精神福祉士カリキュラム日程

1.現代社会と福祉............2回...20年5~7月
2.地域福祉の理論と方法...2回...20年5~7月
3.精神疾患とその治療......2回...20年5~7月
..............................スクリーング(1日間)
4.精神保険の
  課題と支援...............2回...20年5~7月
..............................スクリーング(1日間)


【1.現代社会と福祉】
【目次】
【現代社会における福祉領域の意義と考え方 序章】
【模範解答】
2.地域福祉の理論と方法...2回...20年5~7月
【地域福祉とソーシャル・キャピタル論の接点に関する考察】A Study on Interactions between Community-Based Welfare and Theories on Social Capital
山村靖彦
【本文】
2.地域福祉の理論と方法...2回...20年5~7月



【地域福祉とソーシャル・キャピタル論の接点に関する考察】A Study on Interactions between Community-Based Welfare and Theories on Social Capital
山村靖彦
その中において、1993年に発表されたパットナムの論文(Putnam:1993、河田訳:2001)は、その後の SC 論の展開に大きなインパクトを与えた。

ウェスト・ヴァージニア州の教育長であり社会改良家でもあったハニファンであるといわれる。彼は、農村コミュニティの自治や教育の発展に寄与する概念として SC に着目
し、資源としてのその蓄積を重視した(Hanifan, L.:1916)。ここでの資本とは通常の意味とは異なり、善意(good will)、仲間意識(fellowship)、共感(sympathy)、社会的交流(social intercourse)を意図しており、それは社会
を構成する個人や家族間に生じるものとされている。また、このような資本が欠落した状態では、地域づくり、とりわけ教育活動は遅々として進まないと主張している。

①着目点:コミュニティ
ハニファン(Hanifan, L.)1916年
自治のためのコミュニティ発展のためには「SC(善意、仲間
意識、相互の共感、社会的交流)」の蓄積が必要であり、その
ための投資も必要である。

ジェイコブス(Jacobs)1961年
建築学・都市社会学的な視点から、都市開発などの問題を提起
し、近代都市における隣人関係など社会的ネットワークを SC
と表現し、その重要性を強調した。

②着目点:個人
ロウリー(Loury, G.C.)1977年
アメリカにおいて、白人と有色人種を比較した場合、白人のほうが産まれた時点においてすでに人的資本獲得に有利な環境にあり、このような利点を指摘し、その利点を SC とした。

ブルデュー(Bourdieu, P)1986年
「多かれ少なかれ制度化された相互面識および相互承認の持続的ネットワークの所有、あるいはいいかえると、全体で所有する資本の支援を各メンバーに提供するような集団のメンバー間に結びついた現実的・潜在的資源の総体」(当人に何らかの利益をもたらす形で社会化された人間関係の総体であり、たとえば「人脈」や「コネ」、「顔の広さ」といったもの)。

コールマン(Coleman, J.)1990年
SC とは社会構造のある局面から構成されるものであり、その構造の中に含まれている個人に対しある特定の行為を促進するような機能をもっているもの。


着目点:
ロバート・パットナム(Putnam. Robert D.)1993年
「協調的行動を容易にすることにより社会の効率を改善しうる信頼、規範、ネットワークなどの社会的仕組みの特徴」


着目点:信頼
フクヤマ(Fukuyama, F.)1995年
「信頼(コミュニティの他のメンバーが、共有され規範にもとづいて、規則正しい、正直な、そして協調的な行動をとると考えられるようなコミュニティにおいて生じる期待)が広くゆきわたることから生じる社会の能力」

アスレイナー(Uslaner, M. E.)2002年
SC の根底にある信頼を「普遍化信頼(見知らぬ人でも信頼できる)」と「特定化信頼(特定の人・集団に対する信頼)」分けて説明。


着目点:ネットワーク
ウールコック(Woolcock, M.)2000年
「SC とは協調行動を容易にさせる規範・ネットワークである」
OECD 2001年
「グループ内ないしはグループ間の協力を容易にさせる規範・価値観・理解の共有を伴ったネットワーク」

着目点:資源
クート(Couto, R)1999年
「人々を、労働力の中で占める彼らの経済的役割および地位にもとづく価値とは別に、コミュニティのメンバーとして再生するために投資される資源」

