 掲載)
【子どもの虫歯二極化、口腔崩壊も 経済格差背景か】(神戸新聞17・05・19)
【「ニート率」日本10.1% OECD調査、平均下回る 】(日本経済新聞2017/5/29 19:48)
【若い世代の死因、自殺最多=15~39歳「深刻」―政府白書】(時事通信 5/30(火) 8:51配信 )
【解雇トラブル金銭で解決 厚労省、制度導入本格検討へ 「解雇助長」労働界強く反発】
(北海道新聞 5/30(火) 7:02配信 )
【その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも……】National Geographic6/12(月) 7:30配信
【食物を誤ってのみ込む事故死 高齢者施設で続く理由とは】6/28(水) 9:49 配信
【子どもの「精神障害」はかなり誤解されている】(東洋経済オンライン・7/3(月) 6:00配信 )
【うつ病は女が多く、過労死に男が多いワケ】(president online精神科医 樺沢 紫苑 構成=伊藤達也.7/5(水) 9:15配信 )
【【本文】】
【運転手の労災認定 待機は労働<東京労働局>運転手の待機時間は労働時間 労災を逆転認定】
(毎日17・5/26(金) 20:51 掲載)
◇「待機時間の大半を休憩扱い」の労基署決定を取り消す
(毎日17・5/26(金) 20:51 掲載)
◇「待機時間の大半を休憩扱い」の労基署決定を取り消す
勤務中に長時間の待機を求められ、心筋梗塞(こうそく)で死亡した男性運転手(当時63歳)=神奈川県在住=について、労災を認めなかった新宿労働基準監督署の決定を東京労働局が取り消して逆転認定したことが分かった。労基署は待機時間の大半を休憩扱いにしたが、労働局は「使用者の指揮命令下に置かれた労働時間」と認めた。
東京都内で26日に記者会見したNPO「神奈川労災職業病センター」によると、男性は企業役員が乗る車の運転を請け負う新宿区内の会社に勤務。2015年10月、役員宅前に待機中の車内で倒れているのが発見され、病院で死亡が確認された。死因は心筋梗塞と診断された。
労基署は、男性の残業について基準となる過労死ライン(発症までの1カ月の合計が100時間など)は下回ると判断し、労災と認定しなかった。これを不服とした遺族が審査請求し、東京労働局は労基署が残業と認定しなかった待機時間を残業と認め、1カ月間に過労死ラインを上回る133時間15分の残業があったと判断。3月28日付で労基署の決定を取り消した。
政府は3月、労働基準法を改正して残業時間の上限を年720時間以内にすると決めたが、自動車運転業務は改正後も5年間は制限の対象にならない。同NPOの川本浩之事務局長は「人の命を乗せて走る職業こそ、真っ先に規制すべきだ」と指摘した。(早川健人)
東京都内で26日に記者会見したNPO「神奈川労災職業病センター」によると、男性は企業役員が乗る車の運転を請け負う新宿区内の会社に勤務。2015年10月、役員宅前に待機中の車内で倒れているのが発見され、病院で死亡が確認された。死因は心筋梗塞と診断された。
労基署は、男性の残業について基準となる過労死ライン(発症までの1カ月の合計が100時間など)は下回ると判断し、労災と認定しなかった。これを不服とした遺族が審査請求し、東京労働局は労基署が残業と認定しなかった待機時間を残業と認め、1カ月間に過労死ラインを上回る133時間15分の残業があったと判断。3月28日付で労基署の決定を取り消した。
政府は3月、労働基準法を改正して残業時間の上限を年720時間以内にすると決めたが、自動車運転業務は改正後も5年間は制限の対象にならない。同NPOの川本浩之事務局長は「人の命を乗せて走る職業こそ、真っ先に規制すべきだ」と指摘した。(早川健人)
【子どもの虫歯二極化、口腔崩壊も 経済格差背景か】(神戸新聞17・05・19)
兵庫県内の小中高・特別支援学校で2016年度に行われた歯科検診で、虫歯などが見つかり「要受診」とされた約3万5千人のうち、歯科の受診が確認できない児童・生徒が約2万3千人、65%に上ることが県保険医協会の調査で分かった。未治療の虫歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」の子どもがいる学校の割合も35%に上った。同協会は「全体的に子どもの虫歯は減少傾向なのに二極化が進んでいる。背景に貧困などの厳しい社会状況がある」と指摘する。(森 信弘)
調査は17年3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(11万415人分)から回答があった。大阪府や長野県などでも各保険医協会が同様の調査を行ったが、似たような傾向があるという。
受診が確認できなかったのは、小学校が46%、中学校で64%、高校は84%と年齢を経て高くなり、特別支援学校は62%だった。
口腔崩壊の児童・生徒がいる場合、家庭状況について尋ねた(複数回答)ところ「一人親家庭」が37%で最も多く、「保護者の健康への理解不足」(33%)、「経済的困難」(32%)などが目立った。口腔崩壊は調査で計346人おり、同協会は「単純計算で県内に1500~2千人程度と推定できる」としている。
口腔崩壊の児童・生徒が1人でもいる学校は、中学では19%だが、高校は47%と増加。中学生は永久歯に生え替わるのに伴って減っているとみられるが、高校生の場合は一生使う歯が使えなくなってしまうことになる。特別支援学校も47%と高く、受け入れる医療機関が限られることも影響しているとみられる。
同協会の足立了平理事は「仕事が忙しく、子どもの歯磨きに気を使ってやれない親もおり、家庭状況にあった保健指導や働き方の改革なども必要」とし「今後も調査を続けたいが、できれば行政が取り組んでほしい」としている。
【口腔(こうくう)崩壊】 明確な定義はないが、10本以上の虫歯や歯根しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまくかめない状態を指す。栄養状態が悪くなり、体の成長やあごの発達などに影響する恐れがある。歯科を受診できない背景として貧困問題との関連からも注目され始めている。
【図01】
【「ニート率」日本10.1% OECD調査、平均下回る 】(日本経済新聞2017/5/29 19:48)
