新聞編集2020.1~

【目次】
【「引きこもり」支援者に根強い“引き出せばいい”という錯覚の罪】ダイヤモンド
1/9(木) 6:01配信
【「虐待予防の切り札」子どもショートステイ、里親不足 利用増でも登録伸び悩み
】西日本新聞1/14(火) 10:41配信
【#実名報道「あるがままの生」認め合う社会へ 公表された「美帆」という「生きた証し」】抜粋1/18(土) 10:03配信 神奈川新聞
【障害児がいじめられて転校 学校は当初認めず、後に謝罪】朝日新聞:1/26(日) 20:38配信
【管の外れに気付かず 医療ミスで10代男性昏睡 群馬県立小児医療センター 過失認め賠償方針】1/24(金) 6:02配信 上毛新聞【小児の人工呼吸中の低酸素血症に対する対応は?】2019年06月18日
【植松被告「差別、働く中で生じた」「自分には責任能力ある」 相模原殺傷公判】1/24(金) 21:19配信 毎日新聞
【着床前診断、対象の拡大検討 日産婦、条件に「治療法なし」「高度な医療必要」】毎日新聞1/25(土) 16:38配信【着床前診断 なぜ今、拡大検討なのか 風向き変えた患者会の意見書】毎日新聞2020年1月26日
【「まさか7歳から殺されそうになるなんて」児童館で首をバットで殴られた元職員の訴え】弁護士.コム1/27(月) 17:45配信
【副業に励む医学部教授ら 国公立の15人に製薬マネー1000万円超 18年度】毎日抜粋1/26(日) 19:39配信
【脳性まひの少年「高校行きたい」 パソコンで1字ずつの手紙、受け止めた教員
】西日本新聞1/30(木) 9:50配信
【嫡出否認規定訴訟 「夫のみに認めた民法規定は合憲」確定 女性らの上告棄却決定
】:毎日新聞2/7(金) 19:18配信
【さいたまプール女児死亡、元園長と保育士の派遣社員に禁錮1年求刑 弁護側「情状酌量を」】2020/1/10 08:37 (JST)埼玉新聞
【節分で豆詰まらせ幼児死亡、松江 保育施設の行事で】2/12(水) 21:00配信共同通信
【県庁で指導者研修会いじめと発達障害 関連性を理解】2020年2月12日(水)(愛媛新聞)【受験生「参考書すぐ手にできない」…点字図書、ボランティア頼みに限界】2/15(土) 9:01配信 西日本新聞【読書バリアフリー法】
【「無脳症」のわが子を宿して 突如、妊婦健診で知らされる苦しみ】2/14(金) 8:11 配信 ノンフィクション作家・河合香織/Yahoo!ニュース 特集編集部 抜粋
【「風邪症状なら学校・会社休んで」 厚労相、新型肺炎拡大防止呼びかけ 高齢者は注意】2/17(月) 20:38配信 毎日新聞
【認知症で賠償、自治体が支援…保険料負担、被害者への見舞金・最大3000万円も
2/17(月) 12:11配信 読売新聞 
【起立性調節障害】【これは病気…朝起きられない起立性調節障害、根強い偏見 春日部の女子高生、「苦しむ人らの居場所」つくる】2/17(月) 10:17配信 埼玉新聞
【「警察に相談しなさい」児童相談所、女児追い返す 午前3時すぎ来所、保護せず】
2/19(水) 0:04配信 神戸新聞
【大阪の特養、寝たきりの入居女性3人が相次ぎ肋骨骨折 府警が捜査】
3/1(日) 5:00配信 毎日新聞【虐待 高齢者施設最多 10年連続増加 人手不足が一因】毎日新聞2018年3月10日
【介護人手不足 虐待 11年連続増】2019年5月22日 東京新聞 夕刊
【漁船と衝突し貨物船沈没、13人が行方不明…青森県沖】3/1(日) 1:26配信 読売新聞
【違憲認定「実質勝った」 菊池事件判決 高齢の原告もどかしさも】
【裸にして放水、監禁… 患者虐待で看護師ら6人逮捕】2020/3/4 21:46神戸新聞NEXT
【新型コロナに2つの特異タンパク質 立命大のグループがAI解析で発見】産経3/6(金) 20:10配信
【衝動抑えられない原因解明へ アルツハイマー、脳異常部位判明 東大と量研機構】時事通信3/6(金) 15:26配信
【死ぬ場所」がない! すでに現実化した都市型多死社会のリスク】
現代ビジネス2020.3.7終末期医療 
 【「爆弾低気圧」級に発達か。頭が痛い、古傷が痛む…低気圧襲来で起こる「気象病」の基礎知識】3/10(火) 20:00配信 Business Insider Japan

【新型コロナ、重症化しやすい基礎疾患の致死率は? 高血圧や糖尿病は?】3/12(木) 19:26配信 National Geographic 抜粋
緑内障=失明!? 怖いという意識を植えつけた経緯とは】Yomi.Dr.

【看護師ら4人切りつけ 殺人未遂の疑いで入院患者の男を逮捕 愛媛・四国中央市】テレビ愛媛 最終更新:3/11(水) 19:00
【視覚障碍者の視力を取り戻す「ゲノム編集治療」の臨床試験が始まった】現代ビジネス
3/12(木) 17:01配信 
【北京で「脳脊髄液から新型コロナ検出」の衝撃】東洋経済3/13(金) 5:45配信 (財新記者:趙寧、福林)※敬称略。原文は3月9日の現地時間9:48配信
【無症状感染者は9日間で陰性化 クルーズ船受け入れの藤田医科大が経過公表】
3/13(金) 12:31配信 YomiDr.
【クルーズ船乗客が“再び陽性に”…三重の70代男性 陰性で3/2退院し公共交通機関で帰宅も12日発熱】3/15(日) 1:19配信 東海テレビ【スペイン全土で外出制限 非常事態、感染6千人超】共同通信 3/15(日) 6:11配信 【欧州で深刻化 スペインが“非常事態宣言”】日本テレビ3/15(日) 9:24配信
【新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(16日午前2時時点)】
3/16(月) 4:56配信 AFPBB News【国内感染者、看護師やスーパー従業員など 死者も相次ぐ】朝日新聞 3/16(月) 2:00配信

【相模原殺傷16日地裁判決 責任能力争点、大麻の影響どこまで】神奈川新聞 3/15(日) 12:50配信 【【やまゆり園 事件考】「最終経歴『死刑囚』、やばい」 死刑判決後の被告と接見】神奈川新聞3/17(火) 5:00配信  【被告はいま(3) ニーチェに共感 憧れた超人】神奈川新聞  2020年01月04日 05:00
【自殺者、10代顕著に増え「依然深刻」 19年、全体では過去最少2万169人】毎日新聞
3/17(火) 10:07配信 【昨年の自殺者2万169人 確定値、過去最少に 厚労省・警察庁】時事通信 3/17(火) 10:09配信 

【高齢者医療の医師、“数に終始する”コロナ報道に警鐘「人間は情報のシャワーを浴びると、思考が傾いていく」】AmebaTV3/17(火) 18:03配信
【独自 重症患者治療の医師 初証言】TBS3/17(火) 18:37配信
【働く保護者の補償、申請開始 一斉休校に伴い厚労省】共同通信3/18(水) 10:36配信
問い合わせは、午前9時から午後9時まで、電話(0120)603999。
【無症状の間にデイケアで拡大か 25人感染のグリーンアルス伊丹 新型コロナ】毎日新聞 3/17(火) 20:06配信
【新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ】河合 薫健康社会学者(Ph.D.)2020年3月17日日経ビジネス
【「高齢者がコロナ感染=死は誤解」と医師、外出しないリスクも】「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載抜粋
【兵庫・北播磨地域『救急搬送先が…』地域の病院で“コロナ感染相次ぎ”地域医療に影響】MBSニュース    3/18(水) 11:55配信
【インフル薬「アビガン」有効性確認 新型コロナ治療、後発薬量産へ 中国】 時事通信 3/17(火) 18:45配信【ファビピラビル(英: Favipiravir、中: 法匹拉韦、法匹拉韋)】Wikkipedia
【新型コロナへの免疫反応「インフルと同じ」 豪研究所 時事通信 3/18(水) 9:56配信

【AFP=時事】オーストラリアのピーター・ドハーティー感染・免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity


【「新型コロナ」は「似た症状の他疾患」と区分けを:感染症専門家の提言】3/19(木) 9:00 石田雅彦編集、松田 和洋。
【結局のところ、新型コロナウイルス感染症は空気感染するのか?】
 聖路加国際病院 QIセンター感染管理室マネジャー 3/18(水) 20:38
坂本史衣

【大災害時に欠かせぬ心のケア  住民に加え、医療・行政関係者にも】時事通信 3/22(日) 16:02配信

【千葉・東庄の障害者施設 58人の集団感染 利用者26人、職員32人】3/28(土) 20:59配信
【コロナ禍の“三重苦”「20兆円規模」の追加財政支出が必要な理由】ダイヤモンド
3/31(火) 6:01配信  (第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱利廣
【新型コロナにインフル薬「アビガン」、治験と量産開始へ】朝日新聞 3/29(日) 6:00配信 
【イタリア人記者が訴えるアッという間に蔓延するコロナの怖さと社会格差】〈週刊朝日〉
3/29(日) 18:24配信 

【新型コロナ入院患者が地獄の闘病激白「喉に金串が刺さったような耐え難い痛み」】日刊ゲンダイ4/7(火) 9:26配信 
【精神障害の労災基準に「パワハラ」新設…6月適用へ】読売新聞 5/15(金) 20:59配信 】
【仕事で心の病、過去最多 ハラスメントが原因 19年度】時事通信6/27(土) 7:24配信
【高齢者入浴中に目離し死亡か 介護福祉士を書類送検】テレビ朝日6/26(金) 23:32配信
【やまゆり園の実態検証が迷走 聴取なく「虐待疑い」、中間報告で終了】毎日新聞6/26(金) 9:36配信
【障害への理解を 障害をもつ男性が介護学ぶ学生に講義 佐賀県】サガテレビ6/26(金) 18:00配信
【コロナ後にうつ病休職した人を待ち受ける悲劇】東洋経済オンライン6/26(金) 5:25配信奥田 祥子 :近畿大学教授、ジャーナリスト
【働いても「サービス利用者」の障がい者…明確すぎる線引きが生んだもの 新人の問いに静まりかえった職場】WIth News 6/28(日) 7:00配信
【生活保護費減額に「最低」と言われる判決を下した名古屋地裁の論理】ダイヤモンド6/29(月) 6:01配信 (フリーランス・ライター みわよしこ)


【本文】



【生活保護費減額に「最低」と言われる判決を下した名古屋地裁の論理】ダイヤモンド6/29(月) 6:01配信 (フリーランス・ライター みわよしこ)
1.
“自民党ヨイショ判決”では? 名古屋地裁に響く「不当だ」の叫び
 2013年に行われた生活保護費減額の取り消しを求める訴訟が、生活保護で暮らす1000人以上の原告と約300人の弁護団によって、全国29地裁で行われてきている。
 6月25日、最初の地裁判決が名古屋地裁で言い渡された。緊張感が漂う法廷に入ってきた角谷昌毅裁判長は、「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」という判決を述べると、足早に法廷から去った。傍聴席からは「不当判決だ」という叫び声が上がった。原告の完全な敗訴である。
 2013年の生活保護費減額については、正当化することのできる合理的な理由はない。理由らしい理由がないのに引き下げが実施され、生活保護のもとでの暮らしは締め付けられている。いわば、国が堂々と「生活費を充分に渡さない」という経済的DVを行っているようなものであり、“情状酌量”の余地はない。法廷での厚労省側の主張には、時に「もっともらしさ」を取り繕うことさえ放棄しかけているような節もあった。
 しかし、この経済的DVは、家庭内での出来事ではない。国家によって、200万人以上を対象として行われている。減額された保護費の総額は、数千億円に達する。原告が勝訴するということは、国が2013年から2018年までの5年間の減額分の保護費を原告に支払うということである。実行するためには、自民党が与党となっている国会で予算措置を行い、可決する必要がある。必要であっても、実現は困難であろう。
 以上の理由から、この種の訴訟の判決の定番の1つは、「生活保護法第8条によれば、厚労大臣が決定することになっている。それが違法であるわけがない」という「裁量論」である。さらに「それにしても、これはひどい」または「そこまでひどくはないでしょう」という「程度論」がセットになる場合もある。
 今回の名古屋地裁判決も、「生活保護法第8条に基づいて厚労大臣が決めました。そこまでひどくはないでしょう」という「裁量論」「程度論」の組み合わせであった。そこには、特に新規性はない。
2.
しかし、今回の名古屋地裁判決には、「生活保護費は自民党が決める」「生活保護費に国民感情や財政事情が反映されるのは当然」という、驚くべき内容がセットになっていたのである。原告たちとともに訴訟に臨んできた弁護士たちからは、「最悪」「最低」という怒りの声が漏れた。
 筆者自身は「あまりにもあんまり」「これはひどい」といった感慨しか湧かず、数時間にわたって呆然としていた。単純な「不当判決」ではない。その、はるか斜め上だ。
● 生活保護費を決めるのは自民党? 平均6.5%が引き下げられた経緯
 2013年1月、厚労省は生活保護費の生活費分を平均6.5%引き下げる方針を発表した。2012年末の衆議院選挙で圧勝して与党となった自民党は、生活保護費の生活費分を10%引き下げることをアピールしてた。厚労省はそれに呼応し、しかし若干の緩和を行った形である。
 とはいえ、厚労省の資料のどこにも、「自民党が10%引き下げと言ったから引き下げました」という記述はない。もしかすると、「そんな事実、恥ずかしくて書けない」ということなのかもしれない。しかしそれ以上に、法をはじめとする数々の規範によって「決めるのは厚労省であって政権与党ではない」と定められている以上、厚労省は「決めたのは自民党です」とは言えないのだ。
 生活保護法第8条には、生活保護基準は「厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし」「(健康で文化的な)最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえない」ものであると定められている。
 この文言だけを読むと、「時の厚労大臣が、内容も基準も方法も勝手に決めてよい」という解釈もできる。しかし、この部分の意味は、「確実なデータを根拠として、貧困や生活や健康の専門家たちに科学的方法で検討してもらって、さらに厚労省の官僚たちが検討して、厚労大臣の責任において『これが今年の生活保護基準です』と示す」ということだ。
3.
 そのとき、世論や財務省(大蔵省)の意向は参照されない。厚労省(厚生省)は、国民の健康を守るという使命を遂行する組織であり、政権からも他省庁からも独立して判断を行うのが原則だ。以上は、1950年に生活保護法が成立して以来、厚労省(厚生省)の文書や多数の判決などによって確認されてきている。今回の名古屋地裁判決も、判決文によれば、これらの法や文書や判決類を判断枠組みとしている。
 ところが判決理由には、以下のように示されているのだ。
 「生活保護費の削減などを内容とする自民党の政策は、国民感情や国の財政事情を踏まえたものであって、厚生労働大臣が、生活扶助基準を改定するに当たり、これらの事情を考慮することができることは(略)明らかである」
 日常的な用語で言い換えると、以下のようになる。
 「生活保護費は自民党が決める。自民党が国民感情や財政事情を反映したければ、そういう路線に沿って生活保護費が決まる。それでいいのだ」
● 司法が自ら司法の役割を放棄 逆の意味で“画期的”な判決
 背後で自民党が何を考えていようが、行政の厚労省が誤った判断をしているのなら、「それは誤っている」と示すのが司法の役割である。しかし今回の判決内容は、厚労省の誤りを指摘しないだけではなく、さらに「厚労大臣が自民党だし、自民党が生活保護叩きの国民感情を盛り上げていたし、財政的には社会保障削減方針で一貫しているわけだから、厚労省がそうするのは当然」と言わんばかりなのだ。
 司法が自ら、司法の役割を放棄しているのか。三権分立ではなく三権同一を、司法が積極的に目指そうとしているのか。この名古屋地裁判決の“画期的”な意義は、「司法自身による司法の無効化」に見出すことが可能かもしれない。
 生活保護費を政権与党が決めてもいいことにするためには、国会の審議と法改正が必要だ。それは司法の役割ではない。しかし本判決は、立法と司法の境界線を軽々と踏み越えてしまっている。俗に言う「謝って済むなら警察は要らない」を、はるかに超越した判決だ。
4.
● 厚労省も認めない 政権与党と国民感情の優越
 厚労省にとっては、本判決は勝利である。しかし、内容にも納得しているのだろうか。
 判決の翌日である6月26日、本訴訟に関わった弁護士ら、支援団体関係者、もちろん生活保護で暮らす当事者らが、厚労省に申し入れと交渉を行った。問題は、判決だけではない。コロナ禍下で生活保護を必要とする人々が急増しているため、「必要で、経済的に困っていればすぐ使える」という本来の原則どおりに、生活保護を利用できるようにする必要があるからだ。
 この時、元厚生官僚でもある弁護士の尾藤廣喜氏が「憲法や生活保護法に示されていない、自民党や財務省の意向、国民感情などによって、生活保護費を決定するのですか」と尋ねたところ、厚労省保護課職員からは「法に従って、公平に適正に行います」という当然の回答があったということだ。
 名古屋地裁判決に盛り込まれた「生活保護費は自民党が決める」という内容は、厚労省も認めていないのである。国会での立法や審議を経ずに、自らの役割や存在を司法に変えられてしまうのでは、たまったものではないだろう。
 今回の裁判官は、なぜ、このような「斜め上」の判決を下したのであろうか。
 名古屋地裁判決の背景として考えられることは、数多い。たとえばコロナ禍で、生活保護をはじめとする社会保障を必要とする人が増えている。総額をコントロールするために最も効果的なのは、生活保護費を減らすことだ。
 生活保護費は、他の社会保障制度や最低賃金など、約60にもおよぶ制度の参照基準となっている。生活保護費を減らせば、社会保障費総額は自動的に減らせることとなる。しかし本判決文は、3月末よりも前の時点で完成していたと見られる。コロナ禍を考慮して大胆な変更が加えられた可能性は、あまり考えられない。
 次に考えられるのは、全国の28地裁で今後も続く訴訟、そして全国の8高裁で闘われる控訴審、さらに最高裁判決へと至る道筋の中における国側の戦略である。合計で約40のポイントが存在する訴訟を将棋に例えると、最初の地裁判決は、「歩」の最初の1個の進め方のようなものである。相手の立場からは、「ここで、理由はなんでもいいからボロボロに負かしておこう」という戦略は「アリ」なのかもしれない。しかし、行政訴訟に取り組んでいるO弁護士に聞くと、「戦略的に酷い判決を」ということは考えにくいという。
 「あくまでも、判決は各裁判体(今回の名古屋地裁では裁判官3名)が作ります。裁判所間で情報共有をしていることはありません。事件によっては、司法研修所での勉強会を通じて情報の共有が行われることもあると聞いています。原発については、裁判官の会合が開かれて方針が共有されたような話もあります。今回の生活保護の訴訟で、そのような情報共有が行われていたかどうかは、わかりません。もしかすると、情報開示請求などで出てくるかもしれませんが」(O弁護士)
 O弁護士が「聞いています」「話もあります」「かもしれません」としか言えないのは、そのような勉強会や会合の存在は公表されていないからだ。稀に、裁判資料で存在が判明する事例もあるが、総数や全体像は全く不明だ。
● 裁判所の人事が忖度ならば 公正な裁判を期待できるのか
 そして、今回の名古屋地裁の裁判体は裁判官3名から成っていたが、うち1名は判決前に、最高裁の調査官として異動し、裁判官のエリートコースを歩んでいる。
 「最高裁は露骨な介入はしませんが、人事でコントロールしているのだと思います。名古屋地裁の裁判官は、そういう意味で“踏み外さない”判決を書いたのだと思います」(O弁護士)
 つまり、“忖度”なのである。
 裁判官は、選挙で選ばれるわけではない。最高裁裁判官の国民審査は、衆議院選挙と同時に行われるが、不信任となった裁判官はいない。“忖度マシン”と言うべき裁判所の人事システムに対して、現在のところ、市民にできることはない。そして、もしも紛争や事件に巻き込まれ、原告や被告となる時、私たちを裁くのはこのような司法なのだ。

【働いても「サービス利用者」の障がい者…明確すぎる線引きが生んだもの 新人の問いに静まりかえった職場】WIth News 6/28(日) 7:00配信
1.
障がい者にとって、「働く」とはどういうことなのでしょうか。就労継続支援A型で働く篭田雪江さんは、自分が「従業員」である一方で、「福祉サービスの利用者」でもあると指摘します。かつては「ごちゃまぜ」だった職場が20年の時を経て変わりゆく姿を目の当たりにしてきたという篭田さんに、思いをつづってもらいました。
障がい者雇用、増えているとはいえ
 あるご縁でいただいた雑誌(Oriijin(オリイジン)Spring.2020 ダイヤモンド社刊)の特集を、ずっと読んでいる。
 その特集には障がい者(この表記を変えたい、という記事を以前書いたのだが、今のところ新しい表記が思いついていないので不本意ながら使わせていただく)雇用についての現状とこれからが、詳しい資料と共に実に読みやすく詳報されていた。
 添付されていた資料によると、国内の障がい者の総数は約963万人(2017年)、国民のおよそ7.6%がなんらかの障がいを持っているということになるらしい。
 そんな中、障がい者にとって最大の関心事のひとつである障がい者雇用は年々増えているという。これは2019年の統計だが、民間企業で働く障がい者は約56万人。雇用者数・実雇用率ともに過去最高を更新したそうだ。
 963万人のうちの、56万人。
 増えているとはいえまだまだ少ないかな、というのが偽らざる実感だった。
従業員で利用者で
 私のまわりの話を少ししたい。
 私は南東北の市にある社会福祉法人に、高校卒業以来勤務している(卒業時からこの職場を志望していたわけではなかった。本当は公務員を目指していて実際に国家三種という資格も得ていたのだが、さまざまな事情で公務員にはなれなかった。その時の体験はまた別の機会があれば譲る)。
 ただ、ここでいう「勤務」というのが実は少し微妙なところだ。厳密に言うと、私の働いている部は、その社会福祉法人が運営している就労継続支援A型の印刷部門である。
「〈就労継続支援A型〉障がいや難病のある「通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う」(厚生労働省 障害者福祉施設における就労支援の概要より抜粋)、就労系の福祉サービスである」
 法人と雇用契約を結んでいるので、肩書としては「会社員」「従業員」となる。だが就労機会の提供(私の場合印刷業務)という「福祉サービスの提供」を受けているので、そのサービスの「利用者」でもあるのだ。
  業務内容自体は他の印刷会社とおなじだ。私の場合DTPオペレーター(デザイナーによるデザイン原案を元に、印刷できるかたちのデータを作成する)として、日々印刷物の編集につとめている。今は体調を崩して時短勤務中だが、本来は朝8時半から夕方5時までのフルタイム勤務だ。日々納期に追われつつ、デザインソフトとにらめっこしているし、繁忙期には深夜まで残業することだってある。健常者の営業(ちなみに健常者は「職員」や「支援員」という肩書になる)と納期や内容についてやり合うこともしょっちゅうだ。
 しかしそんな仕事中、普段はおなじ仕事につく同僚の「支援員」から、ぽろりと紙が渡される。前月のサービス利用日と内容の詳細が書かれた用紙だ。私たちは毎月これに捺印しなければならない。しっかり利用者としてサービスを受けた、というあかしに。
 会社員でもあり、福祉サービスの利用者でもある。
 この曖昧な立ち位置に、私たちはずっと霧がかかったような思いを抱いている。ぬかるむ泥地に立たされている、あと一個ピースを抜き取ると崩れるジェンガでできた家のなかにいる、そんな足元のおぼつかない場所にいるような思いになる。
 職員である健常者と、利用者である私たち障がい者。
2.
仕事終わりに麻雀してた20年前
 私が法人に入った約20年前はいい意味でごちゃまぜだった。職員だの利用者だのという面倒な垣根は一切なかった。障がい者が上司で健常者が部下、なんて部署も当たり前だったし、共に食事や飲みに行ったり、仕事終わりにほぼ徹夜で麻雀に興じる人たちだっていた。
 だが障害者自立支援法(2005年)の制定以来、上記に書いたように職員と利用者の区分けが徐々に厳密化してきた。障がい者が上司の部署は少なくなり、後から入ってきた社会福祉を学んできた健常者が、2年もたたないうちに役付けになったりもしている。
〈障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)〉一般就労が難しい障害者らに就労の機会を提供する「就労継続支援事業」や、福祉サービスを利用する際に原則1割の負担を課すなどの内容を定めたもの。2006年施行〉
 ここ数年は定年や体調不良による早期退職、先日の記事(車いすから考える「外出自粛」自由と不自由のはざまで生まれる優しさ)でも書いた両腕にハンディを抱えた女性のようにまわりのサポートが追いつかず辞めたりした人が続いたこともあり、「ごちゃまぜ」時代のひとたちが障がい者、健常者共にめっきり少なくなってきた。
 それに呼応するように、必然的に利用者と職員がしっかり分かれている今の体制しか知らない人が増えてくる。そのこと自体は時代や体制の変化もあるからしかたないのだが、以下のようなひずみもまた出てくる。
 これは聞いた話だが、ある日の休憩時間、以前職場にいた人の思い出話になった。その人はかつて総務に所属していた。職場内の掃除や備品の整理、周囲の草刈りなどを一手に引き受ける、縁の下の力持ち的存在だった。性格も明るく、皆に「〇〇ちゃん」としたわれる明るい性格でもあった。
 その話を聞いていた新人の職員があることをたずねてきた。その問いにまわりはしん、と静まりかえったというのだ。
その問いとは「その人は利用者だったんですか?」だった。
3.
同僚でも「障がいを持った利用者」
 その話を聞いた時、うちの未来はあまり明るいものではないな、と正直思った。自分の同僚、あるいはかつて活躍した人を、「障がいを持った利用者」という目でまず見る。能力や性格よりまず先に。
 これから入ってくる人たちのなかにも、そういう感覚を潜在的に持つ人が出てくるかもしれないと思うと、暗い気持ちになった。
 もちろん、こんな問いかけをするような人は他にはほとんどいない。その新人も多分深い意味もなく訊いただけかもしれない。障がい者や健常者の区分がしっかりできあがった体制しか見ていないのだから、やむを得ないことでもある。
 問題は健常者側ばかりではない。私たち障がい者の方の意識も悪い方へ変わってきてしまっている。「面倒なことは職員がやるから」「大事なことを決めるのは向こう」「あいつらにまかせておけばいいんだ」そんな意識が少しずつ芽生え、以前のモチベーションを失っている人もいる。
 私自身も偉そうなことを言える立場にない。持病による体調不良とはいえ休みが重なってくると「大きな仕事はもう若い人に引き継ごうか」なんて考えが浮かんだりしている。体裁のいいことを言っているようだが、要するに障がいや病気という言い訳を利用した押しつけに過ぎないのだ。
 そんな居心地のいいとはいえなくなった職場でも、障がいを持った方たちがしばしば見学に訪れる。こんなとこやめて違う会社に入った方がいいよ、と興味深げに編集作業を見学する人が来るたび思う。だがここは地方だから、都会に比べてまだまだ障がい者雇用に対して積極的でない企業が多いのだろう。
 以上は私の職場の話である。あくまで私が勤める職場の一風景を書いたに過ぎない。他の事業所、民間企業もそうというわけでは決してないことは強調しておきたい。
まずは飲みながら話し合ってみよう
 それにしても障がい者が働く、というのは暗い現実や未来しかないのか、と感じられた方もおられるかもしれない。でも決してそうとは限らない。
 現に冒頭にあげた雑誌の特集には、障がい者雇用に対して先進的な取り組みを行っている企業が紹介されている。
 「障がいの有無や部位に関わらず、あらゆる人が能力・意欲を発揮できる機会を創造」できるよう、さまざまなケアやサポートを行っている、従業員約400名のうち約350人が障がいのある人である企業。
 製造、接客ともに重度の障がいを持つ人が担当しているパン店。そこは各々の得意な工程を活かして作業を行って賃金向上をはかるとともに、いずれは“ごちゃまぜーしょん”という名のもと、高齢者や子どもたち、引きこもりの方々にも入ってもらおうと目指しているという。
  障がい者が働くこと、を変えるのは、やはり私たち自身であるべきだ。
 ここまで書いて、そんな思いを強くしている。
 私も愚痴や不満、羨望ばかり言っていてもしかたがない。まずは自分たちのところから変えていかなければならない。幸いまわりにはまだ障がいの有無に関わらず、「ごちゃまぜ」時代がよかった、と思っている人がいる。後から入ってきた人にも「前はそうだったんですね。そういうのがいいですよね」と言ってくれる人もいる。そんな人たちと話し合い、新しいことをはじめてみたい。障がい者も健常者もない「ごちゃまぜ」の職場の空気を取り戻せば、きっとなにかを生み出せる。自分に残された働ける日々はあまり長くないだろう。その間に、まがりなりにも自分を食べさせてくれた職場に、よりよきものをみんなと残せていけたら、と思っている。
  まずは飲みながら、麻雀でもしながら、話し合ってみようか。
【コロナ後にうつ病休職した人を待ち受ける悲劇】東洋経済オンライン6/26(金) 5:25配信奥田 祥子 :近畿大学教授、ジャーナリスト
過重労働やパワーハラスメント(パワハラ)など職場の問題をきっかけに抑うつ症状などを自覚し、うつ病休職に追い込まれる労働者が増えている。この社会的背景は、拙著『社会的うつ―うつ病休職者はなぜ増加しているのか』でも詳しく解説しているが、「社会的うつ」とは、私が独自に構築した言葉・概念だ。
医学的に言えば「うつ病」は、抑うつ症状以外にも食欲の減退あるいは増加、不眠あるいは睡眠過多、思考力や集中力の減退などさまざまな症状が組み合わさり、ほぼ1日中、ほぼ毎日、2週間以上にわたっていて、その症状のために著しい苦痛または社会的、職業的に機能障害を引き起こしているといった、いくつかの診断基準がある。
 その医学的な診断基準には該当しない、つまり真の「病人」ではないのに過酷な労働条件・職場環境を背景に、ストレスの多い仕事を休みたい患者と、その希望を尊重しようとする主治医の意図、企業内制度、メディア報道などさまざまな社会的要因により、軽症の「うつ病」と診断されるケースを指して「社会的うつ」と呼んでいる。
 このような「社会的うつ」は、コロナ禍のテレワークを経て、ますますの増加が見込まれる。このまま放置すれば、企業、労働者双方にとって大きな損失だ。アフターコロナに「病人」として排除されないためにどうすればよいのか、事例を紹介しながら考えてみたい。
「仕事から逃れるため」のうつ病休職
 「仕事を続けるのはもう限界でした。会社を一定期間休むためには診断書が必要なので、メンタルクリニックを受診したんです。当時は、『軽症うつ病』と診断されてほっとしたんですが……あの選択が苦難の始まりでした」
 大手メーカーの子会社で課長職に就く山川浩二さん(仮名、42)は今年3月に行ったインタビュー取材で、うつ病休職までの経緯を説明し、苦渋の表情を浮かべた。元は親会社の商品開発部門の課長だったが、長時間労働に加え、部下が指示どおりに動かないことに頭を痛めていたとき、部長からマネージメント能力不足を職場のみんながいる前で繰り返し非難されるというパワハラを受けた。気分の落ち込みや集中力の低下などが出始め、「つらい仕事から逃れたい」と思うようになったという。
中略
日本生産性本部メンタル・ヘルス研究所の2019年の調査では、過去3年間に、うつ病を中心とする心の病にかかる従業員が増加傾向にあると回答した企業は32.0%に上った。同研究所の2012年の調査では、各企業は相談窓口の設置や精神科産業医の配置、休職制度の充実など不調者の早期発見・対応に最も力を入れているが、半数近く(47.2%)が十分な効果を感じていないこともわかった。
 企業がメンタルヘルス対策を充実させればさせるほど、うつ病休職者が増加する――。この奇異な現象に疑問を抱いたのが、今から10年余り前、調査・研究を始めるきっかけだった。
 うつ病休職を経験した30~50代の男女50人へのインタビュー調査、さらに被調査者とは無関係のプロファイルの異なる精神科医ら専門医6人の再診断によって、うつ病休職者の8割超が医学的な診断基準に該当しない、すなわち真のうつ病ではなかったことがわかった。また、多くが「軽症うつ病」と診断されていた。
 そして、生産性低下や休業補償など経済損失を招き、労働者にもキャリア中断という悪影響を及ぼすうつ病問題の根源は、病そのものの拡大ではなく、「社会的うつ」にあるという結論を導き出したのだ。
コロナ後に休職を余儀なくされる人々
 労働問題の解決を度外視した、企業のメンタルヘルス対策の充実が、従来は医療の対象ではなかった事象が病気と定義され、医療の対象となっていく「医療化」を進める原因になっていると、私は考えている。
中堅専門商社で営業を担当する佐藤孝さん(仮名、35)は、かなり前から課長に過大なノルマを課せられて悩んでいたが、テレワークに入ってから、課長だけでなく、同僚ともうまくコミュニケーションを取ることができず、「孤立した状態」になったという。
 「それで出社してみたら……休職する羽目になってしまいました」と思いもよらなかった展開について、ウェブ会議システムを利用した取材で明かしてくれた。5月下旬、通常の勤務形態に戻ってから数日経ったある朝、佐藤さんは起床時にふらついてベッドから立ち上がれなくなった。何とか午後に出社し、部長に、課長からの過大なノルマについて力を振り絞って訴えた。
 「うつ病の診断書をもらって、しばらく休んだらどうだ」――。悲痛の訴えを受け止めようともせず、そう言い放った部長の言葉に耳を疑った。しかし、「冷静な判断ができないほど疲れていたし、休めるなら、と言われるままに従ってしまったんです」。総合病院の精神科を受診したところ、「軽度のうつ病」と診断され、休職することになった。現在、休職に入ってから約1カ月経つが、とても職場復帰する気になれないという。
 「僕は過労で、うつ病ではないと思うんです。抗うつ薬は吐き気とか副作用が出て、数日で飲むのをやめました。部長に訴えを聞いてもらえず病人扱いされたことを思い出すと、出社して職場の問題を訴える気力が湧かないんです……」
一方、在宅勤務を経て仕事と向き合う意識が前向きに変化したケースもある。流通大手で広報担当の田中美恵子さん(仮名、38)は、第1子出産後、育児休業取得を経て、1年半前に職場に復帰したが、任される仕事は働くモチベーションを低下させるものだった。
テレワークによる業務効率化で前向きに
 「責任のある、質の高い職務は与えてもらえなくなって……。私はもう必要とされていないんじゃないかと思い悩みながら仕事を続けるうちに、心身の疲れを感じるようになったんです」
 かかりつけの婦人科で不眠や焦燥感を訴えたところ、「疲労に加え、更年期前の症状が出始めているのではないか」という。漢方薬のほかに精神安定剤と睡眠導入剤を処方された。だが、イライラ感などは治まらず、抑うつ症状まで出るようになった。心療内科を受診し、「抑うつ状態」と診断され、「会社を休みたければ、診断書を書きますよ」とまで言われた。
「休みたかったけれど、仕事がしづらくなるんじゃないかと、保留にしてもらったんです」。
 そんな田中さんが「社会的うつ」に陥るのを救ったのは、コロナ禍のテレワークだった。
 「在宅勤務で心身を休め、仕事のことを考えるうちに、しんどいから逃げるのはいけないと思い直しました。それにウェブ会議とか効率的な働き方の重要性に上司たちも気づき始めたので、育児で残業はできなくても、ITを活用して在宅でこんな仕事もできますと提案しやすくなって、仕事に対して前向きな気持ちになれました」
 田中さんは休職することなく、子育てと両立させながら仕事を続けている。
 企業は労働問題の解決に向けて真摯に取り組む。働く人たちは職場から逃避することなく、職場環境の改善を訴えていく。アフターコロナは変革のチャンスでもあるのではないだろうか。