ウェイン・ベーカー(Baker, W)2000年
「個人的なネットワークやビジネスのネットワークから得られる資源」

ナン・リン(Nan Lin)2001年
「特定目的の行為においてアクセスされたり、活用される社会構造のなかに埋め込まれた資源」

ロナルド・バート(Ronald Burt)2005年
「関係構造における個人の位置づけによって創造される利点」

稲葉陽二 2008年
「心の外部性を伴った社会における信頼・規範・ネットワーク




「社会福祉基礎構造改革の背景と特徴を整理し、今後の課題について述べなさい」
社会福祉基礎構造改革は、直前まで迫ってきた超高齢社会に向け、社会福祉の共通基盤を作り、いち早く国民の不安を払拭し、期待に応えるべく始まったものといえる。
これまでの社会福祉制度は、戦争直後に作られたものを基盤としており、主として低所得階層の人たちのみを対象としていた。しかし、現代の生活スタイルや、多種多様になったニーズにより、全国民が、時には社会福祉を支える立場となり、またある時にはその対象になるという構図ができた。加えて、全世界で「権利」や「人権」の意識が高騰したことも改革を進める要因のひとつに挙げられる。
この改革の大きな要とも言えるのが措置制度の廃止である。日本の福祉の歴史的特徴とも言えるパターナリズムが如実に現れた措置制度が廃止され、ほとんどの福祉サービスにおいて利用者と事業者間とで契約を行うこととなった。これは後に支援費制度として確立し、平成18年の障害者自立支援法の成立により廃止されることとなるが(政権交代により、今後どう変わるかは分からないが)、長らく続いてきた措置制度を解体し、利用者の自己決定の尊重、事業者間との対等な関係性の構築、サービスの質の向上に貢献した大きな一歩であるといえる。
paternalism)とは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。
質の向上も改革の主目的であり、同時に量的拡大も謳われた。生協や農協、民間企業やNPOまでもが福祉サービスに参入することを可能としたり、福祉教育の充実や、サービス事業の充実・活性化、情報公開や自己評価の実施、第三者評価機関の育成、オンブズマン制の導入など、様々な角度から質的・量的拡大の可能性を探っていった。
上述した点以外にも、脱施設化を論じ、地域での総合的な支援を謳ったいわゆるノーマライゼーションの思想も改革理念として挙げられ、地域福祉計画も策定された。
では、この改革の批判的立場に立ち、問題点と課題を考察してみる。
「措置から契約へ」という言葉の下、措置制度は廃止され、行政はサービスの利用決定から身を引いた形に見える。しかし、費用支給の決定は措置と同様、行政処分であることには変わりなく、費用支給の可否はサービス利用の可否と同義であるのが現実である。また、利用者の自己決定の実現と言えば聞こえは良いが、複雑に細分化されたサービスを取捨選択するという負担は大きい。後に、最低限の生活を送るために必要なサービスの利用を「益」と銘打った、応益負担が導入され、経済的負担も大きなものとなる。政権交代により応能負担に戻されるであろうが、結局、行政主体の制度である以上、日本的パターナリズム福祉からは抜け出せず、利用者とその家族や保護者が抱くスティグマの感情は拭われることはないと私は考えてしまう。構造改革の理念として挙げられている「福祉の文化の創造」に再度国を挙げて一から取り組むことが、今後の重要な課題であると考える。
公衆スティグマ. – 一般市⺠が、精神疾患(患者)に対して、偏⾒・差別を持つ. – 誤った知識 → 誤った態度 → 誤った⾏動 と進⾏する. – 例:「精神疾患は危険だ」. → 「精神疾患で通院している人とは付き合わないほうが良い」. → 精神疾患の人を排除する.