経済協力開発機構(OECD)は29日、仕事や就学をせず職業訓練も受けていない15~29歳の日本の若者の現状に関する報告書を公表した。こうした若者の割合を「ニート率」とし、日本は2015年に10.1%と、OECD平均の14.7%を下回っていた。ただ、ドイツやスイスなどと比べれば高く、報告書では就労支援の充実などを提言した。
日本ではニートを「15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない男女」と定義する。これに対しOECDの定義は専業主婦などを含み、日本とは異なっている。
報告書では日本にニートは170万人(15年)いるとし、うち3分の2は求職活動をしていないと指摘。主な理由として待機児童問題を挙げた。仕事を続ける若い女性を増やしていくためにも、保育所の充実などが必要だとしている。
不登校の児童生徒の問題については「1990年代初めから比べて倍増しているが、国際的にみると欠席は依然少ない」と評価しつつも、登校することが困難な児童生徒に多様な教育機会を提供するよう提言した。
一方、日本の若者(18~25歳)の貧困率がOECDの2012年調査で約20%と、加盟国の中でも高いことを問題視。厚生労働省で報告書を説明したステファン・カルシロ社会政策課シニアエコノミストは、貧困層の若者が「セーフティーネットの恩恵を受けていない」として、改善が必要だと主張した。
調査は17年3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(11万415人分)から回答があった。大阪府や長野県などでも各保険医協会が同様の調査を行ったが、似たような傾向があるという。
受診が確認できなかったのは、小学校が46%、中学校で64%、高校は84%と年齢を経て高くなり、特別支援学校は62%だった。
口腔崩壊の児童・生徒がいる場合、家庭状況について尋ねた(複数回答)ところ「一人親家庭」が37%で最も多く、「保護者の健康への理解不足」(33%)、「経済的困難」(32%)などが目立った。口腔崩壊は調査で計346人おり、同協会は「単純計算で県内に1500~2千人程度と推定できる」としている。
口腔崩壊の児童・生徒が1人でもいる学校は、中学では19%だが、高校は47%と増加。中学生は永久歯に生え替わるのに伴って減っているとみられるが、高校生の場合は一生使う歯が使えなくなってしまうことになる。特別支援学校も47%と高く、受け入れる医療機関が限られることも影響しているとみられる。
同協会の足立了平理事は「仕事が忙しく、子どもの歯磨きに気を使ってやれない親もおり、家庭状況にあった保健指導や働き方の改革なども必要」とし「今後も調査を続けたいが、できれば行政が取り組んでほしい」としている。
【口腔(こうくう)崩壊】 明確な定義はないが、10本以上の虫歯や歯根しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまくかめない状態を指す。栄養状態が悪くなり、体の成長やあごの発達などに影響する恐れがある。歯科を受診できない背景として貧困問題との関連からも注目され始めている。
【図01】
【「ニート率」日本10.1% OECD調査、平均下回る 】(日本経済新聞2017/5/29 19:48)
経済協力開発機構(OECD)は29日、仕事や就学をせず職業訓練も受けていない15~29歳の日本の若者の現状に関する報告書を公表した。こうした若者の割合を「ニート率」とし、日本は2015年に10.1%と、OECD平均の14.7%を下回っていた。ただ、ドイツやスイスなどと比べれば高く、報告書では就労支援の充実などを提言した。
日本ではニートを「15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない男女」と定義する。これに対しOECDの定義は専業主婦などを含み、日本とは異なっている。
報告書では日本にニートは170万人(15年)いるとし、うち3分の2は求職活動をしていないと指摘。主な理由として待機児童問題を挙げた。仕事を続ける若い女性を増やしていくためにも、保育所の充実などが必要だとしている。
不登校の児童生徒の問題については「1990年代初めから比べて倍増しているが、国際的にみると欠席は依然少ない」と評価しつつも、登校することが困難な児童生徒に多様な教育機会を提供するよう提言した。
一方、日本の若者(18~25歳)の貧困率がOECDの2012年調査で約20%と、加盟国の中でも高いことを問題視。厚生労働省で報告書を説明したステファン・カルシロ社会政策課シニアエコノミストは、貧困層の若者が「セーフティーネットの恩恵を受けていない」として、改善が必要だと主張した。
【若い世代の死因、自殺最多=15~39歳「深刻」―政府白書】(時事通信 5/30(火) 8:51配信 )
政府は30日、2017年版の自殺対策白書を閣議決定し公表した。
自殺者数は減少傾向にある中、死亡原因は15~39歳で自殺が依然として最も多く、白書は「社会をけん引する若い世代の自殺は深刻な状況にある」としている。
年間の自殺者数は03年の3万4427人をピークに減少。15年に2万4025人、16年は2万1897人となり、22年ぶりに2万2000人を割った。
人口動態統計を基に15年の死因順位を5歳ごとの年齢層別に見ると、10代前半や40歳以上は「がん」が最多で、2位に「自殺」「心疾患」が並ぶ。一方、15~39歳はいずれも前年と同様に「自殺」が最も多い。中でも20代後半は2位がんの3.8倍、20代前半も2位「不慮の事故」の2.9倍だった。
全体の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は18.5人で、先進7カ国の中で最も高い。厚生労働省の有識者検討会は国の自殺総合対策大綱の見直しを進めており、今後10年で自殺率を3割減の13.0人に引き下げる数値目標を盛り込む方針だ。
政府は30日、2017年版の自殺対策白書を閣議決定し公表した。
自殺者数は減少傾向にある中、死亡原因は15~39歳で自殺が依然として最も多く、白書は「社会をけん引する若い世代の自殺は深刻な状況にある」としている。
年間の自殺者数は03年の3万4427人をピークに減少。15年に2万4025人、16年は2万1897人となり、22年ぶりに2万2000人を割った。