【障害への理解を 障害をもつ男性が介護学ぶ学生に講義 佐賀県】サガテレビ6/26(金) 18:00配信
障害への理解を深めてもらおうと、佐賀市の佐賀女子短期大学で障害がある人を講師に呼んで、講義が開かれました。
佐賀市の佐賀女子短期大学では、介護福祉士を目指す学生に理解を深めてもらおうと10年前から障害がある人を講師に呼んで、講義を行っています。今日は福祉とソーシャルケアコースの2年生30人を対象に先天性脳性まひがある北古賀雄三さんが同じく障害のある人を招きどういった生活を送っているのかなどを話し学生は熱心に話を聞いていました。
ミャンマーからの留学生:「私たちの国では障害を持つ人たちはみんなの前に出ることが本当にない。今日の授業を受けられて、本当に素晴らしいと思いました」
北古賀雄三さん:「当時者の言うことが分からないまま介護をされる介護士の方が多いので、当事者の意見を聞いていただいて、それに沿って介護して頂けるとありがたいですね。そういった方になってほしいと思います」

【やまゆり園の実態検証が迷走 聴取なく「虐待疑い」、中間報告で終了】毎日新聞6/26(金) 9:36配信
 2016年7月に利用者ら45人が殺傷される事件があった神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、事件以前に利用者に対する虐待があったかどうかを含む実態検証を巡り、県が迷走している。県の検証委員会は同園職員にヒアリングしないまま「虐待の疑いがある」と指摘する中間報告を提出し、検証を終えた。7月に対象を県立障害者施設全体に広げて新たな検討部会を発足させる見込みだが、同園に特化した調査はしないという。
 津久井やまゆり園は県が設置する施設で、指定管理者の社会福祉法人「かながわ共同会」が運営。17年10月に策定された再生基本構想を基に、県が主体となって事件からの再生に取り組んできた。
 しかし、19年12月の県議会本会議で黒岩祐治知事が突如、共同会に対する24年度までの指定管理期間を短縮すると表明。理由として、同園で長時間の身体拘束といった不適切な事案があるとの情報が寄せられたことなどを挙げた。
 県は同園の実態を調べるため、第三者による検証委員会を20年1月に設置。委員長の佐藤彰一・国学院大教授を含む有識者ら3人で構成する検証委は、事件前後の記録や資料を基に調査を進めた。
 一方で、県議会では検証委について「3人の委員には大規模な障害者施設に批判的などの共通点があり、最初から結論ありきの人選。公平性や公正さに欠ける」などと疑問の声が上がっていた。
 2月には、県が事件直後に設置した事件検証委員会の元委員で社会福祉法人育桜福祉会「白楊(はくよう)園」の市川高弘施設長が議会に陳情を提出。県が一方的に指定管理期間短縮の方針を示したことを「公平性に反し、県の信用失墜につながる」と批判し、検証委についても中断と見直しを求めた。
 県議会厚生常任委員会は3月、全会一致で陳情を了承した。検証委のあり方について議会から県に対して改めて再考が突きつけられた形となった。
 検証委は新型コロナウイルスの影響で、5回目となった2月19日の会合以降開催されない状況が続いた。ところが、県は5月18日の厚生委で唐突に虐待の疑いを指摘する検証委の中間報告書を提出した。
 虐待を事実認定するために必要な園職員へのヒアリングは実施されていないにもかかわらず、報告書では記録や資料から「虐待の疑いが極めて強い」と表現が強められた。しかも「中間」と銘打っているにもかかわらず、県の担当者は「検証は中間報告をもって終了する」と説明した。共同会側は中間報告書について「不適切な支援であるとの指摘は真摯(しんし)に受け止める。だが必ずしも全てが事実ではない」とコメントした。
 中間報告書を提出したタイミングについて、黒岩氏は5月の定例会見で新型コロナの影響を挙げ「ある段階でまとめないと前に進めない」と強調。そのうえで「共同会がどう受け止めて、どう乗り越えるのか。そちらの方が重要だ」と述べた。
 県には同園以外の県直営施設で虐待が疑われる事案も報告されていることなどから、今後は県立障害者施設全体に広げた検討部会を発足させる。委員は検証委の3人を残し、7~8人に増やす予定という。26日に開かれる厚生委で正式に設置が決まる見通しだ。
 紆余(うよ)曲折を経ての部会について、県の担当者は「未来志向で利用者支援の在り方を検討したい」と話す。当初掲げた「再生」に向け、どこまで実態の解明が進むのか注目が集まる。


【高齢者入浴中に目離し死亡か 介護福祉士を書類送検】テレビ朝日
6/26(金) 23:32配信
 東京・東大和市の特別養護老人ホームで入浴中だった入居者の女性から目を離して溺れさせ死亡させたとして、30代の介護福祉士が書類送検されました。
 30代の男性介護福祉士は去年6月、勤務先の東大和市の特別養護老人ホームで入居者の80代女性の入浴の世話をしていた際に目を離して溺れさせ、その後、死亡させた業務上過失致死の疑いが持たれています。警視庁などによりますと、男性介護福祉士は女性の顔がお湯につかっているのに気付いて引き上げるなどしましたが、女性は病院に運ばれてその後に死亡しました。特別養護老人ホームは「ご家族に誠に申し訳なく思っております。再発防止に努めて参ります」としています。

【仕事で心の病、過去最多 ハラスメントが原因 19年度】時事通信6/27(土) 7:24配信
厚生労働省は26日、2019年度の労災補償状況を公表した。
 仕事が原因でうつ病などの精神障害を発症し、労災認定を受けた人は前年度比44人増の509人と、過去最多を更新。原因はパワハラを含むひどい嫌がらせやいじめが79人で最多だった。セクハラも42人に上り、職場のハラスメントで心を病む人が増えている。
 精神障害では、労災申請も240人増の2060人と最多。このうち自殺・自殺未遂は申請202人、認定88人だった。原因では、仕事内容・量の変化(68人)、事故や災害の体験・目撃(55人)も多かった。
 年代別の認定数は40代が25人増の170人で最多。20代、30代も増え、若者から中年が目立った。特に40代では自殺・自殺未遂が16人増の36人と大幅に増えた。
 脳・心臓疾患の労災認定は22人減の216人。ただし、過労死は4人増の86人と、高水準で推移している。職種でも自動車運転従事者が認定67人、うち過労死29人と飛び抜けている状況が続いている。
 厚労省は20年度から脳・心臓疾患、21年度からは精神障害の認定基準見直しに着手する方針だ。労働時間などの引き下げを求める声もあり、基準が変更されれば、労災認定の件数はさらに膨らむ可能性がある。 

【精神障害の労災基準に「パワハラ」新設…6月適用へ】読売新聞 5/15(金) 20:59配信 】
 厚生労働省は15日、精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」を新設する方針を決めた。上司らから身体的・精神的攻撃を受けたことが原因で精神障害を発症した場合を想定している。企業にパワハラ防止を義務付ける改正労働施策総合推進法が6月に施行されることを踏まえた対応で、厚労省は6月1日からの適用を目指す。
 これまでの労災認定基準にはパワハラの項目がなく、「(ひどい)嫌がらせやいじめ、暴行」に当たるかどうかで判断していた。パワハラを基準に盛り込むことで申請を容易にし、認定を迅速化する狙いがある。

【ウイルスは必ずしも悪ではない、別の感染症の防波堤となることも】ポスト5/17(日)※女性セブン2020年5月21・28日号 7:05配信
 今なお世界中で猛威をふるい、日本でも収束のめどが立たない、新型コロナウイルス。多くの人々が、新型コロナによって、未来がどのようになっていくのか、不安を抱えていることだろう。
◆ウイルスや細菌は長い時間をかけ、人間を守る存在へと変化する
 アフリカや中南米など、感染症流行地域の最前線で闘ってきた医師で、『感染症と文明──共生への道』(岩波書店)の著者、長崎大学教授の山本太郎さんは、ウイルスを「悪」と捉える人々へ一石を投じる。
「99.9%のウイルスは悪さをしません。ウイルスは自力では増殖できず、ほかの生物の細胞に自らの遺伝子を注入し、その細胞の中で遺伝子を増幅させて自己複製を繰り返す。むしろその過程で、元の生物のDNAを進化させることもあります。
 これは人間のDNAでも生じている現象で、実際、人間の胎盤を形成する遺伝子にはウイルスが関与してきたとの研究報告があります。数万年スケールで見れば、感染症は人類が進化する原動力にもなっているということです」
 細菌でも同様の変化が起こる。『パンデミック──〈病〉の文化史』(人間と歴史社)の共著者の1人である元埼玉学園大学教授の赤阪俊一さんが説明する。
「体の表面や体内に存在する『善玉菌』と呼ばれる細菌の中にも、かつては人間にとって脅威だったものがあります。長い時間をかけて共生するうちに、人間を守る性質に変異したのです」
 たとえば、腸内にはビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌があるが、これらも大昔の人間にとっては喜ばしい存在ではなかった可能性がある。こういった変化は、人々の食事や暮らしの移り変わりが影響している。
 山本さんは、「文明こそが、感染症を育む“ゆりかご”である」と語る。
「狩猟生活をしていた時代は移動が多く、糞尿の処理など衛生面での問題が少なかった。さらに集団ごとの人数も少なく、仮に感染症が起きてもすぐに終息した。
 ところが農耕を営むようになると、集団の規模が大きくなり、定住するようになります。すると、処理が不充分な糞尿から、寄生虫や細菌による感染症が発生し、集団内でうつし合う形になる。見方を変えれば、感染症が流行するということは、増加した人口を維持できるほどの文明が成立した証拠でもあるのです」
◆集団として免疫を持つことは別の感染症の防波堤になり得る
 パンデミックが永久に続くことはない。一方で、感染症を根絶することは不可能に近い。これまでに、人類が「完全勝利」したといえる感染症は天然痘しかなく、そのほかの感染症はいまも、世界のどこかに感染者がいる。
 だが、たとえ根絶はしなくとも、「集団免疫」を身につけることで事態は穏やかな終息を迎える。山本さんが解説する。
「新型コロナはすでに世界中に広がっており、もはや根絶することは難しい。治療薬やワクチンの登場時期にもよりますが、個人的には、このままいけば全人口の7割が免疫を獲得するまでに1~2年くらいかかると考えています。それ以降は、風邪程度の症状に落ち着いていくのではないかと思います」
 身につけた新型コロナの免疫力は、数十年、あるいは数百年単位で見ると人類にとってメリットになり得るという。山本さんが続ける。
「木々がうっそうと生い茂る密林には、新しい植物が進出しにくいものです。これとよく似ていて、新型コロナの免疫獲得は、別の感染症の防波堤になってくれる可能性があるのです」
 免疫を得る手段は、ワクチン接種によって人工的に得る方法が一般的だが、生活の中で自然にウイルスに感染する「自然感染」という方法もある。
 重症化と医療崩壊のリスクを避けるため、多くの国では都市を封鎖し、人間同士の接触を制限しているが、一方で、経済への打撃を最小化するため、スウェーデンのように普段通りの生活を続けている国もある。その結果、国内での感染拡大は進むものの、ワクチンを待たずして自然感染による集団免疫を獲得することもできるかもしれない。
 しかし、同国では約2万1000人の感染者に対し、約2500人もの死者が出ており、高い死亡率を指摘する声がある。赤阪さんも、自然感染による集団免疫の獲得には難色を示す。
「7~8割の人が自然に感染して免疫をつけるには、相当数の死者を覚悟しなければならない。いまは、なるべく感染者の増加を抑えながら時間稼ぎをして、特効薬やワクチンを待つしかありません」
4月末には、紫外線や高温多湿の環境が、新型コロナを減少させる効果があるというアメリカの国土安全保障省幹部の報告もあった。これが正しければ、夏になるとウイルスの不活化が進むことが期待される。
 ただし、これらの報告はあくまで研究段階で、「かつての生活に戻れる」と考えるのは早計だ。 米カリフォルニア大学アーヴァイン校公衆衛生学准教授のアンドリュー・ノイマーさんは、「ウイルスとの闘いは持久戦」だと話す。
「感染拡大が小康状態になったとしても、ウイルスは勝手に消えてくれない。ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)を解除すれば、感染は再拡大してしまうでしょう。ワクチンができるまで、徹底して医療崩壊を起こさないよう努めなければなりません」


【東京の3月のコロナ死者、発表の10倍以上?「超過死亡」を検証する】現代ビジネス 5/17(日) 8:01配信 長谷川 学(ジャーナリスト)
 5月11日、小池百合子東京都知事は、都の新型コロナ陽性者数公表に関して、過去に111人の報告漏れと35人の重複があったことを明らかにした。保健所の業務量の増大に伴う報告ミスが原因だという。
 同じ日の参院予算委員会。政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の尾身茂副座長は、「確認された感染者数より実際の感染者数がどれくらい多いか」と聞かれ、「10倍か、15倍か、20倍かというのは今の段階では誰も分からない」と “正直” に答弁した。先進各国に比べ、PCR検査件数が格段に少ないのだから、感染者数を掴めないのは当たり前のことだ。
 小池、尾身両氏の発言は、いずれも新型コロナの「感染者数」に関するものだ。だが実は、東京都が発表した今年3月の新型コロナによる「死亡者数」についても、以前から「あまりに少なすぎる。本当はもっと多いのではないか」と、疑惑の目が向けられてきた。
 東京都が初の新型コロナによる死亡を発表したのは2月26日。その後、3月中に8人の死亡が発表されている。
 この頃、東京都ではまだPCR検査を積極的に行っておらず、2月24日までの検査数はわずか500人余りにとどまっていた。このため「実際は新型コロナによる肺炎で死亡した人が、コロナとは無関係な死亡として処理されていたのではないか」という疑いが、以前から指摘されていたのだ。
 これに関連して、国立感染症研究所(以下「感染研」)が興味深いデータを公表している。「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」(以下「迅速把握システム」)のデータである。
 この迅速把握システムは、約20年前に導入された。少し前置きが長くなるが、概要について述べよう。
 東京(23区のみで都下は対象外)など全国の21大都市における「インフルエンザ」による死者と「肺炎」による死者の数を合計し、毎週、各地の保健所から集計する。この2つの死者数の変化を追うことを通じて、全国のインフルエンザの流行状況を素早く把握しようという狙いだ。
 なぜ「インフルエンザ」だけでなく「肺炎」による死者もあわせて集計しているのか。例えば、お年寄りがインフルエンザ感染をきっかけに入院しても、そのまま亡くなってしまうケースは少なく、実際にはさまざまな治療の結果、最終的に「肺炎」で亡くなることも多い。そうした死者も漏らさず追跡し、インフルエンザ流行の影響を総合的に捉えようという考え方だからだ。専門的には、このような考え方を「インフルエンザ流行による超過死亡の増加」という。
 今回注目すべきは、迅速把握システムの東京都のデータ(次ページの図「東京19/20シーズン」)である(注・19/20とは19年から20年のシーズンという意味)。
 図の「-◆-」で示された折れ線は、保健所から報告されたインフルエンザと肺炎による死者数を示している。ご覧のように、今年の第9週(2月24日~)から第13週(~3月29日)にかけて、それまでに比べて急増していることが分かる。
 この急増の原因は、いったい何なのか。
 この時期、東京ではインフルエンザは流行していなかった。1月、2月のインフルエンザ推定患者数は、前年同時期の4分の1程度。今年は暖冬で、雨も多かったこと、そして国民が新型コロナを恐れて手洗いを良くしていたことも影響したと考えられている。
 インフルエンザが流行っていなかったのに、なぜ、この時期に肺炎による死者が急に増えたのか。医師でジャーナリストの富家孝氏はこう推測する。
 「まず考えられるのは、新型コロナによる肺炎死でしょう。警察が変死などとして扱った遺体のうち、10人以上が新型コロナに感染していたという報道もありました。2月、3月は、まだ東京都はPCR検査をあまり行っていませんでした。検査が行われなかったら、当然、新型コロナの死者数にはカウントされません。実際にはコロナによる重症肺炎で亡くなっていた人が、コロナとは無関係な死亡と扱われていた疑いがあります」
金沢大学医学部の小川和宏准教授もこう話す。
 「今年はインフルエンザの感染者数が少なかった上に、2月末から3月末はインフルエンザのピーク(毎年1月末から2月初めの時期)も過ぎている。この超過死亡は、新型コロナによる死亡を反映している可能性が高いと思います」
 では、「隠れた死者」は何人いたのだろう。再び図をご覧いただきたい。
 「超過死亡」とされるのは、図の赤線(閾値)を超えた部分だ。江戸川大学の隈本邦彦教授が解説する。
 「東京23区内で過去のデータから予測される死者数がベースライン(緑線)です。どうしても年によってバラツキがありますから、そのベースラインに統計誤差を加えた閾値(赤線)を設定し、それを超えた分を “超過死亡” と判定しています。
 つまり今年は、偶然では起こり得ないほど肺炎の死者が多かったということです。それが5週連続、しかも毎週20人以上というのは異常だといえます」
 図のように、超過死亡は今年第9週(2月24日~)に約20人にのぼった。その後も、第13週(~3月29日)まで毎週20~30人の超過死亡が起きていた。合計すると、およそ1ヵ月の間に100人以上。東京都が発表した3月中の新型コロナによる死亡数8人の10倍を超える。
 データを発表した感染研は、この超過死亡をどう捉えているのだろうか。感染研に質問したところ、「このシステムは超過死亡の発生の有無をみるものですが、病原体の情報は持っておりませんので、その原因病原体が何かまでは分かりません」と、木で鼻をくくったような回答だった。
 なお感染研発表の過去の東京都のデータを調べると、前シーズン(18-19年)と前々シーズン(17-18年)にも超過死亡はあったが、これについて感染研は「インフルエンザの流行が非常に大きかった」と回答した。なぜ去年の出来事はインフルエンザとわかるのに、今年は不明という回答になるのだろう。
 とはいえ、この超過死亡が新型コロナによるものかどうかは、遺体がPCR検査もされずに荼毘に付されてしまったいまとなっては、実証する手立てがない。
 一方、感染研発表の東京都のデータからは、死者数とは別の大きな問題も浮かび上がる。図のように2月24日以降、東京23区で超過死亡が急増していた。新型コロナウイルス発生を中国政府が正式に発表したのは、今年1月9日。同23日には武漢市が都市封鎖された。
 日本でも1月下旬以降、徐々に感染者が確認され、2月13日には国内初の死者が出て、人口が密集する東京での感染爆発は不可避とみられていた。
 そうした状況下で、2月24日以降5週間にわたって、人知れず週20~30人もの超過死亡が確認されていたのである。なぜ、この重大なサインに当局は目を留めず、活かそうとしなかったのか。「原因病原体が何かまでは分かりません」で片づけられる話ではない。
今にして思えば…
 前出の隈本氏が首を傾げる。
 「インフルエンザが流行していないのに、2月下旬に東京23区で週に約20人の超過死亡が発生していた事実は、通常なら2週間後の3月上旬には感染研の迅速把握システムに届いていたはずです。その時点で、感染研の担当者や厚労省の専門家会議のメンバーの誰かが気付いて、“東京が大変なことになっているかもしれない” と警鐘を鳴らしていたら、PCR検査態勢の拡充を含め、より早期の対応が可能だったはずです」
 だが実際には、小池東京都知事が新型コロナ対策で本格的に動き始めたのは、3月24日に東京オリンピックの延期が正式に決まってからだった。
 そして東京都の新型コロナ感染者数は、先に感染が広がった北海道に比べてずっと少なかったのに、東京オリンピック延期が決まった後から、急激に右肩上がりで増えていった。
 「もし2月下旬に発生し始めた週20人以上の超過死亡が新型コロナのためだとなると、その時点でオリンピックどころではなくなったでしょう。しかし、もしそうした “忖度” のために、税金を使って集めている迅速把握システムが捉えたデータが生かされなかったとしたら、何のためのシステムなのか。東京都や国の責任は重いと思います」(隈本氏)
 なぜこの貴重なデータが早期に検証され、コロナ対策に生かされなかったのか。今後、経緯を厳しく検証していく必要があるだろう。







【新型コロナ入院患者が地獄の闘病激白「喉に金串が刺さったような耐え難い痛み」】日刊ゲンダイ4/7(火) 9:26配信
体に異変を感じたのは、3月17日ごろです。それから微熱が続き、喉が腫れ、サバの骨の10倍ぐらいの太さの金串をのみ込み、喉に突き刺さっているほどの強烈な痛みを感じました。痛さで飲み物どころか唾さえ飲めません。次第に首の外側が腫れ、食欲が減退し、倦怠感に襲われ、睡眠導入剤を飲んでも痛さで眠れない日々が続きました。
 寝ようにも背中をバットでボッコボコにブン殴られるぐらいの激痛に見舞われ、2日間、自宅のベッドの上でのたうち回りました。さすがに「もうダメだ」と思い、近所のクリニックを受診すると、「インフルエンザの疑いがあるが、検査は国から禁止されているので薬だけ出します。2日経って熱が下がらなければまた来てください」と言われ、インフルの薬と解熱剤を処方されました。しかし、苦しみに耐えられず、翌日、再受診しました。
 平熱35.8度の体温が38.6度まで跳ね上がり、血液検査とレントゲンの結果、白血球の数値が高く、肺に影が見つかりました。報告を受けた保健所から「すぐに病院に行ってください」と指示され、都内の病院に入院し、集中治療室(ICU)に入れられ、抗生剤入りの点滴治療が始まりました。
 何か食べなければと思っても、口に入れられるのはせいぜいおにぎり1個。喉もカラカラに渇きます。突然、鼻血が出て止まらなくなり、ティッシュを詰め、苦しくなって外すと、またドバッと鼻血が流れ出す。その繰り返しです。鼻血が止まって鼻をかむと、血の塊が出てきます。そのうち鼻の中にかさぶたができました。約1週間、ICUで治療に専念し、今月2日、一般病棟に移りました。


【イタリア人記者が訴えるアッという間に蔓延するコロナの怖さと社会格差】〈週刊朝日〉
3/29(日) 18:24配信
L’Eco di Bergamoという地元新聞の電子記事を見ると、コロナウイルスの感染者が爆発したのは2月23日以降だ。それまでロンバルディーア州で感染した人はわずか15人程度だった。
 その2月23日、私はアメリカの米国ワシントンに帰国した。首都のワシントンの空港では誰もマスクを使っていなかったし、誰も旅行者の体温をチェックしなかった。
 約1ヶ月後の3月23日、ロンバルディーア州の感染者が28761人に上っていた。L’Eco di Bergamo新聞の死亡記事欄も劇的に増えた。
【新型コロナにインフル薬「アビガン」、治験と量産開始へ】朝日新聞 3/29(日) 6:00配信
 安倍晋三首相は28日、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルスに感染した患者に対し、臨床研究(観察研究)として使い始めている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)について、薬事承認を目指す考えを示した。「正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えだ」と述べた。
 アビガンは新型インフルエンザ治療薬として備蓄されているが、中国で新型コロナウイルスの治療効果が確認されたとの報告が出ている。安倍首相は「世界の多くの国から関心が寄せられている」として、薬の量産を開始するとした。
 ただ、アビガンについては妊婦が服用すると胎児に副作用が出るおそれが指摘され、新型インフルエンザ薬としても従来の治療薬では効果がないか不十分なときに限って使用が認められている。
 また、膵炎(すいえん)の治療薬「フサン」(一般名ナファモスタットメシル酸塩)についても、観察研究として、新型コロナウイルスに感染した患者に対し、事前に同意を得たうえで使い始める考えも表明した。