 厚生省は、1997(平成 9)年から、社会福祉事業のあり方に関する検討
会をスタートさせ、1998(平成 10)年に「社会福祉基礎構造改革につい
て(中間まとめ)」と題する報告をまとめた。その改革の基本的方向は以
下に掲げる 7 項目であった。
①サービスの利用者と提供者の対等な関係の確立
②個人の多様な需要への地域での総合的な支援
③幅広い需要に応える多様な主体の参入促進
④信頼と納得が得られるサービスの質と効率性の向上
⑤情報公開等による事業運営の透明性の確保
⑥増大する費用の公平かつ公正な負担
⑦住民の積極的な参加による福祉の文化の創造
 この改革の理念は、2000(平成 12)年の「社会福祉法」に盛り込まれ、
また、多様な主体の参入は、同年施行の介護保険法を皮切りに拡大するこ
とになった。
 上記したように、福祉国家政策が翳りをみせ、国民は生活の保障を行政
にばかり頼れなくなった。再び近隣のつながりによって、あるいは、ボラ
ンティア、NPO などの市民の参加によって生活保障を補強しなければな
らなくなった。地方自治体は、公私協働を推進するようになり、自治体、
企業、NPO、社会福祉法人等が協働する「新しい公共」による支援が展
開されつつある。

【現代社会における福祉領域の意義と考え方 序章】


 国際ソーシャルワーク連盟(IFSW)が 2000 年に総会で採択した「ソ
ーシャルワークの定義」によると、ソーシャルワーク専門職は、社会シス
テムに関する理論を利用することが示されている。
 システムの概念は、階層性をもつ。すなわち、個人は一主体として全体
システムであるが、家族システムの中では部分的な構成要素である。また、
その家族は地域集団の構成要素でもある。さらに、その地域集団はより包
括的な生活圏(小学校区とか中学校区)の部分となる。際限のない入れ子
のように、全体としての顔を持つシステムの上位に、そのシステムを構成
要素とする上位階層を考えるのである。
 つまり、ミクロの視点からは、個人は種々の生得的な機能と学習によっ
て獲得した能力をもつ全体システムとして把握しなければならないと同時
に、所属する家族システムの一構成要素として、他の家族成員と相互作用
して暮らす存在と考えなければならない。マクロの視点からは、国は個人
にとっての全体社会システムであり、個人はその社会に規定される一要素
でしかない。しかし、その国といえど、国際社会システムの中では部分的
な構成要素である。

 しかし、ミクロからマクロに至る過程において、上位システムと下位シ
ステムの交互作用があり、影響を及ぼし合っていることを忘れてはならな
い。たとえば、貧困にあえぐ個人は、国の経済政策や労働政策の不備によ
って貧困に陥ったのかもしれないとか、その国に影響を及ぼしているのは
グローバリズムであって、その貧困は国際社会からも影響を受けていると
考える。すなわち、社会福祉の対象である個人の生活問題の解決において、
場合によっては社会変革を視野に入れなければならないということである。

 国家レベルの社会変革を考えるときには、社会システム内の構造機能の
相互作用を図式化して分析することができる。図 序─1 および、図 序─2 は
第2次大戦後の高度経済成長期と低成長期のパラダイム変換を表したもの
である。これは、パーソンズの AGIL 図式を応用した図である。国という
システムのもつ機能を、国としての目標設定機能、国外の経済環境に適応
する機能、国としての秩序維持を図る機能、国の文化を伝承する機能の 4
つに分け、それぞれ対応する構造として、政治、経済、法律、教育を置き、
その内部要素を列挙したもので、各要素間の関連をみることができる。
図 序─1 は、1970(昭和 45)年までの福祉国家を目標にした国家体制で
あり社会システムとなっている。図 序 ─2 は、福祉国家の危機を招来した
オイルショック以降の低成長下の国家体制であり社会システムである。つ
まり、福祉国家建設という目標設定から、皆で社会を創るという福祉社会
づくりの目標設定に切り替えた国家的な社会システムの大転換を表した図
となっている。
 A(適応)には、国および国民が取り組むべき課題が示される。
 G(目標)には、国の進むべき方向性が示される。
 I(統合)には、国の内部の秩序を維持するための法規が示される。
 L(潜在性)には、国の文化として伝承されるもの、あるいは、教育の
実態が示される。
図 序─1 の社会システムでは、豊かな国民生活・安心できる国民生活を
建設するという目標、すなわち、福祉国家の建設と、政治体制として「大
きな政府」であることが掲げられている。その目標達成の手段は、国際競
争力をつけることであり、日本の経済活動が市場原理に従って経済活動を
行わなければならなかった。そして、その競争に勝ち抜くためには、全体
的な教育のレベルを上げたり、技術革新を進めたりする必要があるので、
知識注入教育を進め、学歴社会をあおった。
 また、福祉国家体制を作り上げるためには、全国一律の制度構築が求め
られるので、中央集権体制で行政秩序を作り出したので、中央集権型福祉