人口動態統計を基に15年の死因順位を5歳ごとの年齢層別に見ると、10代前半や40歳以上は「がん」が最多で、2位に「自殺」「心疾患」が並ぶ。一方、15~39歳はいずれも前年と同様に「自殺」が最も多い。中でも20代後半は2位がんの3.8倍、20代前半も2位「不慮の事故」の2.9倍だった。
全体の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は18.5人で、先進7カ国の中で最も高い。厚生労働省の有識者検討会は国の自殺総合対策大綱の見直しを進めており、今後10年で自殺率を3割減の13.0人に引き下げる数値目標を盛り込む方針だ。
【解雇トラブル金銭で解決 厚労省、制度導入本格検討へ 「解雇助長」労働界強く反発】
(北海道新聞 5/30(火) 7:02配信 )
企業側からの申し立てには課題
解雇トラブルの際に労働者に金銭を渡して解決する「不当解雇の金銭解決制度」導入について、厚生労働省は今年夏にも法改正に向けた本格的な検討を開始する。有識者検討会は29日にまとめた報告書で、厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会で議論するよう提言した。労働界は制度導入は「解雇を助長する」と反発を強めており、議論の先行きは見通せない。
労働契約法で企業による解雇権の乱用は無効とされているが、解雇を巡る紛争は後を絶たない。現行では労働審判や訴訟などで解雇が無効と認められれば、職場復帰することができる。しかし、会社との関係が悪化し、職場復帰が困難なケースもある。
今回の報告書は、制度について検討会で賛成反対それぞれの意見があったことを示した上で、「労働者の多様な救済の選択肢の確保等の観点からは一定程度(必要性が)認められる」とした。解決金の水準は「上限、下限等を設定することが適当」と記した。制度運用は解雇された労働者側の申し立てを原則とし、企業側の申し立ては「現状では容易でない課題があり、今後の検討課題」とした。
(北海道新聞 5/30(火) 7:02配信 )
企業側からの申し立てには課題
解雇トラブルの際に労働者に金銭を渡して解決する「不当解雇の金銭解決制度」導入について、厚生労働省は今年夏にも法改正に向けた本格的な検討を開始する。有識者検討会は29日にまとめた報告書で、厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会で議論するよう提言した。労働界は制度導入は「解雇を助長する」と反発を強めており、議論の先行きは見通せない。
労働契約法で企業による解雇権の乱用は無効とされているが、解雇を巡る紛争は後を絶たない。現行では労働審判や訴訟などで解雇が無効と認められれば、職場復帰することができる。しかし、会社との関係が悪化し、職場復帰が困難なケースもある。
今回の報告書は、制度について検討会で賛成反対それぞれの意見があったことを示した上で、「労働者の多様な救済の選択肢の確保等の観点からは一定程度(必要性が)認められる」とした。解決金の水準は「上限、下限等を設定することが適当」と記した。制度運用は解雇された労働者側の申し立てを原則とし、企業側の申し立ては「現状では容易でない課題があり、今後の検討課題」とした。
【介護業界の生き地獄 貧困現場と豪遊上層部の絶望的な格差】6/10(土) 7:00配信 NEWS ポストセブン
──さらに、国の方針で元受刑者たちが介護現場に投入されているとか。
「2016年11月に法務省コレワーク(矯正就労支援情報センター)の業務が開始されました。刑務所出所者を介護現場に誘導する取り組みです。女性犯罪の多くは窃盗犯と薬物中毒犯で、再犯率は高い。そういう類の人々が介護現場に投入されたらどうなるか。結果は火を見るより明らか。窃盗事件が増え、施設職員たちの間に薬物が蔓延する。役人は現場をわかっていないから、こういう安直な発想しか出てこないのです」
──絶望的な気持ちにさせられますね。
「さらに嫌な予感がするのは、これから全国の市区町村で始まる地域包括ケアシステムですね。簡単にいえば、軽度要支援高齢者を病院や介護施設から締めだし、自宅に帰らせて、地域住民のボランティアなどによって介護をするという取り組み。軽度要支援高齢者は普通に歩行ができる認知症高齢者が多く、間違いなく大混乱となります。普通に考えて徘徊による高齢者の迷子が多発、車に轢かれて亡くなる認知症高齢者も増え、地域によっては冬場など一晩で凍え死ぬことも起こりうる。朝方、路上に高齢者の遺体がゴロゴロと転がるような絶望的な事態になるかもしれません」
──何か手はありますか?
「早急に必要なのは介護業界を『高齢者ではなく、介護職のための業界にする』ことです。介護職たちの報酬を上げることはもちろん、高齢者のためのサービス業という意識を少し捨てる。高齢者より、現役世代の介護職が大切という考え方を全国民がするべきです。これまでお客様扱いされてきた高齢者には厳しいかもしれないが、自分たちも我慢しなければ、そのツケは自分たちに返る。高望みはせず、ある程度の諦めも必要です。そこからスタートすれば、現在の暗黒な状況が少しは好転するのではないかと思いますね。
──さらに、国の方針で元受刑者たちが介護現場に投入されているとか。
「2016年11月に法務省コレワーク(矯正就労支援情報センター)の業務が開始されました。刑務所出所者を介護現場に誘導する取り組みです。女性犯罪の多くは窃盗犯と薬物中毒犯で、再犯率は高い。そういう類の人々が介護現場に投入されたらどうなるか。結果は火を見るより明らか。窃盗事件が増え、施設職員たちの間に薬物が蔓延する。役人は現場をわかっていないから、こういう安直な発想しか出てこないのです」
──絶望的な気持ちにさせられますね。
「さらに嫌な予感がするのは、これから全国の市区町村で始まる地域包括ケアシステムですね。簡単にいえば、軽度要支援高齢者を病院や介護施設から締めだし、自宅に帰らせて、地域住民のボランティアなどによって介護をするという取り組み。軽度要支援高齢者は普通に歩行ができる認知症高齢者が多く、間違いなく大混乱となります。普通に考えて徘徊による高齢者の迷子が多発、車に轢かれて亡くなる認知症高齢者も増え、地域によっては冬場など一晩で凍え死ぬことも起こりうる。朝方、路上に高齢者の遺体がゴロゴロと転がるような絶望的な事態になるかもしれません」
──何か手はありますか?