【コロナ禍の“三重苦”「20兆円規模」の追加財政支出が必要な理由】ダイヤモンド
3/31(火) 6:01配信  (第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱利廣
景気後退、消費増税に続いて 「東京五輪延期」はさらに打撃に
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化に対応するため、4月中に緊急経済対策をまとめる。
 対策の規模は、感染の世界的な拡大に伴う輸出減やサプライチェーンの寸断による生産縮小、インバウンド需要の落ち込み、また客足が遠のいた事業者への資金繰り支援や働けずに収入がなくなった非正規就業者や共働き世帯などへの生活保障など、さまざまな施策でかなりの額に上る。
 20年度の当初予算が成立した後には、早々に大型の補正予算が組まれる予定だ。
 筆者の分析では、日本経済はすでに2018年11月から景気後退期に入っており、その上に昨年秋の消費増税と今回の新型ウイルス問題の「三重苦」に陥っている状況といってよい。
 東京オリンピック・パラリンピックの「1年程度の延期」が決まったことで、その後も、さらに追加の対策が必要になる可能性が強い。
● 需給ギャップ埋めるだけで10兆円以上 リーマン並みなら20兆円必要
 必要な経済対策の規模はどのくらいが想定されるのか。
 経済対策の規模を設定する際に一般的に参考にされるのが、潜在GDPと実際の実質GDPの乖離(かいり)を示すGDPギャップ率だ。
 GDPがマイナス成長になった直近の2019年10-12月期のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば▲1.4%だ。このときは消費増税による消費落ち込みや台風など災害が続き、生産が停滞したことが原因だった。
 2020年1-3月期時点では、直近の民間エコノミストによる経済成長率平均予測(ESPフォーキャスト3月調査)に基づいてGDPギャップ率を延伸すると、▲1.8%のデフレギャップが生じる。
 このGDPギャップを解消するのに必要な規模を前提とするだけでも、10.0兆円規模の追加の経済対策が必要になる。
 ただし、2月以降、インバウンド需要の急減やイベントの自粛など、新型コロナウイルスの影響が本格化しており、3月以降の予測ではGDPギャップがさらに拡大している可能性が高い。
 東京五輪の延期で7-9月期も見込まれていた五輪関係のイベントや海外からの観光客の消費がなくなり需要が先送りされることになる。
 過去のGDP統計に基づけば、自粛や風評被害が2四半期にわたって続いた2011年3月の東日本大震災と、3年近くにわたって消費低迷が続いた2014年4月消費増税のときは、GDPの実績がトレンドからそれぞれ▲3.8兆円、▲3.7兆円程度、下方に乖離した。
 また、今回(19年10月)の消費増税の影響は、18年11月から景気後退期にあったこともあり、2014年4月の増税時はトレンドから▲0.9%の乖離にとどまったのが、▲2.3%もトレンドから下方に乖離している。

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 こうした状況から判断すれば、すでに新型コロナウイルス緊急対応策として打ち出された第1弾(153億円)、第2弾(4308億円)の財政措置に加えて、需給ギャップの解消には、需要創出額10兆円以上の財政措置が必要となる。
 つまり今回の経済対策は市場の不安を軽減するという意味でも、すでに打ち出されている緊急対応策を除いて、最低でもGDP比で2%近い規模が必要になるだろう。
 ただ、今回のショックをリーマン級と考えれば、リーマンショック前後の経済対策は4回実施され、真水で32.2兆円の財政支出で危機を克服した。
 このため、仮にこれと同等の対策を打つとすれば、すでに昨年打ち出されている経済対策の真水13.2兆円を除いても20兆円規模の財政支出が必要になる。
 なお、トランプ政権と議会が合意した対策の総額は2.2兆ドルで、主なメニューとして、現金給付や給与税減免、新型コロナで売上高が急減する航空会社や宿泊業などへの資金支援が盛り込まれそうだ。
 従って、経済規模が米国の約4分の1である日本が同等の経済対策を実施するとしたら、さらに経済対策の規模は膨らむ。
● 政策メニューは リーマンショック時の対策が参考になる
 経済対策のメニューは、景気後退+消費増税+新型コロナウイルスに合わせ技で対応せざるを得ないことを考えると、リーマン級が必要になる可能性があるため、当時の麻生政権が2009年に打ち出した「経済危機対策」が参考になるだろう。
 具体的には、リーマンショック前後の4回に分けて打ち出された経済対策メニューでは、第1弾が「安心実現のための緊急総合対策」、第2弾が「生活対策」、第3弾が「生活防衛のための緊急対策」、第4弾が「経済危機対策」となっている。
 特に、個人消費向けには多くの対策が掲げられ、定額給付金や土日祝日の高速料金引き下げ、エコカー減税・補助、エコポイントなどの対策が実施された。
 そして、設備投資や住宅建設促進に向けた対策では、太陽光発電の導入加速のための住宅金融支援機構による低利融資や、「スクール・ニューディール」構想等による太陽光導入支援補助金などが実施された。
 一方、公共投資では補正予算や当初予算の前倒し、雇用支援では雇用調整助成金などの拡充等が行われ、ほかに医療再生として介護機能強化や子育て支援強化が実施された。
 なお、当時の米国は、2008年時に緊急対策として銀行への公的資金注入や自動車メーカーへの資金支援などを目的に、ブッシュ政権が7000億ドルの緊急予算を用意し、そして、翌2009年にオバマ政権がインフラ投資や失業保険の拡充などを目的に7800億ドル規模の景気対策を実施した。
● 生活保障と需要喚起の2段階で 消費税は全品目軽減税率適用が現実的
 こうしたことを考えると、今回も「三重苦」に伴う景気の下振れに対応するため、一刻も早く政策のパッケージが打ち出されるべきだ。
 具体的には、昨年11月に打ち出された経済対策フレームに加え、当面の生活保障と個人消費や設備投資を喚起するような需要喚起策が2段階で盛り込まれることが期待される。
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 具体的に挙げると、以下のような対策が考えられる。
 まず生活保障としては、他国でも実施されている現金給付が効果的だろう。
 ハーバード大学のマンキュー教授も「手始めにすべての米国人に1000ドルの小切手を可能な限り早急に送るべき」としている。 
 所得制限をかける議論などもあるが、今回のショックで最も経済的被害の少ない年金生活者などに給付が集中してしまうため、迅速性を最優先し、所得制限をかけない一律給付の代わりに一時所得扱いにして年末調整で対応すべきだろう。
 ただし、現金給付はあくまで一時的な生活保障である。
 従って、ウイルス終息後には、個人消費を支える需要喚起策として、すでに予定されているマイナポイント事業に加えて、期間限定の全品目軽減税率導入が有効だろう。
 そもそも2019年10月の消費増税の際には、「リーマン級のことがない限り消費増税を行う」と、政府は言っていた。
 現状はリーマンショック以来の不況が来る可能性があり、従って、例えば今年7月から年度末までの時限措置として、全品目に8%軽減税率を導入することで、消費者の負担軽減と家計の購買意欲を高めることも検討に値する。
 その際、導入前の買い控えは、現金給付と6月に期限を迎えるキャッシュレスポイント還元で補い、来年4月の消費税率を戻す際の駆け込み反動策としては、キャッシュレスポイント還元の拡充復活などで対応できるだろう。
 なお、自民党内の一部で出ている「消費税率0%」案は、短期間の時限措置であれば、かなりの消費押し上げ効果が期待できるかもしれない。しかし、仮に新型コロナウイルスの終息宣言が出るまで、というように期限を区切ったとしても、それが1年続くと、消費税収に代わる27兆円以上の財源が必要になる。
 従って、仮に9カ月続いても財源が4.3兆円程度で済む全品目への軽減税率適用で、昨年10月の消費税率10%引き上げ前の、8%の税率に時限措置で戻す案の方が現実的といえよう。
 また、リーマンショック時の土日祝高速料金引き下げは渋滞を引き起こすことになって失敗した。
 従って、当時の経験から考えると、今回は新型コロナ問題が収束した後に、全国的な行楽や旅行需要を早期に回復させるべく、平日の高速料金引き下げや旅行・宿泊費の給付なども検討に値する。
 特に平日の高速料金引き下げなら需要の平準化も期待できる。
 設備・住宅投資促進策では、リーマンショックの際には太陽光発電の導入を加速する施策が実施された。
 今回は、感染拡大を抑えるため企業のテレワークや、全国の学校の臨時休校などが行われたが、リモート設備の導入が中国などに比べて遅れていることが露呈した。
 従って、追加経済対策では企業のリモート設備導入を加速する施策が必要だ。加えて、「リモートニューディール」構想として、学校や家庭にもリモート学習が可能な設備を導入するための支援措置が期待される。
 公共事業に関しては今年度当初予算の前倒し実施や補正予算による増額をし、雇用については雇用維持のために雇用調整・中小企業緊急雇用安定助成金を活用し、失業者に対しては緊急人材育成や就業支援基金で再就職を支援するほか、ふるさと雇用再生特別交付金や緊急雇用創出事業で新たな雇用を作ることだ。
 企業金融については緊急対策の公的金融機関による緊急貸付や保証枠拡充などの支援が求められる。
 医療や感染症対策では、すでに緊急経済対策でも打ち出されている国内への感染を防ぐための水際対策や国際連携の強化、国内の医療体制の整備などで一層の予算措置が拡充されることが必要だ。

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● 金融政策では限界 積極財政政策は世界の流れ
 このように大規模な財政出動を唱えると、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字の拡大を懸念する声もある。
 だが本来なら、バブル崩壊以降の長期停滞が続いてきた中で、日本はもっと早い段階で積極的な財政出動を行い、経済を正常化させるべきだった。
 金融政策に頼りすぎたことで、利子率の低下から投機的動機による貨幣需要が増え一部の不動産投資は起きても、実体経済の回復につながる前向きな投資にはなかなか結び付かず、通常の金融政策が効力を失う、いわば「流動性の罠」に陥っている。
 米国では著名な主流派経済学者たちが最近では、財政政策の重要性を訴えている。元米財務長官のサマーズ氏は長期停滞論を背景に、自然利子率が低下して金融政策が有効性を失っている状況では、財政政策がより重要としている。
 元MIT教授でIMFチーフエコノミストだったブランシャール氏も、低金利環境下では財政政策を積極的に活用すべきと訴えていることは傾聴に値する。
 (第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱利廣)





【千葉・東庄の障害者施設 58人の集団感染 利用者26人、職員32人】3/28(土) 20:59配信
千葉県は28日、同県東庄町の障害者福祉施設「北総育成園」で新型コロナウイルスによる58人の集団感染が発生したと発表した。
 40代の女性職員1人の感染が分かり、この女性を除く職員と症状のある入所者計92人の検査をしたところ、さらに57人の陽性が判明した。内訳は利用者26人と職員31人。県は入院措置はとらず、医師を派遣して治療に当たる方針だ。
 また、県内の医療機関に入院していた患者1人が死亡したほか、同施設以外では男女4人の感染が新たに判明した。
 ◇調理担当職員から拡大か 経路は不明
新型コロナウイルスの集団感染が判明した千葉県東庄町の「北総育成園」は、船橋市が設置した知的障害者向けの入所施設。利用者は79人に上り、67人の職員が勤務していた。感染していた58人に重症者はおらず、県は入所者を施設にとどめ、医師を派遣して治療を進める。29日以降、症状の出ていない利用者ら約50人についても検査する。
 集団感染は、40代の女性職員の感染が確認された後、検査対象を広げたことで明らかになった。この職員は調理を担当し、入所者との接触は多くなかったとみられ、感染経路は明らかになっていない。
 施設には重度の障害を持っている人が多く、職員との接触機会は頻繁にある。このため県の担当者は「患者が発生すると、利用者と職員の関係で次々に感染が拡大した可能性が高い」と推測。行動履歴や接触状況を調査し、原因を究明する。

【コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由】
3/24(火) 6:01配信
 そもそもイタリア北部では1990年代以降、中国人の移民が急増していた。運悪く年末から、1月下旬に始まる中国の旧正月である春節休みの時期に、中国系の移民が中国とイタリアとを行き来し、感染の引き金を引いたという説が有力視されている。
 筆者はその説を正しいと考える。ただ、それは「感染が広まった理由」の大きな要因なのかもしれないが、重要な指標である「死亡者数」や「死亡率」の説明にはならない。
 イタリアについては、他にも、日本に次いで「世界2位の高齢化国」であるという事実もある。
 それでは「世界一の高齢化国である日本ではどうなんだ」という話になり、これも死亡者数が多い理由を説明できない。
 そこで、筆者は医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで医療経営を教えている立場から、日本の今後を予想したい。各国比較のデータは、すべてOECD(経済協力開発機構)の2019年版から引用している。
 最近、メディアでよく聞くのは「医療崩壊」という言葉である。医療崩壊という言葉に厳密な定義はないが、ここでは、「患者が医学的に必要な措置が生じた際に入院できない、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」を指すと定義しよう。
 つまり、患者数に対して、医師の数が不足していたり、病院(病床数)が不足していたりすることである。
 ちなみに、ここでは単なる感染者数は、各国ごとの検査に対しての「考え方」が異なるために、比較の材料としては使用しない。あくまでも、死亡者数や人口当たりの死亡数の多さについて、比較・検証していきたい。
● イタリアでは発症から 死亡に至るまでが早すぎる
 まず、イタリア国立衛生研究所が公表した文書によると、感染者の症状発現から入院するまで4日間かかり、さらに4日後に死亡する、という発症から入院、死亡までの異様な早さが目に付く。
 死亡者の平均年齢の中央値は80.5歳で、感染者の場合は63歳だという。いくら高齢者とはいえ、わずか8日で死亡というのは早すぎるという印象がある。
 これは患者が必要十分な医療を受けられていない状態、いわゆる「医療崩壊」が間違いなく、生じていると考えられる。
 実際、2020年3月22日のデータにおいて、イタリアでは感染者数4万7021人、死亡者数4852人、人口当たり死亡率0.008%(以降人口は外務省基礎データで計算)と死亡者数が多い。
 他のEUの国でもドイツでは感染者数1万8323人、死亡者数が45人と少なく、人口当たり死亡率0.00054%で、ドイツの感染者数はそこそこ多いが「医療崩壊していない国」とされる。また、韓国は3月12日の感染者数7476人で、ピークアウトしたといわれている。
 しかし、1カ月前は全く状況が異なっていた。

 韓国とイタリアでは同じように2月20日前後に患者が急増している。3月9日にはWHOの数字によれば、両国とも感染者数が7000人を超えている。詳しく述べれば、3月9日はイタリアの感染者数は7375人、死亡者数は366人、韓国は7382人で、死亡者数は51人である。
 つまり、両国においてはここからの経過がまったく異なっており、3月22日現在、イタリアは感染者数が5万3578名、死亡者数は4825人、韓国の感染者数は8697人で、死亡者数は104人にとどまっている。
 感染者数においては国ごとの対応が異なったりする場合や、手洗いなど生活習慣の差などがあろうが、死亡者数に鑑みて一言で言えば、韓国は医療崩壊を免れてピークアウトしたといえよう。
● 感染者数激増の韓国が イタリアのようにならなかった理由
 ここで韓国とイタリア、ドイツの医療提供体制において3カ国を比較してみよう。筆者はイタリアについては、現地調査に行ったことがない国なので、もしかしたら誤解があるかもしれないが、すべてデータに基づいて考えてみたい。
 まず特徴は、3カ国とも国民皆保険の国であるということである。イタリアは100%国民皆保険の国であり、ドイツは収入の多い一定層は国の保険に入っていないため国の保険制度への加入は89.4%であるが、その代わりに民間保険に加入することが義務付けられているので実質は100パーセントといっていい。韓国、日本も100%国民皆保険の国である。その点において、同じく感染者数、死亡数が急増しているアメリカとは全く異なる背景を持つ。
 そうなると、比較のポイントとして、病床数(特に重症な患者を扱う急性期病床数)、医師数、そして医療レベル、付随的に、医療費といった視点で評価したい。
 ◎イタリア、ドイツ、韓国、日本との医療データの比較
 表を見ていただきたい。
 最初に韓国である。韓国については3月13日前後の各メディアの報道を見ると、「PCR検査を拡大したために感染者数が一気に増えて医療崩壊した」という指摘が目立ったが、それは一時的な現象にとどまり、最終的には医療崩壊を起こさずにピークアウトした。その理由は何か。

 おそらく、医師の過重労働という点では、ヨーロッパの病院よりもひどかったかもしれないが、新型コロナ感染者のすべてがICU(集中治療室)に入院するなどの重症者ばかりではないということから考えれば、とりあえず入院させて隔離したりすることができたことが、ピークアウトの大きな要因ではなかろうか。
 結核の感染病床でも医師の高度な治療が常に必要なわけではない。隔離して感染を防ぎ、重症化しそうな時にすぐに介入することができることが重要であろう。
● ドイツはなぜ 死亡者が増えていないのか
 さてここで、おなじEUの国として似通った医療体制を持つイタリアとドイツを比べてみよう。ほぼ同じようなトレンドで片方が医療崩壊、片方がピークアウトという対照的な動きをしたイタリアと韓国と違い、イタリアとドイツは感染者数が増える時期が異なっており、ドイツでさえ現状ではピークアウトしていない。
 イタリアとドイツの「決定的な差」が何になるかといえば、やはり病床数と医療のレベルということになろう。ドイツに比して、イタリアは病床数が半分以下である。
 そして付随的な対GDP比当たりの医療費も異なる。イタリアは8.8%に対し、ドイツは11.2%である。この費用の差から考えれば、医師などの待遇や病院の設備という点で、ドイツはイタリアよりすぐれていると考えられる。
 病床の利用率や平均在院日数にはあまり差はないので、病床の余力としても大きな差がないと思われ、正確にいえば、このような急性期の治療を行うための「急性期病床数の差」ということになるが、ここにおいてもドイツとイタリアの病床数差は大きい。
 つまり、病床率の差が、医療崩壊の定義となる「患者が医学的に必要な措置が生じた際に入院できない、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」に直結したと思われる。
 次いで医療レベルである。先述したように、筆者はイタリアに直接病院や医療関係の調査に行ったことがないので医療のレベルを正確に判断する立場にはないが、一つの例として「脳卒中の死亡率」を取り上げてみたい(前掲表参照)。
 この差を見ると、急性期の疾患において、やはりドイツの方が医療レベルは高いとみた方がいいであろう。
 もう一つの重要な要素となる「医師数」においてはイタリアとドイツはあまり差がない。これはヨーロッパには比較的、医師数が充実している国が多いということによる。
 もちろん、ドイツは感染者数が少ないから、「現状では医療崩壊するわけがなく、今後はどうなるかわからない」という批判はあり得る。

 これまでの状況に鑑みれば、イタリアや韓国の感染者数が7000人を超えた3月9日に、ドイツは1112人で死者数は0である。ドイツで感染者数が7000人を超えたのは3月18日であり、その後3月22日には上述したように感染者数1万8323人だが、死亡者数が45人にとどまっている。
 ということから考えると、感染者数がイタリア同様に多いドイツであっても、現在医療崩壊を起こさずに死亡者数が少ないのは、病床数が行き届き、医師数が充足しているからだと考えられる。
 もちろん現場の医師が過重労働になったり、イタリアでは医師会長が新型コロナウイルに感染して死亡し「殉職」ともいえるような亡くなられ方をしたという話も聞いている。医師の「充足」とはあくまで数の問題のことだけであり、冷たく聞こえる点はご容赦いただきたい。
 さらに、3月18日以降感染者数が激増していることを考えれば、病床数が少ないことを考えれば、確かにドイツでも今後が不安ではある。
● 日本での死亡者は イタリア並みに増えるのか
 さて、ここで日本の将来を考えよう。
 実は筆者は「日本では医療崩壊は起きない」と考えている。医療崩壊を起こさないという理由は医師数や病床数、特に病床数に余裕があるということである。
 日本はドイツよりも、病床数は圧倒的に多く、韓国と同程度である。少ないのは医師の数であるが、これも韓国とほぼ同じである。また病床の空床率は韓国より高いので、余力もある。対GDP比の医療費のかけ方も韓国は8.1%なのに対し、日本は10.9%である。
 また、新型コロナウイルスの診断に重要な役割を果たすCTの台数は人口当たり世界一である。
 もちろん、慢性期の病床であれば“急性期へ転用”ということも考えねばならないが、諸外国で「ホテルを病床で使おう」という話まで出ていることに比べれば、日本の優位はゆるぎない。
 ただし、感染者数が爆発的に増え、韓国のピークをはるかに超え、現在のドイツのように2万人近くになった時に医療崩壊が起きないという保証はない。
 東京都知事が「首都のロックダウンもあり得る」と発言したように、決して「油断はできない」という事態であることは、強調しておきたい。
 その意味では、「またか」といわれるかもしれないが、手洗いの励行に加え、「密閉・密集・密室」における他人との濃厚接触を避けるという努力は今後も続ける必要がある。
 医療者と患者で一致団結し、この難局を何とか乗り切りたいものである。
真野俊樹

【大災害時に欠かせぬ心のケア  住民に加え、医療・行政関係者にも】時事通信 3/22(日) 16:02配信
大災害や大事故などが発生した場合、身体的な治療とともにストレスなどで生じる精神的なダメージに対するケアが欠かせない。「熊本こころのケアセンター」の矢田部裕介センター長は、市民(住民)だけでなく、医療や行政関係者らの負担も大きいとし、「災害時のように、新型コロナウイルス感染症も同様なのではないか」と指摘する。
災害と共に発展してきた心のケア
 災害時に心のケアが最初に行われたのは1991年の雲仙・普賢岳噴火災害だった。その後、阪神淡路大震災では精神科救護所活動やこころのケアセンター設置などを通して「災害時には心のケアが必要」という社会的なコンセンサスが得られた。新潟中越地震では多職種アウトリーチ型の「こころのケアチーム」が避難所巡回を行った。
 東日本大震災では、3000人以上がこころのケアチーム活動に携わった。矢田部氏によると、この中で幾つかの課題が浮かび上がったという。その一つが「超急性期」の支援だ。
 東日本大震災では、こころのケアチームが被災地に派遣されたのは早くて1週間後だったが、その間、被災して孤立した精神科病院で入院患者が死亡した例もあった。
 また、こころのケアチームは災害前から準備され、トレーニングを受けてきたチームではなかった。このため指揮命令系統がしっかりしておらず、有効な支援活動ができなかった例もあったとされる。
DPATの整備
東日本大震災の課題を踏まえて、2013年に災害派遣精神医療チーム(DPAT)が整備された。災害発生から48時間以内に先遣隊が派遣され、被災した精神科医療機関の支援に当たり、患者の転院や搬送などを助ける。必要に応じて後続チームが派遣され、精神疾患を有する被災者やストレスを抱えた住民、行政職員らに対応する。
 DPATは4人前後の多職種で構成され、1チームの活動期間は1週間前後だ。14年の広島土砂災害で最初にDPATが投入され、御岳山噴火災害、関東・東北豪雨災害、熊本地震と派遣されてきた。最近では、新型コロナウイルス対応にも投入されている。
※出典:DPAT事務局ホームページ
DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team: DPATは以下の職種を含めた数名で構成すること。
精神科医師※
看護師
業務調整員
※先遣隊を構成する医師は精神保健指定医でなければならない。先遣隊以外の班を構成する医師は精神保健指定医であることが望ましい。
被災地のニーズに合わせて、児童精神科医、薬剤師、保健師、精神保健福祉士や臨床心理技術者等を含めて適宜構成すること。
1 班あたりの活動期間は1 週間(移動日2日・活動日5日)を標準とする。必要に応じて、同じ地域には同一の都道府県等が数週間から数ヶ月継続して派遣
1人の保健師の苦闘
 DPATのみならず、今日ではさまざまな職種や団体が災害支援チームを派遣できるようになった。同時に、新たな問題も指摘されている。熊本地震の際、被災の大きかったある自治体に医療支援チームが殺到した。調整役の保健師には大変な負荷がかかったことだろう。
 「猛烈に忙しく、ただでさえ混乱している時にチームが次々に到着する」「受け入れを断ると、自治体を否定されるようなことを言われた」「完璧な対応を求められても無理なのだが、いらいらしていた支援チームのメンバーにあたられたりもした」「いろいろと問題点を指摘されても具体的な解決策は提示してくれなかったこともある」―この声からはつらい本音が伝わってくる。::PAGE_BREAK::
残る心の傷
 大災害や大事故などは人々に「心の傷」を残し、トラウマになることもある。矢田部氏によると、熊本地震の後では次のような声が聴かれたという。
 「玄関に立つのが怖い」
 「被災した自宅に戻ると頭痛や吐き気が続く」
 「トイレのドアが閉められない」
 「電灯とテレビをつけたままでないと、眠ることができない」
オーバーワーク
 それは住民だけではなく、自身も被災しながら対応に追われオーバーワークになる行政職員らも同じだ。
 30代の行政職員は月曜から金曜は災害対応の業務に追われ、土曜、日曜に通常業務をこなす日々が続いた。上司からは住民のために頑張るよう叱咤(しった)激励される一方で、住民の怒りは行政に向けられがちだ。この職員は不眠や息苦しさを感じるようになってしまった。
 40代の職員は、災害対応の業務がうまくいかないことがあった。熊本地震の発生は16年4月。その後しばらくたっても不眠や食欲不振、集中力の低下などが続き、秋ごろに退職を考えるようになった。矢田部氏は「典型的なうつ病だった。一時休職し、精神科の治療を受けることにより症状が落ち着き、復職した」と言う。
 こうした点を踏まえ、矢田部氏は「まずは、精神科病院への支援、次に被災者の心のケア、そして被災者を支援する人たちのメンタルケア」と指摘する。 「時間がたっても、地元に足を踏み入れることができない」
多いアルコール依存
 熊本地震の心のケアを中長期的に行う「こころのケアセンター」は、ストレスやトラウマを抱える被災者への訪問支援に当たっている。同センターで訪問対応した例では、うつ病が最も多く、アルコール依存症が続いた。新潟中越地震や東日本大震災の後も、アルコール依存症の相談が多かったという。
 矢田部氏は「震災によってこの病気を発症した例は少なく、震災前から抱えていたのだろう。それが被災で顕在化した」と分析する。
回復力高めるコミュニティー
 同様に被災で精神疾患が顕在化する例は多いという。自宅で精神疾患を抱えながら1人暮らしをしていても、地域のコミュニティーからの支援がある。時には当事者の風変わりな行動や言動に不満があっても、顔なじみという安心感や慣れから地域に適応できている。そういう人たちが仮設住宅に入ると状況が変わる。周囲で見知らぬ人たちが暮らす仮設住宅では、病状の悪化や対人トラブルに発展することもあるという。
 心が不健康な状態を放置すればうつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などにつながる。矢田部氏は「災害時には多様なストレスにさらされ、心が不健康になりがちだが、人には『自然回復力』が備わっている。それを高める取り組みが重要だ」とし、家庭や職場での役割とともに、「コミュニティーには回復力を高める力がある」と強調した。(鈴木豊)



【結局のところ、新型コロナウイルス感染症は空気感染するのか?】
 聖路加国際病院 QIセンター感染管理室マネジャー 3/18(水) 20:38
坂本史衣;
専門分野は医療関連感染対策。1991年 聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業、1997年 コロンビア大公衆衛生大学院修了。2003年 感染管理および疫学認定機構Certification Board of Infection Control and Epidemiologyによる認定資格(CIC)を取得し、以後5年毎に更新。日本環境感染学会理事、厚生労働省厚生科学審議会専門委員などを歴任。著書に「感染対策40の鉄則(医学書院)」、「基礎から学ぶ医療関連感染対策(南江堂)」など。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。
新型コロナウイルスがエアロゾルの状態で3時間以上生存できるという研究結果が2020年3月17日に医学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)に掲載されました。これを受けて「やっぱり新型コロナウイルスは空気感染するのではないか」という疑問の声がSNS上で散見されます。
エアロゾルとは何か?
エアロゾルは空気感染のイメージを抱かせやすい言葉ではありますが、「エアロゾルが生じると空気感染する」という考え方は正確ではありません。エアロゾルは、空気中に存在する細かい粒子のことです。ただし、その大きさについて明確な定義はありません。つまり、粒子径が20μmでも5μmでも、エアロゾルと呼ばれます(1μmは1000分の1mm)。
例えば、くしゃみや咳をしたときに口から出てきたばかりのエアロゾルは水分量が多く、重たいため、放物線を描きながら重力によって1~2m先の地面に落下します。粒子径も大きいので不織布のマスクを通過しませんし、マスクの横から曲がって入ってくるということもありません。飛沫感染というのは、このような飛沫に含まれる病原体が眼、鼻、口の粘膜に付着することで起こります。新型コロナウイルスは飛沫感染すると考えられています。
一方で粒子径が10~5μm未満のエアロゾルは、水分が蒸発して軽いので、より長い時間、長い距離を漂うことができます。特に、5μm未満のエアロゾルになると、肺のなかを通る気管支の末端にある肺胞まで到達することができます。空気感染がおこるのは、このくらいの小ささのエアロゾルに含まれた病原体を吸い込んだ場合です。結核菌や麻疹ウイルスは、空気中を漂うエアロゾルに付着して、吸い込まれることで感染します。
この実験で何が分かったのか?
NEJMの記事によれば、研究者たちは人為的にエアロゾルを発生させる装置を使い、新型コロナウイルスを含む粒子径5μm未満のエアロゾルを密閉された金属製の円筒の中に閉じ込め、円筒のなかのウイルス量(力価)を3時間のあいだに5回測定しています。その結果、細胞に感染することが可能な、生きた(活性のある)ウイルスは約1時間後には半分に減りましたが、3時間後にも10%強残っていたと報告しています。
実験で使われた円筒の中は「ウイルス量の多い密閉空間」だったわけですが、これは新型コロナウイルス感染症が起こりやすいと指摘されている、
換気の悪い密閉空間・人が密集していた
・近距離での会話や発声が行われた
という3条件が「同時に重なった」空間の再現
だと言うことができます。
(図略)新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の見解」2020年3月9日より:三つの条件が揃う場所がクラスターの発生のリスクが高い
上の3条件がそろう空間では、空気中に新型コロナウイルスが比較的長時間残りやすく、感染する恐れがあることがこの実験で裏付けられたということです。
医療機関では粒子径が細かいエアロゾルが一時的にたくさん発生する処置を行うことがあり、その際には医療従事者はN95と呼ばれるフィルター性能の高いマスクを着用するなど、空気感染を防ぐ対策を講じます。日常生活においては上の3条件が重なる場所に身を置くことが空気感染するリスクとなり得ますが、それを避けることにより空気感染のリスクを回避することができると考えられます。
新型コロナウイルスは空気感染するのか?
この実験結果やこれまでに行われた疫学調査に基づけば、この問いに対する回答は、次の二つになるかと思います。
医療機関では細かいエアロゾルの産生量が増える処置を行う際に空気感染のリスクが一時的に生じることがあるが、N95マスクなどの適切な防護具を使用することでリスク回避が可能である。
日常生活では上記の3条件が重なる場所においては空気感染するリスクが生じうるので避けたほうがよい。それ以外の場所において新型コロナウイルスが空気感染することがこの実験により証明されたということではない。