図 序─1 社会システムの大転換(福祉国家を目標とする)

中央集権型福祉国家の時代]

Adaptation(適応)
● 国際競争力を高める
● 自然破壊を伴う高度経済成長
● 経済活動の市場原理と国家による
 規制

Goal(目標)
● 福祉国家の形成
(社会保険、義務教育、完全雇用、
 福祉サービス、など)
「大きな政府」政策

Latency(潜在性、パターンの維持)
● 物質的価値観
(物、金、情報が支配的価値観となった)
● 知識偏重教育
● 学歴社会(受験戦争)
● 封建遺制(イエ制度、ムラ制度)

Integration(統合)
● 中央集権行政機構
● 措置制度
● 中央政府による規制
● 憲法 25 条
● 社会保障関係法規
● 日本的終身雇用経営

図 序─2  社会システムの大転換(福祉社会を目標とする)
連帯型福祉国家の時代]

Adaptation(適応)
● 経済のグローバル化
● 低成長における行財政
● 持続可能な開発
● 少子高齢化への対応
● 福祉への市場原理導入
(新自由主義)
● 増税・保険料値上げ
「社会保障・税一体改革」
● 保険方式の導入(介護保険制度)
● 年金制度の一元化

Goal(目標)
● 福祉社会・連帯社会の形成
● 連帯型福祉国家
(産みやすく・育てやすい社会)
(高齢化を支える医療・介護の構築)
「小さな政府」政策
● 参加型社会


Latency(潜在性、パターンの維持)
● 連帯の思想、非物質的価値観の啓蒙
(共生など)
● ゆとり、心、生きる力の教育
● 介護・育児の社会化
● 自治の教育
● 家族政策と地域政策による新しい共同
 性の構築

Integration(統合)
● 地方分権行政機構
(ガバナンス)
● 契約制度
● 規制緩和による第 1 セクター、第 2
 セクター、第 3 セクターの統合
● 地方分権一括法
● 三位一体改革
● 公民連携・公私協働
● 格差社会の是正


〔International Co─operative Alliance〕
国際協同組合同盟の声明(ICA)
ICA は 1895 年にイギリスで設立。その定義とし
て、「協同組合は、共同で所有し、民主的に管理す
る事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニ
ーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々
の自治的な組織である」としている。協同組合は、
自助・自己責任・民主主義・平等・公正・連帯の価
値を基礎とし、コミュニティへの関与や組合員の経
済的参加・民主的管理などを含め、7 つの原則に従
うとされる。 わが国では、生協や農協、漁協、森林
組合などが ICA に加盟し、同じ「原則」に基づい
て活動している。

石井十次
〔1865─1914〕
宮崎県に生まれる。19 歳のときに洗礼を受ける。
熱心なキリスト教信者。22 歳のときに岡山孤児院
を設立。ピーク時には 1200 名の孤児を救済し、生
涯を通して孤児救済に尽力した。また 1909(明治
42)年、当時のスラム街である大阪名護町に愛染橋
保育所を開設した。

石井亮一
〔1867─1937〕
佐賀県に生まれる。1891(明治 24)年の濃尾大地
震の際に石井十次の要望で孤児を引き取り、それが
契機となって東京都に孤女学院を設立。のちの滝乃
川学園となる。わが国最初の知的障害児施設、日本
精神薄弱児愛護協会(現、日本知的障害者福祉協
会)を結成するなど、知的障害児問題に一生を捧げ
た。

朝日訴訟
人間裁判とも称され 1957 年に結核患者であった朝
日茂氏によって提起された訴訟。当時の長期入院患
者の保護基準が憲法 25 条の「健康で文化的な」最
低生活を保障するものではないとして厚生大臣を相
手に起こした裁判。