「早急に必要なのは介護業界を『高齢者ではなく、介護職のための業界にする』ことです。介護職たちの報酬を上げることはもちろん、高齢者のためのサービス業という意識を少し捨てる。高齢者より、現役世代の介護職が大切という考え方を全国民がするべきです。これまでお客様扱いされてきた高齢者には厳しいかもしれないが、自分たちも我慢しなければ、そのツケは自分たちに返る。高望みはせず、ある程度の諦めも必要です。そこからスタートすれば、現在の暗黒な状況が少しは好転するのではないかと思いますね。
【その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも……】National Geographic6/12(月) 7:30配信
今年4月に、故ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症に罹患しているようだという記事が週刊誌に載った。御年84歳とのことなので認知症に罹患しても不思議でない年齢ではあるが、珍しい病名に目を奪われた読者も多かったと思う。
今年4月に、故ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症に罹患しているようだという記事が週刊誌に載った。御年84歳とのことなので認知症に罹患しても不思議でない年齢ではあるが、珍しい病名に目を奪われた読者も多かったと思う。
認知症とは、物忘れがひどくなる「記憶障害」、時刻や自分のいる場所が分からなくなる「見当識障害」、物や言葉などが分からなくなる「失認」、着衣などができなくなる「失行」など、さまざまな認知機能の障害が生じる疾患の総称である。これらの症状は認知症の中核症状と呼ばれている。
認知症はその原因別に幾つかに分けられる。最も多いのはアルツハイマー型で患者の約半数を占める。次いで多いのがレビー小体型と脳血管性で、この3つで認知症の約8割を占める。つまり、レビー小体型認知症は決して稀な疾患ではないのだが知名度は高いと言えない。
それには理由があって、レビー小体型は比較的最近発見された認知症だからである。最近と言っても日本人研究者がその存在を最初に提唱してからかれこれ40年にもなる。ところが長らく欧米で認められず、1990年代に入ってようやく国際会議で診断基準が定められたという経緯がある。私の学生時代(1980年代)の教科書にも載っていなかった。
そのレビー小体型認知症を本コラムで取り上げるのは、「レム睡眠行動障害」という特殊な睡眠障害が60%もの患者さんで認められるからである。一般的には中高年の0.5〜1%でみられる程度なので、いかにレビー小体型認知症では高率に合併するかお分かりだろう。
今年4月に、故ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症に罹患しているようだという記事が週刊誌に載った。御年84歳とのことなので認知症に罹患しても不思議でない年齢ではあるが、珍しい病名に目を奪われた読者も多かったと思う。
認知症とは、物忘れがひどくなる「記憶障害」、時刻や自分のいる場所が分からなくなる「見当識障害」、物や言葉などが分からなくなる「失認」、着衣などができなくなる「失行」など、さまざまな認知機能の障害が生じる疾患の総称である。これらの症状は認知症の中核症状と呼ばれている。
認知症はその原因別に幾つかに分けられる。最も多いのはアルツハイマー型で患者の約半数を占める。次いで多いのがレビー小体型と脳血管性で、この3つで認知症の約8割を占める。つまり、レビー小体型認知症は決して稀な疾患ではないのだが知名度は高いと言えない。
それには理由があって、レビー小体型は比較的最近発見された認知症だからである。最近と言っても日本人研究者がその存在を最初に提唱してからかれこれ40年にもなる。ところが長らく欧米で認められず、1990年代に入ってようやく国際会議で診断基準が定められたという経緯がある。私の学生時代(1980年代)の教科書にも載っていなかった。
そのレビー小体型認知症を本コラムで取り上げるのは、「レム睡眠行動障害」という特殊な睡眠障害が60%もの患者さんで認められるからである。一般的には中高年の0.5〜1%でみられる程度なので、いかにレビー小体型認知症では高率に合併するかお分かりだろう。
レム睡眠行動障害とは何かというと、夢体験が夢の中だけに留まらず行動化してしまう睡眠障害である。例えば、誰かと喧嘩したり、何物かに襲われたり、犬に噛みつかれそうになって蹴飛ばしたり、などの夢の内容そのままに、寝言で怒鳴ったり、手足を振り回したりしてしまうのである。
私たちは夢の大部分をレム睡眠中に見る(第16回「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ」)。レム睡眠は睡眠段階の一つで、寝ついてから約90分〜120分おきに現れる。レム睡眠中には大脳の活動は比較的活発で鮮明な夢を見ることが多いのだが、逆に体の筋肉は弛緩して全く動かない。
ナゼ、レム睡眠行動障害ではレム睡眠中に激しい体の動きが出てしまうのであろうか?
脳幹部と呼ばれる部位にはレム睡眠中に筋肉の動きをオフにするスイッチがあり、健康な人のレム睡眠中にはその「オフスイッチ」の作用で夢行動はおろか寝返りすらできない。ところが、レム睡眠行動障害ではその「オフスイッチ」にトラブルが生じているらしい。
また、レム睡眠行動障害のほかにも、レビー小体型認知症では嗅覚異常や、手足の震えや筋肉が硬くなり動きが遅くなるパーキンソン症状がよくみられる。
しかも、レビー小体型認知症では、記憶障害などの中核症状が出現する何年も前から嗅覚異常やレム睡眠行動障害が出現することが多い。パーキンソン症状も中核症状と相前後して、発症のごく早期から認められる。アルツハイマー型など他の認知症でもパーキンソン症状やレム睡眠行動障害がみられることがあるが、かなり病状が進行してから出現するのが普通だ。レビー小体型認知症でのこのような症状の出現順序は特徴的で診断にも大いに役立つ。
確かなことはまだ明らかにされていないが、これらの特徴はレビー小体型認知症の発症の仕組みとの関係が強く疑われている。
レビー小体型認知症では、脳内の神経細胞内にあるα-シヌクレインというタンパク質の固まりが異常に蓄積して神経変性(細胞死)をもたらす。このα-シヌクレインは脳内のさまざまな部位に蓄積するのだが、脳の「下から上に向かって」蓄積することが症状の出現順序に関連しているのではないかという仮説が提唱されている。