【「新型コロナ」は「似た症状の他疾患」と区分けを:感染症専門家の提言】3/19(木) 9:00 石田雅彦
松田 和洋(まつだ かずひろ)
山口大学医学部卒業、医学博士。東京医科歯科大学医学部微生物学教室助手、国立がんセンター研究所主任研究官などを経て、2005年にエムバイオテック株式会社を設立。代表取締役。マイコプラズマ感染症研究センター長。専門は、マイコプラズマ感染症、微生物学、臨床免疫学、生化学、臨床血液学、内科学。
他の風邪症状との区分け
──まず最初に、国内における現在の新型コロナ感染症をどう捉えていますか。
松田「新型コロナ感染症にばかり目を奪われ、風邪症状をともなう他の病気との区分けがしっかりなされていないのが最も大きな問題と考えています。風邪の症状という大きな流れを、新型コロナウイルスに感染しているか感染の可能性があるグループと、それ以外の病気のグループに分ける必要性がありますが、その方法をPCR検査にのみ頼っているため、しっかり区分けることができなくなっています」
──新型コロナ感染症の検査法についてはどうでしょう。
松田「横浜のダイヤモンドプリンセス号のケースでも問題になったように、病原体の遺伝子を増幅して検出するPCR検査法は、感度は高いものの、誤った陰性判定、すなわち『隠れ陽性』を出しているのではないかという懸念が生じています。例えるなら、目隠しをしながら、恐る恐る棒で藪の中をつついている状態になっているのです」
──しっかり区分けをすれば、どんな問題点が解決するのでしょうか。
松田「発熱・長引く咳・倦怠感、そして間質性肺炎(すりガラス状陰影)が、今回の新型コロナ感染症の特徴ですが、これらは例えばインフルエンザなどのウイルス感染症でもマイコプラズマ感染症の症状でも全く共通しています。風邪症状の患者さんが100人いた場合、インフルエンザにはインフルエンザウイルス抗原検出迅速診断キットや高感度インフルエンザ迅速検査システム、採血して血清の抗体価の上昇による測定などが開発されているので、インフルエンザの患者さんが40人いたとすれば40人をまず分けることができます。さらに、マイコプラズマ感染症の患者さんが40人いたとして、マイコプラズマ感染症を区分けることができれば、その40人をさらに分けることで、風邪の症状を示している残りの20人に対して新型コロナウイルスのPCR検査を行ったり、隔離したり自宅療養で出歩かないように指示することができるようになるでしょう。しかし、これに重複感染状態が重なりますから、実はそう簡単ではないのです。ここで重要なことは、検査により診断のできた患者に適切な治療が行われることです」
PCR法の限界とは
──PCR法はなぜ感度が高いのに誤った判定を出してしまうのですか。
松田「病原体をPCR法によって判定する場合、検体の採取時期や場所などにより、感染者でも陽性とならないことがかなり多くあります。新型コロナ感染症の検体採取マニュアルによれば、できるだけ早い時期に下気道由来検体(喀痰もしくは気管吸引液)、あるいは上気道由来検体(咽頭拭い液)を採取することとされています。今回、症状があるのに陰性、症状がないのに陽性というケースがいくつか報道されていますが、潜伏期や症状が顕著でない時期は病原体が咽頭や喀痰にいないこともあるのです」
──検査で新型コロナウイルスを採取しにくいということでしょうか。
松田「PCR検査法は、喉の粘液や痰を検体として採取しますが、潜伏期や症状が顕著でない時期には病原体が咽頭や喀痰に出てこない可能性があります。また、長期になるとコロナウイルスが消化管や排せつ物に出てくる可能性がある一方、この時期にはすでに咽頭や喀痰では検出されない可能性が高いというように、検体の採取時期と場所との兼ね合いで、感染者であるにもかかわらず陽性とならないことがあります。また、医療従事者側も感染リスクにさらされながら行っています。一方、血清診断法であれば、より安全性が担保されている採血による検体の採取と測定ができます。検体も冷凍することにより安全で活性も安定した運搬が可能です」
──なぜ隠れ陽性が出てしまうのでしょう。
松田「新型コロナウイルスのRNAが5個以上存在しないと検出感度には到達しません。そうなれば、保有はしていても『陰性』という結果になります。しかし、その後、新型コロナウイルスが体内で増えていくこともあり、その場合は『隠れ陽性』として感染の拡大につながる危険性が高いのです。現に、今回の新型コロナ感染症の半分は『症状が出なくても、ウイルスを保有している可能性がある』無症状のキャリアーから感染したという結果が出ており、以上に述べた経過による『隠れ陽性』の存在が、感染経路を特定できない事例を生み出しているとも言えます。では、なぜPCR法にこだわっているのかといえば、新型コロナウイルスの場合、今のところ、血清疫学的手法による精度の高い抗体測定がまだ確立されていないからです」
─新型コロナ感染症は、風邪の症状を示す他の病気と区別がしにくいということでしょうか。
松田「そうです。症状からは新型コロナ感染症とインフルエンザ、私の専門であるマイコプラズマ感染症との区別は困難です。新型コロナ感染症は、発熱・長引く咳・倦怠感、そして間質性肺炎(すりガラス状陰影)が特徴ですが、マイコプラズマ感染症も同じ症状を引き起こします。また、注意すべきこととして、風邪症状から始まる感染症に喫煙や受動喫煙症状が加わるとノイズとなってしまい、臨床診断が極めて難しくなります」
血清による検査法の重要性
──では、新型コロナ感染症と他の病気をどう区分けすればいいのでしょう。
松田「感染症のサーベイランスや制御には、質の高い抗原による血清学的方法が必要になります。血清学的方法であれば、感染していないか感染したことがあるかという感染既往歴がわかります。『医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第2版』には『肺炎と診断された場合は肺炎球菌やレジオネラ属菌の尿中抗原検出、マイコプラズマ遺伝子検出、呼吸器検体の培養、血液培養など他の原因病原体の検索を併せて行ってください』となっていますが、問題はこれらの診断薬や方法の性能への理解と有効な使い方(プロトコール: protocol )です」

1.surveillance
2. protocol
──診断薬や方法の性能への理解と有効な使い方の問題とは何でしょうか。
松田「区分けるためには、精度の高い検査測定法を確立する必要があります。例えば、抗原による血清測定法では、全身のどこかに原因微生物が感染していれば抗体が上昇します。血液中の抗体の変化を調べることによって、全身の部位によらない感染状態が把握でき、回復傾向なのか増悪傾向かも判断できます。感染者を見逃すことが少ない検査法と言え、正確な診断のためには、PCR法などの抗原測定だけでなく、精度の高い抗体測定など、血清疫学的手法を併用する必要があると思います。血清による検査法では、抗体を測定するために使う抗原の性質、特異性や感度が極めて重要です。医師などの専門家でも、このことを理解して検査結果を的確に判断している人はそう多くないかもしれません。そのため、血清による検査法の重要性が理解されず、なかなか政治の判断に繋がっていないという深刻な状態になっているのです」

1.抗原による血清測定法:
2.PCR法などの抗原測定:
3.精度の高い抗体測定など、血清疫学的手法
──血清による検査法は、新型コロナ感染症にも有効なのでしょうか。
松田「残念ながら新型コロナ感染症については、まだ血清中の抗体測定検査はできていません。病原微生物の抗原物質の特定による血清中の抗体測定の確立が待たれている状況ですが、先日、横浜市立大学が患者の血清から新型コロナウイルス抗体を検出したと報道され、最近では新しい血清抗体測定法が中国から輸入されたという報道もありました。今後はこうした臨床の現場で扱える試薬キットが実現してくるでしょう。これらの技術が確立されれば、現場の医療従事者が厳重な感染防護が手薄な中で、患者の咽頭ぬぐい液の検体採取をするときの感染リスクも減らせると思います」
マイコプラズマ感染症の区分け
──マイコプラズマ感染症の検査法は確立されているのでしょうか。
松田「マイコプラズマ感染症の確定診断には、患者さんの咽頭拭い液、喀痰からマイコプラズマを分離することで検査します。適切な培地と経験があれば難しい検査法ではありませんが、早くても1 週間程度かかるので通常の診断としては有用ではありません。近年、迅速診断としてLAMP法(PCR法と同じ遺伝子検査)や抗原測定法が開発されています。しかし、マイコプラズマ感染症でも、新型コロナ感染症で行われているPCR法のように『隠れ陽性』が存在する危険性がありますし、現状の血清抗体測定法には感度に限界があります」
──マイコプラズマ感染症の検査法は確立されているのでしょうか。
松田「マイコプラズマ感染症の確定診断には、患者さんの咽頭拭い液、喀痰からマイコプラズマを分離することで検査します。適切な培地と経験があれば難しい検査法ではありませんが、早くても1 週間程度かかるので通常の診断としては有用ではありません。近年、迅速診断としてLAMP法(PCR法と同じ遺伝子検査)や抗原測定法が開発されています。しかし、マイコプラズマ感染症でも、新型コロナ感染症で行われているPCR法のように『隠れ陽性』が存在する危険性がありますし、現状の血清抗体測定法には感度に限界があります」
──では、マイコプラズマ感染症の区分けは難しいのではないですか。
松田「その通りです。マイコプラズマ感染症に関しては、現状の検査は残念ながら十分とは言えません。私は、研究検査が実施可能になっている合成糖脂質抗原に対する精密な抗体測定法が有用と考えています。幸い最近になって高感度でマイコプラズマの持つ特異的な糖脂質抗原の構造と完全におなじ合成抗原を用いた、新しい抗マイコプラズマ脂質抗原抗体の精密抗体測定法が開発されています。これを使えば症状のない状態からでも感染を知ることができ、定量的なことから特異抗体量の変化で感染状態を知ることができます。これを用いたクラスターなどの調査研究などが可能と考えています」
──マイコプラズマ感染症に関する認識に問題があるのでしょうか。
松田「新型コロナウイルスの検査が、他の感染の可能性との関連付けなしに行われているのが問題なのです。現状の診断法では、マイコプラズマやインフルエンザ感染を見逃し、臨床現場で抗菌剤や抗インフルエンザ薬による治療ができないという懸念もあります。これにより複合感染による、より重篤な症状を見落とす恐れもあります。したがって、新型コロナ感染症とマイコプラズマ感染症については、精度の高い抗体測定法診断法の確立が必須です」
長引く咳はマイコプラズマ肺炎を疑うのが常識
──では、マイコプラズマ感染症というのはどういう病気ですか。
松田「昔から『異型肺炎』として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴とされてきましたが重症肺炎になることもあります。また、胸膜の間に水が貯まる胸水貯留という症状が起きることも多く、他の合併症としては、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群など多彩なものが含まれます。また、マイコプラズマ感染症は、間質性肺炎だけでなく、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患の原因にもなります。さらに無菌性髄膜炎、脳炎から神経・精神神経疾患との区別、リウマチ性疾患などの慢性炎症性疾患や免疫難病などとの区別が困難なことが少なからずあります」
──では、マイコプラズマ感染症というのはどういう病気ですか。
松田「昔から『異型肺炎』として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴とされてきましたが重症肺炎になることもあります。また、胸膜の間に水が貯まる胸水貯留という症状が起きることも多く、他の合併症としては、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群など多彩なものが含まれます。また、マイコプラズマ感染症は、間質性肺炎だけでなく、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患の原因にもなります。さらに無菌性髄膜炎、脳炎から神経・精神神経疾患との区別、リウマチ性疾患などの慢性炎症性疾患や免疫難病などとの区別が困難なことが少なからずあります」
──新型コロナ感染症とマイコプラズマ感染症の治療に違いがありますか。
松田「新型コロナ感染症には現在、治療薬がなく対症療法になっています。一方、マイコプラズマ感染症の初期症状には、抗菌剤の投与により重症化しないような治療が一般的です。つまり、マイコプラズマ感染症が見逃される場合、抗菌剤による有効な治療が行われない懸念があり、風邪症状に関連する感染症や疾患を含めてこの要のところに診断と治療に対して、初期から一貫した総合的な危機管理体制が必要です。区分けが機能しないと現在のような状況に対応できなくなりますし、逆により効率的で信頼のおける仕組みを構築していくことで医療崩壊のリスクを軽減することに繋がります」
──マイコプラズマ感染症を血清学的手法で特異的に検査できる効果はどんなものですか。
松田「血液中の抗体の変化を調べることによって、部位によらない全身の感染状態が把握でき、経過を追うことで、回復傾向なのか増悪傾向かも判断できます。また、血清学的手法は、血液採取という健康診断でも一般的に行われている方法ですから、患者さんや被検査者には多少の侵襲性はあるものの、医療従事者の負担がかなり軽減されると思います。医療関係者の感染リスク軽減のためにも、血清中抗体で評価できる、新しい診断システムを調査研究用として使うべきです」
 ──では、新型コロナ感染症についてどう対応していけばいいのでしょうか。
松田「新型コロナウイルスの性質や広がりを見極めつつ、診断システムやサーベイランスシステムなどの要となるところに対し、その重要性をしっかりと認識して取り組んでいく必要があります。例えば、クラスターなどから100~200人単位のサンプリング調査を行い、信頼のできる行政検査データを収集して、クラスター全体の中での発症者率、陽性者率、重症化率、死亡率を出して、現状把握と対応を考えていく必要があると思います」


【新型コロナへの免疫反応「インフルと同じ」 豪研究所 時事通信 3/18(水) 9:56配信
【AFP=時事】オーストラリアのピーター・ドハーティー感染・免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity)は17日、新型コロナウイルスに対する人間の体の免疫反応が、インフルエンザ患者にみられる反応と非常に似ていると発表した。世界的に死者を出している新型ウイルスとの闘いにおいて突破口となる可能性がある。
 豪メルボルン大学(University of Melbourne)の同研究所は、症状が穏やかな新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者1人の血液サンプルを検査。新型ウイルスに関して初めて全身の免疫反応をマッピングし、その結果を医学誌ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)に発表した。
 同研究所のキャサリン・ケンジェルスカ(Katherine Kedzierska)氏はAFPの取材に「臨床的回復に先駆け、非常に強固な免疫反応がみられた。患者は見た目にはまだ不調だったが、3日後に回復した」と述べた。
 ケンジェルスカ氏によると今回の発見は実践上、ワクチン開発と検査の二つに応用できるという。
 ワクチン接種の目標は、体の自然な免疫反応を再現することだ。研究チームは被験者となった患者が回復に至る過程で、血液中に4か所の免疫細胞の集合体を発見した。そうした免疫反応は「インフルエンザにみられるものと非常に似ている」とケンジェルスカ氏は語る。このことはワクチン開発の一助となる可能性がある。
 インフルエンザでは毎年数十万人が死亡しているが、有効なワクチンが存在している。
 また検査では、今後の流行の中でどういった人が最もリスクが高いかを、保健衛生当局がより正確に予見する一助になるという。こうした免疫系「マーカー」は理論上、非常に高い精度で、軽度の症状で済む患者と死に至る危険のある患者を見分けることができる可能性がある。
 新型コロナウイルス感染症によるこれまでの死者の大半は高齢者や、心疾患や糖尿病といった基礎疾患のある人々だ。一方、子どもは無症状か、症状があっても軽いとみられている。なぜこうした傾向があるのかについてはさらに研究が必要だが、免疫系は加齢に伴い自然に衰えるものだとケンジェルスカ氏は指摘している。【翻訳編集】 AFPBB News
【インフル薬「アビガン」有効性確認 新型コロナ治療、後発薬量産へ 中国】 時事通信 3/17(火) 18:45配信
北京時事】中国科学技術省は17日の記者会見で、新型コロナウイルス感染患者の治療薬として、富士フイルムのグループ会社が開発した新型インフルエンザ薬「アビガン」の有効性を臨床試験で確認したことを明らかにした。
 アビガンの有効成分「ファビピラビル」に関するライセンス契約を富士フイルムと2016年に結んだ中国の製薬大手・浙江海正薬業が、後発医薬品を量産する方針だ。同社は先月、中国国家薬品監督管理局から認可を取得している。
 臨床試験は、湖北省武漢市と広東省深セン市の病院で計200人の患者を対象に行われ、投与した患者の方が短期間に陽性から陰性になり、肺炎症状なども改善したという。アビガンは日本でも先月から患者への投与が始まっている。 
【ファビピラビル(英: Favipiravir、中: 法匹拉韦、法匹拉韋)】Wikkipedia
ファビピラビルはプロドラッグであり、投与後に細胞内のin vivo(生体内)環境で、三リン酸化されて、ファビピラビル・リボフラノシル-5'-三リン酸 (favipiravir-RTP) となり、これがRNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA複製酵素)にプリンヌクレオシド(アデノシンおよびグアノシン)と競合して取り込まれ、取り込まれた部位以降のRNA鎖の伸長を阻害するchain terminator(伸長阻止薬)として作用する (Furuta, Shiraki et al. [3])。
in vitro(試験管内)環境では、ファビピラビルは十分な三リン酸化を受けることができないため、50%効果濃度(EC50値)などを基準とした効果評価においては、他の薬物より効果が劣ると判定される場合がある(エボラ出血熱ウイルス、2019新型コロナウイルス)。
抗インフルエンザウイルス薬としては細胞内におけるウイルスRNAの複製を妨げることで増殖を防ぐ仕組みで、タミフルなどの既存薬とは作用機序が異なる。そのためインフルエンザウイルスの種類を問わず抗ウイルス作用が期待できる[4](たとえばタミフルはB型インフルエンザウイルスに対しては効果が劣り、C型インフルエンザウイルスには効果がない)。
【兵庫・北播磨地域『救急搬送先が…』地域の病院で“コロナ感染相次ぎ”地域医療に影響】MBSニュース    3/18(水) 11:55配信
 兵庫県の北播磨地域では、病院の医師や患者らが新型コロナウイルスに感染した影響で、小野市の「北播磨総合医療センター」に続き、加東市の「加東市民病院」も外来診療や救急の受け入れを中止していて、地域医療に影響が出ています。
 兵庫県小野市の北播磨総合医療センターでは、医師や看護師が新型コロナに感染し、3月12日から外来診療や救急の受け入れを取り止めています。医療センターでの外来診療は1日約1000人です。また小野市の救急搬送の“7割近く”を受け入れていました。
 小野市では3月12日以降、隣の加東市の加東市民病院などに患者を搬送していましたが、3月17日になって加東市民病院でも感染者が確認されたことから、受け入れが中止され、さらに遠方の西脇市へ搬送するなどし、搬送時間が平均で41分になり、これまでより5分伸びています。
 「近隣医療機関の収容体制が維持できるかというところが不透明な状況ですので、市民の皆様には、救急車の適正利用をお願いしたい。」(小野市消防本部救急課 藪西充雄係長)
 北播磨総合医療センターは3月25日まで外来と救急の受け入れを取り止めていて、小野市は『不要不急の救急要請は控えて欲しい』と呼びかけています。
【「高齢者がコロナ感染=死は誤解」と医師、外出しないリスクも】「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載抜粋
不安3;
「まず知ってほしいのが、高齢者が新型コロナウイルスに感染すると、死に直結するというのは誤解だということ。高齢者でも、感染した人のうち人工呼吸器などをつけるほど重症化するのは現在わかっている範囲で6%で、死に至るのは3%前後。この数字は感染者の全貌が明らかになると下がります。ほとんど軽症で済んでいるんです。散歩や近所の買い物くらいなら、マスクは必要ありません。密室での濃厚接触を避けましょう。高齢者はわずか1~2週間でも、家の中に閉じこもって体を動かさないでいると、足腰が弱くなり転倒のリスクが高まります。外出を制限してストレスがたまれば、高血圧が悪化することもある。なので、適度に外出したほうがよいでしょう」(久住さん)
不安4;
糖尿病を患う父の処方薬がそろそろ底をつきます。ただ、病院に連れていくと新型コロナに感染しそうで怖いです
「厚労省は、慢性疾患などで処方薬が必要な場合、電話などを用いた診察で、薬局に処方箋を送付し、患者さんが病院に行かなくても薬を受け取れるようにする指針を出しています。まずは電話でかかりつけ医に相談してみてください。薬をもらうときは3カ月分などいつもよりまとまった量を処方してもらえないかも聞きましょう。この時期、病院に行く回数を減らすことは重要ですから。風邪や花粉症など必ずしも病院に行く必要のない場合は、積極的に受診せず、市販薬で間に合わせても、感染のリスクを下げられるでしょう」(峰さん)
終息の見通しが立たず、今の生活がいつまで続くかわからない。だからこそ、感染リスクを下げると同時にストレスをためずに続けられる生活も心がけたい。
「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載

【新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ】河合 薫健康社会学者(Ph.D.)2020年3月17日日経ビジネス
 おそらくこういった事情も関係しているのだろう。19年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は、集計開始以来、最多だった2017年の111件に並んだ。業種別では「訪問介護事業」が最も多く58件。前年の45件から急増していたのである。
 19年11月1日、現役の介護ヘルパーが国を相手どり訴えを起こすという前代未聞の出来事があった。原告の訪問介護ヘルパー3人は、労基法違反の状態=「0時間契約」で働かされ続け、正当な賃金が支払われていないのに、国が規制権限を行使しないのは違法として東京地裁に国家賠償訴訟を起こした。
 「0時間契約」とは、就労時間の保証がなく、したがって賃金保障もないまま、その時々に求められた時間だけ働く雇用形態のこと。雇用主に仕事を提供する義務はないため、勤務が「ゼロ時間=無給」になる可能性もある。
 訪問介護ヘルパーの場合(正規以外)、待機時間に対する賃金は基本的に支払われない。訪問先間の移動費や、事業所に連絡する電話代もすべて自分持ちだ。予定がキャンセルされれば事業所に支払われる介護報酬はなく、ヘルパーは無給となる。
●分刻みで働かされる訪問介護の現場
 その過酷さは、ヘルパーたちの1日のスケジュールを見れば一目瞭然である。大手新聞が紙面に掲載した原告の典型的な1日のスケジュールによると、ヘルパーの業務は朝8時30分に事務所に出勤し、「訪問スケジュールや申し送り」を確認することからスタートする。5人の利用者の家を訪問し、18時40分に事務所に戻り「申し送りや翌日のスケジュール」を確認し、帰宅は19時。1日の給与は7075円だった。
 内訳は、「70代要介護2の独居女性を身体介護=800円」「難病・認知症で80代要介護3の独居男性を身体介護・生活援助=2250円」「90代夫婦(要介護1)の家で生活援助=975円」「80代要介護1の独居女性を入浴介助=1600円」「90代要介護1の男性宅で入浴介助と生活援助=1450円」と、利用者のほとんどは一人暮らしか老老介護だ。
 身体介護では、蒸しタオルで洗顔し、着替えを手伝い、失禁のため体を拭き、下着を取り換え、シーツなどを洗濯する。生活援助では、食事の準備、掃除、洗濯、ゴミ捨てをする。入浴介助では、血圧や体温をチェックし、洗髪と洗身をし、合間に食器洗い、夕食の準備、洗濯物の取り込みをする。
 原告の女性たちは、1月20日に行われた第一回の口頭弁論で、「時間に追われ、利用者と話す十分な時間もない。やりがいも削られ、ケアの質も担保できず我慢も限界」と、訴えた理由を話したと報じられている。
 以前、訪問介護をしている方にインタビューしたとき、「利用者は私たちとしか社会との接点のない人が多い。私たちがいないと生活はできないし、会話もないんです。本当はもっと話を聞いてあげたいけど、利用時間が決まってるし、次が入ってるから、満足に向き合うこともできない。孤独死するんじゃないかって、心配になることもあります」と話してくれたことがある。
 40年前の1979年に発表された自民党の政策研修叢書『日本型福祉社会』を変えることなく、踏襲し続けたことが介護現場で働く人たちとその利用者=高齢者を断崖に追いつめている。
 日本型福祉社会の社会福祉の担い手は、企業と家族であり、「結果の平等」を追求するような政策は「堕落の構造」を生むという考えが存在している。
 つまり、北欧に代表される「政府型」や、米国に代表される「民間(市場)型」じゃない、「とにもかくにも、“家族”でよろしく!」という独自路線の福祉政策が日本型福祉社会なのだ。
 1986年に『厚生白書 昭和61年版』として発表された、社会保障制度の基本原則では、上記の「日本型福祉社会」の視点をさらに明確化し、「『健全な社会』とは、個人の自立・自助が基本で、それを家庭、地域社会が支え、さらに公的部門が支援する『三重構造』の社会である、という理念にもとづく」と明記。
2006年に政府がまとめた「今後の社会保障の在り方について」でも、40年前と全く同じことが書かれている(興味のある方はこちらをお読みいただきたい)。
【無症状の間にデイケアで拡大か 25人感染のグリーンアルス伊丹 新型コロナ】毎日新聞 3/17(火) 20:06配信
 デイケアの利用者や職員らが新型コロナウイルスに感染し、クラスター(感染者集団)が形成された介護老人保健施設「グリーンアルス伊丹」(兵庫県伊丹市西野3)。兵庫県のまとめによると、16日までに利用者の家族らを含む25人の陽性が確認され、うち2人が死亡した。重症化しやすいとされる高齢者向け施設だが、無症状の人もおり、リハビリや活動を通じて、気づかないうちに拡大したとみられる。
 県によると、グリーンアルス伊丹では7日に利用者だった80代女性の感染が判明。利用者の80代男性と、妻が利用者だった80代男性の計2人が死亡するなど計25人が新型コロナウイルスに感染していた。この他にも、同じ運営主体の系列施設でも40代の男性介護士の感染も確認されている。県の調査では2月下旬に発症していた人もいた。
 グリーンアルス伊丹の塩田真一郎事務長によると、1階でリハビリや食事、プログラムなどデイケアのサービスを提供。約150人が利用し、職員は26人の態勢だった。7日に初めて感染者が確認され、9日から休業している。
 デイケアの利用時には検温して健康状態をチェックし、手指の消毒もこまめにしていたという。37・5度以上の発熱がある場合などは、デイケアを休むよう家族にお願いしていた。対策はしていたが、最初に感染が確認された80代女性は、36度台の体温で施設を利用した2日後、重症化して入院した。塩田事務長は「症状がない段階で感染を見抜くのは難しい」と話す。
 感染が広がったことについて、県幹部は「施設が通所という形態で、人の出入りが多い。病院や老人ホームと比べて、職員や利用者間の接触が多いことも要因だろう」とみる。
 県は症状がある利用者や職員を優先的に検査。利用者156人と、職員や家族ら98人をPCR検査(遺伝子検査)の対象とし、16日までに約100人の検査を終えた。
 無症状の利用者らについては、自宅待機している施設の職員らが電話で利用者の健康状態を確認しており、今後は陰性が確認された職員が医療機関へ送迎して検査を進める予定だという。
 塩田事務長は「利用者の家族から早期の再開を希望する声も多い。新たな感染者を出さないよう、徹底した感染症対策をしたい」と話した。
【働く保護者の補償、申請開始 一斉休校に伴い厚労省】共同通信3/18(水) 10:36配信
 厚生労働省は18日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための一斉休校で仕事を休まざるを得なくなった保護者を対象とする休業補償の申請受け付けを開始した。
 申請期間は18日から6月30日。申請書の提出先は学校等休業助成金・支援金受付センター。
 政府は、臨時休校で従業員に特別な有給休暇を取得させた企業に対し日額8330円を上限に助成金を支給する制度を創設。個人で業務委託を受けて働いている人も、子どもの世話のために仕事を休んだ場合に国から日額4100円を補償する。
 問い合わせは、午前9時から午後9時まで、電話(0120)603999。
【独自 重症患者治療の医師 初証言】TBS3/17(火) 18:37配信
 国内で新型コロナウイルスによる死者が増えるなか、患者の命をいかに救うのか。重症患者を人工心肺装置を使って治療し、国内で初めて回復に成功させた医師がJNNの取材に証言しました。
 「もし(乗客の感染者)500人が一気に横浜の医療機関に搬送されていたら、横浜が医療崩壊を起こしていたと思います」(横浜市立大学 高度救命救急センター 竹内一郎医師)
 こう語るのは、横浜市立大学高度救命救急センターの竹内一郎医師。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から運ばれてきた乗客らを治療しました。クルーズ船の感染者は、「無症状の人は神奈川県外に搬送する」など、DMATが搬送先の“トリアージ”を行ったことで、かろうじて医療崩壊が防がれたと証言します。
 「軽症患者さんも(横浜の)病院に全てうめてしまって、普通の交通事故の患者さんの行き場がなくなってしまうというふうなことが起こりえたんじゃないかと。振り分けができていなければ、通常の救急医療体制が崩壊する可能性があったと」(横浜市立大学 高度救命救急センター 竹内一郎医師)
 竹内医師の病院は救命救急センターのため、特に重症の感染者が多く運ばれてきました。なかでも重篤だったのが、クルーズ船の乗客でアメリカ人の70代の女性です。船の中で発熱後、先月10日に病院に搬送されてきましたが、呼吸状態が悪化。人工呼吸器をつけても症状は改善しませんでした。
 「(アメリカ人女性は)非常に厳しい状況、生命の危機にひんしている状況であったと。このまま行くと肺の障害ももっともっと進行してしまうだろうと。人工呼吸器だけでは救命が難しいと判断した」(横浜市立大学 高度救命救急センター 竹内一郎医師)
 そこで、竹内医師が使ったのが「ECMO(エクモ)」と呼ばれる人工心肺装置。患者の血液を体外に出し、酸素を加えて再度体内に戻すことで、肺の代わりになる装置です。この装置で肺の機能を代行する間に患者の免疫の力による回復を待つことが期待できるといいます。
 「人工呼吸器で対応できない超重症な患者さんに関しては、人工の肺ECMOを使って、よくなるまでの期間を稼ごうと」(横浜市立大学 高度救命救急センター 竹内一郎医師)
 女性は6日間ECMOを装着したのち、呼吸状態が改善し、現在は退院基準を満たすまでに回復したといいます。
 「(新型コロナの)重症肺炎の患者さんにECMOを使って良くなった第1例目であると。社会復帰ができるということを考えると、重症患者さんに関してはECMOは非常に有用な治療。人工呼吸器で助けられない方の最後の切り札であることは間違いない」(横浜市立大学 高度救命救急センター 竹内一郎医師)
 竹内医師は今回の結果を学会誌に発表する予定ですが、ECMOを使う際には専門的な技術などが求められるといいます。
 「(体に入れるのが)太い管ということで、合併症という出血があったり、管が体に入ることで感染症や合併症があるので、適用に関しては非常に慎重に考えて使う必要がある」(横浜市立大学 高度救命救急センター 竹内一郎医師)
 日本集中治療医学会によりますと、国内では現在、およそ300人をECMOで治療できるということです。(17日16:38)
【高齢者医療の医師、“数に終始する”コロナ報道に警鐘「人間は情報のシャワーを浴びると、思考が傾いていく」】AmebaTV3/17(火) 18:03配信
高齢者医療にも携わる医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏が警鐘を鳴らした。
前の段階にある基礎的な体力や免疫力の低下など一次的なことの方が大事。新型コロナウイルスは二次的な問題だと率直に思っている」と医療現場の実態を踏まえて話した。