医学モデル/生活モデル
〔medical model/life model〕
「医学モデル」とは障害を個人的な問題として捉え
ている。疾病・外傷から直接的に生じるものとして
いる。一方、「生活モデル」とは個人の心身状況と
環境状況が相互に影響し合って生じるものとしてい
る。ソーシャルワーカーは、診断や問題発見に重点
を置く「医学モデル」を参考にしつつ、「生活モデ
ル」の視点に立って支援する。

糸賀一雄
〔1914─1968〕
鳥取県出身で半生を障害者教育に捧げた。京都大学
を卒業し、滋賀県経済統制課長などを経て、戦災孤
児や知的障害児の教育の場として近江学園を創設。
日本の知的障害の父とも呼ばれる。主著に『この子
らを世の光に』(1965)、『福祉の思想』(1968)がある。

医療保護法
1941(昭和 16)年成立。医療または助産を受ける
ことのできない生活困難者を対象。市町村や済生会
などの医療保護事業者は政府から割り当てられた医
療券等を発行。戦後の旧生活保護法成立により廃止。

岩永マキ
〔1848─1920〕
長崎県生まれ。キリスト教信者。ド・ロ神父ととも
に児童養護施設「浦上養育院」を創設する。浦上養
育院は 1891(明治 21)年に当時の内務省から初め
て助成金が支給され、わが国の社会福祉事業の先駆
けとなった。

岩橋武夫
〔1898─1954〕
大阪市生まれ。早稲田大学在学中に失明し、その苦
悩を乗り越え、関西学院を経てエディンバラ大学を
卒業。その後盲人社会福祉事業に尽力し、1935(昭
和 10)年に世界で 13 番目の盲人福祉施設ライトハ
ウスを大阪に建設。わが国およびアジアの盲人福祉
において数多くの業績を残す。ヘレン・ケラー女史
とともにわが国の「身体障害者福祉法」制定(1949
年)に貢献する。

漸増主義、増分主義
〔incrementalism〕
当面の課題は一挙に解決しない漸進的解決や現状の
政策を肯定し、限定的な選択肢の中から最適なもの
を選ぶという特徴がある。政府の予算編成におい
て、合理主義的な予算編成の原理が作用している場
合と比較した場合、行政分野ごとの予算額の構成比
の変化が少なくなる傾向がある。

〔vulnerability〕
傷つけられやすいこと、脆弱性。攻撃誘発性などと
訳される。たとえば社会的弱者といわれる人びと
は、偏見→差別→社会的排除→差別という構造に陥
りやすい。差異が差別を生むのではなく差別が差異
を生み出していく。精神障害者や生活保護世帯、ハ
ンセン病回復者、エイズ患者などはヴァルネラビリ
ティが形成されやすい。

要扶養児童家庭扶助
〔Aid to Families with Dependent Children〕
AFDC

アメリカで行われていた、扶養を要する 18 歳以下
の子どもを持つ貧困家庭を対象とするプログラムの
こと。アメリカ連邦政府が州に補助金を交付し、各
州がそれぞれの基準によって運営する。扶助の内容
としては、各州の基準に基づく現金給付、就職奨励
プログラム、就職斡旋サービス、保育がある。ひと
り親家庭、または両親がいても失業者か、どちらか
の親が重度の心身障害者であればその対象となる。

〔Esping-An dersen, Gosta 1947─ 〕
1947 年デンマークに生まれる。スペインのポンペ
ウ・ファブラ大学政治社会学部教授。『福祉資本主
義の三つの世界』(2001)で注目を集める。「脱家族
化」という概念を提唱し、福祉レジームを分析し、
福祉国家は社会的階層化のパターン形成に重要な役
割を演じる、とした。

エーデル改革
スウェーデンにおいて 1992 年から行われた改革の
こと。ナーシングホームなどの運営が県から市に移
り、この結果、医師を除く他の看護職員 5 万人余り
が市の職員になる。社会的入院者の費用を市が県に
払う制度ができたため、社会的入院者は激減するこ
ととなった。エーデルとは高齢者のこと。

〔non-governmental organization〕
政府から自立した組織として、一般市民が国境と国
籍の違いを乗り越え自発的に参加・運営する国際協
力団体のことをいう。現在において約 500 団体以上
が、教育、保健医療、農村の開発、環境保全、子ど
もや女性を対象にした事業を中心に、さまざまな国
で協力活動を行っている。