その仮説によれば、まず脳の下部にある嗅球と脳幹部にα-シヌクレインが蓄積して細胞を障害する。嗅球が障害されると嗅覚異常が生じ、「オフスイッチ」がある脳幹部が障害されるとレム睡眠行動障害が出現する。実際、認知症を発症していないレム睡眠行動障害の患者さんの脳を死後に調べると脳幹部にα-シヌクレインが蓄積していることが確認されている。
次いで、蓄積が脳の真ん中辺りにある中脳に拡がり、体の動きをコントロールする神経伝達物質ドーパミンを産生する部位が障害されるとパーキンソン症状が出現する。最終段階で大脳皮質など脳の「最上部」に幅広く蓄積すると中核症状が明らかになるというわけである。今では、α-シヌクレインの蓄積によって神経が変性死するレビー小体型認知症やパーキンソン病、そのほかいくつかの神経疾患は、共通した病因を持つ疾患としてα-シヌクレイノパチーと総称されている。
α-シヌクレインが脳の「下から上に向かって」蓄積するという仮説の真偽は検討されている最中だが、臨床特徴ともよく合致するため幅広く受け入れられている。
この仮説が正しいとすれば、パーキンソン病と同様に、レム睡眠行動障害もまたレビー小体型認知症と親戚のような関係にあるとも言える。ただ、レム睡眠行動障害の患者さん全員がα-シヌクレイノパチーを発症するわけではないので、レム睡眠行動障害にもα-シヌクレインの蓄積が原因のものとそれ以外のものがあるようだ。ただし残念ながら、現在の脳画像や血液検査などの診断技術では両者の区別は難しい。
そのため、レム睡眠行動障害と診断された患者さんは将来的にα-シヌクレイノパチーを発症するのではないかととても不安になる。実際のところ、レム睡眠行動障害に罹るとその後どのくらいの確率でα-シヌクレイノパチーを発症するのだろうか。また、レム睡眠行動障害が出現してからα-シヌクレイノパチーの発症までにどれくらいの期間がかかるのだろうか。
いくつかの長期調査が行われているが、非常に厳しい結果が出ている。レム睡眠行動障害を発症してから5年後には患者さんの15〜30%、10年後には40〜70%、10年以上では50〜90%が何らかのα-シヌクレイノパチーを発症すると報告されている。数値に幅があるのは調査によって結果が異なるためである。
これらの調査は主に欧米の研究施設で行われたもので、重症例が集まったため厳し目の結果が出ている可能性がある。実際、日本国内での診療場面ではもう少し発症頻度が低いようだとの指摘もある。とはいえ、中長期的にα-シヌクレイノパチーが現れてこないか慎重な経過観察が必要であることには違いがない。
そのためにも、悪夢を見て大声を上げたり手足をばたつかせるなどレム睡眠行動障害を疑わせる症状が何度も出てきたときには専門の医療機関に受診して正しい診断を受けていただきたい。定期的な診察を受けることで早期発見も可能となる。レム睡眠行動障害を目撃した家族は「いい年をして寝ぼけてる」などと笑い飛ばすこともあるが、レビー小体型認知症の危険信号の場合もあるので注意が必要なのである。
オノ・ヨーコさんがレビー小体型認知症を患っていることは悲しいことだが、有名人が闘病していることをカミングアウトしてくれることで人々の関心が集まり研究分野が活発になることも少なくない。レム睡眠行動障害とα-シヌクレイノパチーの関係についての研究はまだ歴史が浅いため、今後の研究の進展に期待したい。
【子どもの「精神障害」はかなり誤解されている】(東洋経済オンライン・7/3(月) 6:00配信 )
児童精神科医の滝川一廣さんに話を聞く(撮影:梅谷秀司)
児童精神科医の滝川一廣さんが3月に出した『子どものための精神医学』が話題だ。帯に“素手で読める児童精神医学の「基本書」”とあるが、編集を担当した医学書院の白石正明さんによると、親のほか、養護教員や学童保育指導員などが手に取っている。
40年を超える臨床経験と、この間、大きく研究が進んだ児童精神医学を踏まえて、平易な言葉で、子どもの発達とはなにかを「根本から説き起こす」ことを目的にしたという。
■診断とはそもそも何か?
. ――本書は精神医学の歴史から始まります。身体の医学は太古の昔に始まったが、精神医学は近代の合理的な人間観の確立後に生まれたと。身体の医学は自然科学であって、個人の身体の中で完結する。しかし、精神医学は自然科学に収まらず、共同性・関係性の視野の中でとらえると。
でも、たとえば子どもが「発達障害」だと診断されたとき、多くの親は身体のお医者様の診断と、児童精神科のお医者様の診断は違うものだとは考えないのではないでしょうか。
診断とは何かということです。医師が風邪と診断するのは、自然科学です。疾患が起きている体の場所、起きる仕組み、病気の原因が共通しているとき、同じ種類の病気だと診断できる。
しかし精神障害は、外から見たその子の行動の特徴を分類し、引き出しに入れることにすぎません。自閉症の引き出しに入る、あるいは知的障害の引き出しに入ると。精神障害の診断は医学的診断ではありません。社会的判断です。
――診断がくだれば、皆、同じ治療で治るわけではないということですね。
本の冒頭にある、「認識の発達」水準を縦軸に、「関係の発達」水準を横軸に取った座標が目に飛び込んできます。
A領域:知的障害、B領域:自閉症、C領域:アスペルガー症候群、T領域:定型発達と表示されています。しかし、線で明確に区分されているわけではありません。
人間の赤ちゃんが見知らぬ新しい世界を知っていくのが「認識の発達」。世界に働きかけ、働きかけられる関係性を育んでいくのが「関係の発達」。これがXとYの座標軸として置かれます。そして両者が相互に支え合い、子どもは成長していくという、発達を示した図ですね。この図は滝川さんのオリジナルですか。
ええ、そうです。こうすることで、この子は認識に課題をもつ知的障害、この子は自閉症、と分けるのではなくて、定型発達も含めてひとつながりだということが見て取れます。
■子どもには「ばらつき」がある
――私たちはいつの間にか、子どもというのは、どの子も似たような存在で、成長は一直線上にあるようなイメージを持っています。でもこの図は、子どもにはばらつきがあることを思い出させてくれます。地図のようで、思わずわが子や自分がどこにいるのだろうかと探したくなります。
子どもには、生まれたときが最もばらつきがある。それが、成長の過程で、精神発達を遂げた大人たちや環境に働きかけ、働きかけられ、認知と関係性をそれぞれ発達させ、その社会と文化を生きることができる存在へと育っていきます。
――精神障害は、社会や文化の変化の中で発見されてきたのですね。
昔から「知恵遅れ」とか「白痴」という言葉があり、理解や判断力が落ちている人がいることはわかっていました。しかし、知的障害がクローズアップされたのは、19世紀に近代学校教育が始まってからです.