【昨年の自殺者2万169人 確定値、過去最少に 厚労省・警察庁】時事通信 3/17(火) 10:09配信
 厚生労働省と警察庁は17日、2019年の自殺者(確定値)が2万169人だったと発表した。
 今年1月公表の速報値(1万9959人)から210人増えたが、前年より671人(3.2%)減った。10年連続の減少で、1978年の統計開始以来最少となった。
 男性は前年比212人減の1万4078人。女性は459人減の6091人で最少となった。人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は16.0人で10年連続で低下し、78年以降で最少となった。女性の自殺死亡率は9.4人で初めて10人を切った。
 年代別の自殺者数は最多が50代(3435人)で、40代(3426人)が続いた。前年比では、10代が増えたが、他は全年代で減った。自殺死亡率も10代だけが増えた。
【自殺者、10代顕著に増え「依然深刻」 19年、全体では過去最少2万169人】毎日新聞
3/17(火) 10:07配信
 厚生労働省は17日、2019年の自殺者数(確定値)が10年連続で減り、過去最少の2万169人(前年比671人減)だったと発表した。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率も1978年の統計開始以来最少だった。20代以上が減少傾向にある一方、10代が顕著に増え、同省は「未成年の自殺が多いことも含め、依然として深刻な事態」と受け止める。
 1月発表の速報値では2万人を切っていたが、新たな判明分が追加された。03年に最多の3万4427人だった年間自殺者数は、12年以降2万人台が続いている。自殺者は約7割が男性。40代以上が7割超を占め、10代は3・3%(659人)と割合は低いものの、前年より10%(60人)増えている。
 遺書などから特定できた1万4922人の動機や原因は、最多が精神疾患などの「健康問題」の9861人。「経済・生活問題」3395人▽「家庭問題」3039人▽職場の人間関係など「勤務問題」1949人▽「男女問題」726人▽いじめなど「学校問題」355人――と続く。都道府県別では、山梨、岩手、秋田の順に自殺死亡率が高い。  政府は17年に策定した新たな自殺総合対策大綱で、自殺死亡率を26年までに15年比で3割減らす目標を掲げる。特に若年層が利用する交流サイト(SNS)やインターネットを活用した相談体制の拡充に力を入れ、2月末には一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」を、調査研究や自治体支援を担う指定法人に据えた。同省担当者は「福祉や教育の問題などを、地域ごとに細かく分析する必要がある」と話す。
【【やまゆり園 事件考】「最終経歴『死刑囚』、やばい」 死刑判決後の被告と接見】神奈川新聞3/17(火) 5:00配信
 植松聖被告は16日の死刑判決言い渡し後、勾留先の横浜拘置支所(横浜市港南区)で神奈川新聞社の接見取材に応じ、「死刑に値する罪ではない。時間と金を奪う重度障害者に基本的人権はない」と事件を正当化する一方、控訴せず判決を受け入れる意向を改めて示した。
出廷時と同じ黒いスーツ姿で面会室に現れた被告は時折笑顔を見せながら、穏やかな口調で質問に応じた。「少し疲れました」と言い、首を手でたたくしぐさを見せることもあった。
 死刑判決については「受け入れるつもりはないが、仕方ない。裁判官は法律通りに仕事をしただけ」と説明。弁護側は控訴する意向を示しているといい、自ら取り下げて刑を確定させる考えを強調した。
 被告はこれまで「死ぬのは嫌だ」「気が重い」などと語っていたが、この日は「すぐに死刑になるわけではない」と言葉少なに応じ、「長生きはしたいが、いずれ誰でも死ぬ。最終経歴が『死刑囚』ってやばいですよね」と力なく笑った。
 公判では遺族らが意見陳述し、厳刑を求めた。被告は「(重度障害者の家族は)病んでいる。批判すれば信念や一貫性があると勘違いしている」と非難。記者が「幸せだったという遺族も多い」と指摘すると、「それは不幸に慣れているだけだ」と一蹴した。
 この日、裁判長が極刑を言い渡して閉廷を告げた直後、被告が「すみません。一つだけ」と突然手を挙げ、発言の機会を求めたが認められなかった。
 何が言いたかったのかと尋ねると、被告は「世界平和に一歩近づくにはマリフアナが必要、と伝えたかった」と説明。その意図については「意思疎通できなくなったら死ぬしかないと気付けるようになる」と答えた。
【被告はいま(3) ニーチェに共感 憧れた超人】神奈川新聞  2020年01月04日 05:00
 立川で精神鑑定を終え、横浜拘置支所(横浜市)に戻った植松は今春、青ばんだ眉を両手で隠し、恥じらいながら面会の記者を迎えた。「ちょっと失敗しちゃって」。眉毛やひげを指ではさみ、手探りで1本ずつ抜いているという。拘置所に毛抜きを持ち込めないからだ。時折、流血する。電気ひげそりは購入できるが、「邪悪」な体毛は根絶しなければいけない対象らしい。「毛嫌い、とはよく言ったものです」と笑った。
 事件1年前、10万円で全身脱毛を試みた。「毛根から消滅させるんです。とどめを刺すんです」。二重(ふたえ)と鼻筋の美容整形にも、70万円をつぎ込んでいる。「美しさには、それだけの価値がある。それで超人になれるんです。パ-フェクトヒュ-マンです」
 不浄なるは、「男はひげ、女ならデブ」。さらに忌み嫌ったのは、「糞尿(ふんにょう)」だった。ある日、気色ばんで記者に反問してみせた。「垂れ流してまで、生きたいと思わないですよね」。やまゆり園に在職中、粗相する入所者に憎悪を募らせていった。
 高潔なニ-チェはこう、うたう。≪われわれは一切の生の屑(くず)や廃棄物に同情してはならない、──上昇する生にとって、たんなる妨害であり、害毒であり、裏切りであり、隠れた敵であるようなもの(中略)は滅ぼされるべきである……。深い、深い意味で言うなら、「あなたは殺してはならない」は非道徳的である≫(氷上英廣訳「遺された断想」『ニ-チェ全集第12巻』白水社、P120)
 「ヒトラ-の思想が降りてきた」と植松が措置入院先で発言していたのが明らかになると、メディアは安楽死政策と称したナチスによる障害者虐殺との相関を指摘した。東京大大学院教授の市野川容孝(医療社会学)はしかし、「ニ-チェこそ近い」とみなす。実際、植松は取材に「ヒトラ-とは似て非なるもの」と、その影響を否定した

【相模原殺傷16日地裁判決 責任能力争点、大麻の影響どこまで】神奈川新聞 3/15(日) 12:50配信
 神奈川県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判は16日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で判決が言い渡される。殺人などの罪に問われた元職員植松聖被告(30)に検察側は死刑を求刑し、弁護側は心神喪失による無罪を求めている。障害者を蔑視する発言を法廷でも重ねた被告にどのような刑を科し、社会に潜む優生思想を浮き彫りにした事件をどう総括するのか。裁判員らは難しい判断を迫られそうだ。
 公判は事実関係に争いがなく、争点は被告の刑事責任能力の有無と程度に絞られている。事件前から常用していたとされる大麻が、事件当時の被告の行動にどのような影響を与えたのかを巡り、検察側と弁護側の意見が対立した。
 検察側は、妄想などに支配された形跡が被告になく「大麻の影響は限定的だった」と主張する。犯行前日に後輩女性と食事するなど日常生活に支障が見られない点や、事前に拘束具などを準備した犯行の計画性、襲撃時の被告の理性的な行動などを根拠に挙げた。
 「意思疎通の取れない障害者を殺す」との動機についても、元来のゆがんだ人格に、園での勤務経験から生じた差別的な思考と見聞した世界情勢が影響して形成されたと指摘。「病的な妄想ではなく、単なる特異な考え方に過ぎない」と述べ、完全責任能力を有しているとした。
 弁護側は「大麻の乱用で被告は、妄想や幻覚が発症することもある『大麻精神病』を患っていた」と反論した。本来とは別の人格になった結果、差別的思想が先鋭化して行動が粗暴になり、異常な言動を周囲に示すようになったとした。
 襲撃についても、そうした異常な思考に支配されて実行したものだと強調。「善悪を判断し、行動をコントロールする能力が失われていたか、著しく減退していた」として、無罪か減軽が相当だと訴えた。
 公判で被告は障害者への差別的な発言を連ね、「金と時間を奪っている障害者を殺すことは社会の役に立つ」と殺傷行為を正当化した。「自分には責任能力がある」と弁護側の姿勢を批判する場面もあった。最終意見陳述では、社会へ問い掛けるかのように「裁判の本当の争点は、(全ての人が)自らが意思疎通できなくなるときを考えること」と持論を語った。
 一方で、被告の生い立ちや成育環境については、検察側、弁護側とも法廷での言及は少なかった。事件の背景を解明する上で欠かせない要素とする見方は多く、判決がどこまで踏み込めるのかも注目される。

【国内感染者、看護師やスーパー従業員など 死者も相次ぐ】朝日新聞 3/16(月) 2:00配信
 国内で確認、発表された新型コロナウイルスの感染者は、15日朝から午後10時までに31人増えた。老人保健施設やスーパーに勤める人のほか、海外からの帰国者たちだ。札幌市と名古屋市で、高齢者がそれぞれ1人死亡し、全国の死者は計31人になった。
 名古屋市で死亡した高齢男性は、感染者が相次ぐ市内の高齢者デイサービス事業所の関係者だという。札幌市で死亡したのは市内在住の80代女性。すでに感染が確認されていた。
 神奈川県内では、横須賀市の介護老人保健施設で働く70代の女性看護師の感染が発表された。エジプト旅行中の2月24~26日にナイル川のクルーズ船に乗り、3月1日に帰国。8日からせきや倦怠感などが出て、13日に受診。発症後も数日間、勤務していたという。
 また茅ケ崎市保健所管内に住む50代男性の感染も発表された。スーパー「ライフ鎌倉大船モール店」(鎌倉市)の従業員で10日まで勤務していた。14日に感染が判明し、同店は15日臨時休業し、16日も継続するという。

【新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(16日午前2時時点)】3/16(月) 4:56配信 AFPBB News
各国当局の発表に基づきAFPがまとめた統計によると、日本時間16日午前2時現在での世界の新型コロナウイルス感染者数は141の国・地域で16万9390人に達し、うち6420人が亡くなった。
 日本時間15日午前2時からの24時間で、新たに653人が亡くなり、1万2153人が感染したとの報告があった。
 昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生した中国では、香港とマカオ(Macau)を除く本土の感染者は8万844人となり、うち3199人が死亡。6万6911人が回復した。13日から14日までに新たに20人の感染と10人の死亡が確認された。
 中国以外では13日から14日までに死者が643人増えて3221人に、感染者は1万2133人増えて8万3094人となった。
 中国以外で被害が大きな国は、死者が多い順にイタリア(死亡1809人、感染2万4747人)、イラン(死亡724人、感染1万3938人)、スペイン(死亡288人、感染7753人)、フランス(死亡91人、感染4499人)。
 14日以降に初めて感染者が確認されたのは中央アフリカとセーシェル、コンゴ共和国、ウズベキスタン。
 16日午前2時時点の地域別感染者数はアジアが9万1973人(死者3320人)、欧州が5万2407人(死者2291人)、中東が1万5291人(死者738人)、米国・カナダが3201人(死者52人)、中南米・カリブ海(Caribbean Sea)諸国が448人(死者6人)、アフリカが315人(死者8人)、オセアニアが303人(死者5人)となっている。
 この統計は、各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関(WHO)からの情報に基づいている。死者の集計方法や検査体制は国によって異なる。翻訳編集 AFPBB News

【欧州で深刻化 スペインが“非常事態宣言”】日本テレビ3/15(日) 9:24配信
新型コロナウイルスの感染拡大がヨーロッパで深刻化している。日本時間の15日未明、スペインが非常事態を宣言したほか、フランスは生活必需品関連を除く飲食店などを全て閉鎖すると発表した。
スペイン国内での新型コロナウイルスの感染者は14日までに5753人と、前日から1500人以上も増加した。
サンチェス首相は、国内の感染者が1万人以上になると予想されるとして、さきほど非常事態宣言を発表した。
一方、イタリア、スペインに次いで感染者が多いフランスでは、日本時間15日未明、政府が生活必需品関連の店舗を除くカフェやレストラン、劇場などを全て閉鎖すると発表した。
また、聖火リレーが中止になったギリシャでも飲食店や観光施設が軒並み休止となっている。アテネでは、街の象徴であるパルテノン神殿もウイルス対策で閉鎖されることになった。
WHO(=世界保健機関)は、ヨーロッパが新型コロナウイルスの世界的大流行、パンデミックの中心になったとの見方を示していている。
こうした中、イギリス、フランス、イタリア、ドイツの首脳らは13日、相次いで電話会談を行い、感染拡大防止にむけ、あらゆる措置を採ることを確認した。
【スペイン全土で外出制限 非常事態、感染6千人超】共同通信 3/15(日) 6:11配信
 スペインのサンチェス首相は14日、新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて緊急閣議を開き、非常事態を宣言した。特別な措置が可能となり、仕事や生活必需品の買い物など一部の例外を除き全土で外出を制限すると発表した。地元メディアが伝えた。
 公共放送によるとスペインの感染者は14日、6千人を超え、欧州ではイタリアに次ぐ数。死者は190人を超えた。
 サンチェス氏は記者会見で「私たちは(ウイルスとの戦いで)新たな段階に入る。激烈な措置には残念ながら代償が伴う」と述べ、理解を求めた。非常事態は15日間適用され、下院が承認すれば延長が可能。
【クルーズ船乗客が“再び陽性に”…三重の70代男性 陰性で3/2退院し公共交通機関で帰宅も12日発熱】3/15(日) 1:19配信 東海テレビ
 三重県は14日、クルーズ船の乗客だった男性に新型コロナウイルスの感染を確認したと発表しました。男性は、船内で陽性と判明し、その後陰性が確認されていました。
 三重県によりますと、14日に感染が確認されたのは、三重県に住む日本人の70代の男性です。
 男性は、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客で、2月14日に船内で陽性と判明し東京都内の医療機関に入院していました。男性はその後、陰性が確認されたため、3月2日に退院し、公共交通機関で三重県内の自宅に帰っていましたが、12日に39度の発熱があり検査したところ、再び陽性が確認されたということです。
 三重県は、男性の退院後の行動歴などについて詳しく調べています。



【無症状感染者は9日間で陰性化 クルーズ船受け入れの藤田医科大が経過公表】
3/13(金) 12:31配信 YomiDr.
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルス感染者128人を受け入れた藤田医科大学岡崎医療センター(愛知県岡崎市)が、無症状の感染者の経過について公表した。同センターで経過観察を行った無症状の感染者90人のうち87人が、3月6日夜の時点で、感染の有無を調べるPCR検査で2回連続、陰性が確認された。陽性とされた日から、かかった日数は9日(中央値)だった。日本感染症学会のウェブサイトに3月12日、掲載された。
 発表によると、同センターは2月18日から26日にかけて、無症状の感染者96人、濃厚接触者32人の計128人を受け入れた。濃厚接触者のうち8人が入所後に陽性と判定され、陽性と判定された人は104人に増えた。うち、他施設に移った人を除く90人について経過を分析した。
■陰性化に15日以上要した例も12%
 入所者には、48時間の間隔でのどから検体を採取し、連続して2回のPCR検査で陰性が確認されるまで続けた。連続2回の陰性のうち1回目の採取日を陰性確認日と定義した。入所後1回目の検査は、クルーズ船で陽性とされた検査から平均6日後に行われた。
 その結果、陰性化するまでに要した日数は、中央値で9日だった。90人のうち81人が陰性化に6日以上を要した。陰性化を確認できた累積割合は、初回陽性の検体採取日から6日目で36%、7日目39%、8日目48%、9日目60%だった。
 多くの感染者では2回連続陰性となったが、20%で1回目陰性の後、再度陽性となる現象が見られた。12%では、2回連続陰性が確認されるまでに15日以上を要した。



【北京で「脳脊髄液から新型コロナ検出」の衝撃】東洋経済3/13(金) 5:45配信 (財新記者:趙寧、福林)
※敬称略。原文は3月9日の現地時間9:48配信
脳炎を引き起こすかどうか:
3月7日に山梨県で20代男性が、日本で初めて新型コロナウイルス性髄膜炎(脳と脊髄を包む膜の炎症)と診断された。北京でも新型肺炎患者の脳脊髄液から新型コロナウイルスが検出され、中枢神経系への侵入例として注目されている。中国の独立系メディア「財新」取材班が、”未知のウイルス”の正体に迫った。
新型コロナウイルスが肺炎だけでなく、脳炎を引き起こすかどうかが注目を集めている。
このほど首都医科大学付属北京地壇病院は、新型肺炎患者の脳脊髄液(訳注:脳室やクモ膜下腔を満たす無色透明の液)から新型コロナウイルスが検出され、ウイルス性脳炎であると臨床診断されたと発表した。これは、新型コロナウイルスが患者の中枢神経系を攻撃する可能性を示す1つの証拠だ。
神経系がダメージを受けた際の典型的な臨床症状;
ウイルス性脳炎は比較的よくみられる中枢神経系の感染症だ。患者の発症時の臨床症状はけいれん、意識障害、反応の鈍さ、四肢まひ、髄膜(訳注:脳と脊髄を包む膜)刺激症状などである。
 地壇病院で治療を受けていた56歳の男性患者は、新型肺炎の発症から10日目にいらいらし始め、落ち着かなくなった。これは軽度の神経系ダメージの症状の1つとみられている。
そのとき患者は危篤状態となっていた。急性呼吸不全となり、すぐさまICU(集中治療室)に運び込まれ、気管挿管(訳注:気道確保方法の1つ)などを受けた。4日間の治療を経て呼吸不全が改善し、医師は鎮静(訳注:薬物などで神経の興奮を鎮めること)を中止した。
だがこのとき、患者は顎と口元が頻繁にけいれんし、げっぷも続き、四肢の筋張力が高まり、両膝の反射は過剰になり、両足のバビンスキー反射(訳注:病的な反射の一種)などの症状も出ていた。神経系がダメージを受けた際の典型的な臨床症状である。
臨床症状とあわせてウイルス性脳炎と診断;
こうした症状は、ウイルス以外にも、患者自身の基礎疾患や酸素不足が誘因になることがある。だが、気管挿管によって患者の酸素不足は速やかに改善していた。頭部CT検査や脳脊髄液の生化学検査(訳注:血液や尿、細胞の一部を採取して行う化学的な分析)を経て、地壇病院は患者の基礎疾患が誘因である可能性も排除。最後に患者の脳脊髄液から新型コロナウイルスを検出し、臨床症状とあわせてウイルス性脳炎と診断したのだ。
患者の脳の生検;
ただ、脳脊髄液から新型コロナウイルスが検出されたからといって、新型コロナウイルスが中枢神経系に感染したと確定できるだろうか。
あるウイルス学者や臨床医師は、確実な証拠を得るには、患者の脳の生検(訳注:生きた人間の組織の一部を採取して行う検査)で新型コロナウイルスが発見される必要があると指摘した。この患者は2月25日に全快し退院したため、脳の生検を受けていない。
死亡した新型肺炎患者は...ウイルス性脳炎が原因の1つかもしれない;
とはいえ、この症例は重症・危篤の新型肺炎患者を治療するうえで非常に参考になる。救急を担当する地壇病院重症医学科主任の劉景院は、科の公式SNSアカウントで、「一部のすぐに死亡した新型肺炎患者は意識不明状態になったことがあり、ウイルス性脳炎が原因の1つかもしれない」と、医療関係者に注意を促した。
侵入経路;
新型コロナウイルスはどうやって患者の脳脊髄液に侵入したのか。脳炎の治療経験を持つ新型肺炎指定病院重症科のある医師によると、1つの可能性は咽頭からの侵入だ。この患者の咽頭には新型コロナウイルスが集中していた。のどは脳に近く、とくに副鼻腔は脳から1層の組織を隔てただけだ。
だが、この侵入経路である可能性はとても低いという。「ほぼすべてのウイルス性脳炎は、血液を通して感染するものだ」と前出の医師は話す。今回の患者の場合、まずウイルスが肺に感染し、その後ほかの部位に感染したと同医師はみている。
人体の血液は肺を通って酸素と結合し、それから全身をめぐる。肺胞にウイルスがいる場合、ウイルスは肺胞から血液に入り、それから脳脊髄液へと侵入する可能性が非常に高い。
ほかにも、新型肺炎患者の病理解剖(訳注:病死者の死因などを解明するために行う解剖)によって、ウイルスがリンパ系に進入しうることがわかった。脳脊髄液がリンパ系を通じてウイルスに感染した可能性も高いという。
血液;wikkipedia
体循環 心臓→動脈→肺以外の全身→末梢部毛細血管→静脈→心臓(肺循環に続く)
肺循環 心臓→肺動脈→肺→肺胞部毛細血管→肺静脈→心臓(体循環に戻る)
説明不能な意識不明状態;
ひとたび患者が説明不能な意識不明状態に陥ったならば、ウイルス性脳炎を疑うべきだ。この点でも地壇病院の症例が参考になる。財新の調査によると、湖北省武漢における初期の数十の死亡例において、意識不明状態になったケースが多く見られた。だが、当時の症例に関する資料は限られており、専門家チームも意識不明の原因を確定できていない。
項部硬直;
地壇病院が今回の症例を公表した文章の中で、重症医学科主任の劉景院は第一線の医療関係者に対し、次のように注意を促している。
「臨床観察で項部硬直(訳注:後頭部やうなじの筋肉が反射的に緊張して生じる抵抗)が見つかれば、それは陽性であることを意味する。突発的な意識障害や意識不明に至った場合は、新型コロナウイルスが中枢神経系に感染した可能性を念頭に置き、直ちに脳脊髄液の検査を実施し、新型コロナウイルスの核酸検査(訳注:PCR検査など)を行う必要がある」
一方、今のところ新型コロナウイルスが脳脊髄液に侵入したという症例は極めて少ない。地壇病院は3月4日7時までに合計150人の新型肺炎患者を治療しており、そのうち新型コロナウイルス肺炎と脳炎を併発した患者は今回の1名のみである。
(財新記者:趙寧、福林)
※敬称略。原文は3月9日の現地時間9:48配信

【視覚障碍者の視力を取り戻す「ゲノム編集治療」の臨床試験が始まった】現代ビジネス
3/12(木) 17:01配信
ゲノム編集技術「クリスパー(・キャス9)」;
米国の先端医療研究所「エディタス・メディシン」と「Casey Eye Institute」の共同研究チームは今月、ゲノム編集技術「クリスパー(・キャス9)」を使い、レーバー先天性黒内障の患者を治療する臨床試験に着手した。
その被験者となったのは、両目とも、ほぼ見えない状態にある高齢患者。Casey Eye Instituteの眼科医が、クリスパーによるゲノム編集治療法を患者に適用した(この治療法はエディタス・メディシンとアイルランドの製薬会社アラガンが共同開発したもの)。ただし治療は片方の目に対してだけ行われた。
クリスパー試液;
この臨床試験はいわゆるフェーズ1に該当し、治療の効果よりも、むしろ、その安全性を確かめるための試みとされる。従って、医師の手で患者の眼底に注入されたクリスパー試液は、考え得る最小限に止まった。それでも何らかの治療効果が現れるとすれば、それは数週間~数ヵ月後になるとみられている。
「CAR-T」ー免疫療法の一種;
このように遺伝子を操作する「遺伝子治療」は、実は1990年代から既に存在していた。それは当初、「細胞の癌化を引き起こす」など重度の副作用から患者を死に至らしめるケースもあったが、最近では技術の飛躍的な発達によって極めて効果的な治療法(治療薬)へと結実している。
中でも最もよく知られているのは、スイスの製薬会社ノバルティスが提供する「キムリア」だろう。これは一般に「CAR-T」と呼ばれる免疫療法の一種だ。この治療法では、白血病患者の体内から取り出したT細胞(免疫細胞)を、ある種の遺伝子技術で操作することにより、癌に対する免疫力を大幅に強化する。
このようにパワーアップしたT細胞を患者の体内に戻し、それが癌化した血液細胞を攻撃することで白血病を治す――これがCAR-T療法であり、これら一連の手続きを自社の製薬施設を介して一種の「治療薬」として提供しているのが、ノバルティスの「キムリア」なのだ。
患者の「体外」で行う「間接的な」治療法;
「遺伝子を操作する治療法」と言っても、それは体内で病気を引き起こす異常な遺伝子を直接修正しているわけではない。むしろ「T細胞の免疫力を強化する」ための遺伝子操作自体は、患者の「体外」で行う「間接的な」治療法だ。
異常な遺伝子を、患者の体内で直接修正;
これに対し今回の臨床試験では、病気を引き起こす異常な遺伝子を、患者の体内で直接修正して病気を治そうとしている――ここが特筆に値する点だ。
なぜなら、体内での遺伝子操作だけに失敗が許されない。つまり、より高い技術的完成度が求められるからだ。また異常な遺伝子を直接叩くだけに、病気を根治する潜在力も秘めている。
レーバー先天性黒内障Leber's congenital amaurosis(LCA;
臨床試験の対象となった「レーバー先天性黒内障Leber's congenital amaurosis(LCA)」は、特定の遺伝子が異常を来すことによって、眼底にある網膜の光受容細胞が機能しなくなる病気だ。患者の眼球には何ら異常がないものの、外界からの光信号を脳に伝えることができなくなるため、重度の視覚障害を引き起こす。多くの患者は出生時から既に極度の弱視で、数年後には事実上の失明に至るとされる。
CEP290 Centrosomal protein of 290 kDa;
LCAの原因となる遺伝子は10種類以上が知られているが、今回の治療対象となったのは「CEP290」と呼ばれる遺伝子だ。異常を来したCEP290遺伝子をクリスパーで修正することにより、正常なものに変える。これにより光受容細胞が本来の機能を取り戻すことを期待している。
ここで使われる「クリスパー」というバイオ・テクノロジーは、DNA上の狙った遺伝子をピンポイントで操作できる「ゲノム編集」技術の最新モデルだ。
DNA(遺伝子)のメス―光受容細胞の機能を回復;
今回の臨床試験では、米オレゴン州にあるCasey Eye Instituteの眼科医が、被験者となったLCA患者の治療に当たった。患者の目の周辺を僅かに切開し、ここから細い管を差し込んで、少量のクリスパー試液を眼底の網膜に送り込んだ。
比喩的に「DNA(遺伝子)のメス」という異名を持つクリスパー(の試液)は網膜に到達すると、CEP290遺伝子の異常を来した部分をピンポイントで修正して正常な遺伝子に戻す。これで光受容細胞の機能を回復させることができれば、患者の視力が取り戻されることになる。
遺伝子(DNA)を手術する時代;
このため、今回のクリスパーによる「体内」ゲノム編集治療もその効果については予断を許さない。特に今回、被験者となったLCA患者が高齢であることから、治療効果はあまり期待できないとの見方もある。同じ治療法でも年少の患者の方が、網膜から脳の視覚領域への情報伝達ルートが若くて良好な状態に保たれているので、より効果が期待できるとされる。
しかし逆に言えば、高齢の患者で何らかの治療効果が見られた場合、若い患者に対しては、それ以上の効果が期待できることになる。仮にLCAのような眼疾患で成功すれば、以降はハンチントン病や認知症、筋強直性ジストロフィーなど、より広範囲の病気に同様の治療法が適用されていくとも期待されている。
従来のように患者の身体を手術するのではなく、病気の根本的な原因である遺伝子(DNA)を手術する時代は意外に近くまで迫っているのかもしれない。