〔non-profit organization〕
利潤追求とは異なる公共の福祉向上を使命とする民
間組織のこと。その特徴として、①組織化されてい
ること、②民間であること、③利益分配をしないこ
と、④自己統治・自己決定していること、⑤自発的
であること、⑥非宗教的であること、⑦非政治的で
あること、が挙げられる。1998(平成 10)年に特
定非営利活動促進法(NPO 法)が成立し、ボラン
ティア団体などの任意団体は、法人格を比較的容易
に取得できるようになり、社会的な権利が認められ
るようになった。

エリザベス救貧法
イギリス絶対王制期のエリザベスⅠ世の統治のもと
において 1601 年に成立。貧困者を労働能力の有無
を基準に、①有能貧民、②無能力貧民、③児童、の
3 種類に分類し、就労の強制や浮浪者の整理が行わ
れた。1834 年に改正。そのため改正された救貧法
に対し旧救貧法といわれている。

エンゼルプラン(今後の子育て支援のための施策の
基本的方向について)
文部・厚生・労働・建設 4 大臣合意によって 1994
(平成 6)年に策定された子育て支援政策。①子育
てと仕事の両立支援、②家庭における子育て支援、
③子育てのための住宅および生活環境の整備、④ゆ
とりのある教育の実現と健全育成の推進、⑤子育て
コストの削減、という方向が示された。

〔empowerment〕
ソーシャルワーク実践において、心理的・社会的に
不利な状況におかれたクライエントがその問題状況
に対して自ら改善するためのパワーを高め、行動し
ていくための援助を行うこと。

応益負担
社会福祉サービスの利用負担をそのサービスの受益
に応じて負担すること。資源の配分効果が強いとい
われている。

応能負担
社会福祉サービスの利用負担を各人の支払い能力に
応じて負担すること。所得再分配の効果が強いとい
われている。

大河内一男
〔1905─1984〕
社会政策学者。社会事業を「経済秩序外的存在」で
ある貧困者に対する施策と位置づけ、同時に社会政
策の強化・補強策を規定した。『社会政策(各論)』
(1950)など多数の著書がある。

岡村重夫
〔1906─2001〕
大阪市に生まれる。地域福祉の 3 構成要素である
「コミュニティケア」「地域組織化」「予防的社会福
祉」を提唱し、それにより長期的な社会福祉計画に
おいて地域福祉サービスを展開できるとしたことで
有名。また福祉国家は選別的処遇ではなく国民すべ
てを対象とする普遍的処遇に特徴があると述べてい
る。

恩給
公務員の退職、死亡後の生活の支えとなるもので、
いわゆる国家補償の性格を有するもの。①公務員が
相当年勤務して退職した場合、②公務によるけがや
病気で退職した場合、③公務のために死亡した場合
において、国が公務員またはその遺族に給付するも
の。共済組合制度に移行する前に公務員を退職した
人やその遺族、旧軍人やその遺族に支給される。恩
給および戦争犠牲者援護は社会保障本来の目的とは
異なる国家補償制度であるが、生存権尊重の社会保
障的効果を上げているために広義の社会保障制度と
されている。

〔ombudsman〕
「苦情処理人」や「権利擁護者」としての役割を担
う。硬直的構造に陥りやすい社会福祉施設や苦情が
顕在化しにくい福祉サービスに対して、第三者的な
立場から公平な判断をすることが期待されている。
オンブズパーソン(ombuds person)ともいう。

介護保険法
1997(平成 9)年に制定された介護を必要とする高
齢者等に必要な保険給付を行うことを規定した法律
であり、2000(平成 12)年 4 月から施行されてい
る。その後、2005(平成 17)年の改正において、
要介護状態となった高齢者等の「尊厳の保持」が明
確に謳われた他、①予防重視型システムへの転換、
②利用者負担の見直し、③新たなサービス体系の確
立、④サービスの質の確保・向上、⑤制度運営・保
険料の見直し、などが図られた。なお、市町村に対
し、市町村介護保険事業計画を策定または変更しよ





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