また、関係の発達の課題が発見されるのは1943年。アメリカの児童精神科医のカナーが自閉症を報告してからです。それまで関係性発達障害は問題になりませんでした。
――知的障害、自閉症スペクトラム、学習障害、ADHDなど、多様なものと考えてしまう。でも、本書では精神障害とは「人とのかかわりにおける、なんらかの直接的な困難な苦しみとして現れるとする」と規定しています。
昔のほうが大人として身に付けなければいけない力は単純でした。生産活動が何より重要で、生きることで精いっぱい。それに必死にならないと、飢饉が起きた。生産活動に直接関係しない対人能力や社会性は、一部の人以外、それほど重要ではありませんでした。
児童精神科医の滝川一廣さんに話を聞く(撮影:梅谷秀司)
児童精神科医の滝川一廣さんが3月に出した『子どものための精神医学』が話題だ。帯に“素手で読める児童精神医学の「基本書」”とあるが、編集を担当した医学書院の白石正明さんによると、親のほか、養護教員や学童保育指導員などが手に取っている。
40年を超える臨床経験と、この間、大きく研究が進んだ児童精神医学を踏まえて、平易な言葉で、子どもの発達とはなにかを「根本から説き起こす」ことを目的にしたという。
■診断とはそもそも何か?
. ――本書は精神医学の歴史から始まります。身体の医学は太古の昔に始まったが、精神医学は近代の合理的な人間観の確立後に生まれたと。身体の医学は自然科学であって、個人の身体の中で完結する。しかし、精神医学は自然科学に収まらず、共同性・関係性の視野の中でとらえると。
でも、たとえば子どもが「発達障害」だと診断されたとき、多くの親は身体のお医者様の診断と、児童精神科のお医者様の診断は違うものだとは考えないのではないでしょうか。
診断とは何かということです。医師が風邪と診断するのは、自然科学です。疾患が起きている体の場所、起きる仕組み、病気の原因が共通しているとき、同じ種類の病気だと診断できる。
しかし精神障害は、外から見たその子の行動の特徴を分類し、引き出しに入れることにすぎません。自閉症の引き出しに入る、あるいは知的障害の引き出しに入ると。精神障害の診断は医学的診断ではありません。社会的判断です。
――診断がくだれば、皆、同じ治療で治るわけではないということですね。
本の冒頭にある、「認識の発達」水準を縦軸に、「関係の発達」水準を横軸に取った座標が目に飛び込んできます。
A領域:知的障害、B領域:自閉症、C領域:アスペルガー症候群、T領域:定型発達と表示されています。しかし、線で明確に区分されているわけではありません。
人間の赤ちゃんが見知らぬ新しい世界を知っていくのが「認識の発達」。世界に働きかけ、働きかけられる関係性を育んでいくのが「関係の発達」。これがXとYの座標軸として置かれます。そして両者が相互に支え合い、子どもは成長していくという、発達を示した図ですね。この図は滝川さんのオリジナルですか。
ええ、そうです。こうすることで、この子は認識に課題をもつ知的障害、この子は自閉症、と分けるのではなくて、定型発達も含めてひとつながりだということが見て取れます。
■子どもには「ばらつき」がある
――私たちはいつの間にか、子どもというのは、どの子も似たような存在で、成長は一直線上にあるようなイメージを持っています。でもこの図は、子どもにはばらつきがあることを思い出させてくれます。地図のようで、思わずわが子や自分がどこにいるのだろうかと探したくなります。
子どもには、生まれたときが最もばらつきがある。それが、成長の過程で、精神発達を遂げた大人たちや環境に働きかけ、働きかけられ、認知と関係性をそれぞれ発達させ、その社会と文化を生きることができる存在へと育っていきます。
――精神障害は、社会や文化の変化の中で発見されてきたのですね。
昔から「知恵遅れ」とか「白痴」という言葉があり、理解や判断力が落ちている人がいることはわかっていました。しかし、知的障害がクローズアップされたのは、19世紀に近代学校教育が始まってからです.
また、関係の発達の課題が発見されるのは1943年。アメリカの児童精神科医のカナーが自閉症を報告してからです。それまで関係性発達障害は問題になりませんでした。
――知的障害、自閉症スペクトラム、学習障害、ADHDなど、多様なものと考えてしまう。でも、本書では精神障害とは「人とのかかわりにおける、なんらかの直接的な困難な苦しみとして現れるとする」と規定しています。
昔のほうが大人として身に付けなければいけない力は単純でした。生産活動が何より重要で、生きることで精いっぱい。それに必死にならないと、飢饉が起きた。生産活動に直接関係しない対人能力や社会性は、一部の人以外、それほど重要ではありませんでした。
子どもたちについても、今ほど手をかけなくても育てることができた面がある。畑仕事に連れて行って、寝かせておいたり、遊ばせたり、手伝いをさせたり。大人の生活圏と子どもの生活圏も今ほど分かれていませんでした。
子どもたちはその中で14~15歳になれば大人としてやっていけた。性的に成熟すれば、そのまま大人になれた。
子どもたちはその中で14~15歳になれば大人としてやっていけた。性的に成熟すれば、そのまま大人になれた。
ところが戦後、中学が義務教育となり、子ども期が15歳まで延びました。さらに、1970年代になり9割以上のティーンが高校に行くようになり、子ども期はさらに18歳まで延びました。大人の生活圏と、子どもの生活圏は分けられました。
性的に成熟しても社会的には大人になれない。そこから、思春期問題が始まりました。
日本で思春期研究の本が初めて書かれたのが、1972年です。私が児童精神科医として働き始めたのは1975年ですが、このころは思春期に関する論文が花盛りでした。私が最初に書いた論文は摂食障害についてです。
■人の孤立が進んでいる
――産業の変化とともに、生活の場が人々の暮らしの共同体ではなくなった。人の孤立が進んでいます。
子育ては昔に比べ手厚くなっています。手薄な子育てより、手厚いにこしたことはありませんが、親が孤立して、狭い世界の中で子育てが行われている。親が何らかの形で、力を失えば、一気に手厚い子育ては不利になります。それが今、虐待と呼ばれるものではないでしょうか。
――実は自閉症と言われたり、知的障害と言われたりする、発達の遅れた子どもたちはそうではない子どもたちに比べ、不安や緊張の高い、孤独な世界を生きていると本書は指摘します。私たちは意味や約束を通して、この世界をほかの人々と分かち合い、職場の世界、家族の世界、友だちの世界、それぞれ意味が異なる何層もの世界を行き来している。ところが、認識の発達の遅れは、人々のもつ共同の世界へ参入を難しくする。子どもたちの逸脱や問題行動のわけを探っていくと不安や緊張の問題に行き当たると。