【看護師ら4人切りつけ 殺人未遂の疑いで入院患者の男を逮捕 愛媛・四国中央市】テレビ愛媛 最終更新:3/11(水) 19:00
去年8月、四国中央市の病院に入院していた男が男性看護師など4人をナイフで切りケガをさせた事件で、警察は11日にこの男を殺人未遂などの疑いで逮捕しました。
逮捕されたのは四国中央市の無職の男(46)です。警察によりますとこの男は去年8月9日、精神疾患で入院していた市内の病院で、男性看護師の背中などを刃渡り約9センチの折りたたみナイフで刺し、殺害しようとした疑いです。
看護師は全治約1か月のケガをしました。男は当時、別の男性看護師ら3人にケガをさせた現行犯で逮捕されていましたが、手首を骨折していてたため入院。一旦釈放されたもののケガが治ったため、警察は今回殺人未遂の容疑で逮捕しました。
男は「覚えていない」と否認していて、警察は責任能力の有無を含め慎重に調べる方針です。


【視覚障碍者の視力を取り戻す「ゲノム編集治療」の臨床試験が始まった】現代ビジネス
3/12(木) 17:01配信
【緑内障=失明!? 怖いという意識を植えつけた経緯とは】Yomi.Dr.
3/12(木) 18:12配信
眼圧が一定(正常値は10~21mmHg)に保持されているのは、毛様体で作り出された、水晶体と角膜の間の空間を満たす房水(ぼうすい)という透明な液体が一定量に保たれているためです。房水の多くは隅角(ぐうかく)(目の表面の角膜と、その内側で明るさを調節している虹彩に挟まれた部分)にあるシュレム管を通って、およそ100分かかって排出され、すべての房水が入れ換わります。
て、緑内障は、「開放隅角緑内障」と「閉塞(へいそく)隅角緑内障」に大別され、前回のコラムで取り上げた「開放隅角緑内障」は、隅角が広く開放されている形を持つもので、今日の緑内障の大半を占めていると述べました。
 一方、今回話題にしている「急性緑内障発作」は、「閉塞隅角緑内障」で起きるものです。狭い隅角が何かをきっかけに閉塞してしまい、房水の排出ができなくなることが原因です。
 隅角が狭いかどうかは、その人が生来持っている目のつくりによります。狭隅角は、遠視の方に多いとされますし、また東日本より西日本の方に多いというデータもあります。
閉塞の程度が極端になれば、房水の出口が狭くなってしまい、眼圧が上がり(時に50mmHg以上になる)「急性緑内障発作」となるのですが、眼圧が時々上がる場合や、常時高めの眼圧で推移するものでは、次第に視神経に影響が出て、視野の一部の感度が次第に低下します。これらを含めて「閉塞隅角緑内障」と称します。緑内障全体の10%程度とされます。
瞳を開く散瞳薬(点眼)や、抗コリン薬(痛め止めや抗不安薬の多くにこの作用がある)が眼圧を上げるリスクになりうるのは、このタイプの緑内障です。
 よく、胃カメラ(内視鏡)検査などの時に「緑内障はありませんか」と問診されることがあるのは、検査に使う鎮静剤が抗コリン作用を持つので、それを使っていいかどうかを確かめているのです。
 緑内障があっても、開放隅角ならまず心配いりませんし、元々、狭隅角の方も、白内障手術後やレーザー虹彩切開手術をしてあれば、急性緑内障発作のリスクは大きく軽減されていることを知っておくのはよいことです。


【新型コロナ、重症化しやすい基礎疾患の致死率は? 高血圧や糖尿病は?】3/12(木) 19:26配信
National Geographic 抜粋
世界保健機関(WHO)は3月4日、新型コロナウイルス感染症による致死率を新たに修正した。それによると、全年齢平均の致死率は3.4%で、高齢になるほど確率は上がる。
50歳未満の致死率;
全ての年齢で、新型コロナウイルスの致死率は季節性インフルエンザよりも高いことがわかっている。50歳未満の致死率はインフルエンザより6~10倍も高い。死に至らないまでも、若年層の重症患者は意外と多い。
「New England Journal of Medicine」;
2月28日付けの医学誌「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、1099人のコロナウイルス感染者を年齢別に分けてみたところ、軽症者の60%が15歳から49歳だった。やはりこの年齢は重症化を免れているということだろうか。
 しかし、若い成人の重症患者の割合は、単純な統計で割り出される値よりも若干高い。実際には、163人のうち41%が若い成人で、31%が50~64歳、27%が65歳以上だった。重症患者がゼロだった年齢層は、14歳以下の子どもだけだ。
重症化の要因として最も多い基礎疾患;
新型コロナウイルスに感染してまずやられるのは肺だが、重症化の要因として最も多い基礎疾患が、心血管系の病気だ。
新型コロナウイルスへの感染が具体的に心血管系にどう影響するのかはまだわかっていない。しかし、米国心臓病学会によると、「新型コロナウイルス感染で集中的な治療が必要となった患者を中心に、急性心外傷、不整脈、血圧低下、頻脈が報告されており、心血管の合併症も高い確率で起こっている」という。武漢で150人を対象にした調査でも、心血管疾患の患者がウイルスに感染するとかなり高い確率で死に至るという結果が出た。
心臓と肺;
心臓と肺は、驚くほど密接につながっている。速く呼吸すれば、脈拍も自動的に速くなる。既に心臓が弱かったり動脈が詰まっていたりすると、体中に血液と酸素を送るために、健康な人よりも余計に心臓が働かなければならない。
インフルエンザ患者が心臓発作を起こすことは、以前から知られている。インフルエンザウイルスが心臓発作の直接の原因ではないかという専門家もいる。2018年に「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、インフルエンザと診断されてから7日間は、心臓発作を起こす確率が普段と比べて6倍になると報告されている。
2種類以上の感染症;
さらに言えば、2種類以上の感染症に同時にかかることもある。武漢での初期調査では、新型コロナウイルス感染者の4%が、別のウイルスにも感染していたことがわかった。そのほとんどはインフルエンザウイルスだった。同時に複数のウイルスにやられれば、疲弊した心臓にかかる負担がさらに増えるのは間違いない。
アテローム性動脈硬化症;
なかには、心臓に問題があることに気付いていない人も多い。例えば、高血圧が危険因子とされるアテローム性動脈硬化症は、最も一般的な動脈硬化の形態で、血管の壁に脂肪や組織の線維が蓄積してプラークというかたまりを作る病気だ。それが破裂すると、周囲の血管が塞がれて心臓発作や脳卒中を引き起こす。
プラークや高血圧→;
そこへインフルエンザやコロナなどの呼吸器ウイルスが入り込むと、免疫が過剰反応して全身に炎症が起こるサイトカインストームを引き起こす恐れがある。武漢では、流行初期に劇症型心筋炎を起こした患者がいたと報告されている。これは、心臓の筋肉がウイルスによって侵食されるまれな症候群だ。
「特に、これまで心臓病の病歴がなかった人の場合、その炎症が引き金となってプラークが破裂することがあります」と、マイコス氏は言う。糖尿病も動脈硬化を引き起こして、プラークが破裂する原因になるという。また、病気のせいで免疫機能が低下している患者もいる。これもまた、感染症にかかりやすい要因だ。
嚢胞(のうほう)性線維症や慢性閉塞性肺疾患、ぜんそく、アレルギーなどによる慢性的な肺疾患、そして、喫煙で肺に損傷がある人も注意が必要だ。たとえ軽い風邪やインフルエンザであっても、こうした持病のある人々では、症状が悪化して入院するケースもある。
潜伏期間が2~14日;
新型コロナウイルスの心配な特徴は、症状が出るまでの潜伏期間が2~14日と、かなり長いことだ。おまけに、米国ではCDCの技術的ミスにより検査に遅れが生じている。そのため、感染しているのに気づかないでウイルスをばらまいてしまう人がどれだけいるのかわからない。3月9日付の医学誌「Lancet」に発表された最新研究によると、新型コロナウイルスの感染者は8~37日間ウイルスを排出し続けるという。
がん患者;
がん患者も、重症化のハイリスクグループに入る。白血病やリンパ腫の集中治療を受けている患者や骨髄移植患者は、腫瘍や治療で免疫機能が低下しているため、ウイルス性のものも含めて肺炎には十分な注意が必要だ。過去にがん治療を受けて完治したように見える人でも、免疫機能が完全に回復していない場合があると、米国がん協会のJ・レナード・リクテンフェルド氏は指摘する。
9歳以下の子どもの感染者数;
今のところ、新型コロナウイルスに関するデータはどれも、子どもへの感染率が低く、重症化の例も少ないことを示している。2月11日までに中国CDCは4万4600人の感染確定者を記録しているが、9歳以下の子どもの感染者数はわずか400人で、死者はひとりも出ていない。子どもは感染する確率が低いということなのか、それとも重症化しないだけなのだろうか。
「後者が正解、つまり子どもは重症化しないというのが、専門家の一致した意見です」と、米ピッツバーグ大学医療センター小児感染症部長のジョン・ウィリアムズ氏は言う。
過去のコロナウイルスや他の感染症でも、子どもが重症化するケースはまれだった。約20年前に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)でも、子どもが感染した例はあったが、ほとんどが軽症だった。水ぼうそうも、子どもよりも予防接種を受けていない大人の方が重症化する可能性が高い。

【「爆弾低気圧」級に発達か。頭が痛い、古傷が痛む…低気圧襲来で起こる「気象病」の基礎知識】3/10(火) 20:00配信 Business Insider Japan
体調不良の原因は「気温と気圧の変化」
気象病は、気温や気圧の急激な変化によって起こる。
私たちの体には、周囲の環境が変わったときに体内の環境を保とうとする力(ホメオスタシス)が備わっている。その力を管理しているのが、いわゆる「自律神経」だ。自律神経には体を緊張状態にする「交感神経」と、体を緊張から解放してリラックスさせる「副交感神経」の2種類がある。
たとえば、寒いときには鳥肌が立ったり血管が収縮したりする。これは、交感神経が活発に働いた結果であり、体温を外に逃さないようにする効果がある。一方で暑いときには、血管が広がり、皮膚の表面から体内の熱を逃がしている。これは、副交感神経が活発に働いた結果だ。
同様に、低気圧が近づいて気圧が急激に変化したときにも、自律神経が体内環境のバランスを取ろうとする。
しかし、気温や気圧の変化が急すぎると、自律神経の働きが追いつかなくなることがある。すると、体内の環境がうまく保たれず、さまざまな不快な症状があらわれる。これがいわゆる「気象病」である。
頭痛には、低気圧が近づいてくるときに注意したい頭痛と、低気圧が去ったあとに注意したい頭痛の2タイプがある。これは、その時々で活発に働く自律神経の種類が違うためだ。
低気圧が近づく際には気圧は徐々に下がり、南から温かい風が吹き込んで気温が急に上がることもある。このときには、気圧の低下や温度上昇に対応しようと副交感神経が活発になり、血管が拡張して、頭がズキズキと痛む片頭痛が起こりやすい。
一方で、低気圧が去る際には気圧が上がり、冷たい北からの風が吹いて気温が急に低くなる。すると、今度は交感神経が活発になって血管が収縮し、首や肩の血流が悪くなって後頭部もこわばる。この時には、こめかみをぐるりと一周するようにジワジワと痛む、緊張性頭痛が起こりやすいのだ。
爆弾低気圧とは、24時間で24hPa(ヘクトパスカル)以上気圧の下がる温帯低気圧(北緯60度の場合)のことをいう。正式な気象用語ではないものの、天気予報では「急速に発達する低気圧」などとも表現され、近年よく耳にするようになった。
春は、高気圧や低気圧(温帯低気圧)が西から東へと短期間に日本列島を通過する季節。その中には、急速に発達を遂げ、台風並みの強風が吹く爆弾低気圧になるものもある。
台風(熱帯低気圧)は温かい空気だけでできている一方で、爆弾低気圧(発達した温帯低気圧)は温かい空気と冷たい空気の両方から構成されている。一般的に、温帯低気圧は温かい空気と冷たい空気の気温差が大きいほど発達する。そのため、冬の冷たい空気と初夏の温かい空気がはげしくぶつかり合う春に、ときに爆弾低気圧と呼ばれるほどに発達するのだ。
このため、爆弾低気圧の通過前後では気温が激しく変化する。接近前はまるで初夏のような暑さになることもある一方で、通過後は冬のような寒さが舞い戻ることがある。
「この気温の変化が油断できません。人間の基礎代謝は季節によって変動し、冬は体温を保つために基礎代謝が年間でもっとも高くなっています。5月の20度台はすがすがしく感じるのに、2月の20度台は暑く感じます。2016年2月に高知県で行われたマラソン大会では、日中の気温が20度を超え、熱中症患者が出たこともありました」


【死ぬ場所」がない! すでに現実化した都市型多死社会のリスク】
現代ビジネス2020.3.7終末期医療  
 2019年度の出産数が初めて90万人割れした一方で、年間の死亡者数はおよそ140万人。20年前と比べて50万人近くも増加した。いわゆる「多死社会」は加速している。2035年前後のピーク時には、年間死者数が170万人以上に及ぶ。年間の死者数はいまよりも30万人以上増えることになる。
さらに、国は2018年の医療費改定で、地域の中小病院や関連施設の入院患者を自宅か老人ホーム等、医療機関ではないところに返すルールを促している。病院のベッド数の増加が見込めないこと、医療施設の入院患者に対してのルールが厳しくなったことで現在、2割弱程度の“自宅での看取り”の数を、将来的に増やそうというわけだ。
多死社会がピークを迎える2035年前後、潜在的な看取り難民の数は約49万人に及ぶと試算されているのだ。
「誰かから連絡を受ければ、支援する体制は整いますが、そこまで行かずに家で亡くなるケースも多いのです。その場合は警察が介入します。警察が監察医に連絡し、監察医が“死体検案書”を出す。身内がいなくて遺体の引き取り手がなければ、行政が処理をする」
 「行政は、我々のような在宅医療機関が看取る死と、警察が介入した人の死の数字を合計して、“自宅死”の数字にします。東京都には“自宅死の平均は17~18%で、自宅死が進んでいる”という報告がありますが、その半分近くが亡くなってから発見されたケースの可能性があります。看取り難民の中には、誰にも見守られずに亡くなっていく人が、相当数いるということです」
 そんな社会的弱者を地域の民生委員等が気づけば、地域の包括支援センターが入り、ケアマネが医療的な道筋をつけ、暮らしが厳しいなら行政が入り生活保護の受給を促す。窮乏する社会的弱者を地域の誰かが気づけば、難民から脱出する術が得られる。まだラッキーなのだ。
 「多いのは救急車で病院に運ばれて、発見されるケースです」
 末期ガン患者を支えたいという趣旨で、安井氏がやまと診療所を開設した7年前は、患者のうち7割が末期ガンだった。現在は在宅での看護を勧める国の政策もあり、4割が老衰や認知症の経過をたどる、「フレイル」と呼ばれる虚弱が進行していく患者だ。
 患者には後見人を付けることを促す。だが中には「後見人なんて縁起でもない。俺は元気でその必要はない」と拒む人がいる。だがフレイルの患者の意識状態が急に悪化したり、認知症が進んだらどうなるのか。その患者が独居で身寄りがなかったとしたら。
 意識レベルが低下した人に、医療者や介護者が勝手にサインをさせることはできない。患者が亡くなると、預金は凍結状態になる。独居で身寄りのない、後見人がいない患者の場合、医療者やケアマネ、ヘルパー、訪問看護師、在宅を支えた人たちが費用を請求できないケースが出てくる。
 休眠口座に残った預金は、最終的に国が吸い上げるシステムだが、在宅の患者が暮らしていた家の大家も大変だ。未払いの家賃はもらえない、身寄りがないので大家が部屋を片付ける。片付けの時に現金が出てきたら、未払い分の家賃と部屋の片付けの費用に充てるのだろうが、そんなことは期待薄だ。
 「うちは年間延べ2000人以上の患者さんを診ていますが、患者さんに請求できなかったケースは10人以下です」
 ――お金の話になったのでお聞きしたいのですが、7年前に3人程度で開設したやまと診療所は現在、常勤非常勤含め医師は32名。スタッフは約80名、在宅患者数は850名以上、看取りに携わる数は年間460名以上。在宅介護を国が推し進めているとはいえ、なぜこれほどまでに急成長したのですか。
 多死社会がピークを迎える2035年前後、潜在的な看取り難民は約49万人と試算されている。少なくともそのうち20万人は都市部で最期を迎える。看取り難民の増加を見据え、年間400件以上を看取る、やまと診療所のような規模の都市型の在宅医療施設を、単純計算で500箇所は作る必要がある。
「たとえば板橋区の高島平団地では、自治会が中心になって、サポートの必要な住民をローラー作戦で調査している。認知症で挙動不審な人を見かけたら、民生委員やケアマネに連絡したり……。僕らのような受け皿も確かに必要ですが、その前に医療従事者につなぐ人たちがいないと」
 在宅医療を担う施設の増設は必要だが、ハードの整備と同時に、まず看取り難民を“孤立死”させない、医療機関につなぐ、地域住民の見守りに対する意識改革こそ重要だと安井氏は指摘するのだ。
根岸 康雄(ノンフィクションライター)

【衝動抑えられない原因解明へ アルツハイマー、脳異常部位判明 東大と量研機構】時事通信3/6(金) 15:26配信
アルツハイマー病のモデルマウスは通常のマウスに比べ、水を飲む条件を学習する実験中に脳で衝動性を制御する部位に異常が生じ、衝動を抑えられないことが分かった。東京大の久恒辰博准教授や量子科学技術研究開発機構の住吉晃・博士研究員らが6日までに発表した。論文は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
 この部位は脳幹にある「背側縫線核」で、神経伝達物質のセロトニンを生み出す神経細胞群がある。セロトニンは食欲や睡眠のほか、怒りや恐怖、不安などの情動、学習の制御に関与することが知られる。
 久恒准教授は「アルツハイマー病患者は早期から衝動性が強まっている可能性がある。患者でも背側縫線核に異常が生じると分かれば、早期診断技術の開発に役立つ」と話している。
 この実験は、マウスに水を飲ませるノズルとライトを用意。喉が渇いた状態で、ライトが2秒間光っている間にノズルをなめると水が出ることを学習させた。
 アルツハイマー病のモデルマウス3匹を使い、1週間実験した結果では、ノズルをなめる回数が通常のマウスより1.5~2倍も多く、水が欲しいという衝動を抑えられないことが判明。実験中に機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で脳の活動の変化を調べたところ、背側縫線核の働きが異常に高まっていた。
 これまではマウスに麻酔をかけずにfMRIによる測定を行うのは、頭部の動きに伴うノイズが多いため困難だった。しかし、久恒准教授らは磁場を高めてノイズを相対的に下げ、マウスの頭部を固定して実験前に慣らす方法で学習中の鮮明な画像を得ることに成功した。

【新型コロナに2つの特異タンパク質 立命大のグループがAI解析で発見】産経3/6(金) 20:10配信
研究グループは、新型コロナウイルスの遺伝子情報に含まれるタンパク質のうち10種類について、すでに解明されているタンパク質構造に関するデータベースと照合して解析。うち2種類が新型コロナウイルス特有のものだと突き止めた。
 ウイルスに含まれるタンパク質は、大きくは感染力の強さに関係するものと、感染後の人体への作用に関わるものに分類される。今回見つかった2種類はいずれも後者で、不安定な立体構造だったという。
 伊藤教授は「タンパク質の作用は立体構造のパターンから解明できる。2種類のタンパク質が感染後の体内でどのような立体構造をとるかが解明できれば、ワクチンや予防薬の開発につながる可能性がある」としている。


【裸にして放水、監禁… 患者虐待で看護師ら6人逮捕】2020/3/4 21:46神戸新聞NEXT
 統合失調症などがある複数の入院患者を虐待したとして、兵庫県警捜査1課と同県警神戸西署は4日、監禁や準強制わいせつなどの疑いで、神戸市西区神出町、「神出病院」の元看護助手の男(27)=神戸市西区=ら6人を逮捕した。柵付きのベッドを逆さにし、あおむけの患者を20分間閉じ込めるなどしていた。虐待は1年以上あったとみられ、同課が実態解明を進める。
 他に逮捕されたのは、いずれも同病院の看護師、26~41歳の男5人で、全員容疑を認めているという。
 元看護助手と26歳、33歳の看護師の男の逮捕容疑は2018年10月31日未明、63歳と61歳の男性患者の体を押さえ、無理やり互いにキスをさせた疑い。
 19年9月20日夜には元看護助手と34歳、41歳の看護師がトイレで男性患者(79)を裸にし、椅子に座らせて顔にホースで放水したほか、同25日夜には元看護助手と34歳、33歳の看護師が男性患者(63)を床に寝かせ、落下防止用の柵が付いたベッドを逆さに覆いかぶせて閉じ込めた疑いがある。
 同課によると、3件とも関わったとされる元看護助手は「患者のリアクションが面白かった」などと話しているという。元看護助手は昨年12月、若い女性への強制わいせつ容疑で逮捕された。捜査の過程で、患者を虐待する様子を収めた複数の動画がスマートフォンから見つかり、他の5人が浮上。動画は他にもあり、同課はさらに被害者がいるとみて調べる。


【違憲認定「実質勝った」 菊池事件判決 高齢の原告もどかしさも】
2/27(木) 11:20配信 西日本新聞
 死刑が執行されて57年、司法によるハンセン病への差別を糾弾してきた元患者らに、かすかな希望が見えた。ハンセン病とされた男性が裁かれた「菊池事件」を巡る26日の熊本地裁判決は、賠償請求を退けたものの、最高裁が認めなかった「特別法廷」の違憲性を明確に認定した。高齢の原告らは再審への道が開けないもどかしさを抱えつつ、「男性の名誉回復へ一歩進んだ」と懸命に前を向いた。
 午後2時すぎ、熊本地裁前。判決直後、「特別法廷を断罪」と記された旗が弁護士によって掲げられた。集まった支援者らから拍手が起きた。
 「憲法違反と認め、次につながる判決だ」。原告の一人で、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)の志村康入所者自治会長(87)は評価した。「男性の墓に『(再審への)とっかかりができました』と報告したい」
 弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は「最高裁が憲法違反と言わなかったことを、明確に違反と言った。無謀な裁判と言われたが、実質的に勝ったと思っている」と言い切った。
 一方、判決は菊池事件の確定判決について、審理そのものの問題点には触れなかった。原告らの間には微妙な空気も漂う。
 療養所に入所した直後、13歳の時に男性の死刑執行を聞き、体が震えたという原告の竪山勲さん(71)は「本当は男性は無罪だと言ってほしかった。司法は責任を取っていない」と悔しさをあらわにした。
 原告の藤崎陸安さん(76)は「憲法に正面から向き合っていて、半分勝って半分負けた。再審請求の道が閉ざされたわけではない」と受け止めた。
 特別法廷の目撃者は減っている。特別法廷が恵楓園の自治会事務所や公会堂で行われ、広報や掲示がなかったことなどを訴訟で陳述した原告の杉野芳武さんは今年1月、判決を待たずに88歳で亡くなった。原告が願う再審実現に向け、残された時間は少なくなっている。
 原告の一人で全国ハンセン病療養所入所者協議会の森和男会長(79)は、全国の療養所入所者が約1200人に減少したことを指摘。「(男性の)家族の皆さんが再審請求できれば良かったが、大変な差別が残っていてできなかった。どれだけ命があるか分からないが最後まで再審への道を求めていく」と強調した

【漁船と衝突し貨物船沈没、13人が行方不明…青森県沖】
3/1(日) 1:26配信 読売新聞
 29日午後10時過ぎ、青森県六ヶ所村の東約12キロ沖で、ベリーズ船籍の貨物船(総トン数1989トン)と、青森県八戸市の会社が所有する底引き網漁船(同138トン)が衝突したと、貨物船から第2管区海上保安本部に無線連絡があった。
 八戸海上保安部によると、貨物船は3000トン余りの鉄くずなどを積んでおり、衝突で浸水し、同10時半過ぎに沈没した。中国人やベトナム人ら計14人が乗っており、うち1人は近くを航行していた別の船に救助されたが、13人が行方不明となった。海上保安庁が捜索している。
 漁船側には浸水などはなく、日本人ら15人の乗組員は全員無事という。

【介護人手不足 虐待 11年連続増】2019年5月22日 東京新聞 夕刊
 高齢者施設の職員による入所者への虐待は近年、急増しており、刑事事件に発展するケースも後を絶たない。
 川崎市の介護付き有料老人ホームで二〇一四年、入所者の男女三人が相次いで転落死した事件では、三人をベランダから投げ落として殺害したとして殺人罪に問われた元施設職員の男が昨年三月、横浜地裁で死刑判決を受けた。
 男は公判で無罪を主張していたが、裁判長は、介護の鬱憤(うっぷん)を晴らそうとしたり、転落直後の被害者の救急救命措置をして周囲の称賛を得ようとしたりしたのが動機だと指摘した。被告側は控訴した。
 一七年八月には、東京都中野区の介護付き有料老人ホームで、入所者の男性=当時(83)=が死亡。浴槽に投げ入れて殺害したとして、宿直勤務だった元職員の男が殺人罪で起訴された。捜査関係者によると、男は逮捕当初、「布団を何度も汚されて腹が立った」と供述していた。
 厚生労働省によると、特別養護老人ホームなど介護施設の職員による高齢者への虐待は、一七年度に五百十件(前年度比五十八件増)あり、過去最多を更新した。十一年連続で増えている。背景には、高齢者の増加や介護現場の人手不足による負担増などがあるとみられている。厚労省によると、被害者の約八割は認知症があった。虐待の種類(複数回答)は、暴力や拘束などの身体的虐待が約六割を占め、最多。暴言などの心理的虐待、介護放棄と続いた。

【虐待 高齢者施設最多 10年連続増加 人手不足が一因】
毎日新聞2018年3月10日
 厚生労働省は、特別養護老人ホームなど、介護施設の職員による高齢者への虐待が、2016年度に452件(前年度比44件増)あったと発表した。10年連続の増加で、過去最多を更新した。うち20件は過去にも同じ施設で虐待が発生していた。高齢者が死亡したケースはなかった。
 家族や親族による虐待は408件増の1万6384件。殺人や心中などで25人が亡くなった。
 増加の理由について厚労省は「特定は難しいが社会的な関心が高まり、通報が増えたことも一因」としている。介護現場では、深刻な人手不足で職員の繁忙度が増したことも影響しているとの指摘もある。
【大阪の特養、寝たきりの入居女性3人が相次ぎ肋骨骨折 府警が捜査】
3/1(日) 5:00配信 毎日新聞
大阪市東住吉区の特別養護老人ホームで、入居者の女性3人が1カ月の間に、相次いで肋骨(ろっこつ)を骨折していたことが明らかになった。3人とも寝たきりの状態で、日常的に職員の介助を受けている。市は短期間に骨折が続いたことを問題視し、施設を立ち入り調査。市や施設から通報を受けた大阪府警は、事件性の疑いもあるとみて捜査を始めた。
 市などによると、2019年11月23日、職員が入居者の50代女性を入浴させた際、胸に大きなあざが見つかった。翌日、病院で肋骨骨折と診断され、病院が市に連絡して発覚した。市は施設を訪れて当時の状況を聞き取り、報告書の提出を求めた。
 12月1日にも、職員が80代女性を着替えさせた際にあざが見つかり、肋骨骨折と病院で確認。市に報告したが、11月9日に肋骨骨折と診断されていた90代女性については、伝えていなかった。市と施設は、骨折が3件続いたことから、府警に通報した。
 3人は認知症で意思疎通が難しく、寝たきりだった。現在も2人が入院中。市は入浴などの際に複数の職員で介助し、体に異変がないか確認するよう再発防止を指導した。
 しかし、20年1月、別の90代女性の腰にもあざが見つかり、病院で打撲と判明。この女性も寝たきりだった。
 施設は5階建てで、2~4階に計約120人が入居。骨折した3人と、打撲した1人はいずれも2階の共同部屋で暮らしていた。職員は約60人。府警は当時の勤務状況を調べるなどして、慎重に捜査を進めている。
 この施設の責任者は「歩ける人が転倒して骨折することはあるが、寝たきりの入居者の骨折は過去にはなかった。原因が分からず、捜査に全面的に協力する」と話している。


【「警察に相談しなさい」児童相談所、女児追い返す 午前3時すぎ来所、保護せず】
2/19(水) 0:04配信 神戸新聞 
神戸市中央区東川崎町1の市こども家庭センター(児童相談所)で当直業務を請け負うNPO法人の男性職員が、真夜中に助けを求めて訪れた小学6年の女児に対して「警察に相談しなさい」と伝えて追い返していたことが18日、同センターへの取材で分かった。女児はその後、交番に保護された。


【起立性調節障害】【これは病気…朝起きられない起立性調節障害、根強い偏見 春日部の女子高生、「苦しむ人らの居場所」つくる】2/17(月) 10:17配信 埼玉新聞
 朝起きることが困難になるなどの起立性調節障害がある高校生金谷侑里奈さん(17)=埼玉県春日部市=が、同じ障害やうつ病などの精神疾患の患者らの居場所づくりに取り組む任意団体「I elpis cafe」を設立した。「怠けている」などといった障害への偏見をなくすために始めたツイッターのフォロワーは900人を超える。当事者らが集う会合を同市内で定期的に開き、悩みに寄り添っている。
 金谷さんが自身の体に異変を感じたのは中学2年生の時。朝起きられない状態が1~2カ月続いた。「おかしい」。そう思い病院に行くと、起立性調節障害と診断された。薬を処方されたが効かず、遅刻しながら通学。手足の震えや不安感、眠気など薬の副作用も生じたため、通学は難しいと判断し通信制の高校を選択した。
 起立性調節障害には偏見が根強いという。「心が弱いからなる」「さぼっている」。そんな声も耳にしてきた。
 「これが病気なんだということを理解してほしい」。起立性調節障害やうつ病などの精神疾患に関する正しい情報を社会に伝えようと、金谷さんはツイッターを始めた。すると当事者だけでなく、がん患者や親などからもコンタクトがあった。「今日も自殺に失敗してしまった」などと切実な声も届くようになった。
 「事態は深刻化している」。金谷さんは居場所づくりの必要性を痛感。昨年4月に初めて会合の開催を呼び掛けたところ1万件超の閲覧があり、活動運営の協力者も現れた。「参加者にとって希望が見いだせる場所」との願いを込め、団体名はギリシャ語で「希望」を意味する「elpis(エルピス)」から採った。
 翌5月の初会合には市内外から7人の参加があった。「髪の毛が抜けるがどうしたらいいか」「どんな薬を使っているのか」など、それぞれが病に関する深刻な悩みや疑問を吐露。皆が真剣に受け止め、親身になって助言をし合った。金谷さんは「これまで一人で悩みを抱え苦しんできた当事者たちは、やっと見つけた居場所に安堵(あんど)していた」と振り返る。
 「自分の想像以上に大変な人がたくさんいる。病気の有無にかかわらず、少しでも苦しんでいる人たちの居場所づくりをしたい」と金谷さん。大学に進学し精神疾患の新薬を開発する夢を、今は描いている。
 会合への参加者はリピーターも多く、全国で開催してほしいとの要望もある。次回は3月21日に予定している。申し込みは、ツイッターで「ナユリ」を検索する。
【起立性調節障害】
 朝起き不良や倦怠(けんたい)感、動悸(どうき)、頭痛などの症状を伴い、思春期に多く見られる自律神経機能不全の一つ。詳しい原因は分かっていない。重症化すると日常生活が著しく損なわれてしまい、長期にわたる不登校状態やひきこもりを起こす要因にもなっている。



【認知症で賠償、自治体が支援…保険料負担、被害者への見舞金・最大3000万円も
2/17(月) 12:11配信 読売新聞 
認知症の人が外出先などで他人にけがをさせたり、物を壊したりして家族らが損害賠償を求められる事態に備え、民間保険を活用する自治体の支援事業が広がっている。神戸市は、被害者に見舞金を支払う仕組みを加えた独自の事故救済制度を導入し、認知症診断の無料化にも取り組む。「神戸モデル」と呼ばれる支援策を取材した。
通子さんは、市が2019年4月に導入した事故救済制度に加入している。認知症と診断された市民を対象とし、市が保険料を負担して民間の個人賠償責任保険に加入。人身や物損の事故を起こし、本人や家族が賠償責任を負う場合に、最大2億円の補償が受けられる。
被害者が市民の場合は、保険による補償に先立ち、市が最大3000万円の見舞金を支払う。加害者側に賠償責任がない場合でも、被害を救済できる制度だ。
19年5月、神戸市のフランス料理店。市内に住む認知症の男性(84)が、妻(82)や長女(56)らとディナーを囲んでいた。退店後、男性が座っていたソファが、そそうで汚れていることに店員が気づいた。後日、店側からクリーニング代の相談の電話を受けた長女は、病院の勧めで父親が市の事故救済制度に加入していることを思い出した。

 長女がコールセンターに電話すると、保険会社が対応し、クリーニング代や営業損失として約14万円が保険から店側に支払われた。両親は、この店の味も雰囲気も気に入っているといい、長女は「店は両親にとって憩いの場。第三者が解決してくれたおかげで、わだかまりがなく、今も気持ちよく行ける」と喜ぶ。
市によると、認知症の人が他人の自転車を持ち帰って損傷し、市が約1万6000円の見舞金を所有者に支給したケースもある。

「神戸モデル」の運営には年約3億円かかるが、市は個人市民税(均等割)を1人年400円上乗せして賄う。

 市の認知症対策監を務める神戸学院大の前田潔特命教授は、「早期に診断された人や家族をしっかりサポートし、進行を遅らせるような支援策を充実させることが今後の課題だ」と話す。

【「風邪症状なら学校・会社休んで」 厚労相、新型肺炎拡大防止呼びかけ 高齢者は注意】2/17(月) 20:38配信 毎日新聞
 ◇「少しだるいくらいの早期症状で人にうつしてしまう」
 世界保健機関(WHO)によると、約80%の患者は軽症だ。英医学誌ランセットに発表された論文では、分析した中国・武漢市での患者99人の主な症状は発熱(83%)やせき(82%)で、風邪と見分けがつかなかった。
 さらに、「軽症者は発症から3、4日までの初期がウイルス排出のピーク」(WHOの進藤奈邦子シニアアドバイザー)との指摘がある。進藤氏は「少しだるいくらいの早期の症状で、普段通りの生活を送るうちに人にうつしてしまう」と危機感を募らせる。風邪症状がみられる時は学校や会社を休むよう政府が促すのは、こんな背景があるからだ。
 ◇軽症者の大病院詰めかけ警戒「過度な心配は必要ない」
 目安には、軽症者が大病院に詰めかけ、重症者への対応が遅れるのを避ける狙いもある。17日、日本医師会などと記者会見した日本医療機能評価機構の河北博文理事長は「過度な心配は必要ない。通常の診療体制の中で行動してほしい」と冷静な受診を呼びかけた。
 一方で高齢者らは重篤になる危険性が高く、注意が必要だ。集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」(乗客乗員3711人)では、これまでに判明した感染者は20~90代の454人。うち60代以上は354人で8割近くを占め、重症者20人は全員60代以上。国内での死亡例(1件)も80代の女性だ。
 ◇専門医「高齢者は手洗い励行、人混みに行かないで」
 感染症に詳しい谷口清州(きよす)・国立病院機構三重病院臨床研究部長は「普通の風邪やインフルエンザでも肺炎を起こすことがあるが、今回はワクチンや治療薬がない。高齢者は気をつけるべき病気で、手洗いや人混みになるべく行かないなどの対策を取ってほしい」と呼び掛ける。
 また、目安では風邪症状が2日続く高齢者を相談対象に入れるなどしたが、谷口氏は「重症者を見逃さないために広く設定したのだろう。ただ、医療機関にたくさんの人が押し寄せ、混乱する可能性もある。相談センターが適切にトリアージ(治療の優先順位を付けること)をする必要がある」と指摘した。


【「無脳症」のわが子を宿して 突如、妊婦健診で知らされる苦しみ】2/14(金) 8:11 配信 ノンフィクション作家・河合香織/Yahoo!ニュース 特集編集部 抜粋
無脳症とは脳の全部または一部が欠如している疾患だ。頭蓋骨が欠損し、脳が露出していることも多い。発生率は1000人に1人と、胎児の奇形のなかでも比較的発生頻度が高い疾患である。脳は思考をするだけではなく、身体の生理的な制御も行う器官である。そのため、脳が大きく欠如していると生命維持装置なしに生き続けることができない。基本的には出生後、数日で亡くなる。
無脳症のような疾患は、通常の妊婦健診の超音波検査で判明する。腹部に超音波を発信する機器をあてると、その反響の解析から胎児の姿が画面に映し出される。この際、注意深く診断されるのが、胎児の先天性形態異常(奇形)だ。
血液の採取だけで胎児の染色体異常などの可能性を高い確率で知ることができる「新型出生前診断(NIPT)」が広がりだしている。日本産科婦人科学会の指針を逸脱して行う施設も複数現れ、妊婦が遺伝や障がいなどの実情を理解することなく、出生前診断を受ける事例が増えだした。そうなると、遺伝や障がいに誤解をもつ可能性もある。そこで、厚生労働省は2019年10月、NIPTの使用について検討部会を設置、有識者を集めた議論を始めている
産婦人科医師の林伸彦氏は、「超音波検査の質が上がり、通常の妊婦健診で胎児の病気がわかることもたくさんあります。その意味で、特別な検査を受けていなくても、ほとんどの家族は『ある程度の出生前検査』を受けています」と話す。
だが、妊婦は出生前診断を受けているという自覚がない場合も少なくない。明治学院大学社会学部柘植あづみ教授の調査によると、超音波検査について説明があり、検査を受けるかどうかを尋ねられた妊婦は1割に満たないとされる。
胎児に病気や障害があることを「生まれるまで知らない権利」もあるため、事前に意思確認と心の準備がない妊婦に、すべての情報を伝えるのはとても難しいと林医師は言う。
なほこさんは妊娠15週の時、年の瀬も迫った2017年12月28日の妊婦健診で無脳症だと告知された。それまで妊婦健診とは赤ちゃんの成長を見られる嬉しいものだと思っていた。
命を選ぶ選択肢は提示されなかった。生きられない命だから入院して中絶するしかないと言われた。すでに週数が経っているので、中期中絶となり、分娩という形をとると説明された。
「頭蓋骨がなくて薄い膜で包まれただけなら、産む時に赤ちゃんの膜が破れて脳みそが潰れちゃう可能性はありますか? 苦しくないですか?」
なほこさんが聞くと、可能性がないわけではないと医師は言った。
驚いたのは中絶の同意書に「経済的理由」と書かれていたことだ。日本では、胎児の病気を理由とした中絶は認められていない。身体的に絶対に生きられない命であっても、法律上は生かさなければいけないのが建前だ。中絶は、母体保護法の「身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある」場合に可能となる。なほこさんには経済的な理由などは一切なかった。
立命館大学副学長で生命倫理を研究する松原洋子同大学院教授は言う。
「現在、出生前診断について、優生学的な見地からどこまで実施するかという議論がされていますが、少なくとも検査を受けるか受けないかは本人が決定できるものです。ですが、実は通常の妊婦健診でも、自ら選ぶことなく出生前診断を受けているのが実状で、それを知るとき、妊婦さんは産む産まないを考えなくてはいけなくなっているのです。妊婦さんの多くは、その診断が中絶につながるかもしれない検査を受けている、という意識はありません。そういう検査が母子保健の一つとして行われているのです」

「もしかして頭が痛くて、ぐるぐる回っているのではないですか」と孝子さんが医師に尋ねると、「苦しかったらおなかの中で生きられないよ」との答えが返ってきた。無脳症の4分の3は中絶することもなく、おなかの中で亡くなるという。この子が生きられるのであれば、その命の限りまで付き合いたい、与えられた時間が短くても子どもの自然な寿命をまっとうさせてあげたいと思うようになった。
だが、通っていた病院では出産を断られた。いくつか病院をまわり、ようやく出産を引き受けてもらえるところを見つけ、「あなたと息子さんのベストな日にできるよう最善のチームを組みます」と言ってもらえた。
どうすればベストな出産ができるのだろう。考えた末に、孝子さんは生まれた子に対する薬の投与や延命治療を放棄することにした。また、亡くなった後に解剖することや臓器提供をすることも拒否した。
前長崎大学病院院長で長く産科医療に携わってきた増崎英明同大名誉教授はこれまで多くの無脳に遭遇してきた経験を持つ。たくさん生まれていたが、母親から隠そうとする風潮があったと指摘する。
「私は、この子は生まれたら絶対に生きていけないと両親に伝えてきました。これまで、『それでも産みたい』と言う両親には会ったことはありません。海外では人工呼吸器で生かして、臓器移植のドナーにする国もあったようです。人工呼吸器などで延命することは可能なのです」
海外では、数年ほどの生存例も報告されている。つまり、医療技術によって一定期間生かすことはできる。それでも本質的に長くは生きられない。
無脳症の出産について、人的資源や医療費の問題から反対する医師もいる。さらに、長く生きられない命を出産することで、母体への負担を懸念する声もある。
だとすれば、無脳症の胎児とわかったとき、どういう選択が家族にとって、そしてその子どもにとって幸せなのだろうか。増崎氏はそのような声は本質的な問題ではないという。
「無脳症の子を産むことが法律で禁止されているわけではない。もしどうしても産みたいという希望があれば、その意向に沿いたいと思います。社会の問題を指摘する人もいますが、何よりも重要なのは、その妊婦さん自身が自分の選択を納得できるかどうかではないでしょうか」
無脳症の出産について、人的資源や医療費の問題から反対する医師もいる。さらに、長く生きられない命を出産することで、母体への負担を懸念する声もある。
だとすれば、無脳症の胎児とわかったとき、どういう選択が家族にとって、そしてその子どもにとって幸せなのだろうか。増崎氏はそのような声は本質的な問題ではないという。
「無脳症の子を産むことが法律で禁止されているわけではない。もしどうしても産みたいという希望があれば、その意向に沿いたいと思います。社会の問題を指摘する人もいますが、何よりも重要なのは、その妊婦さん自身が自分の選択を納得できるかどうかではないでしょうか」
河合香織(かわい・かおり)
1974年生まれ。神戸市外国語大学卒業。2009年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で2019年、第50回大宅壮一ノンフィクション賞、第18回新潮ドキュメント賞受賞。



【受験生「参考書すぐ手にできない」…点字図書、ボランティア頼みに限界】
2/15(土) 9:01配信 西日本新聞
点訳に半年待ち
 福岡県立福岡高等視覚特別支援学校の教諭、久保弘樹さん(47)は生まれつき弱視で、8年ほど前に全く見えなくなった。普段は、全国約400の施設や団体が加盟する点字図書や録音図書などのデータベース「サピエ図書館」を利用する。

 本の点訳や、音声化する音訳は、全国の点字図書館などに登録するボランティアが支えている。久保さんも、読みたい本が点字図書になっていない場合はボランティアに依頼することがある。ただ、点訳は文章を一文字ずつパソコン入力して点字データにし、誤字がないよう校正を複数回した後で紙に点字印刷するため、完成まで半年かかることもざらだ。久保さんは「特に深刻なのは、受験生が参考書をすぐに手にできないこと。ボランティア頼みには限界がある」と憂える。

 総務省の統計などによると年間の新刊書籍の出版数は約7万2千点。サピエ図書館と国立国会図書館に新たに登録される点字図書は約1万2千点にとどまる。

 福岡点字図書館(福岡県春日市)の夏秋圭助館長は「ボランティアを始めたばかりの人が一人で完成まで担えるようになるには最短5年かかる」と育成の難しさを指摘する。登録ボランティアの平均年齢は70歳近く、無理も言えない。

データ提供に壁
 点字図書館や利用者が、本のテキストデータを出版社から購入できれば、一文字ずつ入力する手間が省けるため、より早く点字や音声にできる。だがデータ複製や流出への懸念は根強く、大手を中心に出版社からのデータ提供はなかなか進んでいない。

 東京の出版社「読書工房」は、本の購入者から希望があれば、テキストデータを提供している。成松一郎代表は「あくまでやむを得ない緊急措置」という。

 出版業界に詳しいNPO法人「HON.jp」の鷹野凌理事長は、データ流出以外の理由も挙げる。印刷部門を自社で持たない中小出版社の場合、印刷会社が校閲後の最終版データを持つケースが少なくない。データの所有権は印刷会社にあるとされているため、出版社が第三者にデータを提供するには、印刷会社に引き渡しを求める手間が発生する。さらに、点字化や音声化に対応するテキストデータに変換する費用もかかるため「コストに収益が見合わないと考え、出版社は労力を掛けたがらないのでは」とみる。
米国の安全対策
 米国では、データ提供への出版社側の理解を得られるよう、安全対策の取り組みが進む。

 情報のバリアフリーに詳しい「ユーディット」会長の関根千佳さんによると、米国のインターネット図書館「ブックシェア」は、視覚障害や発達障害があって本を読むことが難しい子どもや学生を対象に、無料で書籍をデータ化し、送付するサービスを行っている。データを開いた個人を特定できる機能を備えており、複製などの不正使用があった場合は追跡できる仕組みになっている。こうした管理体制があるため、出版社や著者が不正を心配せずデータを提供できるという。

 関根さんは「日本でも、個人がデータを受け取り、点字や音声など自分に合った形式に変換して読む権利を保障すると同時に、違法に他人に渡さないためのルールを作る必要がある」と提言する。 (国崎万智)

【読書バリアフリー法】
 視覚障害や学習障害(LD)、肢体不自由などがあり活字を読むことが困難な人の読書環境を整備し、だれもが読みたい本を読めることを目指す。点字図書、拡大図書、録音図書、音声読み上げ対応の電子書籍といった「アクセシブルな書籍」の普及、インターネットの本貸し出しサービスの強化、情報通信技術(ICT)の習得支援などが柱。基本計画の策定と実施など、国と自治体の責務も盛り込んでいる。



【県庁で指導者研修会いじめと発達障害 関連性を理解】2020年2月12日(水)(愛媛新聞)

愛媛県教育委員会は12日、県庁で県いじめ防止対策指導者研修会を開いた。FR教育臨床研究所(山形)の花輪敏男所長が講演し、教員ら約150人が発達障害といじめの関連性に理解を深めた。


【節分で豆詰まらせ幼児死亡、松江 保育施設の行事で】2/12(水) 21:00配信共同通信
松江市の保育施設で今月3日、節分の行事をしていた幼児が大豆を喉に詰まらせ窒息死していたことが12日、同市への取材で分かった。市は「幼児の特定を避けるため」として発表せず、性別や年齢も明らかにしていない。
 市によると、行事は3日午前にあり、幼児は救急搬送されたが、3日中に死亡した。
 死亡を受け市は3日に県や厚生労働省に状況や経緯を報告。翌4日に厚労省から「報道発表しないのか」と問い合わせを受けた際は「保護者らへの説明が優先」などと説明したという。市は6~8日、施設の保護者への説明会を開いた。


【さいたまプール女児死亡、元園長と保育士の派遣社員に禁錮1年求刑 弁護側「情状酌量を」】2020/1/10 08:37 (JST)埼玉新聞
2017年に埼玉県さいたま市緑区大間木の認可保育所「めだか保育園」でプール遊びをしていた女児=当時(4)=が溺れて死亡した事故で、事故を防止する注意義務を怠ったとして、業務上過失致死の罪に問われた無職で元園長の被告(70)=さいたま市=と保育士として勤めていた派遣社員の被告(32)=東京都足立区=の論告求刑公判が9日、さいたま地裁(北村和裁判官)で開かれた。検察側は両被告に禁錮1年を求刑し結審した。判決は2月14日。

 論告で検察側は、元園長について「プール活動での指導を行うに当たり、複数体制を取ることも、プールの使用を中止にすることも容易にできた」と指摘。保育士については「監視を徹底していれば早期に異常を察知し、救命することもできた」とした。

 元園長の弁護側は事故後、被告が反省していることなどから情状酌量を求めた。保育士の弁護側は「自身はどんな処罰も受け入れる気持ちだが、諸事情を考慮して判断してほしい」と述べた。

 最終意見陳述では「本当に申し訳ない」と頭を下げた両被告。保育士は「児童から目を離したことで、一番に異変に気付くことができなかった」と言葉を詰まらせた。

 起訴状などによると、元園長は複数の保育士でプール内の園児の監視や指導を実施し、十分な監視や指導ができない場合にはプールの使用を中止する注意義務を怠り、保育士はプール内の園児の動静を注視する注意義務を怠り、17年8月25日、赤沼美空ちゃんを低酸素脳症により死亡させたとされる。

【嫡出否認規定訴訟 「夫のみに認めた民法規定は合憲」確定 女性らの上告棄却決定
】:毎日新聞2/7(金) 19:18配信【嫡出否認は「合憲」確定 最高裁、夫のみ権利】
:共同通信2/7(金) 17:47配信【夫のみ嫡出否認「合憲」確定 女性側の上告退ける 最高裁】:時事通信2/7(金) 17:19配信

 生まれた子との父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えを夫のみに認めた民法の規定は憲法に反するとして、女性らが国に賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は5日付で女性らの上告を棄却する決定を出した。規定を「合憲」とした1、2審判決が確定した。
 裁判官4人全員一致の意見。嫡出否認の規定の違憲性が主要な争点になった初の訴訟だったが、小法廷は「上告理由に当たらない」とだけ述べ、憲法に適合するかどうかは判断しなかった。
 民法には「婚姻から200日経過後に生まれた子は夫の子」「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とする嫡出推定の規定がある。
 夫(前夫)は「嫡出否認」の訴えにより推定を覆すことができるが、妻や子は認められていない。夫(前夫)の子とされるのを避けるため、出生届が提出されず、子が無戸籍となるケースがあり、法制審議会(法相の諮問機関)が2019年から制度の見直しを議論している。
 1、2審判決によると、女性は夫の暴力を理由に別居。婚姻関係が継続したまま、別の男性との間に娘が生まれた。男性を実父とする出生届は嫡出推定によって受理されず、娘と孫2人は無戸籍となった(後に戸籍を取得)。女性側は、嫡出否認の訴えが夫に限られているのは、法の下の平等を定めた憲法14条に反すると主張。国に計220万円の賠償を求めた。
 1審・神戸地裁判決(2017年11月)は規定を合憲として請求を棄却。2審・大阪高裁判決(18年8月)も嫡出否認権が夫にのみ認められるのは、父子関係を早期に安定させるためで「一応の合理性がある」と判断。妻や子に否認権を認めるのは不合理ではないとしたが、「家族制度のあり方の問題で国会の立法裁量に委ねるべきだ」と結論付け、1審を維持した。
 同様に、嫡出否認規定の違憲性が主な争点となっていた別の訴訟についても、最高裁第1小法廷(木沢克之裁判長)は6日付で原告側の上告を棄却する決定を出した。

【嫡出否認は「合憲」確定 最高裁、夫のみ権利】
:共同通信2/7(金) 17:47配信
生まれた子との父子関係を法的に否定する「嫡出否認」の訴えを起こす権利を夫だけに認めた民法の規定は、男女平等を定めた憲法に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は原告側の上告を退ける決定をした。5日付。規定を「合憲」とした一、二審判決が確定した。最高裁は具体的な判断理由を示さなかった。
 民法は、結婚中に妻が妊娠した場合は夫の子と推定し、これを覆す嫡出否認の訴えは夫だけができると規定。DVなどの事情で、離婚成立前に別の男性との間で子どもを産んだ母親が、夫の子になるのを避けるために出生届を出さず、子が無戸籍となる要因とされている。

【夫のみ嫡出否認「合憲」確定 女性側の上告退ける 最高裁】:時事通信
2/7(金) 17:19配信
 生まれた子との父子関係を否定する「嫡出否認」を夫だけに認めている民法の規定が、男女平等を定めた憲法に反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は7日までに、原告の女性側の上告を退ける決定をした。
 規定を「合憲」とした一、二審判決が確定した。4裁判官全員一致の意見で、憲法判断は示さなかった。決定は5日付。
 民法は「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定される」と規定。夫は出生を知った時から1年以内であれば、自分の子ではないとする嫡出否認の訴えを起こすことができると定めている。
 二審大阪高裁は2018年8月、「夫は父子関係から生じる扶養義務を免れたり、相続人から子を排除したりする直接の利益があるが、妻は父子関係の当事者ではない」と指摘。早期に父子関係を確定させるという嫡出推定制度の趣旨にも触れ、17年11月の一審神戸地裁同様、合憲と判断した。
 一方、高裁は「妻や子に否認権を認めることが不合理となるものではない」とも言及。制度設計は国会の立法裁量に委ねられるべきだとした。
 一、二審判決によると、原告の女性は夫からの暴力が原因で別居後、1983年に別の男性との間に娘をもうけた。夫に娘の存在を知られることを恐れて出生届を提出できず、娘とその子2人は2016年まで無戸籍だった。




【脳性まひの少年「高校行きたい」 パソコンで1字ずつの手紙、受け止めた教員
】西日本新聞1/30(木) 9:50配信

 2014年に国連の「障害者権利条約」に批准して以降、国も推進が求められる障害がある人とない人が「ともに学ぶ」inclusive教育。しかし重度者の場合、特に高校、大学への進学は簡単ではない。どうすれば道は開けるのか。ある男子学生の実例から、そのヒントを探る。
大柄な体は、電動車いすからはみ出すかのよう。目が合うと、たちまち人懐っこい笑顔。「おはようございます」。野太い声であいさつが返ってきた。熊本学園大(熊本市)1年の中山智博さん(19)=福岡県筑後市。重い脳性まひで生まれ食事やトイレなど全介助が必要だが、毎日、自宅から新幹線で通学している。朝夕、JR筑後船小屋駅まで車で送迎する母の順子(のぶこ)さん(54)は「とにかく周りの人の支えに恵まれました」としみじみ語る。

人権教育を背景に
 智博さんは07年、同市立古川小に入学した。特別支援学級は当時どこにでもある状況ではなかったものの「暮らしている地域で過ごしてほしかった」と順子さん。智博さんも入学前に見学した特別支援学校は「ワンワン泣いて」嫌がった。
 地元の小中にはインクルーシブ教育に理解の深い教員たちがいた。その一人で、特別支援教育コーディネーターとして地域ぐるみの支援にかかわってきた同県立筑後特別支援学校教員の秋山辰郎さん(55)は「地域的に人権教育が盛んで、学校長も含めて『ともに』という空気があった」。
 入学して肢体が不自由な子ども向けの支援学級ができ、教員たちは読み書きや機能訓練、介助まで工夫し合って日替わりで対応。ちょうど市内で学校へのエレベーターの整備時期が重なり、古川小が選ばれた。
「どんな人の輪にも、体当たりで飛び込んでいく」(順子さん)智博さんは、地元の筑後中でも同様に過ごし、普通高校への進学を志す。しかし義務教育ではなく、支援学級もない高校のハードルは高かった。

 中3だった15年、高校見学に行った智博さんは、過去に軽度の脳性まひの生徒が卒業していた県立福島高(八女市)を志望校に絞る。エレベーターがあった私立高校も検討したが、同校は「介助に携わる支援員を雇えない」と受け入れを渋った。
 しかし福島高も斜面に校舎が立ち、当時は階段だらけ。県教育委員会側も一時、難色を示したという。
「勉強したい。頑張りますから、お願いします!」
 「どうしたいのか、はっきり伝えることが大事」-。秋山さんらにハッパを掛けられた智博さんは同夏、公立高校の説明会で、福島高のブースにパソコンで1文字ずつ打った手紙を持参した。「みんなと同じように普通高校に入学したいし、勉強したい。頑張りますから、お願いします!」。緊張で体中に力が入り、汗をダラダラ流しながらその場で読み上げた。

 「今、こんなに勉強したいという若者はそういない、と学校側も真顔になった」(秋山さん)
 一方、障害者差別解消法の施行が翌16年に迫っていた。本人から意思表示があれば、公立学校は合理的な配慮が義務付けられる。

 筑後中と協議を重ねた福島高は、同校教員による代筆受験を認めた。教員2人が事前に何度も同中を訪れ、智博さんと面会。入試時に回答を忠実に書き写すため、中学の教科書を全教科、持ち帰って準備した。

 秋山さんは「もちろん本人の熱意が一番大きいが、学校側の可能な限りの配慮は、法律が後押しした側面もある」と振り返る。
意思決定の支援も
 智博さんは見事合格し、同校は特別支援教育の支援員を配置。多目的トイレも増やし、翌年はエレベーターもできた。定期考査では時間を1・3倍取るなど、硬軟両面で配慮を重ねた。

 課外授業は支援員の勤務時間外となるため、平日は毎朝付き添うなど負担も小さくなかった順子さんだが「智博と先生との関係も徐々に深まった」と感謝した上で「目に見えにくい発達障害などの子どもたちへの配慮も広がれば」と願う。

 秋山さんは「気持ちをきちんと伝えるのが困難な生徒もいる」と指摘。「配慮の前に、学校側が本人たちの要望をくみ取るための積極的な『意思決定支援』も欠かせない」と訴えている。
そして熊本学園大に進んだ智博さん。大学生活では別の「障壁」も見えてきた。 (編集委員・三宅大介)

教育現場での合理的配慮
 障害者権利条約は締結国にインクルーシブ教育を実現するよう定め、そのために合理的配慮の提供を求めている。「能力を可能な最大限度まで発達させる」ことなどが目的。障害者差別解消法では国公立学校は法的義務である一方、私立学校は努力義務とされる。筆記が難しい場合は支援員がパソコンなどで入力支援する▽入試で別室受験や時間延長を認める-など。



【副業に励む医学部教授ら 国公立の15人に製薬マネー1000万円超 18年度】毎日抜粋1/26(日) 19:39配信
 1000万円を超える講師謝金を受け取っていた国公立大教授と准教授は15人。佐賀大教授が最多の2298万円だった。講演数は154回で、週3回のペースに相当する。次いで、香川大教授2140万円、徳島大教授1675万円――など。特定の1社から918万円を受領した教授もいた。15人の専門や診療科は、循環器内科と糖尿病が各5人、消化器内科が2人。いずれも多くの薬を患者に処方するとみられる分野だった。

【「まさか7歳から殺されそうになるなんて」児童館で首をバットで殴られた元職員の訴え】弁護士.コム1/27(月) 17:45配信
2017年5月、兵庫県神戸市の児童館で、小学2年の男児が20代女性職員の首をバットで殴る事件が起きた。被害にあった女性は、久保田紋加さん(仮名)。今も頸部の痛みなど後遺症に悩まされており、病院に通いながら小学校の非常勤講師をしている。

「子どもが加害者で大人が被害者だと、なぜケアが受けられないのか」。

久保田さんは1月27日、参議院議員会館で開いた集会で、実態調査と教育・児童福祉関係者が安心して働ける環境づくりを求める3万2699筆のオンライン署名を厚生労働省の担当者に手渡した。

●子どもの暴力は「職員の指導力不足」か?