社会の側からみているとわからないかもしれませんが、知的に低ければそれだけ孤独です。孤独では生きていけない。
診断名がつかないから様子を見ましょうというのではなく、発達分布図の、今どの辺りをその子どもが歩いているのかを知り、遅れているところを支え、伸ばすことに留意した子育てのかかわりをさっそく始めてほしい。1回限りの人生ですから。
■虐待を防ぐには孤独に育つ子どもを減らすことが重要
――私は子どもを虐待死させる親たちの取材をしてきました。こうした親の子ども時代は本当に孤独です。人を信じる力も弱い。
日本で思春期研究の本が初めて書かれたのが、1972年です。私が児童精神科医として働き始めたのは1975年ですが、このころは思春期に関する論文が花盛りでした。私が最初に書いた論文は摂食障害についてです。
■人の孤立が進んでいる
――産業の変化とともに、生活の場が人々の暮らしの共同体ではなくなった。人の孤立が進んでいます。
子育ては昔に比べ手厚くなっています。手薄な子育てより、手厚いにこしたことはありませんが、親が孤立して、狭い世界の中で子育てが行われている。親が何らかの形で、力を失えば、一気に手厚い子育ては不利になります。それが今、虐待と呼ばれるものではないでしょうか。
――実は自閉症と言われたり、知的障害と言われたりする、発達の遅れた子どもたちはそうではない子どもたちに比べ、不安や緊張の高い、孤独な世界を生きていると本書は指摘します。私たちは意味や約束を通して、この世界をほかの人々と分かち合い、職場の世界、家族の世界、友だちの世界、それぞれ意味が異なる何層もの世界を行き来している。ところが、認識の発達の遅れは、人々のもつ共同の世界へ参入を難しくする。子どもたちの逸脱や問題行動のわけを探っていくと不安や緊張の問題に行き当たると。
社会の側からみているとわからないかもしれませんが、知的に低ければそれだけ孤独です。孤独では生きていけない。
診断名がつかないから様子を見ましょうというのではなく、発達分布図の、今どの辺りをその子どもが歩いているのかを知り、遅れているところを支え、伸ばすことに留意した子育てのかかわりをさっそく始めてほしい。1回限りの人生ですから。
■虐待を防ぐには孤独に育つ子どもを減らすことが重要
――私は子どもを虐待死させる親たちの取材をしてきました。こうした親の子ども時代は本当に孤独です。人を信じる力も弱い。
そうでしょう。いかに孤独に育つ子どもを減らしていくかが、虐待を防いでいくことになると思います。人を信じる力を育てるには、実際に人とかかわらなければ。人とかかわって安心する、助かったという体験を重ねて、初めて人とかかわる力が出てくる。
もともと子育ては、大変な仕事です。親がうまく育てられなかったり、子どもがちょっと育ちにくいハンディを持っていたり。ゆとりを持って子育てをする生活基盤が脆弱だったり。子育てがうまくいかないのは、親だけの責任ではないということがみえにくい。
子育てが大変な赤ちゃんはいくらでもいます。なかなか泣きやまない赤ちゃんとか、ミルクを飲ませてもすぐ吐いてしまう赤ちゃんはいっぱいいる。
生活基盤にゆとりがあれば、子どもが夜泣きをしても根気強くかかわり続けることができます。トイレトレーニングもじっくりかかわれる。でも、いくつかの悪条件が重なると、どうしていいかわからなくて、赤ちゃんをたたいてしまったり、揺すぶってしまうということが起きます。
人とかかわれない不幸を「虐待」と名付けてバッシングするだけではダメなんですね。
――「貧困・格差の一定以上の解消をはかる政治的、経済的な施策なくしては、いかなる『先進的』な(虐待)防止対策も焼け石に水かもしれない」と書いていますね。滝川さんは虐待防止法以前、1980年代には児童相談所に勤務する児童精神科医でした。
摘発型の虐待防止では、子育ての失調は防げない。当時、イライラして、赤ちゃんの指をかみ切ってしまったお母さんがいた。今だったら、すぐに虐待だと判断されて、子どもは取り上げられてしまう。でも、この時は親子関係の失調として、その間を取り持つ支援をしました。子どもを分離せずに育てることができました。
今は虐待という言葉が一般的になり、一方的に親が悪いというイメージが広がりました。親である以上、子どもをしっかり育てなければという圧力はとても強い。愛情と責任さえあれば、子どもは育つという一種の思い込みがあります。うまく育たないと、愛情か責任感に欠けた親だと言って責める。
虐待という言葉はよくないです。虐待と名付けるとその家族を否定的に見る。あなたは悪いことをしているというまなざしの中で家族統合といってもうまくいかない。
でも、子どもはそれぞれ違っていて、同じように育てれば同じように育つというわけではないのです。また、こういう人生が幸福だという模範解答はない。それぞれに与えられた条件があり、それぞれの子どもが持っている力があり、親の置かれている条件がある。
そのなかで、今、この子はこれ以上頑張るのは難しいとか、この子なら背中を押してあげれば立てそうだとかということがあります。何がいいかはそのときどきで変わる。その判断を全部親がしなければいけないというのも大変なことですね。
だからこそ、親一人の子育てには無理があるということです。『子どものための精神医学』は、分類して、この子育てが正しいと白黒つけて安心するための本ではなく、白と黒の間を埋めていくための本です。
■サポートがあれば、なんとかしのいでいける
もともと子育ては、大変な仕事です。親がうまく育てられなかったり、子どもがちょっと育ちにくいハンディを持っていたり。ゆとりを持って子育てをする生活基盤が脆弱だったり。子育てがうまくいかないのは、親だけの責任ではないということがみえにくい。
子育てが大変な赤ちゃんはいくらでもいます。なかなか泣きやまない赤ちゃんとか、ミルクを飲ませてもすぐ吐いてしまう赤ちゃんはいっぱいいる。
生活基盤にゆとりがあれば、子どもが夜泣きをしても根気強くかかわり続けることができます。トイレトレーニングもじっくりかかわれる。でも、いくつかの悪条件が重なると、どうしていいかわからなくて、赤ちゃんをたたいてしまったり、揺すぶってしまうということが起きます。
人とかかわれない不幸を「虐待」と名付けてバッシングするだけではダメなんですね。