事件が起こったのは、2017年5月24日。当時大学院に在学しており、児童館でのアルバイトをはじめたばかりだった。久保田さんが注意したことをきっかけに、小学2年の男児から突然後ろからバットで首を殴られ、約2週間入院した。「まさか7歳から殺されそうになるなんて」と振り返る。

2017年6月、兵庫県警に被害届を提出し、県警は男児を児童相談所に通告した。労災も申請したが、2019年10月に「業務による強い心理的負荷が認められない」などとして、不支給決定となった。現在不服を申し立てている。

久保田さんが勤務した児童館は、市が管理運営を民間事業者に委託する「指定管理者制度」をとっていた。事故を受け、神戸市に対応を求めたが、応じてくれなかった。また、指定管理者からは「児童館の共済制度に入っていないため、労災申請をしてほしい」と言われた。

事件から2年以上が経過した今も、法的措置や賠償のめどは全く立っていない。

一方で、同じ「指定管理者制度」によって運営されている児童館でのトラブルで、神戸市がすぐに対応した事例もある。

2019年5月、神戸市の児童館で小学2年の女児が、学童保育中に複数の男児に脅され体を触られる被害にあった。市は指定管理者に運営の改善を指導し、全ての市立学童保育施設に通知を出している。

なぜ、ここまで対応が異なるのだろうか。

名古屋大学大学院の内田良准教授は「子どもから職員への暴力があると、子どもが悪いではなく、職員の指導力不足として片付けられる」と児童福祉に根付く文化を指摘。

「暴れる子どもたちを理解しなければいけないという聖職的な考え方があり、被害が見えてこない。先生に指導できないことがあるという前提で考えていかなければならない」と話した。

子どもから教職員への暴力事件は、小中高校を対象に毎年「問題行動調査」が行われているが、児童館や学童保育所など児童福祉施設での実態調査は行われていない。久保田さんは「小中高校以外では暴力が起こらない、何もないかのようにされている」と訴える。

久保田さんの元にはSNS やオンライン署名を通じて、子どもと接する仕事につく人から「似たような経験がある」、「ハサミで切りつけられた」との声が集まっている。

久保田さんは匿名で活動し、現在の職場でも事件の被害者であることを明かしていない。後遺症があることは伝えているが、その原因は伏せたまま仕事をしている。

「生き残った自分には、現状を変える使命がある。加害者が誰であろうと、被害者が誰であろうと泣き寝入りする社会であってはならない」


【着床前診断、対象の拡大検討 日産婦、条件に「治療法なし」「高度な医療必要」】毎日新聞1/25(土) 16:38配信【着床前診断 なぜ今、拡大検討なのか 風向き変えた患者会の意見書】毎日新聞2020年1月26日
 着床前診断は体外受精した受精卵から細胞の一部を取り出し、遺伝子や染色体に問題のない場合に子宮に戻す技術で、「命の選別」との批判が根強い。日産婦は1998年、「成人までに命を落とす恐れがある」重篤な遺伝性の難病を対象とすることを決め、2006年には染色体異常による習慣流産での実施を承認。このうち遺伝性の難病では筋肉が萎縮するデュシェンヌ型筋ジストロフィーが大半だった。
 ところが、対象外だった遺伝性の目のがん・網膜芽細胞腫の患者から、対象拡大を求める意見が寄せられた。日産婦は19年、審議会を公開で開催することを決め、委員27人にアンケートし、日常生活に支障が出る恐れがある6疾患を例示して意見を求めた。
 その結果、従来の対象外疾患も含む網膜芽細胞腫▽▽ベッカー型筋ジストロフィー▽脊髄(せきずい)小脳変性症▽デュシェンヌ型筋ジストロフィー▽フィンランド型ネフローゼ症候群――の5疾患については、過半数の委員が容認した。
 一方、卵巣がんや乳がんの原因となる遺伝子変異では、「子が必ず発症するわけではない」と難色も示され、賛否が分かれた。
 このため日産婦は、重い遺伝性疾患を対象とする点は変えずに、成人までに死亡するかどうかを問わず「有効な治療法がない」または「生存には高度な医療が必要」の条件を加えることにした。新たな指針では具体的な病名は示さず、従来通り日産婦が症例ごとに実施を判断する方針だ。日産婦は審議会を4月まで3回開催し、実施対象の拡大を正式決定する。
【着床前診断 なぜ今、拡大検討なのか 風向き変えた患者会の意見書】毎日新聞2020年1月26日
 体外受精した受精卵のうち、遺伝性疾患がないものを子宮に戻す着床前診断について、日本産科婦人科学会(日産婦)は25日、実施対象の拡大検討を公開で議論する倫理審議会の初会合を開いた。この診断法を巡っては「命の選別」との懸念が根強く、これまで適用が制限され、実施の承認にあたっては厳格な運用がなされてきた。日産婦はなぜ、条件付きながら拡大検討へとかじを切ったのか。

 「忌憚(きたん)のない意見をいただきたい」。日産婦の木村正理事長は25日の会議で医学系学会や法学者、倫理学者らの委員に呼びかけた。

 日本では生殖医療を規制する法令はなく、日産婦は自主規制でルールを決めてきた。普段は非公開の倫理委員会で決める議論をあえて公開した背景には、独断で重大な方針変更をしたとの批判を避ける狙いもあるとみられる。

 会議では各委員が見直し案への意見を述べた。

 着床前診断では重篤な遺伝性疾患を確認し、対象はデュシェンヌ型筋ジストロフィーが中心だった。これに対し「出生前診断」では、妊婦の羊水や血液から染色体異常を調べ、ダウン症の有無などを確認している。

 一般に医療関係者の間では、着床前診断は中絶を伴わず、出生前診断に比べて倫理的ハードルが低いと捉えられる傾向にある。この日も医療関係者から異論はなかった。

 一方、着床前診断で異常があった受精卵は多くの場合、廃棄される。倫理や法律の専門家からはこの日、「技術が進んでも、あえて障害を持つ子を産むことが『自己責任』と見なされる社会になってはならない」と危惧する意見もあった。

 日産婦は1998年、着床前診断について「重篤な遺伝子疾患」の診断に限ると決め、その後「成人を待たずに命を落とす恐れがある疾患」と内規で定めた。症例ごとに審査し、2019年10月までに認めたのは210例。06年には受精卵の染色体異常で流産を繰り返すケースも認め、500例以上を承認した。

 ただ現実には着床前診断の「重篤な」をどこまでにするかの線引きは難しい。患者からの申請で今回、見直しの契機となった遺伝性の小児がん・網膜芽細胞腫は、失明の恐れはあるが命にはかかわらないことなどから当初は門前払いされた。しかし、患者会が結成され、「正しい知識を得た上で希望すれば、着床前診断を選べる社会にすべきだ」との意見書とともに再申請されたことで風向きが変わった。19年8月の日産婦倫理委員会では「死ななくとも重篤な病気はある」といった意見の一方、対象疾患の急拡大を恐れ「歯止めも重要だ」との声も出て判断を保留していた。

 厚生労働省は「議論を見守りたい」と静観する。北海道大の石井哲也教授(生命倫理)は「英国などでは国が対象疾患や医療機関を規制した上で許可制としている。国が明確な規制を制定すべき時期に来ている」と指摘する。

 日産婦に対象疾患の再検討を促す問題提起をした大阪市の網膜芽細胞腫患者、野口麻衣子さん(37)は、3歳の次男にがんが遺伝し、両目に重い視覚障害が残った経験を明かした。「病気が遺伝するかしないか『賭け』のような出産はしたくない。健康に生まれてほしいという願いは、みんな一緒ではないか」と話す。

 野口さんは、生後すぐに網膜芽細胞腫と診断され右目を摘出、左目にも腫瘍が見つかったが、治療に成功し、日常生活に支障はない。現在、夫(34)と長男(5)、次男との4人暮らしだ。

 結婚後、不妊治療で長男を妊娠した2014年ごろから病気の遺伝が気にかかった。体外受精で受精卵を凍結保存していたため、通院するクリニックに着床前診断を相談したが「対象外なのでできない」と説明され、そのままにしていた。結果として長男には遺伝せず、次男を妊娠した時には「遺伝しても、私みたいに早期発見、早期治療で大丈夫だろう」と思っていた。

 ところが16年に次男を出産して3カ月後、白く濁っている両目の瞳孔に気づき、背筋が凍る思いがした。すぐに治療を開始したが、既にがんは視神経に迫るほど深く成長しており、主治医からは両目摘出の可能性を告げられた。約1年間、東京の国立がん研究センターへ通院して治療し、摘出は免れたが、両目ともがんの痕が石灰化し、ほとんど見えない状態だという。

 「甘く見ていた。自分のせいで子供を病気にさせてしまった」と悔やんだ野口さんは18年1月、クリニックを通じて初めて日産婦に着床前診断を申請した。「私が認められなかったとしても、せめて子どもが大きくなった頃には、選択肢として認められる時代になってほしい」と考えたという。倫理の専門家や小児科医などからの反対意見も承知しているが、「私のように悩んでいる人がいることも考えてほしい」と訴える。

 難病当事者の中には理解を示す声もある一方、「難病への偏見、差別が進まないか」との懸念も根強い。

 患者団体・難病支援ネット・ジャパン(札幌市)の伊藤たてお代表理事は「一度拡大を許すと、歯止めがきかずにいつの間にか既成事実化し、多様性が失われた社会になるかもしれない。それでよいのだろうか」と疑問を投げかける。

 その一方で「遺伝性疾患の患者には(野口さんのように)親になって初めて直面する悩みがあり、それを共有できずに苦しむ人も多い。倫理観が大前提だが、こうした問題を丁寧に話し合う社会の環境作りも必要ではないか」と指摘する。


【植松被告「差別、働く中で生じた」「自分には責任能力ある」 相模原殺傷公判】1/24(金) 21:19配信 毎日新聞
相模原事件の公判が開かれている横浜地裁=横浜市中区で、銭場裕司撮影
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、利用者ら45人を殺傷したとして殺人罪などに問われた元同園職員の植松聖(さとし)被告(30)は24日、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判で「自分には責任能力がある」と述べ、刑事責任能力がなかったとして無罪を訴える弁護人の主張を明確に否定した。被告は法廷で障害者に対する差別的な発言を続け、そうした考えは園で働く中で生じたと答えた。
 弁護側による被告人質問がこの日から始まり、被告が自らの弁護人の主張を「間違いだ」と指摘する展開となった。被告はやや緊張した面持ちで弁護側の質問に答えていた。
 被告は被告人質問で重度障害者を念頭に「意思疎通が取れない人間は安楽死させるべきだ」という異常な考えを語り、その理由を「無理心中や社会保障費など多くの問題を引き起こしている」と持論を述べた。園で働く中でこの考えが芽生えたという。
 被告は事件前に「障害者を抹殺できる。許可をください」との手紙を東京都内の衆院議長公邸に持参し、16年2月に措置入院している。実行を決めた時期を問われると「自分でやろうと思ったのは措置入院中」と答え、入院前は「自分で手を下してやろうとは思わなかった」と述べた。
 動機については「お金をもらって楽しい生活をしたかった」と回答。金を得るためには「社会の役に立つか犯罪をするか」が必要と語り、障害者を殺害することが「役に立つことだと思った」と説明した。
 また、16年3月ごろ、米大統領選への出馬の動きを見せていたトランプ氏の排他的な主張を聞いて「自分も真実を言っていい」と感じて、事件に傾斜したという。当初は同年10月に事件を実行しようと考えていたが「誰かの耳に入ったら自分が殺されることもあるかもしれないと思った」ため、決行時期を早めた。
 弁護側は被告は大麻を常用し、事件時は大麻精神病やその他の精神障害により善悪を判断する能力や行動を制御する能力がなかったと主張している。事件当時の心理状態を問われた被告は「重度障害者を殺傷しているのはわかっていた」と説明。弁護側が自ら出頭した理由を聞くと、被告は「犯罪とわかっているから自首することに意味があると思った」と答えた。
 今後の裁判について、被告は「2審、3審と続けるのは間違っている」と述べ、1審で終わらせたいとの考えを示した。
 一方で、23歳ごろから使用しているという大麻のことに話が及ぶと持論を長々と展開し、弁護側が質問内容を変えても「大麻の話をもう少ししたい」と求めていた。質問が長時間に及び、弁護側が被告に体調を尋ねて休廷を申し出る場面もあった。
 起訴状などによると被告は16年7月26日未明、園に侵入して入所していた19人を殺害、26人に重軽傷を負わせたとされる。27日も被告人質問があり、3月16日に判決を予定している。
 ◇遺族「怒りを通り越してあきれている」
 事件で重傷を負った尾野一矢さん(46)の父剛志さん(76)は公判終了後、「被告には何を言っても駄目なんだという思い。怒りを通り越してあきれている」と振り返った。
 剛志さんは被害者参加制度を利用して出廷し、被告人質問に耳を傾けた。これまでと同様に「意思疎通が取れない人間は安楽死させるべきだ」などと差別発言を繰り返した植松被告に対して、剛志さんは「言っていることは支離滅裂だ」と批判。「僕らの頭では、どう考えても彼の思いつくようなことは考えられない。理解に苦しむ」と話した。

【管の外れに気付かず 医療ミスで10代男性昏睡 群馬県立小児医療センター 過失認め賠償方針】1/24(金) 6:02配信 上毛新聞【小児の人工呼吸中の低酸素血症に対する対応は?】2019年06月18日
 群馬県立小児医療センター(渋川市)は23日、入院していた10代の男性患者の呼吸を助けるため気管に挿入していた管が外れていることに気付かず、一時的に心肺停止となる医療事故があったと発表した。男性は蘇生したが、現在も意識がなく自発呼吸できない状態という。病院側は全面的に過失を認め、家族に賠償金を支払う方針を示した。看護師への教育を見直すなどして再発防止に努めるとしている。
◎院長、看護部長、看護師長を処分
 事故があったのは昨年8月の早朝で、看護師4人が勤務していた。血液中の酸素量などを計測する機器のセンサーに異常が出たが、看護師は機器の故障などと思い込み、管が外れていることに気付かなかったという。その後に管の状態を確認して判明した。男性は心肺蘇生によって一命を取り留めたものの低酸素脳症となった後遺症で、現在も昏睡(こんすい)状態が続いている。
 男性は生まれつき重度の心身障害があり、呼吸を確保するために管を常時入れておく必要があった。出生直後から入退院を繰り返していたが、2018年3月から呼吸困難が悪化したため再び入院していた。
 事故後、病院は事故調査委員会を設置し、調査してきた。所管する県病院局は同日、管理監督上の責任があったとして院長と看護部長を厳重注意処分、看護師長を注意処分とした。病院は、再発防止策として (1)看護師教育の見直し (2)看護マニュアルの改訂 (3)シミュレーション研修の実施―などに取り組む。
 県庁で記者会見した外松学院長は「患者と家族につらい思いをさせてしまったことを深くおわび申し上げる」と謝罪。その上で、「安全管理体制に課題があった。病院の職員が一致協力し、県民からの信頼を回復できるよう努力したい」と述べた。
 重い遺伝性疾患の有無などを調べる着床前診断について、日本産科婦人科学会は25日、対象疾患の拡大を検討する意向を明らかにした。現在は成人までに死亡する恐れのある重篤な難病などに限っているが、「有効な治療法がない」「生存には高度な医療が必要」といった条件付きで門戸を広げる案を、有識者による倫理審議会の初会合で示した。


【小児の人工呼吸中の低酸素血症に対する対応は?】2019年06月18日
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。今回は「小児の人工呼吸中の低酸素血症に対する対応」に関するQ&Aです。
Q.小児の人工呼吸中の低酸素血症に対する対応は?
A.まず手動式換気に切り替え、「DOPE」に沿って原因検索を進めます。
小児の人工呼吸中の低酸素血症
人工呼吸中に低酸素血症が生じたら、まずは手動式換気に切り替えて、「DOPE(ドープ)」に沿って原因検索を進めるとよい。
DOPEとは、displacement(:人工気道の位置の異常)、obstruction(:気道の閉塞)、pneumothorax(:気胸)、equipment failure(:機 器・装置の不具合)の頭文字をとったものである。
DOPEは、検索の順序も重要である。つまり、人工気道の位置の異常や閉塞、気胸などの患者自身の低酸素血症の原因を否定した後に、機器・装置の不具合を考慮して点検するということである。
低酸素血症が生じた場合に、ジャクソンリース回路による手動式換気を行うことで、対応と「DOPE」に沿った原因検索を進めることができる(図1)。
図1低酸素血症の場合の「DOPE」に沿った対応



【障害児がいじめられて転校 学校は当初認めず、後に謝罪】朝日新聞:1/26(日) 20:38配信
宮崎市立小学校の特別支援学級に通い、軽い知的障害のある5年生男児(11)が通常学級の複数児童からいじめられて不登校となり、今月転校したことが分かった。2年生の頃からいじめられていたという。学校は当初いじめと認めなかったが、父親の訴えを受けた市教委の指導後、事実関係を認めて謝罪した。
 市教委や学校によると、男児は理科や社会などの教科を通常学級で学ぶ「交流学級」に参加。2年生の交流学級で複数児童から「キモい」と言われた。3年生では顔をつねられたり上履きを隠されたりし、4年生では上履きを水でぬらされた。5年生では理科の授業中に実験材料のマメを食べるよう迫られたという。
 2年生時から父親が担任らに対応を求めた。だが、学校は加害児童からのみ聞き取り「児童間のトラブル」として、いじめと認識せず、加害児童への注意にとどめた。昨年4月、父親の訴えを受けた市教委が、いじめが疑われる事案として丁寧に対応するよう学校を指導。学校は5月、男児が2年生時からいじめを受けていたと認め、父親に謝罪した。だが、男児はその後不登校になり、今月、近隣の小学校に転校した。
 昨年4月に就任した校長は「早い段階で真摯(しんし)に向き合っていじめを解消していれば、ここまでの事態にはならなかった。転校になって申し訳なく、残念だ」と述べた。市教委の押川幸広・学校教育課長は「2年生当時から、いじめを前提とした指導がされていれば長引くことはなかった。いじめ防止基本方針を2014年度に策定した市教委と学校現場の間に、いじめの認識で温度差があった」と述べた。(伊藤秀樹)

【#実名報道「あるがままの生」認め合う社会へ 公表された「美帆」という「生きた証し」】抜粋1/18(土) 10:03配信 神奈川新聞
「命は等価」の通説、揺さぶった遺族
 県警の匿名発表と県のその追認に対し、「手の合わせ方も変わり、今のような状況では一人ひとりの死を悼みにくい」(日本障害者協議会)といった批判が、障害当事者や福祉団体から集中した。
 実名報道を原則とする神奈川新聞も、「理不尽に『明日』を断たれた19人の人柄であり、生きた証し」(16年10月25日朝刊、社説)を語り継ぐには実名公表が不可欠である、と主張した。命は等価であるとも論じている。《世の中のあらゆるものの価値はすべて平等である。それぞれに尊い。みながみな心ゆくまま存在していい》(17年7月26日朝刊、1面コラム)
 こうした通説を、遺族の一人は、きれい事とみなしていた。弟を殺害された女性の談話が物語る。
 《わたしは親に弟の障害を隠すなと言われて育ってきましたが、亡くなったいまは名前を絶対に公表しないでほしいと言われています。この国には優生思想的な風潮が根強くありますし、全ての命は存在するだけで価値があるということが当たり前ではないので、とても公表することはできません》
長男がやまゆり園に入所する男性が匿名で取材に応じ、遺族の苦悩を代弁した。「社会には、いろんな人がいますよ。悔しいが、偏見や差別をなくそうなんて、無理でしょう」。なぜ、実名を明かせないのか。「だって、いままでだって、ずっと、ひっそり生きてきたんだから」
障害者が支援を受けながら集団で暮らす大規模施設は、欧米をまねて「コロニー」と呼ばれ、「親亡き後」の生活を託せる終生の居場所として1960年代に登場した。70年代に入ると、国や自治体はこぞって建設に乗り出す。適地とされたのは、人里離れた片田舎だった。
81年の国際障害者年を契機に当事者の人権が省みられ、脱施設化と生活の「地域移行」が唱えられるまで、コロニーブームは続く。東京五輪に沸く64年、山あいの集落に建てられたやまゆり園も、そのひとつ。3万平方メートルの敷地に並ぶ二つの居住棟に、事件前は160人が身を寄せていた。
 入所者は生前から「隠された存在」だった、と男性は明かした。
記号化された19人「二重の殺害」
 「追悼って、何を悼むんだろう」。やまゆり園家族会の前会長、尾野剛志(76)は問い掛ける。一方はひとくくりに「あなた」と呼ばれて毎夏に同じエピソードが読み上げられ、他方はそれぞれの生前の功績がたたえられる。どちらの犠牲者も、当初は実名が匿われていたが、最終的に警察の対応は分かれた。支援の格差も歴然になった。
 長男の一矢(46)は、事件で瀕死の重傷を負っていた。尾野はさらに自問する。「生きた証し」ってなんだろう――。「ただ生きているだけじゃ、だめなのかな」。そして、同じ事件に遭遇した遺族の、あの告発が去来する。この国では「全ての命は存在するだけで価値があるということが当たり前ではない」という。堂々巡りだ。
姉(当時65)を殺害された男性は、姉の知的障害を理由に、妻との結婚を相手方の親族に反対された。だから、「家族に障害者がいることで差別を受ける現実があることは知っています」。
 尾野は釈然としない。やまゆり園の19人は「人に有益かどうか」(被告の植松聖)で生殺を選別され、死後も「あるがままの生」が受け入れられないでいる。「それじゃ、二重に殺されたも同然じゃないか」


【「虐待予防の切り札」子どもショートステイ、里親不足 利用増でも登録伸び悩み
】西日本新聞1/14(火) 10:41配信
 保護者の育児疲れや病気などで、一時的に養育できなくなった子どもを数日間預かる「短期入所生活援助事業」(子どもショートステイ)。「虐待予防の切り札」としても注目され、利用者が年々増える一方、受け皿不足が課題となっている。ほとんどの自治体が受け入れ先を児童福祉施設に限定しており、国が提唱する里親による受け入れは広がっていない。

 子どもショートステイは7日以内を原則に、子どもを預けられる国の制度で、自治体が実施する。料金は各自治体で異なり、福岡市ではひとり親家庭と生活保護世帯を除き1日約千円~5千円。仕事や出産、入院のほか、育児疲れで精神的に追い詰められた親が子どもと離れて休息することで、虐待などによる一時保護に至るケースを防げると期待されている。

 厚生労働省の集計によると、2017年は全国で延べ約9万人が利用し、前年の約8万人から急増。福岡市では、18年の利用は458人で、16年の342人から100人以上増えた。

 17年の受け入れ先は全国に797カ所。大半が乳児院や児童養護施設などの児童福祉施設で、里親など施設以外の受け入れは1割以下とみられる。既に長期で入所する子どもがいる施設の場合、年齢や性別によってはショートステイの受け入れが難しく、里親の活用が重要視されている。

 欧米と異なり、里親といえば養子縁組のイメージが日本では強く、登録者は増えていない。福岡市は17年からNPO法人「SOS子どもの村JAPAN」(同市)に委託し、同市西区で里親によるショートステイの受け入れを開始。19年は延べ7人を受け入れた。利用者の近所の里親が子どもを預かるため親が利用しやすく、子どもは通学や通園もできるが、登録里親は5人と伸び悩んでいる。
同法人の坂本雅子常務理事は「里親には他にも、虐待を受けた子どもの一時保護の役割などもある。絶対数が少ない中で、緊急性が高いものが優先され、予防的な役割を果たすショートステイまで手が回っていない」と打ち明ける。

 福岡市早良区の児童養護施設「福岡子供の家」の松崎剛施設長は「毎月一定数、ショートステイの希望を断っている。施設以外にも、子どもにとってもっと身近な地域に多くの受け皿がある方がいい」と話した。 (本田彩子)
【「引きこもり」支援者に根強い“引き出せばいい”という錯覚の罪】ダイヤモンド
1/9(木) 6:01配信

引きこもり支援歴40年以上で、いわば引きこもり支援のレジェンドともいえる、一般社団法人「OSDよりそいネットワーク」共同代表で、一般社団法人「SCSカウンセリング研究所」代表の池田佳世さんは、「介入すべきは親に対して」だとして、親の学習会に力を入れてきた。
【「睡眠は短くても深ければOK」のウソ】National  Geographic
1/11(土) 12:32配信
トリ:ライフワークバランスと言えば、昨年、働き方に関する法律で月の残業時間が80時間を「過労死ライン」に決めたとか聞いたけど、どういうわけだろう?
 三島:2019年4月1日に施行された働き方改革関連法のことだね。1カ月の勤務日を20日として、1日当たり4時間残業すれば月の残業時間(時間外労働時間)が80時間になるよね。これが2~6カ月持続すると死亡も含めた深刻な健康被害が高まる可能性があるとして、俗に「過労死ライン」と呼ばれているんだ。
  働き方改革関連法では、時間外労働時間を原則月に45時間以下にすること、臨時的な特別な事情がある場合でも複数月で平均80時間以下、最大でも月100時間以下に制限するように定められたんだ。ちなみに、100時間の場合、1日当たりの残業時間が5時間となり、単月でも「過労死ライン」を超えるとされているんだよ。
NHKの国民生活時間調査等をもとに計算すると、時間外労働時間が4時間もしくは5時間になると、睡眠時間が6時間を下回ってしまう。そうすると脳・心疾患、うつ病などのリスクが上昇するという疫学研究の結果があるんだ。
ヒツジ:でも、“深い睡眠”が多いのが質の良い睡眠って聞いたことがあります。
 三島:それは誤りだね。ヒツジ君の言う深い睡眠というのは睡眠ポリグラフ検査で判定される3Hz前後のゆっくりした脳波が出る深いノンレム睡眠(徐波睡眠)のことだね。残念ながらそのような睡眠パラメーターで睡眠の質の良し悪しを語ることはできないんだ。深い睡眠はよい睡眠の指標の一つとして取り上げられることが多いけど、必ずしも睡眠の質を保証しているわけではないよ。例えば、睡眠不足に悩む人では睡眠時間が短いにもかかわらず深い睡眠の量はむしろ多めだよ。というのも、睡眠不足の時に削られるのは大部分が浅いノンレム睡眠とレム睡眠だからなんだ。
トリ:ノンレム睡眠もレム睡眠も、浅いのも深いのも、まんべんなく減るわけじゃないのね。睡眠不足に悩む人で徐波睡眠が増えているなら、確かに徐波睡眠量を指標とするのは矛盾するなぁ。
三島:でしょ。健康な人の場合、深い睡眠は若い頃に多くて、年齢とともに徐々に減ってくる。だから深い睡眠が多い方が睡眠の質が高いのだろうと漠然とイメージしがちだけれど、これはあくまでも十分な睡眠時間をとっている時の話しです。かつ深い睡眠の量は個人差が大きい。若くて健康でも体質的に深い睡眠が少なく、それでも睡眠に満足感を得ている人は少なからずいます。
ヒツジ:先生の以前のコラムで、就寝の2時間ほど前に入浴すると深い睡眠が増えて、熟睡感も高まると書いてありましたよね。
 三島:お、「お風呂で快眠できるワケ」の回だね。もう5年以上前に書いたコラムなのに、よく思い出したね。ただ読み返してもらえば分かるけど、入浴後に深い睡眠が増加するのは、加熱された脳を効率的にクールダウンするために強制的に誘導されるからなんだ。つまり、やむを得ず生じた生体反応と言えるわけで、睡眠の質が高まったと表現するのは実は正しくない。
深い睡眠と睡眠の質が直結しない他の証拠として、入浴とは逆に深い睡眠が減ってもぐっすり感が得られることもあるんだよ。どんな場合か想像つく?
トリ:加熱の逆で、脳を冷やす?
 三島:おー、トリ君、冴えてるね! そうなんだ。例えば睡眠薬の一部は体からの放熱を促して脳の温度を下げてしまいます。そうするとそれ以上脳をクールダウンする必要がなくなるので深い睡眠が減ってしまう。でも不眠症の人では睡眠薬を服用するとぐっすり感が高まるのだから不思議だよね。
 不眠症の話が出たので、もう一つダメ押しで、「不眠症の本質は睡眠時間の誤認である」でも紹介した「睡眠状態誤認」を挙げてみよう。慢性不眠症の患者さんの中には脳波上はよく寝ているのに、睡眠の質をひどく悪く感じていることがしばしばあるんだ。これを睡眠状態誤認と呼ぶのだけれど、脳波の数値と主観的睡眠感が解離しているもっとも典型的な例だね。
ヒツジ、トリ:??? 混乱してきました。結局、睡眠の質のバロメーターって何なんですか?
まず、これまでの説明を聞いて何となく気付いたと思うけど、睡眠の質というのはその人の主観的体験だと言うこと。眠りから目覚めた後に、疲労回復感があり、日中に眠気もなく心身共に元気に働くことができる、それが質の良い睡眠が取れている証拠です。つまり睡眠の質は睡眠で判定するのではなく覚醒状態の様子で判定します。
トリ:目が覚めてるときに判定するなら、睡眠じゃなく日中の体調に関連する指標の方が大事じゃないの?
 三島:今年のトリ君はなかなか鋭いよ。実は主観的に感じる睡眠の質は、前夜の睡眠状態そのものよりも、その人のメンタルヘルスが一番関係しているんじゃないか、という研究結果もあります。例えば抑うつ感や不安感が強い人は睡眠ポリグラフの結果よりも睡眠の質を大幅に低く評価しやすい、などね。
  これまでこのコラムでは何度も解説してきたけど、睡眠の長さにしても、深さにしても、眠る時刻にしても、大いに個人差があります。万人に共通する快眠指標のようなものはないのかもしれないね。でも「睡眠の質」の本態を知りたいという要望が強いので、現在、私も参加している厚生労働省の研究班では「睡眠の質」に関する科学的知見を収集して検討を始めているんだ。

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