――「貧困・格差の一定以上の解消をはかる政治的、経済的な施策なくしては、いかなる『先進的』な(虐待)防止対策も焼け石に水かもしれない」と書いていますね。滝川さんは虐待防止法以前、1980年代には児童相談所に勤務する児童精神科医でした。
摘発型の虐待防止では、子育ての失調は防げない。当時、イライラして、赤ちゃんの指をかみ切ってしまったお母さんがいた。今だったら、すぐに虐待だと判断されて、子どもは取り上げられてしまう。でも、この時は親子関係の失調として、その間を取り持つ支援をしました。子どもを分離せずに育てることができました。
今は虐待という言葉が一般的になり、一方的に親が悪いというイメージが広がりました。親である以上、子どもをしっかり育てなければという圧力はとても強い。愛情と責任さえあれば、子どもは育つという一種の思い込みがあります。うまく育たないと、愛情か責任感に欠けた親だと言って責める。
虐待という言葉はよくないです。虐待と名付けるとその家族を否定的に見る。あなたは悪いことをしているというまなざしの中で家族統合といってもうまくいかない。
でも、子どもはそれぞれ違っていて、同じように育てれば同じように育つというわけではないのです。また、こういう人生が幸福だという模範解答はない。それぞれに与えられた条件があり、それぞれの子どもが持っている力があり、親の置かれている条件がある。
そのなかで、今、この子はこれ以上頑張るのは難しいとか、この子なら背中を押してあげれば立てそうだとかということがあります。何がいいかはそのときどきで変わる。その判断を全部親がしなければいけないというのも大変なことですね。
だからこそ、親一人の子育てには無理があるということです。『子どものための精神医学』は、分類して、この子育てが正しいと白黒つけて安心するための本ではなく、白と黒の間を埋めていくための本です。
■サポートがあれば、なんとかしのいでいける
――どのような社会的な支援があるといいのでしょうか。
妊娠した時から全員に専門家がかかわり始めるサポートがあるといいと思う。抱っこが下手でもサポートがあれば、なんとかしのいでいける。大丈夫な親子から手放していけばいい。こじれてから支援をするよりも、費用対効果としてもずっといいのではないかと思います。
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発達障害の子のために「親ができること」
【うつ病は女が多く、過労死に男が多いワケ】(president online精神科医 樺沢 紫苑 構成=伊藤達也.7/5(水) 9:15配信 )
うつの罹患率や過労死の数について統計をとると、男女で大きな差が出ることがわかっています。うつ病では、女性の罹患率は男性の2倍。過労で死ぬのは男性がほとんどです。
うつの罹患率や過労死の数について統計をとると、男女で大きな差が出ることがわかっています。うつ病では、女性の罹患率は男性の2倍。過労で死ぬのは男性がほとんどです。
では、どうして女性のほうが男性よりうつ病になりやすいのでしょうか。まず、脳科学的な理由が挙げられます。「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌の減少が、うつを引き起こす直接の原因となります。エストロゲンは、人の感情、気持ちを高める「セロトニン」という脳内物質に作用するホルモンなのです。つまり、生理や妊娠、閉経などでエストロゲンが減少すると、セロトニンも減少し、抑うつ的な気持ちを引き起こしてしまうのです。
■男性はうつが少ないというわけではない
一方で、「男性のうつ病が少ない」のには、とある事情があります。というのも、男性はうつ病になっても病院を受診しない人が多いのです。女性は、男性に比べると共感力が高い傾向があり、すぐ友人や家族に相談できる話好きな人が多い。そのため、病院にもかかりやすいのです。
対して、男性は精神的な負荷を感じていても「もっと頑張らなければ」という意識を抱えてしまいがち。仕事が生きる目的になっている働き盛りの年齢のビジネスマンなら「もっと働かないと」と思ってしまい、なおさらです。そうして、苦しくても病院に行かずに済ましてしまうのです。つまり、男性はうつが少ないというよりも、「うつと診断される人が少ない」と言えるのです。
さらに、そうして誰にも相談できないままストレスフルな生活を続け、病院を訪れたときには重篤な状態になっていることもとても多い。過労死するまで働き続けてしまうというわけです。これが男性に過労死が多い理由です。
■上司に詰問された日に何杯飲むか
見過ごされやすいのが、アルコール依存症の問題です。WHO(世界保健機関)の調査では、自殺者の50~ 80%がうつなど感情障害であり、20~60%が何らかの依存症だとわかっています。この依存症とは、アメリカでは薬物依存であり、日本ではアルコール依存です。自殺している人の3分の1が、自殺前に飲酒をしているというデータもあります。
自殺リスクは、1日3合以上の飲酒で2倍、重度のアルコール依存症の場合は8倍にもなります。このアルコール依存症の割合は、男性5:女性1。男性は精神的に追い詰められたとき、よりアルコールに逃げやすい。仕事で悩み、アルコールに逃げて最後には自殺を選ぶ──男性の過労死の1つの典型と言えます。
そして、アルコール依存症で病院に通う人はごく稀にもかかわらず、日本人男性の罹患率は、定められた診断基準だと7.4%にも上ります。1カ月に飲まない日がない。飲んでいるときに、苦しいから死んでしまいたいと思う。そんな人は特に要注意です。上司に詰問されたその日に1杯だけ飲むならまだいいですが、楽しく飲めないお酒は精神的に逆効果。ストレス発散に効果があるとわかっているのは、とにかくしっかりとした睡眠です。辛いときは酒を飲んで愚痴を言うよりも、暖かい布団でぐっすり寝ることが大事です。
そして、アルコール依存症で病院に通う人はごく稀にもかかわらず、日本人男性の罹患率は、定められた診断基準だと7.4%にも上ります。1カ月に飲まない日がない。飲んでいるときに、苦しいから死んでしまいたいと思う。そんな人は特に要注意です。上司に詰問されたその日に1杯だけ飲むならまだいいですが、楽しく飲めないお酒は精神的に逆効果。ストレス発散に効果があるとわかっているのは、とにかくしっかりとした睡眠です。辛いときは酒を飲んで愚痴を言うよりも、暖かい布団でぐっすり寝ることが大事です。
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